マンガ原稿(アナログ編)

・下準備からネーム&コンテまで
 まず最初に、アイデアが出たらメモやスケッチをとっておきます。また長編連載の場合は、後々の展開や必要な要素を整理するために、チャートを作ったりもします。参考図
 ストーリーが頭の中でまとまったら、手製の用紙に絵コンテ兼ネームを見開き単位で描いていきます。なぜ見開き単位かというと、左右のページのバランスを確認するためと、ヒキとメクリといった展開の緩急を上手くコントロールするためです。この段階で、おおよその構図とセリフをフィックスします。参考図

・下描き(人物)
 コンテが完成すると下書きに入ります。用紙はICのマンガ原稿用紙。下書きは2HとFの鉛筆や製図用芯ホルダー、0.3ミリ〜0.5ミリのシャープペンシル(芯はB)なんかを、気分で使い分けています。特別なことは何もしていません。せいぜい、手の脂が用紙に付かないようにする(脂が付くとペン入れ時にインクをはじいてしまう)ために当て紙を敷くことと、消しゴムをかけすぎない(上質紙の場合、数回消しゴムをかけると紙面が微妙に毛羽立って、細い線、特に体毛が太ってしまうので)ように注意するくらいです。参考図

・下描き(背景)
 背景を描くのに3DCGを援用することもあります。六角大王で簡単にモデリングして(とはいっても普通のモデリングとは違い、後でトレスする際に有用なガイド線だけでワイヤーフレームを組んだニセの立体)参考図、それをPoserに読み込み(なぜPoserかというと、使い慣れているということと、人物を配置してバランスを見たいときとかに便利だから)ワイヤーフレーム(隠線消去)表示した状態でカメラのアングルや焦点距離を決定し、イメージをプリントアウトしてトレスします。参考図

 よく「レンダリングして貼り付ければ?」と言われるんですが、ペン描きの人物と背景の質感が余りにも異なるのは気持ち悪いので、やはり最終的には手描きで仕上げたい。手描きではなくパスでトレスしてみたこともありますが、やはり線がきれいになりすぎて違和感が出てしまいました。手間が掛かっているようですが、それでも手描きでパースをとる(特に消失点が画面の外で遠くにある場合や、三点透視をしたい場合など)よりはずっと早く描けます。アシスタントを使っていない私には、この時間の短縮というのが何よりもありがたいのです。ただこの方法も万能ではない(例えばPoserのカメラではアオリができない)ので、不都合な部分はトレスの際に手描きで随時修正していきます。

 また(株)Tooから出ている「パース定規2」も、なかなか便利なので良く使います。特に消失点が遠くにある一点透視や簡単な二点透視は、これを使えばかなり手早く作図できます。もちろん三点透視も描けますが、これは3DCGを使った方が早い場合が多いかも。同社がこれ以前に出していたオリジナルの「パース定規」は、「2」ほど便利ではありませんが、それでもちょっとしたナンチャッテ・パースなんかを描くのに重宝していました。


・ペン入れ
 下書きが完成すれば、次はペン入れに入ります。最初に全ページのフキダシを描き(ペンやミリペンを使用)、次に全ページの枠線を引き(0.8ミリのロットリングを使用)、後は一ページずつペン入れしていきます。
 ペンはGペンと丸ペンがメインですが、これまたスプーンペンやスクールペンや日本字ペンを使ってみたり、メーカーもゼブラだったり日光だったりタチカワだったり、その日その日の気分や調子によってコロコロ変わります。付けペン以外ではミリペン(ピグマ、コピック、ステッドラーなど)やテクニカルペン(ロットリング)や筆ペン(ぺんてる、呉竹、セーラーなど)も使います。最近ではパイロットのHI-TEC-Cの0.3mmが背景やタッチを描くのに便利なので重宝しています。
 インクは昔は開明墨汁でしたが、乾きの遅さが苦になってパイロット製図用インクに変え、今度は消しゴムをかけた時に薄くなるのが嫌になって、現在では開明ドローイング・ゾルKを使っています。
 ペン入れ時は脂が用紙に付かないように、ペンを持つ右手には綿手袋を切って改造したものをはめ、用紙を押さえる左手の下には当て紙を敷きます。
 ペン入れが終わったら消しゴムかけです。これは一緒に住んでいる相棒がいつも手伝ってくれます。感謝感謝。
 ベタ塗りと仕上げは、以前は筆ペンと各社のスクリーントーンを使っていましたが、2000年7月以降は入稿をデジタルに切り替えたため、現在ではアナログの作業はここまでです。