投稿者「Gengoroh Tagame」のアーカイブ

2013年パリ紀行、個展以外のあれこれ

 10月5日(土)は、書店les mots à la boucheでサイン会。2009年と2011年にもサイン会をした、マレ地区にある個性的なセレクトの本屋さんです。この書店のことを最初に教えてくれたのは、タコシェの中山さんでした。
 フランスでは新刊が出ておらず、既刊のものでも既に品切れのものもちらほら、おまけに春に出た英語版”The Passion”も品切れ……ということで、テーブルに用意されたのは”Gunji”、”Goku vol.2″、”Virtus”という寂しい状況。まぁ、その割りにはそこそこ人は来てくれました。1時間半(15:00〜16:30)のうち、人が完全に途切れたのは二回だけ。
2013ParisSign1
自作の絵をプレゼントしてくれた人も。
2013ParisSign2
 アレックス・クレスタやトム・ド・ペキンも来てくれました。

 サイン会の後、オリヴィエ(ギャラリー・オーナー)と一緒に、オープニングに来てくれたケヴィンが勤めているフェティッシュ・ショップMr. Bへ。
2013ParisKevin2013ParisMrB
 出来てまだ新しいとのことで、確かに2年前に来たときは、まだありませんでした。確か本店はアムステルダムかどっかにあるショップの、パリ支店だったと思います。
 場所はやはりマレ地区で、サイン会をした書店ともすぐ近所。このエリアには他にも2つ(少なくとも)フェティッシュ系のショップがあるんですが、私の知る限り、このMr. Bが一番オシャレ。店内のディスプレイはまるで博物館のようで、様々ないかがわしい(笑)器具が、実に美しく陳列されています。コーヒーのサービスもあり。
 ケヴィンからは、お土産にショップのTシャツを貰いました。このTシャツ、流行っているのか、私の個展オープニングでも、また、この後行ったベルリンでも(ベルリンにも支店があります)、着ている人を何人か見かけました。

 その晩、ケヴィンにフェティッシュ・パーティに誘われたので、拙著『日本のゲイ・エロティック・アート』出版時からのお付き合いで、現在はパリに移住しているユージ君を誘って、ついでにオリヴィエも一緒に、夕飯の後に行くことに。
2013ParisYuji
 ところが残念、ドレスコードに引っかかって入店できず。
 ケヴィンは「自分に連絡してくれれば、ドレスコードは問題ないから」と言ってくれていたんですが、この晩はパリ市のホワイト・ナイトというイベントで、マレ地区は凄い人出。携帯回線が完全にダウンして、メールも送れなければネットアクセスもできず、ケヴィンの送ってくれたSMSは翌日の朝にようやく届くという始末。
 仕方なくイベントは諦めて、ホワイト・ナイトのインスタレーションなんかを見物しつつ、場所を改めることに。因みに下の写真がそのインスタレーションの一つで、一つ一つイルミネーションが付いた無数の液体入り透明バッグが木のようにカテドラル内に林立して、そこに合唱曲が流れているというもの。すごい綺麗だった。
2013ParisWhiteNight
 そして、ベアバー行ったり、レザーバー行ったり、レザー&ラバーバー行って、地下のミックスルームで殿方たちがバコバコやってるのを見物したり……そんなパリの夜(笑)。

 10月6日(日)はオフ日だったので、午前中からオルセー美術館へ。お目当ては、9月24日から始まったばかりの、男性ヌードをテーマにした画期的な企画展Masculin / Masculin。(日本語紹介記事
 こちらがそのプロモーション・ビデオ。

 午前中のわりと早い時間に行ったのに、美術館の前は既に長蛇の列。1時間弱並びました。
2013ParisMusclinMasculin
 ただ、後で知ったんですが、この日は丁度オルセー美術館が入場無料の日だったらしく、どうりで美術館に入った後チケットゲートもなく……混んでいたのは、そのせいもあるのかも。

 Masculin / Masculin展は、アートとメールヌードに興味のある方だったら、間違いなく見逃せない展示でした。クラシックからコンテンポラリーまで、西洋美術史における男性ヌード表現を、時代を満遍なく網羅してテーマ別に展示した一大企画展。それと同時に、ポスターにも使われているピエール&ジルを強烈にプッシュしていて、いわば彼らの作品をアカデミックな西洋美術史上に置いて、その価値を再構築しようとしているかのような感もあり。
 というわけでゲイ・アート的には、そのピエール&ジルを筆頭に、ジョージ・プラット・レインズの写真作品も充実。同じく写真で、ハーバート・リスト、ロバート・メイプルソープ、デヴィッド・ラシャペルなどのメールヌード作品も網羅。
 古典はそれこそ、ルネッサンス以前から新古典まで盛り沢山。近代もバッチリで、エゴン・シーレありフランシス・ベーコンありオーギュスト・ロダンありアントワーヌ・ブールデルあり……。
 エロティック・アートや明確なゲイ・モチーフは、パーテーションで仕切られたスペースに注意書き付きで展示されており、ラインナップはジャン・コクトー、アンディ・ウォーホル、ポール・カドモス……などなど。デヴィッド・ホックニーのペインティングの脇には、彼の映画『彼と彼/とても大きな水しぶき』のモニター上映も。
 映像上映はそれ以外にも、まず裸体男性が様々な動きをしているのを捉えた、アカデミズム用と思しき古いフィルム。エドワード・マイブリッジみたいな感じのやつです。あと、ジェームズ・ビッドグッドの映画『ピンク・ナルシス』も、出口のところでプロジェクター上映。

 耽美系のホモエロティシズムがお好きな方だったら、ジャン・ブロック『ヒュアキントスの死』や、アン=ルイ・ジロデの『光の中で眠るエンディミオン』といった有名作が、同じ部屋に展示されているのに感涙間違いなし。エドワード・バーン・ジョーンズ、ギュスターヴ・モロー、ジャン・デルヴィルの大作なんかも見逃せない。
 SM好きとしては、ウィリアム・アドルフ・ブーグローの『キリストの笞刑』が見られて大感激。他にも、イクシオーンの車輪を描いた古典油彩画とか、狂えるオルランド(だと思う)のブロンズ像なんかにもウットリ。様々な作家による聖セバスティアヌスの殉教だけを集めたコーナーなんかもあり。
 もちろん、初めて見る画家の絵にも良いものがたくさんあり、特に印象深かったのが、何とも禍々しいアンリ・カミーユ・ダンガー(?)という人の『疫病』(?)という絵や、アレクサンドル・アレクサンドロビッチ・デイネカ(?)という人のロッカールームの体育会系野郎を描いた絵など。
 こういった諸々が、テーマや図像学的な共通点を軸に、時代をシャッフルして展示してあるという構成なので、もうこれは面白くないはずがない。会期は来年の1月2日(確か)までやっているので、その間パリに行かれる方は、お見逃しなきように!
 そして私のオープニングに来てくれたパトリック・サルファーティの写真作品も、数点展示されていました。
2013ParisPatricOM
因みに、拙著『髭と肉体』の著者近影も、パトリックが撮ってくれた写真です。

 売店ではもちろん図録を購入。
2013ParisCatalogue
 ハードカバーの立派な本で、画集としても秀逸。日本のアマゾンにもあったんですけど、現在のステータスは《品切れ/再入荷予定なし》になっちゃってますね……とりあえずリンクだけ貼っておきます。Masculin / masculin
 グッズ系は、マグネット数種、ロゴやマークをあしらった黒Tシャツ、トートバッグ、クッションカバー、缶バッジなど。とりあえず自分用に、セシル・ビートンが撮影したジョニー・ワイズミューラーの、半端なくセクシーなターザン写真のマグネットを購入。
2013ParisTarzan
 Tシャツも欲しかったんだけど、欲しかったデザインのやつはサイズが売り切れらしくて断念。ミュージアム・ショップの常で、展示内容に併せた(つまりメールヌードの)画集や写真集なんかもあれこれ売られていて、そんな中から、フランス王立絵画彫刻アカデミーのコンパクトなメール・ヌード・モデル・デッサン集を購入。
2013ParisDessin
 企画展を見終わった後は、通常展示をあれこれ見てから帰宿。

 晩はフランスの同業者ファブリスと、そのパートナーのヤンが一緒に暮らすお宅にお邪魔して、夕飯を御馳走に。

 10月7日(月)は、午前中はオフなので散歩でも行こうかと思っていたら、画廊にいきなりノルマンディーから来たという自称サンタクロースがやってきて、ボーイフレンドの誕生日プレゼント用にと本にサインを頼まれ、訊いてもいないのに「私の歌を聴きたいか?」と言い出し、ドイツ語のオペラ・アリアみたいのを朗々と歌い、嵐のように帰っていった……という一幕があり、目が点に(笑)。

 午後は、フランス/ドイツのTV局Arteの取材。通訳さんを介してインタビュー動画を収録。
 ゲイカルチャーの過去と現在を綴るドキュメンタリー番組用だそうで、そうなると本編で使われるかどうかは微妙な気も。インタビュー内容も、私個人に関する質問と、ゲイ文化全体に対する考えを尋ねるものとが、ほぼ半々だった印象。
 一応、女優のように「そこからこっちに向かって歩いてきて!そこで腕組みしてカメラ見て!」みたいなカットもこなしましたよ(笑)。気分はグロリア・スワンソン。
 その後、アートフェアで作品を展示しているという、ニコラのブースを表敬訪問。広場に簡易な小屋を作って、かなりの数のアーティストたちが個々のブースで展示をしているという、青空アートフェア・
 これがそのポスター。
2013ParisArtFair
 最初にパリ個展をした2007年のときから、毎回いろいろ手伝ってくれているニコラと「また二年後にね!」と(今のところパリ個展は二年に一度のペースでやっているので)ハグしてバイバイ。

 翌日は、朝の飛行機でベルリンに移動するので、夜遊びなどもせずにオリヴィエと二人で夕食&あれこれ打ち合わせ。
 しかし、オリヴィエはとにかく良く喋るので、いつの間にか深夜をオーバー。まだまだ喋り続けるオリヴィエを、「ストップ、もう寝るから!」と制して、ようやく荷造り&就寝。
 これでパリの全行程、無事終了です。

ちょっと宣伝、『奴隷調教合宿』第4話です

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 10月21日発売「バディ」12月号に、短期集中連載マンガ『奴隷調教合宿』第4話掲載です。
 若いイケメン系アスリートのガッツリSM話というコンセプトなので、今回も責め具やら拘束具やらをフルに使って、がっつりエロエロに徹しております。若いキャラが苦手な方やSM趣味のない方には、お口に合わないでしょうけど(笑)。
 内容的には、今回はちょっとチェンジ・オブ・ペースの回。
 次回以降の展開をますますお楽しみに! …と申し上げたいところなんですが、次号は一回お休みをいただいて、12月発売の次々号(2月号)から、また連載再開となります。
 とはいえ次号(11月21日発売、1月号)は、「バディ」創刊20周年記念特別号なので、お祝いイラストやコメント、あとひょっとしたら対談記事とかで登場予定です。
 マンガがお休みだからといって、スルーしないでくださいね(笑)。

Badi (バディ) 2013年 12月号 [雑誌] Badi (バディ) 2013年 12月号 [雑誌]
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2013-10-21

2013年パリ個展の会場

 パリでの個展用の渡航から無事帰国しました。
 タイムリーな話あれこれは、Twitterのログを見ていただければ判りますが、とりあえずこちらにも、会場とオープニング・パーティの写真をアップします。
《会場》
1)エントランス。マンガ『エンドレス・ゲーム』の大ゴマを、映画スチル風に再構成。
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2)メインの壁面。単行本『冬の番屋/長持の中』の表紙絵『天使A、B』の線画を、金墨汁と銀墨汁のスパッタリングで、タブローとして再アレンジしたものを中心に展示。
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3)マンガの原画あれこれ。
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4)ちょっと懐かしめのイラスト二点。
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5)オーストラリアの企画展用に描いた作品と、マンガ『転落の契約』用に描いた素材用イラスト。
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6)赤をキーカラーに用いた展覧会用の作品、新旧あれこれ。
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7、8)その他あれこれ。
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《オープニング・パーティ》
カメラマンが他にいたわけではないので、自分が撮ったこの2枚くらいしかありませんが、会場後2時間くらい経った頃の写真だったかな? まだ窓の外が明るいので。
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《友人、知人、etc.との記念写真》
アレックス・クレスタ(写真家)→パリ個展時のビデオ
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フル・マノ(アーティスト)→サイト
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トム・ド・ペキン(アーティスト)→Tumblr
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ロジェ(システム&ネットワーク・エンジニア+写真家)
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ジャン=ポール・クルーゼル(国立グラン・パレ美術館館長)
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アルチュール・ジレ(アーティスト)→現在オルセー美術館で開催中の男性ヌード展のオープニング・レセプションに全裸で参加して話題になったときのビデオ
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パトリック・サルファーティ(写真家)→紹介ブログ記事
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フィリップ(別のギャラリー・オーナー)
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オリヴィエ・フランドロワ(アーティスト)→Tumblr
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ニコラ・マラウィ(アーティスト)当日、一緒に写真を撮るのを忘れたので、後日アートフェアで彼のブースにて。
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《オマケ》
カメラに向かってニコラと二人で、「どうせならセックスしようか?」「じゃアタシがボトムね!「ダメよ、アタシよ!」と言いあってゲラゲラ笑っている写真(笑)。
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ちょっと宣伝、来月頭からパリで個展やります(追記:サイン会あり)

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 10月4日から、フランスはパリのArtMenParisギャラリーで個展をやります。早いもので、もう四回目。
 例によって新作旧作いろいろとり混ぜての展示となりますが、これまで企画展用に描いた作品を纏めて持っていく予定なので、雑誌等印刷媒体には未発表の近作が一度に見られるという意味では、ちょっと貴重かも知れません。
 オープニング・パーティは、4日(金)の17:00から22:00まで。エブリバディ・ウェルカム。私も会場におりますので、近在の方や渡航予定がおありの方は、是非お気軽にお越しください。
 この初日以外は、ギャラリー閲覧は予約制になります。会期の正式な終了日をまだ知らされていないんですが(おいw )、これまでのパターンだと、おそらく10月いっぱいの開催かと。鑑賞ご希望の方は、事前にギャラリーにコンタクトをとってからお出でください。
Facebookのイベントページ:Tagame Dessins Hardcore Drawings
ギャラリーのウェブサイト:ArtMenParis

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【追記】サイン会もやります。
 マレ地区にある本屋、les mots à la bouche(前にも2回やっているところ)にて、10月5日(土)の15:00から16:30まで。

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ちょっと宣伝、『奴隷調教合宿』第3話掲載です

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 9月21日発売の「バディ」11月号に、短期集中連載『奴隷調教合宿』第三話掲載です。
 こんな感じ(左画像)で、調教は着々と進行、主人公(丹野圭クン、大学野球部三年生)も着実にマゾ性奴への道を堕ちつつあります。今回の見所は、見開き大ゴマ二連発の奴隷宣誓シーンでしょうか(笑)。
 さて、この『奴隷調教合宿』、当初は4〜5回くらいを予定していましたが、このペースだと、もうちょっと長くなりそうです。
 編集部の了解もとれましたので、途中で中休みの休載も入る予定ですが、主人公がどこまで堕ちてどんな運命を辿るのか、もう少しよろしくお付き合い願えればと思います。

Badi (バディ) 2013年 11月号 [雑誌] Badi (バディ) 2013年 11月号 [雑誌]
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2013-09-21

【訃報】不破常次(不破久友/彩文大和)さんが亡くなりました

GeorgeFuwa
 1995年に雑誌「ジーメン」でデビューし、同年、アメリカのトム・オブ・フィンランド・ファウンデーション主催のエロティック・アーティスト・コンテストでも、シングル・フィギュア部門で1位を射止めた《男絵師》不破常次さん(後に不破久友→彩文大和とペンネームを変更)が、7月30日に亡くなられたそうです。直腸癌による失血死。享年60。
 昨日、最後を看取られた方からメールをいただきました。
 故人の交友関係が判らないために、携帯電話にメールアドレスが入っていた、私から周知してくれないかとのことでしたが、作品のファンは日本にも海外にも大勢いると思うので、そういう方々にもネットを通じてお知らせしたいとお願いしたところ、ご快諾いただけたので、こうしてブログで公表させていただきます。

 前述したように不破さんは、創刊当初の「ジーメン」でデビューし、以降、初期の「ジーメン」ではコンスタントにイラストや絵物語などを発表していました。
 その当時、私は既に専業作家として独立しており、同時に、仲間と一緒に新雑誌「ジーメン」を立ち上げ、雑誌全体のコンセプトからアート・ディレクション、企画編集に至るまで深く関わっていましたが、彼の文字通り《魂を込めた》ような重厚に塗り込められた鉛筆画に、あっという間にそんな立場を越えた1ファン、それも熱烈なファンになりました。
 また同時期、ゲイショップ「BIG GYM」の直販オンリーで、『DESIRE』と題された不破さんの複製原画セットも発売され、その序文というか推薦文のようなものも書かせていただいています。
 しかしその後、作品の発表ペースは次第に落ち、私が「ジーメン」と決別した2006年には、ほぼ皆無になっていたような気がします。(その後、再び作品発表があったとの話も聞いた記憶がありますが、2006年4月以降の同誌の内容については、私は全く把握していないので良く判りません)

 不破さんは、あまりご自分のことを語りたがらず、私もプライベートな部分に関しては、正直いまだに何も知らないに等しいです。
 それでも、私が「ジーメン」を立ち上げるずっと前に、不破さんと私のパートナーの間にあれこれ交友があったことなどもあり、そんな親しみもあって、編集部やパーティなどで会うと、良くじゃれあっていましたし、不破さんがウチに遊びに来たこともありました。
 謎めいたところは多い方でしたが、ちょっと構えたシャイなところがあって、でもお酒が入るといきなり気さくになり、更にお酒が進むとガキ大将のようになったり、はたまた野獣のようになったり。とにかくとても魅力的。
 オマケに私の好みにどストライクの、眼光鋭いすこぶるつきのいい男で、でも笑うといきなり少年みたいになって、ガタイも肉厚骨太の筋肉質。酔っぱらって抱きつかれたりすると、嬉しいんだけど、ムラムラしちゃって困ったり(笑)。

 そんな不破さんと久々に再会したのは、私が2010年に銀座のヴァニラ画廊でやった個展「WORKS」会場でした。前にこのブログにアップしていますが、その時に一緒に撮った写真を再掲しておきます。
vanilla_people_saimon
 その際にあれこれ話をした中に(そういえば、私がジーメンから離脱したことは全くご存じなく、かなり驚かれていました)、絵は描きたい、描き続けたいけれど、お仕事の関係か何かで、思うように描ける環境にない……といったような、ちょっと悩み相談的なものもありまして、じゃあ後日改めてゆっくり会いましょうと約束し、互いにメールアドレスを交換しました。
 しかし、お会いしたのはそれが最後になってしまいました。
 後日、幾度かメールのやりとりをしたものの、なかなか互いの都合が合わず、何となく立ち消えに。今となっては、それがとても悔やまれます。

 私の同時代のゲイ作家の中には、上手かったり魅力的だったりする作品を描かれる方は大勢いますが、不破さんの絵の《濃さ》は、ちょっと他に類をみないものだった気がします。
 エロティック・アート全般における、私の基本的な考え方として、作家という《人》のエロティックな指向、嗜好、オブセッションの類が、いかに色濃く表れるか、そしてそれがいかにその他一般の価値観を圧倒して、その作家の作品ならではの《美の姿》となるか、その姿によって《人》の分身となり得るか……というのが、とても大きな命題なのですが、不破さんの作品とは、まさに《それ》を体現するものでした。
 だからこそ、私のところに海外から「Fuwaの原画が手に入らないか」と問い合わせメールが来るように、当時の「ジーメン」購読者以外の、きっとどこかでスキャン画像を見たのであろう、外国の熱烈なファンも獲得できたんだと思います。
 もっともっと、描き続けて欲しかった。
 60で逝っちゃうなんて、早すぎるよ、不破さん……。

(in English)

(8/21:『じょうじ』の字が間違っていたので訂正しました)

ちょっと宣伝、『奴隷調教合宿』第2話掲載です

doreichokyogassyuku2
 8月20日発売「バディ」10月号に、短期連載『奴隷調教合宿』第2話掲載です。
 大学野球部員が夏合宿中に誘拐されて、見知らぬ男3人組にマゾ性奴としてあれこれ仕込まれてしまうという内容なので、今回も最初から最後までエロ場面のみ。強制開口ギャグやらアナル拡張ポンプやら、施錠したコックケージによる射精管理やら、SM用具フル稼働で突っ走っております。
 本当は高校球児でこーゆーの描きたい(ちょうど今TVでも毎日やってるし)気持ちもあったんですが、そこいらへんはその、商業誌的な制約というのもありまして……(笑)。
 で、この「バディ」10月号ですが、巻中グラビアで、それも私のマンガの次のページから、着衣緊縛フェチのページがありまして、しかもそれが野球ユニフォーム。
 ナイス資料! ……じゃなくて(笑)、なかなか楽しめるヴィジュアルになっておりますので、併せてオススメ。

Badi (バディ) 2013年 10月号 [雑誌] Badi (バディ) 2013年 10月号 [雑誌]
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2013-08-21

児雷也ビーチタオルとか

 児雷也画伯からイラスト入りビーチタオルをいただきました。
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 すごく……大きいです……。
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 こうすると、フッキング・アプリのプロフ画像にも使えそう(それは詐欺)。
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 タオル本体にも画伯の直筆サイン入り……というわけで、使わずに密封保管決定。
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 ご購入はMASSIVEのサイトで。
 MASSIVEは、拙著”The Passion of Gengoroh Tagame”のスタッフ、グラハムとアンが立ち上げたプロジェクトで、日本のゲイマンガをモチーフにしたグッズ展開を予定。私の絵のTシャツやポスターもあります。ブランドロゴは児雷也画伯のデザイン。
 送料はかかりますが、日本からのオーダーにも対応してくれるので、二枚買って縫い合わせてパンヤ詰めて、児雷也抱き枕を作るとか如何でせう(笑)。

単行本『冬の番屋/長持の中』表紙絵メイキング

 今回の単行本表紙をどんな感じにするか考えたとき、最近いくつか続けて手掛けた出版以外の作品で、墨で描いた白描に朱墨や金色墨汁などで色を加えるとか、或いは2〜3色の版画であるとか、そういった手法が自分でも新鮮で面白かったので、そのテイストを出せないかと考えました。
 因みに以下がその最近手掛けた作品で、順に、オーストラリアの企画展用に描いた『波濤 A』、日本のTシャツ企画展用に描いた『串刺し』、カナダTCAFの依頼で描いた『竜巻』になります。
wave1TagameTshirtTornado

 というわけで、担当編集氏に「クラフト紙っぽい色合いの用紙に特色3色刷りで版画風に」と提案し、予算の範囲で何が可能で何が不可能か、見積もりをとってもらいました。
 最初の段階では、黒(もしくは濃紺か焦げ茶)の線描をメインに、そこにポイントカラーとして赤と金を加えたいと希望。すると担当デザイナー氏&印刷所の方から「赤は沈むのでオペーク赤を使った方がいい、それも下地にオペーク白を敷いて2度刷りで」とのご提案。
 しかしそうすると、インクが一色増えてしまうので、さてどうしたものかと思っていたら、「こんな感じになります」というサンプルで、色の濃い用紙にオペーク白を敷いた上に特色で刷った見本を見せていただきまして、そこで「え、こんな感じになるのなら、逆に色を入れるのはやめて、オペーク白の効果を活かした方がカッコイイんじゃね?」と思いまして。
 予算的にもOKだったので、注意点などを確認の上《茶色の板紙に濃紺・オペーク白・金の三色刷り》に決定。
 条件が決まれば、後は描くだけ。
 用紙見本や刷り見本などをお借りして、頭のなかでイメージを固めつつ、コピー用紙に水色鉛筆と鉛筆で下絵を描いていきます。オペーク白の効果を活かしたかったので、翻る白褌を天使の羽に見立てた、ボンデージ毛深マッチョ天使の絵にすることにしました。
making_draftAmaking_draftB

 下絵が出来上がったところで、スキャンしてパソコンに取り込み、印刷時のタチキリ線入りテンプレート(サイズは後で描く原画原寸)上に配置して、構図を決定。
 絵自体の構成要素が少なく、しかも文字等はいっさい入らないデザインなので、余白のバランスなどがだらしなくなってしまうと致命傷。位置や大きさなどを、検証しながら厳密に詰めていきます。
making_layoutAmaking_layoutB

 構図が決まったら、それを原寸でプリントアウトして、ライトボックスで透かしながらドローイング。
 今回は「天使」というモチーフ上、いつもの自分の和のテイストと、洋の宗教画的なテイスト(具体的にはビザンチン絵画をイメージ)をミックスしてみたかったので、用紙は和紙ではなく洋紙(といっても単なる画用紙ですが)をセレクト。
 メインの描線は墨と毛筆ですが、前述のテイストを出すために滲みや掠れは使わず、描線もあまり走らせすぎず、かっちりと形を抑えるような描き方にしました。
making_drawingAmaking_drawingB

 坊主頭の表現は、金網+ぼかし刷毛でスパッタリング。
 体毛は、くっきり&緻密に表現したかったので、ペンを使用。
 で、今回、画材屋で見つけた日光の超研磨ペン先(丸ペン)というのを初めて使ってみたんですが、これが実に優れもの。普通の丸ペンに比べると引っかかりも少なく、繊細な線がスイスイ引ける。
 おまけに保ちも良くて、私の場合普段だと丸ペンは、16ページのマンガ原稿を描く間にも2本消費してしまったりするんですが、この超研磨ペン先は、この表紙イラストで目の粗い画用紙にみっちり描いた後、そのまま雑誌の連載マンガ16ページ用にも使いましたが、いまだにへたれておりません。
making_detailAmaking_detailB

 線画が出来上がったところで、それをスキャンしてパソコンに取り込み、Photoshopで使う版(色)ごとにレイヤー分け。背景は、用紙の色をシミュレート。
 体毛の描線を繊細&しっかり出したいので、製版時に網掛けをしないように頼み、作業もアンチエイリアスをかけない2値/1200 dpi/印刷原寸で進めます。
 背景のパターンはIllustratorを使用。
making_gifAnimation

 レイヤー構成は、こんな感じ。
making_layer

『天使 B』の方は、右側の布が煩く感じられたので、最終的には消しました。
 この画像は、仕上がりイメージに近づけるために、ちょっとレイヤーの透明度をいじってみたもの。
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 いろいろと初めての試みもあるので、果たして自分のイメージ通りのものが出来上がるか、いささか不安もあったんですが、いざ出てきた校正刷りがもうバッチリの仕上がりで、安心すると同時に大喜びしました(笑)。
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単行本『冬の番屋/長持の中』発売です

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 新刊マンガ単行本『冬の番屋/長持の中』、本日発売です。
 とはいえゲイショップ等の直販店では、既に先週末くらいから店頭に並べられていた模様ですし、アマゾンでも昨日ごろからステータスが《近日発売》から《在庫有り》に変わっていましたが。

 収録作品は雑誌「バディ」掲載作から、以下の三本。
『冬の番屋』〜北の果て、雪と氷に閉ざされた世界で繰り広げられる、白ヒゲ熊親爺と気弱ホモ青年の恋愛情話。
『ACTINIA [man-cunt]』〜近未来、エリート軍人の辿る苛酷な運命を描いた、エクストリーム系Sci-fi。
『長持の中』〜大正時代、暗黒の箱に閉じ込められた少年と、その義父が織りなす暗黒童話。

 内容見本は以下のPVをご参照ください。

単行本『冬の番屋/長持の中』PV from Gengoroh Tagame on Vimeo.

 装丁は、これまでポット出版から出させていただいた中短編集ど同様のシンプルな外函入りで、函から出すとご覧のような表裏全面イラスト入りとなっています。
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 毎回装丁には、予算の許す範囲内で工夫して、少しでも「本を所有する喜び」を感じていただければと思っているんですが、今回はカラー印刷というよりは版画風のテイストを狙って、クラフト紙系の色合いの板紙に、ほとんど黒に近い濃紺/オペーク白/ゴールドの3色刷にしてみました。また、体毛描写をクリアかつ繊細に出すために、印刷方法にもこだわってみました。
 是非、現物をお手にとってお楽しみいただければと思います。

 そして一つご注意。
 今回の『冬の番屋/長持の中』は、R18指定の成年コミックとなります。よって販路も、過去の無指定の単行本よりもかなり狭まりました。その結果、店舗によっては以前の本は入荷していたけれど、今度は入荷しないという場合もありますので、ご注意ください。
 一例を挙げると、新宿紀伊國屋本店(フォレスト)では、過去の単行本は入荷していましたが、今回は取り扱いがありません。しかし、新宿南口店の方では取り扱いがあるかもという話もあったりして、申し訳ないんですが私の方でも、そこいらへんの詳細把握はできていません。
 とりあえず、同様に成年コミックとして出た『筋肉奇譚』を取り扱っていた書店であれば、今回の『冬の番屋/長持の中』も問題なく置いて貰えるのではないかとは思います。
 また、アマゾンでも同様にアダルト扱いになりますので、海外発送はして貰えないはずです。日本国外在住の方で、もしオーダーしようと思っている方がいらっしゃいましたら、Rainbow Shoppersなどのご利用をお願いいたします。

 それでは、一人でも多くの方にお買い上げいただけますように!
[amazonjs asin=”4780802008″ locale=”JP” title=”冬の番屋/長持の中”]