ドイツの出版社Bruno Gmünderから出版された、世界のゲイ・コミックスの歴史と作家を紹介したアートブック”Stripped: A Story of Gay Comics”に、紹介&作品掲載されました。取材協力(人を紹介したり、日本のマンガ出版における世紀修正の説明をしたり)もちょっとしています。
これ<は、過去発行された様々なゲイコミック本の表紙を集めたページなんですが、私も持っているものがけっこうあったりして、レア度は情報の密度はさほど高くない感じがします。まだきちんとテキストを読んではいないんですが、ゲイ・コミックスの歴史に関しては、さらりと表面を撫でたという感じでしょうか。
ともあれ全般的にテキスト量はあまり多くなく、基本はあくまでも図版を見せるのが中心といった感じの本。
掲載&紹介されている作家は、まず有名なとろこで、もはやクラシックとも言える大御所トム・オブ・フィンランド、
ベテラン作家で同じ版元Bruno Gmünderから作品集が何冊も刊行されているザックことオリバー・フレイ、
やはりベテランで私も個人的にお付き合いのあるザ・ハンことビル・シメリングなど。
こういった作家たちについて、それぞれ冒頭に1見開き分のテキストで紹介&解説が入り、続いて1ページにつき1枚の絵を掲載しながら、それが1作家につき数見開き続く構成になっています。
というわけで、画集的な見応えは充分以上にあり。
で、私も12ページほど絵が載っております。
一番古いもので、日本のゲイマンガの局部修正の例として『嬲り者』から2ページ、そして『ECLOSION』『Der fliegende Holländer』『LOVER BOY』『MISSING』『エンドレス・ゲーム』から、こちらはオリジナル・データのままの無修正版を、それぞれ2ページずつ。
二番目の図版は、私という作家紹介&解説ページなんですが、おそらくデザイナーさんが「日本語かっけえ!」って感覚なんでしょうね、我々日本人から見ると、実に珍妙なことになっているのがご愛敬(笑)。
他の掲載作家さんたちも、ちょいとご紹介しましょう。まず知り合い関係から。
イタリアのフランツ&アンドレ。このコミックス”Black Wade”は、英語版がこのBruno Gmünderから、フランス語版が拙作の仏語版版元でもあるH&Oから出ています。ちょっとハーレクイン風味のヒストリカル・ゲイ・ロマンスで、個人的にオススメの一作。
アメリカ(カナダだったかな?)のパトリック・フィリオン。アメコミ的なスーパーヒーローものを得意とする作家さんで、Class Comicsというインディペンデントのゲイ・コミック出版社もやっており、やはりBruno GmünderとH&Oから、コミック本や画集が多数出ています。
やはりアメリカのデイル・ラザロフ。ただし彼はシナリオライターなので、図版の絵は、左がエイミー・コルバーン、右がバスティアン・ジョンソンという作家。また、カラリングは、私の友人でもあるフランス人のヤン・ディミトリが担当しています。デイルの本も、やはりBruno Gmünderから何冊か出ていたはず。また、この《デイル・ラザロフ/バスティアン・ジョンソン/ヤン・ディミトリ》コンビの作品は、これとは別に描きおろし新作もフル・ストーリー掲載あり。
知り合い関係を離れたところでは、まずアメリカのミオキ。この本の表紙も、この人の作品。やはり確か、Bruno Gmünderから作品集が出ていた記憶が。「薔薇族」って感じの作風。
ドイツのクリスチャン・タルク。カートゥーン調とリアル調のミクスチャーがいい感じ。
同じくドイツから<トゥリオ・クラップ。バンドデシネっぽい感じ。
アメリカのハワード・クルーズは、70年代〜80年代に活動していた作家さんらしいですが、ハワード・クラムなんかと通じる、いかにもアメリカのアングラ・コミックといった感じの作風。
こんな感じで、様々な作家の作品を大きく紹介したものが、フルカラーで240ページ近くあるというヴォリュームなので、ゲイ・アート好き、ゲイ・コミック好きなら、まず買って損はない充実の内容。
本のサイズも約A4と大きめで、ハードカバーで造本もしっかり。
テキストは英語とドイツ語の併記で、情報の掘り下げ度はそんなに深くない気はしますが、それでも一冊まるまる使って世界のゲイ・コミックを俯瞰しているという点で、あまり類書がない貴重な本だと思います。
ただ残念ながら、例によって日本のアマゾンでは取り扱いがありません。
それでも欲しい方は、是非アメリカやイギリスのアマゾンから取り寄せてください。