投稿者「Gengoroh Tagame」のアーカイブ

“The Camp on Blood Island” (1958) Val Guest

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“The Camp on Blood Island” (1958) Val Guest
(イギリス盤DVDで鑑賞→amazon.co.uk

 1957年制作のイギリス(ハマー)映画。二次大戦時、東南アジアの島にある日本軍の戦争捕虜収容所で、サディスティックな所長に苦しめられる連合軍捕虜たちを描いた、戦争エクスプロイテーション(?)アクション映画。
 監督は同じくハマー・プロで『原子人間』『宇宙からの侵略生物』などを撮ったヴァル・ゲスト。

 東南アジアのとある島にある、日本軍の戦争捕虜収容所は、サディスティックな所長ヤマミツ大佐とその部下サカムラ大尉に支配されており、連合軍の捕虜たちは暴虐と飢えと疫病に苦しんでおり、今日もまた、脱走を図った一人の捕虜が銃殺された。
 捕虜たちのリーダーであるランバート大佐に、民間人(多分)で近くの女性捕虜収容所に妻と子供もいるビーティは、サボタージュなどはせずに日本軍と穏やかに交渉すべきだと言うが、ランバート大佐はそれを是としない。
 実はランバート大佐は、他の捕虜には内緒で、オランダの民間人捕虜ヴァン・エルストと一緒に、密かに無線機を組み立てていた。そしてある日、日本軍の壊れた無線機の修理部品が到着し、ヴァン・エルストはそれを盗みに行く。
 そしてある情報を得たランバート大佐は、ビーティら他の捕虜たちに、自分の計画を打ち明ける。それは、過去にも捕虜虐待で問題を起こしているヤマミツ大佐が、もし日本が負けたときには、証拠隠滅のために捕虜全員を虐殺して、この収容所を無に帰そうとしているということだった。
 そして何と、戦争は既に2日前に日本の降伏で終わっており、ヤマミツ大佐らは無線が故障しているために、その事実を知らずにいたのだった。ランバート大佐とヴァン・エルストは、虐殺を避けるためにそれを日本軍に知らせまいと暗躍していたのだった。
 しかしそこに米軍の飛行機が墜落し、パラシュートで脱出した米兵ベラミー中尉が捕虜になってしまう。終戦を知っている彼の口から、果たしてその事実はヤマミツ大佐に知られてしまうのか、そして捕虜たちの運命は……? といった内容。

 50年代のB級映画ということで、ヤマミツ大佐(ロナルド・ラッド)もサカムラ大尉(マルネ・メイトランド?)も、およそ日本人には見えないとか、この二人を筆頭に他の日本兵の喋る片言の日本語もシッチャカメッチャカだとか、まぁおかしな所はあれこれあります。また、ベラミー中尉の乗る飛行機の飛来〜撃墜〜脱出を効果音だけで描くとか、いかにも安い部分もあれこれ。
 ただ、ストーリー自体は、そこそこ上手くひねりを入れてあったり、展開にもあれこれ工夫があるので、当初想像していたよりはけっこう面白く見られました。
 軍人やら医者やら神父やら、キャラクターも色々と取り混ぜて良く立ててあるし、前半は収容所内のドラマ、中盤にチェンジ・オブ・ペースを入れ、後半は秘密作戦&少人数での脱出行などをあしらい、クライマックスは銃撃戦という構成も、娯楽映画的に手堅くて佳良。
 惜しむらくは悪役二人の最後が、エモーショナルな要素を加味してはいるものの、イマイチあっけなくて盛り上がらないのと、ラストも、まぁ流れとしては判るんですが、これまたイマイチあっけないところ。原因は、肝心のヒーローであるランバート大佐のキャラが、さほど立っていないあたりにありそう。

 残酷な日本人描写に関しては、まぁそこそこ。嫌な感じに描かれてはいますが、でもそれほど酷くもなく「う〜ん、戦時中はこれくらいのことはしてたかもねぇ」という感じ。収容所が舞台のせいか、それほど珍妙な日本文化描写も見られなかったし。
 当時のロビーカード等ヴィジュアル資料を見ると、日本刀による斬首のシーンがフィーチャーされていますが、劇中での描写自体は比較的あっさり。残酷さやエグさよりも、斬首人を演じるミルトン・リードというプロレスラーの、上半身裸の見事な肉体の方が印象に残るくらい。
 そっち系の興味で言うと、捕らわれたベラミー中尉(フィル・ブラウン)がシャツを脱がされて、ヤマミツ大佐に鞭打たれるシーンがありますが、これも描写自体はあっさりながら、事後の背中のミミズ腫れの様子がけっこういい感じ(笑)でした。

 DVDはイギリス盤。フィルムの状態は良く、オリジナルのシネスコ(正確には『メガスコープ』だそうですが)をスクイーズ収録、英語字幕もあり。付随のブックレット(24ページ)には写真や解説も盛り沢山の、とても良心的な仕様。
 そんなこんなで、キワモノを期待しちゃうと、意外にマトモなので裏切られるとは思いますが、本国でも70年代に何度かTV放送があって以降はソフト化されていなかったカルトものらしいですし、『空飛ぶモンティ・パイソン』がこの映画に影響を受けている云々もあるそうなので、興味のある方はどうぞ。
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 The Camp on Blood Islandで画像検索すると、こんな感じで、やはりやたらにプロレスラー斬首人のヴィジュアルが目立ちます。なかなかいい身体でしょ?

“In A Glass Cage (Tras El Cristal)” (1987) アグスティ・ビジャロンガ

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“In A Glass Cage (Tras El Cristal)” (1987) Agustí Villaronga
(米盤Blu-rayで鑑賞→amazon.com

 1987年のスペイン映画。かつて少年相手に拷問殺人を繰り返し、今は寝たきりとなった元ナチスの男と、彼の妻と娘、そして家に入り込んできた美青年を巡る、トラウマ必至のアート系サイコスリラー映画。
 監督は『月の子ども』『ブラック・ブレッド』のアグスティ・ビジャロンガ。

 中年男クラウスは、元ナチスで収容所の少年相手に生体実験を行い、戦後も少年を拷問殺害してきた小児性愛者のサディストだが、落下事故によって身体が動かなくなり、ガラスの棺桶のような延命装置に入っていなければ呼吸もできない状態になっている。
 クラウスの妻でスペイン人のグリセルダは夫の看護に疲れ果てていて、娘レナにも当たり散らす状態。クラウスの屋敷は人里離れた田舎にあり、3人の他は通いの家政婦が訪れるだけ。
 そんな中、看護士を名乗るアンジェロというハンサムな青年が、クラウスの世話をすると言って唐突に屋敷にやってくる。しかし、アンジェロのことを怪しんだグリセルダが彼を試すと、実は彼は簡単な注射すら満足に出来ないということが判る。
 グリセルダはアンジェロを家から追いだそうとするが、なぜかクラウスは彼に留まって欲しいと望む。しかし、その理由を明かそうとしない夫に、グリセルダは不信感とストレスを溜め込んでいく。また、娘のレナはハンサムなアンジェロに懐き、それがますますグリセルダを苛立たせる。
 やがてグリセルダは、家のブレーカーを落として夫の生命維持装置を止めようとまで追い詰められるのだが、その一方でアンジェロは、クラウスの前で全裸になって自慰をしながら、「貴方のことは全て知っている、一緒にまた《その世界》に戻ろう、そのためには妻のグリセルダが邪魔だ」と囁き始め……といった内容。

 何というかその……激ヤバな内容でした。
 しょっぱなっから、廃屋に両手吊りにされた身体の傷も生々しい全裸の少年を、カメラで執拗に撮影する中年男というシーンで始まり、しかも少年にまだ息があることを知って口づけし、そして角材で殴り殺すというシーンから始まりまして……。
 その後は、『愛の嵐』と『ゴールデン・ボーイ』にペドフィリアとサディズムとホモセクシュアルをまぶして、ニューロティック・スリラー風味も加えた内容を、デヴィッド・リンチ風に撮っている……と言えば、いかに見ていて神経を逆撫でされる感じなのか、想像がつくかと思います。
 基本的に映像自体は、寒々しいブルーを基調にしつつも美しい色調と、抑制のきいた端正な構図や演出で、扇情的に煽る系の要素は皆無と言ってもいいんですが、それにしても何しろ、ナチスの生体実験&その再現、しかも相手は裸の少年、おまけに同性愛要素もあちこち……とくるので、もうタブー感が尋常じゃない。
 少年の殺害シーンだけでも充分以上にキツいのに、加えて、美青年が寝たきりの中年男性の生命維持装置を外し、苦しんでいるところに覆い被さり、泣きながらフェラチオするとか、はっきりとは見せないものの顔射して、しかも後からそれを妻に見せ……とか、そんな展開やシーンがあちこちに。
 クライマックスもスゴくて、ネタバレになるので詳述は避けますが、過去と現在、共にものすごいタブー感のある《セックス》をカットバックで見せられるもんだから、映像は美麗だし演出は端正なのに、見ていて「うわあぁぁ……」感が半端ない。

 登場人物も皆キャラがキツくて、家族を心配する寝たきりの父親(ギュンター・メイスナー)とはいえ、その正体は少年相手の連続殺人鬼だし、危機に晒される妻(マリサ・パラディス)とはいえ、事故に見せかけて夫を殺そうとするし、サイコな美青年なんだけど、でもそこには理由や純愛要素もあり……。
 でもってラストカットなんて「ええええ、これでいいの???」ってな展開ながら、ん〜でもそうなるのかな……って感じでもあり、しかもそれを詩的で美麗なイメージで見せられるもんだから……。
 いやはや、鑑賞後の印象は「うわぁ、なんかスゴいもの見ちゃった……」の一言。
 特典に入ってたアグスティ・ビジャロンガ監督のインタビューを見たところ「ジル・ド・レイの話をヒントに、ナチスの話を背景に、現代に再構築した」っていうんですが、その発想自体が邪悪というか怖いもの知らずというか……。

 ただ前述したように、映像自体は美麗ですし、演出も良く、サスペンス要素があるのでストーリー面での娯楽要素もバッチリ。全てにおいてクオリティは実に高く、神経を逆撫でされつつも、ものすごく面白いです。単にヤバいだけのキワモノではない、映画としてきちんと見応えのある一本。
 何かの拍子で予告編を見て、「あ、なんか良さげ。え、マリサ・パラディス出てるの? 見る見る見る!」と嬉々として米盤Blu-ray買ったんですが、見応えもヤバさも期待以上でした。

 Blu-rayやDVDは、日本のアマゾンでも買える模様。
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長谷川サダオ「1978〜1983」展のお知らせ(東京)

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 8月23日〜9月13日まで、東京・九段のギャラリー、成山画廊にて、長谷川サダオ展が開催されます。
 拙著『日本のゲイ・エロティック・アート vol.2』でも書いたように、長谷川サダオは日本のゲイ・アート史上において、最も重要な作家の一人です。
 前世代の作家たちが、主に自分の欲情というメカニズムを忠実に追うことで、結果としてその作品をゲイ・アートたらしめていたのに対して、長谷川サダオは、個人という枠内だけに留まることなくゲイネスという総体も視野に入れ、またプレスリリースにもあるように、アートやファッションといった同時代の潮流にも共鳴しつつ、それらを自作に反映させていきました。
 また作品のフィニッシュワーク(仕上げなどの技術)の完璧さも、見逃すことのできないポイントの1つです。そんな原画の持つ美しさを直に目撃できる個展という貴重なチャンス、ぜひお見逃しなきようオススメいたします。 

【プレスリリースより】
8月の終わりに開催致します長谷川サダオ(1945年生まれ1999年没)は、ゲイアートという閉鎖的な分野で活躍してきた特異なアーティストでありましたが、“1980年代”という時代の再評価やゲイリブの推進によって、解き放されたアーティストのひとりです。現にここ10年でトム・オブ・フィンランド等欧米のゲイアートは大手オークションハウスでも高額で取引されるようになりました。
マイノリティーな性的趣向を秘めつつ描かれる絵画は日常を軽々と飛び越えて、密室特有の幻想を描いており、世界に誇れるビジョナリーアートと申せましょう。
今展では1970年代後半から1980年代前半までの作品に焦点をあて、当時流行したテクノポップスが持つプラスティックなニュアンスが前面に現された作品をご紹介致します。

長谷川サダオ「1978〜1983」展 
2014年8月28日(木曜日)〜9月13日(土曜日)
成山画廊:東京都千代田区九段南2ー2ー8 松岡九段ビル205号室
     TEL&FAX:03ー3264ー4871
E-MAIL:info@gallery-naruyama.com 
ホームページ:http://www.gallery-naruyama.com/
営業時間:月、火、木、金、土曜日  13時から19時まで  
     水、日曜日、祭日      休廊

ちょっと宣伝、『奴隷調教合宿』第10話掲載です

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 7月21日発売「バディ」9月号に、連載マンガ『奴隷調教合宿』第10話掲載です。
 いよいよ追い込みの転換点。この第10話のラストを起点にして、これから話を畳んでいく予定。
 もうちょっとで完結なので、どうか最後までよろしくお付き合いくださいませ!
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トークショー「にじいろ☆シアター」のご案内

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 明日7月7日(月)、新宿でトークショーに出ます。
 7月12日から始まる第23回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭のプレ・イベント、TILGFF × 2CHOPO 「にじいろ☆シアター」スペシャルトークショーで、映画ライターのよしひろまさみちさん、女装パフォーマーのブルボンヌさんと一緒に(MCはバブリーナさん)、ゲイ映画についてあれこれ喋らせていただく予定。
 特に予約とかは必要ないイベントなので、お気軽に遊びに来てください。

今年で3年目を迎えたLGBTポータルサイト「2CHOPO」と映画祭が、初コラボレーション!
セクシュアル・マイノリティにまつわる良作映画の数々を紹介する「にじいろ☆シアター」で連載中のよしひろまさみちさん、日本を代表するゲイ・エロティック・アーティストとして、海外でも高く評価されている田亀源五郎さん、女装パフォーマーとしてご活躍されながら、ライターとして映画批評も連載されているブルボンヌさんをお迎えし、たっぷり2時間(!)“にじいろ”に溢れた映画トークを繰り広げます!
もちろん、MCは「2CHOPO」編集長のバブリーナさん!七夕の夜は、二丁目のAiSOTOPEに集合!

日時:7月7日(月) 20:00~22:00 (19:00開場)
会場:AiSOTOPE LOUNGE (〒160-0022 東京都新宿区新宿2-12-16 セントフォービル1F)
料金:2,000円(※ドリンク代は別となります)
予約:不要

 よしひろくんとブルちゃんという組み合わせにつられて、私もオネエ言葉が爆裂してしまいそうな予感がしますが(←他人のせいにするヤツ)、お二人とも、映画についてもゲイカルチャーについても、一癖も二癖もある煩い……いやいや、一家言をお持ちの方々。きっと面白くて濃い話が聞けるんじゃないかと、出演者の私自ら楽しみにしております。
 それでは明日、会場でお会いしましょう。お待ちしております!

北米でTシャツ&タンクトップ3種発売、他、つれづれ

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 今週、ドイツ/フランス合同出資のTV局ARTE(アルテ。ドイツ、フランス、カナダ、イタリア、ベルギー、オランダ、スイスといったドイツ語圏とフランス語圏で放送)からのインタビュー取材を受けました。写真はその取材記者、アレックス氏。
 このARTEからの取材は、去年もパリでドキュメンタリー番組用にインタビューされましたが、今回のはそれとは別。最初にオファーされたときは、ちょうどイタリア出発前だったのでタイミングが合わず、お断りさせていただいたんですが、渡航中に再び、帰国後でも可能になったのでお願いしたいという連絡があり、そこまで言われるのならとお受けした次第。
 先方さんは拙仕事場での収録を希望されていたんですが、申し訳ないけれどそれはお断り。私の仕事部屋は寝室と共有だし、他人様が見たらドン引き間違いなしの散らかりようだし、撮影のために片付けるのは時間がもったいないし。
 というわけで、ならば景色がいいところでと上野公園を希望され、ま、別にいいかと屋外収録。スタート早々、雷雨に見舞われたりはしましたが、その後はまぁそこそこの天気で、3時間ほどかけて無事終了。ただ、アレックスが希望していたボートに乗っての撮影(アイドルビデオじゃないんだから)は断念。

 もう1つ、何処か私に縁のある場所での撮影も希望されておりまして、とはいうものの私は、飲みに出たりすることは全くないので、縁の場所と言われても……と暫し悩んだ後、そうだ、上野ならBIG GYM店内はどうかしらんと思い付く。
 日本のゲイショップでの撮影と聞いてアレックスは大喜び、BIG GYM上野店にもお願いしたところ、急な話にも関わらずご快諾いただたので、そちらでも撮影。
 BIG GYM上野店長およびスタッフの皆様、本当にありがとうございました。
 取材ご協力の御礼も兼ねて、BIG GYMさんでは拙新刊『エンドレス・ゲーム』にもサインを入れてきましたので、ご希望の方がいらっしゃいましたらお問い合わせください。

 更にもう1つ、私が絵を描くところも撮影したいと言われ、しかし私はテーブルと椅子がないと描けないので、あれこれ候補を考えた吸えに、最終的にはアレックスが知っているという秋葉原のカラオケボックスへ。四人用の個室をとり、そこで下絵からペン入れまでを撮影。
 気がついたら、上野公園で待ち合わせしてから、既に9時間半が経過していた。もう、ぐったり(笑)。
 ともあれ、ARTEの取材はそんな感じで、丸一日(打ち合わせや事後処理も含めると三日)かけて無事終了。

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 数日前には児雷也画伯から、アメリカで出た英語版新刊『Caveman Goo』をいただきました。
 ガチムチ石器人たちがヤりまくるコメディ。可笑しくてエロくて楽しい。因みに私は、主人公Gooよりもヤリ友のDonの方がタイプ。
 あと考えてみると、児雷也画伯のマンガをこの大判サイズ(約B5、週刊誌大)で読むのは初めてかも。流石に絵の迫力が桁違い。そして当然のことながら、北米版なので完全無修正。画伯のファンなら、何としてでも入手する価値大ですぞ!
 この『Caveman Goo』は、アメリカのMASSIVEで発売中。また、今秋に北米で発売予定の、日本のゲイマンガとその作家を紹介する本(英語)、『Massive: Gay Erotic Manga and the Men Who Make It』にも収録予定。
 後者の本の出版に関しては、私もだいぶ協力しているので、ぜひ成功して貰いたい。

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 このMASSIVEからは、LGBTプライド月間に合わせて、私のイラスト入りTシャツ&タンクトップ3種も、新たに発売になりました。
 詳しくはこちら

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今週中頃には、拙英語版単行本『Endless Game』『Gunji』の版元Bruno Gmünderから、2014年秋冬の出版予定カタログのプレスリリースが出ました。
 前にここで「そのうち時が来たらまたお知らせできるかも」とか、ここでもちらっと触れたように、Bruno Gmünder Gay Mangaというレーベルでの、日本のゲイマンガの英訳出版シリーズが、ようやく本格的にスタートする予定です。
 というわけで今年の秋から冬にかけて、一十/MENたいこさんの『Priaps』、松武さんの『More And More Of You and other stories』、私の『Fisherman’s Lodge』(英訳版『冬の番屋』+『告白』『END LINE』)が、順次発売予定です。
 これまた私、いろいろと協力しているので、ぜひ成功して欲しいプロジェクト!

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 週末には、ポット出版のスタッフたちと一緒に、神宮前二丁目にできたLGBTフレンドリーな創作エスニックレストラン、irodoriへ。雰囲気良し、お料理美味し、上階には洒落たギャラリー・スペースなどもあるので、よろしかったら皆様ぜひお立ち寄りを。
 写真は左から、私の友人で日英翻訳などもお願いしているジョナサン、私、ポットの沢辺さん、irodoriの杉山文野さん、ポットの那須さん、佐藤さん、大田さん。

イタリア紀行(4)

6月6日
 昼頃の電車でフィレンツェからボローニャへ。アドリアーノが仕事で留守だというので、ニーノが部屋の鍵を持ってお出迎え。

 今日の予定は、17時から明日のNipPopワークショップについて市口さんとイゴール書店で打ち合わせ、引き続きイゴール書店で18時半から出版発表会&サイン会、夜にNipPop関係者たちと夕食、その後23時からボローニャで月一開催のベアパーティFeed The Bearsでのサイン会……という、けっこう盛り沢山のスケジュール。
 ところが出迎えに来たニーノから、更に15時にミラノから来るゲイ雑誌Prideのインタビュー、インタビュー終了から市口さんとの打ち合わせの間に、アドリアーノが撮る私のドキュメンタリーの撮影というスケジュールが加わったと聞かされる。ひぃ(笑)。

 ともあれ、いったんニーノと別れて、数時間後に再びボローニャ中央駅で待ち合わせ。少し遅れてPrideの編集者も到着。連れだって駅前のカフェに行き、テラス席で取材を受けることに。
 編集氏、「うちの雑誌の見本を持って来ました。お土産です」と、Pride誌のバックナンバーをずらりとテーブルに並べる。それが、これ。
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 これらを剥きだしで渡されたので、カバンの中に大きめのエコバッグ(スーパーとかで買い物をしたり、不意に大きめのお土産を買ったとき用などに、常に持ち歩いている)を入れておいて良かったとホッとする(笑)。
 インタビューは小一時間で終了。編集氏、長年の拙作のファンで、だいぶ前に日本への渡航経験もありということで、年期の入った『柔術教師』の単行本にサインも頼まれる。

 そこにアドリアーノ到着。ニーノおよび編集氏と別れて、映像収録スタート。
 インタビューは後日収録するということで、今日はその合間に挟むイメージショット的なもの(……だと思う)を撮影したい等のコンセプトを聞かされる。
 まずは初日に行った市庁舎へ。回廊を歩いたり、あちこち見物している風のショットをゲリラ撮影。地下のローマ遺跡にも、このとき初めて入った。
 それから街中、アルキジンナージオ宮など、場所を移動しながらあちらこちらで撮影。アドリアーノに「これでいい?」と訊くと、「OK、グッド・アクター」と言われたので、「じゃ、ソフィア・ローレンみたいに撮ってね!」と言ったら、「いや、マルチェロ・マストロヤンニみたいに撮る」との答え(笑)。
 この撮影の一貫で、パゾリーニの家の前にも行く。感激。
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 しかし映像がイマイチだったとのこで、後日再撮する羽目に(笑)。

 そうこうしている間に、市口さんとの待ち合わせ時間が迫ってきたので、急いでイゴール書店へ向かう。それでもだいぶ遅れてしまい、お待たせしてしまった。申し訳ない。

 市口さんと近くのカフェに移動して、明日のワークショップの打ち合わせ。先日、オノ・アルテ・ギャラリーでの打ち合わせや、お渡しした資料を元に、きっちりレジュメを作ってきてくださった。感謝。
 打ち合わせついでに、あれこれ雑談。私からすると、主にヨーロッパで作品発表をしている日本人マンガ家のお仕事というのは、何から何まで初めて聞くことばかりなので、とても面白い。
 そうこうしていたらニーノが迎えに来たので、再びイゴール書店に戻ってイベント開始。

 出版発表会はトークショー形式。私とニーノ、そして、通訳担当のジュゼッペが遅れるとのことだったので、代打で市口さんという面子でスタート。
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 この出版発表会に関しては、ローマから取材に来てくれた、日本のマンガやアニメの情報サイトAnime Clickが、動画クリップなどを含めて記事をアップしてくれたので、興味のある方はどうぞ。こちら
 トークの中身は、例によって私にとってのイタリア文化の影響であるとか、日本におけるゲイ文化とBL文化の関係などについてが多かった。個人的には、もうちょっと私自身の作品についての話などがしたかった感じ。
 というのも、一般論的なことを訊かれても、答えられるのはあくまでも私の私見でしかないからです。しかし今回のイタリアでは、その手の質問の答えを求められるケースが多く、その結果、そこから《私見》という要素が抜け落ちてしまい、あたかも一般論であるかのように拡散してしまう可能性と、そのリスクについて、ちょっと慎重になりたい気分にさせられた感あり。

 トーク・イベントが終わると、皆は外に用意された飲み物や軽食などで懇談。しかし私は本にサインをしなければならないので、そっちにはほとんど混じれず(笑)。
 例によって、コレクション的な大量の各国語版を持参してくれたファンもいて、いつもながら感激。今回の彼は、冊数が多くて迷惑になると気遣ってくれたのか、他の皆のサインが終わるまで待っていてくれた。優しい。
 来場者へのサインを済ませた後は、今度はイゴール書店に、あらかじめ注文があった通販分にサイン。もちろん注文者のお名入れもする。それが終わると、今度は書店の在庫分にサイン。私個人の単行本のみならず、作品が収録されているゲイ・アート・ブックにもサイン。
 全部合わせると結構な量で、ようやく全てのサインが終わって外に出たときには、もう飲み物はなくなっていた(笑)。
 それから、また記念撮影に応じたり。私の隣にいるのが、Anime Clickのダリオ。
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 書店イベントが一段落ついたところで、ニーノ、市口さん、ジュゼッペ他、NipPop関係者たちと一緒にレストランへ移動。

 NipPopのディナー。
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 左から、私、アメリカの大学教授だというイアン、市口さん、アニメ『聖闘士星矢』イタリア語版の声優さん、ジュゼッペ、ニーノ。
 NipPopは日本文化のイベントだけあって(何でも東日本大震災の応援イベントとしてスタートしたものだそう)、日本語話者も多く会話が楽。海外渡航中にこれだけ日本語を良く喋ったのは、私の経験ではちょっと珍しい例。
 料理の中で印象深かったのは、素揚げして膨らんで中が空洞になったパスタ生地(元はラザニア生地のようなもので、それがシュークリームの皮みたいな塩梅になっている)に、ハムやらサラミやらチーズやらを詰めて食べるというもの。シンプルだけど美味しくて、ついつい手が伸びる。

 ディナーの後は、ニーノと一緒にベア・パーティFeed The Bearsの会場へ移動。現地でファビオも合流。
 会場は、かつては塩の倉庫だった古い建物を、そのまま中はクラブ、敷地内の外には、オープンエアーのバーや、野外コンサート会場などがあるというエリア。いわゆるトレンディ(古い)なスポットらしく、後日「あ〜、そこ一度行ってみたいの!」という現地住まいの方の声あり。
 私のサイン会は、オープンエアのスペースの方。一段高くなったところに、テーブルと椅子と本(そしてレインボー・フラッグ)がセッティングされ、同じテーブルにはイゴール書店の出店も。
 ちょうどコンサート会場の方では、何かのライブの真っ最中。お客も完全にミックスで男女半々、ストレートも多い感じで、最初は「え、ここでサイン会するの?」と、ちょっとビックリしたんですが、時間が遅くなるにつれてゲイ比率(ベア・パーティなので主にヒゲ男)がどんどん上昇、深夜を回った頃には、ほぼゲイ男性ばっかという状態に。
 そんな中で、サイン会スタート。
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 とはいえ、サインを求めて列が出来るというわけではなく、たまに求められるとサインに応じるといった具合の、まったり営業。そんな感じで、もっぱら周囲とお喋りしていると、パリ在住の友人と共通の知り合いがいたりして、世界の狭さ(特にゲイ世界の)を感じたり。
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 あと、前にここでも書いたように、イタリアのアーティスト、アンドレアと「一緒の本に載ったね〜」と、一緒に記念撮影。
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 ニーノたちと一緒の写真では、アンドレアに「自作で一番のお気に入りのページを開いて!」とリクエスト。

 少し遅れて、ディナーで一緒だったイアンが、ジュゼッペに連れられて到着。イアンはノンケの妻帯者だけれど、クラブ大好き(何でも自分でDJもするらしい)なので、ベア・パーティーに興味を覚えたとのことで、「中年で腹が出ている自分でも、ここならアウェーじゃない!」と、かなりはじけていた模様(笑)。イタリア人のジュゼッペも、「こんなに大量のゲイ・ベアーを見たのは初めて!」と驚いていたくらい、盛況なパーティでした。
 何でもイタリアでは、都市によってゲイ・シーンの状況はかなり異なっており、田舎の方にいくほど保守的でLGBTに対して厳しい状況になるのはどこも同じなれど、このボローニャは古くから大学都市として栄えたという歴史もあり、排外的な気風がなく、イタリアの中でも特にリベラルな都市なんだそうな。到着初日に、ニーノが冗談めかして「イタリアのほとんどのゲイはボローニャにいるよ!」と言っていたけれど、それもあながち冗談じゃないよ的なことは、複数の人から聞きました。

 建物の中では、クラブ営業が行われていたけれど、本のテーブルを離れてはいられないので、残念ながらそっちには殆ど顔を出せず。後になって、VJで私の絵が投影されていたと知り、ちょっと見たかったと惜しい気持ちに。
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 そうこうしているうちに深夜もだいぶ過ぎ、イベントのハイライトであるケーキカットが行われるというので、クラブのステージ上に呼ばれる。
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 ここでちょっと補足しておくと、何でもこのFeed The Bearsというイベントは、いかにもイタリアらしく《食》が重要なテーマであり、食文化を通じてゲイ文化を広め、ゲイ・コミュニティーも繋げていく等の主旨だそうで。そんなわけで毎月のイベントでは、それぞれ季節やテーマに合った料理が供され、今回は周年パーティということでケーキだったそうな。
 そんな中で、私もケーキをいただく。スポンジの間にアイスが挟まっていて、クラブの熱気の中では特に美味しいケーキでした。

 そして、アドリアーノと一緒に彼の車で帰宅。
 ベッドに入ったのは午前3時過ぎ。明日のワークショップのために、朝8時には起床しなければならないので、寝不足がちと心配(笑)。

6月7日
 朝、アドリアーノと一緒に朝食を取り、彼の車でNipPopのワークショップ会場へ。途中でニーノも合流。
 車で移動したので正確な場所が良く判らないんだけれど、会場は図書館っぽいところ。敷地内には既に、NipPop関連の露天だかブースだかが並んでいる。

 会議室のようなところで、ワークショップがスタート。パネラーは、私、市口さん、そして通訳のジュゼッペ。
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 あらかじめ市口さんと打ち合わせをしたところ、イタリアのコミックスは基本的にストーリーと絵が分業制で、日本のマンガのように、一人の作家が話も作れば絵も描くというのが、習慣的にないそうです。更に、いわゆるグラフィック・ノヴェルの波もまだ来ていないそうなので、そういう意味で目新しいであろう、《アイデアを出す/プロットを立てる》ということについて主に解説していくことに。
 私と市口さんが交互に、用意したアイデア・メモや実際のネームの画像などを、プロジェクターでスクリーンに投影しながら、それぞれのやり方や考え方などを説明。市口さんはイタリア語がペラペラなので問題ないけれど、私は完全にジュゼッペにおんぶに抱っこ(笑)。
 参加者からの質問は随時受け付けて、最後は会場参加型ということで、三題噺を皆で作ってみることに。参加者からランダムにお題を求めたところ、《マンガ/指輪/パニーニ》になりました。
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 それを元に、まず私と市口さんが即興で作ったプロットを披露、続いて参加者にも、それぞれプロットを発表してもらうといった内容。
 そんなこんなで、ワークショップは無事終了。

  その後、ニーノが働いているボローニャで一番大きなコミックショップを案内して貰う。
 とても広いお店で、陳列も細かく分類されていて、日本で言うところの昔の大手輸入レコード屋(移転前の渋谷のタワレコとか)みたいな感じ。倉庫も含めると、びっくりするくらいの床面積で、これは探すのも買うのも楽しそう。
 また、私とニーノの『冬の番屋』イタリア語版の記事が、ボローニャの新聞に掲載されたとのことで、その掲載紙を貰う。嬉しい。
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 それからカフェでお茶などした後、昨夜の寝不足もあったので、この日は早々に帰宿。夕飯も、アドリアーノと二人で家で。

6月8日
 今日はインタビューのビデオ収録。アドリアーノの友人宅で行うとのことで、彼は朝から手土産のティラミス作り。
 出来上がったティラミスと撮影機材を持って、いざ友人宅へ。
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 左から、昨夜のベア・パーティでも会った友人氏、私、アドリアーノ。

 アドリアーノが機材を準備している間、友人氏に音楽の好みを訊かれる。
「いろいろ聴くけど、特に良く聴くのは現代音楽と民族音楽」と答えると、一枚のレコード(CDじゃなくてアナログLP)をかけてくれた。あれ、どっかで聞き覚えが……と思ったら、ファブリツィオ・デ・アンドレの『雲』だった。あ〜、持ってる持ってる、これ。名盤だよね〜。

 少し遅れて、通訳をしてくれるジュゼッペが到着。
 面子が揃ったところで、インタビュー収録スタート。休憩をはさみながらも、けっこう長い撮影だったような。
 インタビューが終わった後は、皆でティラミスをいただく。美味しかった。

 友人宅を出た後は、例のパゾリーニの家での再撮を含む、路上撮影アゲイン。
 その合間に、私が街中にある男性裸像彫刻を見つけては、ちょくちょく写真を撮りに走るもんだから、アドリアーノに「ゲンゴローにはレーダーでもついているんじゃないか」と笑われる。
 でもさ、こーゆーのがあちこちにあるって、日本では考えられないし、何しろステキじゃない(笑)。
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 この日は会場に顔を出せなかったけれど、NipPopも無事に全スケジュールを終えたらしく、夕飯は再びその関係者たちとディナー。
 日本語話者が多いテーブルだったせいもあり、すごくいっぱい喋って、すごく楽しかった。
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 左から、私、市口さん、ジュゼッペ、NipPopの立役者であるパオラ。

 夜遅くに寄宿すると、ニーノから頼まれたサイン用の伊語単行本の山が。「急がなくていいから」とは言うものの、明日は一日ヴェネツィア観光に行く予定なので、さっさと片付けることにする。

6月9日
 丸一日、完全なオフなので、アドリアーノがヴェネツィアへ連れて行ってくれるという。現地で同地在住のジュゼッペと合流予定。

 午前中の列車で、昼前にヴェネツィアに到着。
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 駅を降り、サン・ジェレミア教会などを覗きながら、大量の観光客と一緒にリアルト橋方向へ。
 こちら、サン・ジェレミア教会に安置されている、サンタ・ルチアの亡骸。
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 セルフィーでアドリアーノと一緒に記念撮影なんかしながら、リアルト橋近くまできたところで、アドリアーノのスマホにジュゼッペからメッセージ。橋のところで落ち合うことに。
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 ジュゼッペの案内で、ヴェネツィア観光開始。
 コンタリーニ・デル・ボーヴォロ階段。
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 サン・マルコ広場。
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 サン・ザッカリア教会。
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 お昼ご飯はジュゼッペお薦めの、小さなサンドイッチ風盛り合わせの出てくるお店で。
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 あちこち見物しながら、ジュゼッペがしてくれる解説が、とても面白くて楽しい。
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 そして私は、また男性裸像を撮りに走ったり(笑)。
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 ジュゼッペのお家にもお邪魔しつつ、炎天下の中をひたすら歩いていたら、ちょいと私はグロッキー。それを二人が気遣って、帰りの列車を少し遅らせて途中休憩などを入れてくれたところ、いざ駅についたら列車自体も40分の遅延。

 それでも日暮れにはボローニャに戻り、再びサウロのレストランに行って夕食。
 そこにニーノが、またもやサイン用の本の山を抱えて登場(笑)。
 そんなこんなで、けっこう遅くなってから帰宿。

 明日の飛行機で帰るので、荷造りしつつも、実はもう一仕事あり。アドリアーノのアイデアで、私がイタリア語で喋っているのを、音声だけ収録したいとのこと。
 インタビューでの私の発言を元に、彼が用意したイタリア語の原稿を、発音を教えて貰いながら、私が片言で喋るのを、ダイニングにセットされたマイクに向かって数回録音。
 当然完璧にはできなかったけど、後はアドリアーノが、上手くいった部分をツギハギしてくれるとのこと(笑)。

6月10日
 昼過ぎにミラノ発の飛行機に乗るので、そんな早過ぎもしない時間にボローニャを出発。
 駅までアドリアーノが車で送ってくれて、そこにニーノとファビオも合流して、三人でホームで見送ってくれました。
 市口さんやパオラに、お別れの挨拶をするタイミングを逸してしまったので、車内でメールを打って送信。

 ミラノで電車を乗り換え、マルペンサ空港へ。
 そして再び、香港経由で成田へ向かったのだが、やっぱり行きと同様に、帰りもボローニャ駅から成田空港まで、ほぼ24時間かかって、翌11日の昼過ぎに到着。

 イタリア紀行、これにて終了です。

イタリア紀行(3)

6月2日
 フィレンツェ観光スタート。
 まず予定通り、最初にサンタ・マリア・ノヴェッラ教会のツーリスト・インフォメーションへ行き、フィレンツェ・カードを購入。美術館や名所旧跡が予約不要で72時間フリーパス(ただし一ヶ所につき一回のみ)、バスやトラムが無料、市内数カ所にあるフリーWi-Fiスポットの利用も可能になるカード。72ユーロ。
 さっそく買ったその場でアクティベートしてもらい、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会のミュージアムへ。
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 続いて堂内も観光。
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 教会前の広場に出て、Wi-Fiが繋がるかどうか実験。
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 前日にホテルで、スマホにフィレンツェ・カードのアプリをインストールして、各名所の営業時間や休館日などを調べて、今日回る場所の目星を付けていたので、まずはサン・マルコ美術館にフラ・アンジェリコを見に行くことにする。
 移動途中にメディチ家礼拝堂があったが、今日は休館日なので場所だけ確認してスルー。

 サン・マルコ美術館でフラ・アンジェリコを堪能。美しい。
 残念ながら室内は撮影禁止なので、売店で全フレスコ画が収録されているっぽい画集を購入。
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 別室展示のテンペラ画も堪能。こちらは以前、凝った編集の大判輸入画集を購入しているので、ようやく現物が見られたと感激。

 次はバルジェッロ国立博物館へ。ミケランジェロやドナテッロの彫刻を堪能しつつも、こちらも室内撮影禁止。
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 なので、オープンスペースにあった、オケアノスのセクシー彫刻(ジャンボローニャ作)をパチリ。
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 バルジェッロでは、バッチョ・バンディネッリの企画展も開催。彫刻と油彩、どちらも男体表現に奇妙な艶めかしさがあって、不思議と惹かれる。
 売店で売っていたバンディネッリの画集が欲しかったけれど、あまりの大きさと厚さと重さに断念。昔だったら無理してでも買っていたところだけれど、最近は「ま、いいか、帰国してからネットで探そう」とか、つい思ってしまう。

 シニョリーア広場へ移動。セクシーなネプチューンの噴水(バルトロメオ・アンマナーティ作)にご挨拶。
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 そしてヴェッキオ宮殿へ。
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 まずは入り口脇にある、これまたセクシーなヘラクレスとカークスの彫刻(さっき企画展を見たバンディネッリ作)をパチリ。
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 ヴェッキオ宮殿は前に来たときに見ているので、時間がなければスルーしようかとも思っていたけれど、やはり大広間にある、若かりし頃の自分が見て大ショックを受けた《あの彫刻》を再見したかったので入ることにした。
 それがこれ、ヴィンチェンツォ・デ・ロッシ作、ヘラクレスとディオメデス。
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 やっぱ良いわ〜。帰国してから作者の伊ウィキペディアを見たら、この彫刻について、”permeata di una forte connotazione erotica omosessuale (imbued with a strong erotic homosexual)”と書いてあった。
 この大広間には、他にもステキ彫刻いっぱい。
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 ミケランジェロの「勝利」が色あせて見えるくらい……ってのは、単に私の目がヨコシマなだけだろうが(笑)。
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 その後は、宮殿内部をじっくり堪能。ヘラクレスの間とかがあると、つい歩みも遅く。
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 しかし改めて、壁やら天井やらにヒゲのオッサンのヌードが、至る所に溢れているというのは、つくづく不思議な感じがします。
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 また、ブロンツィーノが壁画を手掛けた部屋にも感心。有名な「愛のアレゴリー」がどうにも好きになれず、自分的にはずっとイマイチな人だったんですが、昨年ニューヨークで、フリック・コレクション収蔵作を見て感心して以来、最近お株が急上昇。
 結果、売店で売っていた画集まで買っちゃったりして(笑)。
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 売店では、こんな絵本も衝動買い。タイトルを訳すと『トスカーナのいたずらっ子』か『茶目っ気のトスカーナ』?
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 シエナにあるフレスコ画に描かれている、この豚(チンタ君)が、同フレスコ画に描かれている当時の生活風俗様々を、豚の視点で面白く解説してくれるというもの。
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 また、ヴェッキオ宮殿ではちょうど、ジャクソン・ポロックの企画展が開催中。場所と作品のミスマッチぶりが興味深い。ポロックがミケランジェロの絵などを模写したデッサンなども展示。この人の描いた具象画って初めて見たかも。

 ヴェッキオ宮殿を出たあと、まだ時間がちょっとありそうだったので、サンタ・クローチェ聖堂へ行くことに。
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 堂内のフレスコ画が美しいけれど、やはり暗い&遠くて良く見えないのが残念。オペラグラスを持ってくるべきだった……と、再び後悔。
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 でも、ミケランジェロのお墓参りはできました。
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 付属ミュージアムでは、再びブロンツィーノに感心。
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 中庭では、Benedetto Robazzaというコンテンポラリー作家の、ダンテ『神曲』をモチーフにした大きなレリーフ連作も展示されていて、これもなかなかの見応え。
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 というところでタイムアップ。
 一日目の観光終了。

6月3日
 まずは、昨日前を通ったメディチ家礼拝堂へ。入り口には既に列ができていたけれど、フィレンツェ・カードを見せると並ぶことなく入場できた。
 内部は一部補修中で足場が組まれている。大理石モザイクの剥落エトセトラを解説しているビデオをちょい見した後、お目当てのミケランジェロの彫刻へ。
 ためすすがめつ眺めつつ、あ〜この角度からの写真を撮りたいけど撮影禁止……と、ちと恨めしい思いに。

 そしてウフィツィ美術館へ移動。
 入り口には長蛇の列。しかしフィレンツェ・カードのおかげで、またもや二分も待たずにするりと入場。
 実は30年前にフィレンツェに来たとき、それは美大主催のヨーロッパの美術館巡りのツアーだったんですが、なんとフィレンツェ滞在がウフィツィ美術館の休館日と重なっており、わざわざ来たのに見られなかったという恨みが。というわけで、私にとっては30年越しのリベンジとなるわけです。
 そんなこんなで、丸一日かけてもいいくらいのペースで、ゆっくりじっくり美術鑑賞。昼食も美術館内のカフェでとりました。
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 でもここも撮影禁止なので、「おっ」と思った作品があっても記録に残せず。残念だな〜と思いつつ、オープンスペースにあった二体のマルシュアス像だけは、どうにも我慢できずにスマホでパシャリ。
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 4〜5時間かけて美術館を堪能した後、ミュージアム・ショップを覗いたら、売られているグッズ類の余りのセンスの酷さに眩暈がする。鉛筆やらハンカチやらTシャツやら、ありとあらゆるものにボッティチェリのビーナスが印刷されていて、いや、こんな世界に誇れるコンテンツを持ちながら、ミュージアム・グッズは安い路上の土産物と大差ないって、ちょっと……と、ウムムな気持ちに。

 ウフィッツィの後は、ヴェッキオ橋を渡ってラ・スペコラへ。Twitterで「フィレンツェだったら、自分はラ・スペコラが好きです」というメンションをいただき、初めて「あ、あれフィレンツェにあるのか、じゃ見に行かなきゃ!」となった次第。
 お目当ては、ここの人体解剖蝋人形なのだが、基本が自然科学博物館なので、蝋人形に辿りつくまでには、とにかく剥製の山、山、山。
 最初のうちは虫の標本だったけれど、やがて世界のありとあらゆる鳥獣の剥製が、陳列ケースにあふれかえった小部屋が、行けども行けども続く。オマケに人はほとんどいない。剥製が嫌いな私には、もう怖すぎ(笑)。
 その最後に、件の蝋人形の展示。学問と芸術と悪趣味の狭間にあるような、なんとも奇っ怪な美。
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 堪能しつつも、いささか毒気に当てられた感じで、ラ・スペコラ退場。

 開館時間中に、もう一ヶ所どっか間に合うかな……と調べたら、ストロッツィ宮殿で開催中の、ポントルモとロッソ・フィオレンティーノの企画展が、遅くまでやっていることが判ったので、それを見に行くことにする。
 二人の師匠でもあるアンドレア・デル・サルトの作品も含め、かたや大胆な作風で好評を博し、メディチ家お抱え絵師としてフィレンツェで名を馳せたポントルモと、かたやサヴォナローラに傾倒して作風も保守的、フィレンツェでは仕事がなく後にフランスで名声を得たロッソという、二人の作品と人生を比較対象させながら展示した内容。
 そういったキュレーション自体は面白く、解説が全て英文併記であったり、子供向けに質問形式で「……ということについて考えてみましょう」といったコーナーが各室にあったりと、展示手法自体は興味深かったんですが、残念ながら作品そのものが、私にはあまりピンと来ず。
 とはいえ何となく、マニエリスムの再評価が今でも進行中なのかな……と思ったり、それと自分の中でのブロンツィーノのお株上昇も重なって、印象深い企画展ではありました。

6月4日
 まずはアカデミア美術館へ。これまた入り口は長蛇の列なれど、フィレンツェ・カードですんなり入場。
 ミケランジェロのダヴィデ像は、展示スペースの効果もあって、流石の神々しさ。当たり前だけど、シニョリーア広場にあるレプリカとは違う。
 また、手前に配置されている「奴隷」の未完成作品群も印象深い。未完というけれど、ひょっとしてこれでOKと思って手を止めたのではないか、などと想像したくなる、モダンな美しさが。これとか、これとか。また、「おそらくミケランジェロ作」のパレストリーナのピエタの、力強い美しさにも感動。
 周囲の絵画、奥の彫刻、上階の中世絵画なども堪能して、美術館を後に。

 お次は考古学博物館へ。
 有名なキメラのブロンズ像は素晴らしかったけれど、他はさほど印象に残らず。また解説文が全て伊語のみなので、墳墓らしきもののレプリカとか、そこからの出土品とかが、どういう背景のものなのかが判らないので、そこいらへんも辛い。

 前二日間ちょっと頑張って回りすぎた疲労と、美術品を見すぎて頭が飽和状態になってきた感もあったので、フィレンツェ観光はこれで早めに切り上げて、後はゆっくりと過ごすことにする。
 明日はピサへ日帰り観光に行きたいので、体力も温存したいし(笑)。

6月5日
 サンタ・マリア・ノヴェッラ駅から電車に乗ってピサへ。
 ピサ駅に着いたら、こんな看板広告があった(笑)。
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 表示に従ってツーリスト・インフォメーションへ行き、ピサの地図をゲット。散策を兼ねて、歩いて奇跡の広場まで行くことにする。

 途中で立ち寄った、河畔に立つサンタ・マリア・デッラ・スピーナ教会。とっても小さいけど綺麗。なんか宝石箱みたい。
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 ぶらぶら歩いていくと、屋根の向こうに有名な斜塔が見えてきて、「おっ」と思う。
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 更に進むと視界が開けてドゥオモが見え、「おおっ!」と思う。この瞬間は、ちょっとした感動。
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 そして奇跡の広場に到着。
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 チケットオフィスに行くと、斜塔は別料金でちと高く、それ以外に個別の券と、ドゥオモと洗礼堂、カンポサント、シノピエ美術館、博物館(ただしここだけ閉鎖中)の共通券があったので、共通券だけを買うことにする。斜塔に登るのは大変そうだし(笑)。

 で、私のお目当ては、何と言ってもこの洗礼堂。
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 昔はピサって斜塔しか知らなかったんだけれど、父がピサで撮ってきた写真でこれを見て、「うわスゴい、行きたい!」と思っていたので。
 この洗礼堂の二階から見るドゥオモも、とっても綺麗。
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 ドゥオモと洗礼堂の内外を見た後、カンポサントへ。
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 しかし妙に既視感が……ひょっとしてパゾリーニの『王女メディア』って、一部ここでロケしてた???
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 帰国してから『王女メディア』を再見したら、やっぱそうでした。コリントス王宮の中庭が、ピサの奇跡の広場でロケ。
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 奇跡の広場は観光客で大賑わいだったけれど、カンポサントの中はうって変わって静謐な雰囲気。
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 彫刻に彩られた墓石や剥落したフレスコ画などを眺めながら、暫しの時間旅行気分。
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 シノピエ美術館は、フレスコ画の下絵だけを収めた美術館。ちょうどコンテンポラリー作家の天使をモチーフとした作品とのコラボレーション展示中でした。
 同じ作家の作品で、建物の外に置かれていたものが、こちら。
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 奇跡の広場を後にして、再び街歩きをしながら、騎士団の広場へ。
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 ヴァザーリが手掛けたという、カヴァリエーリ宮殿。
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 快晴で気温もぐんぐん上がり(確か30度超え)、湿気がないから日陰にいる分には過ごしやすいんだけれど、日向を歩くと消耗が激しい感じになってきたので、極力日陰を選びつつ(笑)ぶらぶら散策。
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 夕方の列車でフィレンツェに戻り、明日は再びボローニャへ移動。

イタリア紀行(2)

5月30日
 昼前に電車でボローニャからラヴェンナへ移動。これから約一週間のフリータイムとなるので、あれこれ悩んだあげくラヴェンナとフィレンツェをじっくり楽しむことに。
 普通列車に乗り、一時間ほどでラヴェンナに到着。駅を出て、さて予約したホテルはどこじゃらほいとGoogle Mapを立ち上げ、「スマホ便利ね〜」なんて思っていたら、駅前広場から既にホテルの看板が見えていた(笑)。

 ホテルにチェックインして、昨夜は帰りが遅くてあまり寝ていなかったので、しばし仮眠。
 と、そこにアドリアーノからSMS。個人旅行中に不要な荷物(貰った本とか自分のワークショップ用資料とか)を、彼の家に預かって貰っていたのだが、何とベッドの上にイタリアのガイドブックを忘れているとのこと。あじゃぱ(古い)。まぁ何とでもなるから心配しないでねと返信。
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 夕刻ちょっと前に起きて、街の散策に出掛ける。ホテルのフロントで簡単な地図を貰ったので、それを頼りに旧市街の中心部、ポポロ広場まで行ってみる。
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 こぢんまりと落ち着いた町並みで、人もあまり多すぎず、ぶらぶら散策するにはうってつけ。ちょっと歩いた後、気になる路地に入ってみたら、教会前の居心地の良さそうな広場を見つけたので、そこで一服。
 後で判ったことだが、そこはサン・フランチェスコ聖堂で、すぐ横にはダンテの墓もあり。そうこうしていたら教会の鐘が鳴りはじめ、旅情も抜群。

 それからまた、街をぶらぶら歩き始め、途中あちこち迷子になりながら、ツーリスト・インフォメーションに到着。しかし残念ながら、時間が遅くて既に閉まっていた。
 その近辺にはレストランの類が密集していたので、テキトーなところに入って夕飯をとった後、またぶらぶら歩いて宿に帰る。

5月31日
 今日は本格的にラヴェンナ観光をする予定なので、ホテルで朝食をとった後、まずツーリスト・インフォメーションへ向かう。そこで、より詳細な街の地図や、参考になりそうなパンフレット類をゲット。

 そして最初の目的地、サン・ヴィターレ聖堂へ。すると入り口で、ラヴェンナの見所5ヶ所セットになった入場券を、近くの本屋さんで買えると教えてくれた。

 券をゲットして、再びサン・ヴィターレ聖堂へ。ビザンチン建築は好きなので、入り口からしてワクワク。
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 中に入ると、圧倒的な美しさのモザイク画がお出迎え。
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 聖堂を通り抜けて裏から見たら、建物自体の美しさは、こっち側から見た方が更に良く判る。
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 続けて同じ敷地内にある、ガッラ・プラチーディア廟へ。またもや美麗モザイクがお出迎え。もう、うっとり。
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 同敷地内にある博物館は、改装中か閉じていて見られなかったけれど、ミュージアム・ショップは開いていたので、ちと覗いてみる。すると、ビザンチン・モザイク柄のいい感じのスカーフやトートバッグがあったので、お土産を兼ねて購入。
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 ぶらぶら歩きながら、次はネオニアーノ洗礼堂へ。再び美麗モザイク。
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 すぐ横にドゥオモがあるはずなので、そっちにも回ってみる。本当に気持ちのいい街で、お散歩するにはうってつけ。
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 再びネオニアーノ洗礼堂へ戻り、敷地を通り抜けて、その裏側にあるアルチヴェスコヴィーレ礼拝堂へ。ただしここも改装中。博物館だけ見学。
 博物館を出たら、そろそろお昼時で小腹が空いたので、近くのカフェに入ってサンドイッチなどを注文。

 腹ごしらえ&休憩が終わったところで、今度はサンタ・ポリナーレ・ヌオーヴォ聖堂へ。
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 中に入ると、またモザイク。荘厳ではあるけれど、後のキリスト教美術のような威圧的な感じはせず、どこか清々しさのようなものが感じられるあたりが、私がビザンチン美術に惹かれる由縁。
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 横の中庭に出てみると、ここがまた気持ちの良い空間だった。
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 お次は、またてくてく歩いて、アリアーニ洗礼堂へ。もう、モザイク三昧。
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 次は、ちょっと離れたところにある、テオドリコ廟へ行ってみることにする。今までは、ラヴェンナの旧市街の中をぐるぐる歩くという感じだったけれど、テオドリコ廟へ行くには駅の反対側に行かなければならない。
 人通りも少なく、昼過ぎのせいか眠ったような静かな町並みを、てくてくと歩いていく。
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 するとその路上に、なんか気になる石垣が。どうやら史跡らしいので、中に入ってみる。
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 中に入ると、気持ちの良い公園。立て看板の説明文を読み、ここがブランカレオーネ城塞という、15世紀の砦跡だと知る。
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 そしてまた歩いて、テオドリコ廟に到着。入場券を買おうとしたら、また他の場所とのセット券もあると聞かされたけれど、そのもう1つの方は、まただいぶ離れたところにあるらしいので、そっちはパスしてここだけの券を買う。
 ただまぁ、てくてく歩いてきたわりには、さほど面白い史跡ではなかった。歴史の知識があれば、また色々と感慨が違うのだろうけれど。
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 さて、テオドリコ廟を見終わったところで、時間がなかったらパスしようかとも思っていた、郊外にあるサンタ・ポリナーレ・イン・クラッセ聖堂に、まだ余裕がありそうなので、行ってみることにする。
 そのためには駅まで戻らなければならないのだが、歩き疲れたのと日差しのきつさに、ちょっとげんなりしてきたところだったので、Googleさんにバスで駅まで行くルートを訊いてみる。すると、バスでも徒歩でも変わらず15分程度だったので、だったら歩いていくことに。

 バスの券を買うために、駅前のバス営業所に行ってみると、券は駅構内で販売とのこと。言われて駅に行くと、確かに奥まったところにバスの窓口が。
 そこでサンタ・ポリナーレ・イン・クラッセ聖堂行きの往復バス券を買い、乗り場と乗るバスの番号も教えてもらう。

 ローカルバスに15分くらい揺られて、無事にサンタ・ポリナーレ・イン・クラッセ聖堂に到着。
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 中に入ると、またモザイクがお出迎え。しかしここのモザイクは、グリーンが目立つのと動物が多いせいか、何とも愛らしい感じ。
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 遠目に見ると、モザイクとフレスコが混交しているのかと思ったけれど、聖堂内設置の解説モニターを見ると、フレスコに見えていた部分もモザイク。それだけ精緻ということか。

 聖堂前の草地には、コンテンポラリー・アート作品らしき牛の群像が。これまた良きかな。
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 再びバスに乗って、ラヴェンナの街へ戻る。
 時刻は夕刻だけれど、日が暮れるのは夜の八時過ぎなので、まだぜんぜん明るい。
 暗くなるまでホテルで休んで、それから再び夕飯を食べに旧市街へ。

6月1日
 今日はフィレンツェへ移動する日。
 昨日、ボローニャ乗り換えでフィレンツェ行きの、ラヴェンナを正午に出発する列車の券を買っていたので、ホテルをチェックアウトした後、しばらく荷物を預かって貰い、午前中にまた昨日見逃した観光をすることにする。

 まず、ドムス・デイ・タッペーティ・ディ・ピエトラへ。
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 ここのモザイクは建物の内装ではなく、その地下にある。渡り廊下の上から回って見られるようになっており、聖堂のモザイクのような壮麗さはないものの、シンプルな愛らしさがなかなか。
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 続いて、初日に行ったサン・フランチェスコ聖堂の、今度は中を見てみようと向かったが、日曜日のせいかミサか何かをやっており、門外漢が入るのは憚られる。
 そこで、お隣にあるダンテの墓を見学。ちょうど団体ツアーさんとかちあって、大賑わい(笑)。
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 墓の隣の中庭的なスペースが、なかなか良い雰囲気。
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 そうこうしている間にミサも終わった様子なので、サン・フランチェスコ聖堂の中をさっと覗いて、ホテルに戻って荷物をピックアップして、駅へ。

 来たときと同じ普通列車に乗って、ラヴェンナからボローニャへ戻り、そこでイタリア新幹線でフィレンツェへ。乗り継ぎ時間を含めても、全部で二時間程度だったかな?

 約30年ぶりのフィレンツェに到着。
 まず最初に、美術館などがフリーパスになり、しかも予約いらずにもなるという、72時間有効のフィレンツェ・カードなるものを買おうと、サンタ・マリア・ノヴェッラ駅のツーリスト・インフォメーションへ行こうと思ったが、そこは閉鎖中。
 そこで、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会のツーリスト・インフォメーションに向かうが、一足遅く営業時間が終了。明日の朝になるまで開かないというので、今日のところはカードは諦め、予約しておいた宿に向かう。
 Booking.comとGoogle Mapのおかげで、宿の場所はあっさり見つかり(いやはやまったく便利な世の中になったものだ……)、チェックインして暫し休憩。

 その後、散歩がてらドゥオモ(サンタ・マリア・デル・フィオーレ聖堂)へ行くことにする。
 30年前の記憶だと、フィレンツェというのはローマとは違い、どこか長閑な雰囲気であったような気がしていたのだが、その頃とはうって変わって、人、人、人。カフェやジェラート屋が至る所に立ち並び、路上には観光客用のお土産や偽ブランド品を売る露天商が。
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 そうは言っても、ドゥオモは記憶に違わぬ美しさ。人が多くないベンチを選んで、そこに座って建物の美しさを堪能。残念ながら洗礼堂は、改装中か何かで丸ごと工事シートに覆われていたけれど。
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 そして、土地勘を掴むために近辺を歩き回った後、適当な店で夕食。
 本格的な観光は明日、まずフィレンツェ・カードをゲットしてから。