投稿者「Gengoroh Tagame」のアーカイブ

“Rajapattai”

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“Rajapattai” (2011) Suseenthiran
(インド盤DVDで鑑賞)
 2011年制作のインド/タミル映画。ご贔屓ヴィクラムの新作。監督は“Naan Mahaan Alla”のスセーンティラン(?)。
 一山いくらで仕事を得ているような、映画の悪役俳優を主人公にした、コメディタッチのアクション映画。

 主人公ムルガンは映画のやられ役俳優。同じやられ役の仲間たちや、使いっ走りの助監督と共に暮らし、お呼びがかかると撮影現場に行くが、いつかはポスターにドーンと顔が出るような、大物悪役俳優になることを夢見ている。
 そんな彼は、ある日街で誘拐されそうになっている老人を助ける。実はこの一帯では、マフィアと組んだ悪徳女性政治家が再開発を目論み、土地を奪い取ったり反対者を暗殺したりしていた。そして老人が所有していて、しかも妻の形見でもある孤児院の土地も狙われており、更に、政治家を夢見る老人の息子が、父を裏切り悪徳政治家の手先となっていた。
 事情を知ったムルガンたちは、老人を自分のところに匿うことにする。同居の助監督は、最初は老人を快く思わず《新入り》扱いしていじめるのだが、ムルガンから彼は金持ちだと聞かされ、自分の撮りたい映画のスポンサーになってくれるのではないかとチヤホヤするようになる。
 一方で老人は、こうみえても実は若い頃は、インド独立以前に英国人の娘を引っかけるくらいのプレイボーイだった。女に縁のない悪役商会の連中に、老人はナンパの仕方を手ほどきし、おかげでムルガンも、以前から気になっていた娘と接近することができた。
 その間にも老人の息子は、ボスである悪徳女政治家からせっつかれ、父を騙して孤児院の土地の権利書にサインさせるために、改心した風を装って老人に再接近する。しかも折悪しく、助監督の下らない讒言のせいで、老人は、ムルガンが自分を助けてくれるのは金目当てだと誤解してしまう。
 息子の元に戻ってしまった老人を、その裏を知るムルガンたちは取り戻そうとし、やがて老人の誤解も解けるのだが、時既に遅く、老人は息子に騙されて書類にサインした後だった。しかも悪徳政治家にとっては、老人の息子も捨て駒にしか過ぎず、あっさりと裏切って彼を捨てる。
 孤児院は重機で取り壊されてしまうが、ムルガンたちは何とか土地の権利を取り戻そうと、悪徳政治家の手先であるギャングの親玉に対して、自分たちの俳優という職業を活かした、とある計画を練るのだが……といった内容。

 ストーリーの大筋としては、特にこれといった新味はないですが、全体をテンポが早いコメディータッチでまとめているのと、主人公がやられ役の悪役俳優というのを活かして、インド映画のクリシェのパロディを、あちこち織り込んでいるのが目新しいところ。
 このパロディはけっこう可笑しくて、例えば、主人公とヒロインが街で目が合うと、さっそく舞台が風光明媚な海辺に変わり、いざミュージカル・シーンが始まり……そうな所に、何故か仲間の悪役たちが出てきて「何でお前らがいるんだ!」「俺たちも踊りたい!」となって、結局ミュージカルにならなかったり(笑)。で、それから後、再度主人公とヒロインが接近すると、今度は邪魔も入らず、さっきと同じ場面設定の海辺で、お約束のミュージカルに突入する……なんて仕掛けがあります。
 アクション・シーンも同様で、主人公がワイヤーワークで空中に静止すると、悪役が「あんな空中で止まるカンフーなんかできない!」とか言い出したり(笑)。他にも、主人公が悪役をブチのめしていると、通行人の子供が怖がって泣き出してしまい(おそらくタミル映画は暴力的だというイメージのパロディ)、主人公は慌てて「これはダンスなんだよ!」と、ダンス風の動きを装ってアクション・シーンを続けたとか、ちょっとしんみりしたムードになって、回想シーンが始まりそうになると「ちょっと待て、フラッシュバックはお断りだ!」と水をさすとか(笑)。
 こんな感じで、全体のテンポの早さと相まって、そういった小ネタはけっこう楽しめるんですが、まぁ全体的には他愛のない内容。善玉が映画俳優たちというネタは、小ネタレベルでは機能しているんですが、正直なところ、上手く活かせばもっと面白くなるだろうに……という感じで、ちと勿体ない。

 ただしヴィクラムのファンにとっては、逞しい肉体を活かしたカッコいいアクションあり、コメディあり、変装による一人何役もあり……と、お楽しみ要素はタップリ。ヴィクラム自身も肩の力が抜けた感じで、役を軽やかに楽しそうに演じているので、見ていてなかなか心地良いです。
 映画の結末も、収まる所に収まる予定調和で、ご都合主義はあれども極端な破綻はなく、全体のライトな味わいもまずまず。ただし、そのライトさを特徴と感じるか薄味と感じるかによって、印象の是非が別れそうな感じはしました。
 ヴィクラムと小ネタ以外はさほど印象に残りませんが、個人的には軽い娯楽作として、そこそこ楽しめました。

 予告編。

 ヴィクラムの変装(某ジョーカーだの某パイレーツだの)が楽しめるミュージカル場面。

“72. Koğuş”

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“72. Koğuş” (2011) Murat Saraçoglu
(トルコ盤DVDで鑑賞、米アマゾンで購入可能→amazon.com

 2011年製作のトルコ映画。1940年代のトルコの監獄を舞台に、人間の尊厳について描いた内容で、同国の文豪だというオルハン・ケマルの小説『第72監房』(未読)の2度目の映画化だそうです。

 1940年代のトルコの監獄。
 囚人たちは食費等を自ら賄わねばならず、金のない囚人たちは飢えと寒さに震え、看守の投げ与える鶏の骨すら争って奪い合っている。そんな中、《キャプテン》と呼ばれる中年の囚人だけは、その争いに加わらず人としての誇りを守っている。
 そんなキャプテンの元に、ある日母親から150リラの金が届く。キャプテンはそれで同房の仲間に食事や衣服を買い与え、仲間たちも、ある者は感謝し、ある者は媚びへつらい、またある者はキャプテンをギャンブルに巻き込もうとする。
 そんな中、ファティマという女囚が他の監獄から移送され、その姿を垣間見たキャプテンは恋に落ちる。
 女囚たちは、男囚の衣服を洗うことで現金を得ており、自分を目に掛けてくれる男を取り合ったり、同房内での弱い者いじめなども横行しているが、ファティマはそういったことには関わり合いにならない。
 キャプテンは洗濯物を仲介する男に、ファティマに自分の思いを伝えてくれと、金を渡して頼む。やがてファティマから返事の恋文が届き、キャプテンは有頂天になるのだが、実はそれは仲介役の男が偽造したもので、キャプテンの思いはファティマには全く届いていなかった。
 仲介役がキャプテンを騙し、その持ち金をどんどん巻き上げていく一方、同房の男も、ファティマが金に困っていると嘘をつき、彼をギャンブルに誘うことに成功する。ツキもあって勝ち続けたキャプテンは、出所後にファティマと結婚して共に住む家を買おうと、ますますギャンブルにのめり込んでいく。
 一方のファティマは、同房の妊婦や聾唖の娘といった弱い者を庇いながら、しつこい男の誘いも拒み続けているのだが、ある晩、彼女の高潔さを快く思わない女たちに陥れられて、彼女に言い寄っていた老人に強姦されてしまい……といった内容。

 いや、これはキツい内容だった……。
 監獄という狭い空間を人間社会の縮図に見立てて、金銭や暴力によるヒエラルキー、それから生まれる支配/被支配の関係、飢えや金で歪められていく人間性、無実の者が死刑に処される理不尽さなどが、次々と抉りだされていきます。
 ストーリー的にも、ほんの僅かに救いはあるものの、基本的には勧善懲悪なんかとは無縁で、現実世界そのままの理不尽な悲劇が横行し、人間の醜さが、これでもかこれでもかと描かれます。結果、高潔であったはずの主人公の精神も崩壊していき、ラストなんかもう暗澹たる気持ちに……。
 映画としては、実にしっかりとした真面目な作りで、映像は実に美しく、演出も役者さんたちも文句なしのクオリティ。
 ただし、こういったテーマやストーリー自体の内容と比べると、ちょっと表現としてパワー不足なのは否めない。充分以上に佳良ではあるんですが、グイグイと巻き込んでいくような境地にまでは至らず。いささか逆説的ではありますが、前述した映像の美しさや端正さが、逆にテーマのわりにはパワー不足という印象に繋がってしまった感もあり。
 
 という感じで、ストーリー的には、鬱エピソードがテンコモリだわ救いも殆どないわ、テーマ的にも、ズッシリ鉛を呑み込んだような重さだわと、実に辛い内容ではあるんですが、でも面白いことも確かで、見応えはなかなかありました。

 ヨコシマ目線の追加情報。
 予告編でもラストの方にちょこっと出てきますが、ヒゲで毛深いオッサンたちの集団全裸責め場なんてのもゴザイマス。何でも、この撮影の余りの過酷さに、その後男優さんたちは寝込んでしまったそうで……。
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“Senność”

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“Senność” (2008) Magdalena Piekorz
(ポーランド盤DVDで鑑賞、米アマゾンで入手可能→amazon.com

 2008年制作のポーランド映画。様々な問題を抱えた現代ポーランドの3組のカップル(夫婦2組、ゲイカップル1組)を軸に、愛や生や死を描いたヒューマン・ドラマ。
 ご贔屓ミハウ・ジェブロフスキー出演作。監督は前にここで感想を書いた””Pręgi”と同じ人。

 嗜眠発作に悩む女優ローザは、人里離れた豪華な邸宅で、優しくハンサムな夫に看護されながら療養中。
 小説家のロベルトは、婿入りのような形で結婚して妻の家族と同居中だが、妻のヒステリーや彼を穀潰し扱いする義父の態度に悩まされてスランプ中。
 青年アダムは医師試験に合格し、田舎の両親は息子が故郷に帰って開業医となることを望み、将来結婚したときに備えて新居まで建てて準備しているが、肝心の彼は今のところ田舎に戻るつもりはなく、両親も仕方なく彼の気持ちを尊重して待つことにする。
 一見何の不満もなさそうなローザだったが、発作の度に前後の記憶を無くしてしまう彼女は、夫が浮気をしているのではないかという疑念に苛まれて、孤独な田舎暮らしの中、毎日レシピを元に《愛を蘇らせる料理》を作っている。
 ロベルトは、妻には彼女の健康上の理由でセックスを拒まれていて、期待されている新作小説もずっと書くことができず、更に苦痛を伴う何かの発作にも襲われるようになるが、そのことは妻とその家族には隠している。
 都会の病院勤めをするようになったアダムは、実はゲイで、街で出会ったギャンググループのスリ、ラドニーを治療したことをきっかけに、互いに惹かれ合って付き合うようになるが、息子を驚かせようと予告無く上京してきた両親に、その関係を見られてしまう。
 医者の診察を受けたロベルトは、このままではもう長くないと告げられるが、日常に倦み既に生きる目的もなくなっている彼は治療を拒否する。そして田舎に出かけるのだが、そこで発作を起こし、偶然ローザに助けられる。
 ロベルトが現役時代のローザを観客として知っていて、二人は打ち解けて親しく語り合うのだが、彼のふとした言葉から、ローザは夫の浮気が自分の邪推ではなく事実であると確信し、夫の嘘を暴こうと計略を練る。
 一方のアダムもラドニーと諍いになり、ラドニーは家を出て行ってしまう。やがてアダムはそのことを悔いて、よりを戻そうとラドニーの所属するギャンググループを追うのだが、そのことから逆にギャングに目を付けられ、ついにはホモ狩りの獲物にされ暴行を受けてしまう。ラドニーは、アダムとの関係が仲間にばれることを怖れて、恋人を助けることができないが、後からこっそり介抱して許しを請う。
 アダムとラドニーは一緒に街を出ることにして、荷物を纏めて二人でバス停に向かうが、そこをギャンググループに見つかってしまい、ローザは夫の嘘を暴く計画を実行、そしてロベルトは妻との離婚を決意するのだが……といった内容。

 全体的に抑えた調子で、淡々と、しかし丁寧にそれぞれのドラマが綴られていき、先の読めない展開も相まって、地味ながらも面白く見られる作品。個人的には、ゲイ要素があるという予備知識が全くなかったので、かなり意外なお得感がありました。
 構成としては、それぞれ別々の3本のドラマが、後半になって互いに重なり合う部分が出てくるという作りですが、さほどトリッキーな感じではなく、ローザとロベルトはけっこうがっぷり重なるんですが、アダムとは軽く触れあう程度なので、そこはもうちょっと工夫が欲しい気も。
 因みに、ご贔屓ミハウ・ジェブロフスキーは、ローザの夫役。つまりゲイ役ではない。残念(笑)。
 テーマ的には、自分を世間で言うところの《幸せなはず》だと騙すのではなく、勇気を持ってそこから一歩踏み出すことによって、初めて本当に自分の人生の意義を取り戻すことが出来る……ということだと思います。
 つまり、セレブな暮らしをしているローザも、逆玉に乗って物理的には不自由のないロベルトも、両親には愛され仕事も順調なスタートをきっているアダムも、皆はたから見れば「幸せなはず」な状況なんですが、実際はそうではなく、生きる意義ってのはそんな単純なものじゃない。
 彼らの抱えているそれぞれの事情が、すなわち彼らを《不幸》にしているわけですが、それと同時にその《不幸》の原因は、彼ら自身が現状から一歩踏み出す《勇気》に欠けているせいでもある……というのが描かれているあたりが、個人的にはかなりの高ポイント。

 私としては、どうしてもゲイのアダムのエピソードが気になるんですが、ここでも前述のテーマが、極めて有効に作用してきます。
 クローゼット・ゲイであるアダムは、自分のセクシュアリティをオープンにすることができない。両親から愛され仕事にも恵まれ……という《幸せ》な状況であるからこそ、尚更それを《壊しかねないリスク》、すなわち自分はゲイだとアウトすることができずにいる。
 このことは、日本の多くのゲイにとっても、かなり身近なことであるはず。
 アダムのBFラドニーも同様で、二人は地下道で一瞬目があっただけで互いに何かを感じ合い、そして恋人関係へと発展していくのだが、それはあくまでもアパートの中という密室内での関係。ひとたび外に出れば、ラドニーは自分がゲイだと仲間にばれることを恐れ、それゆえにアダムを仲間の暴行から助けることもできない。
 どちらも、《現状の平穏》を損なうことを恐れて、社会に向けて自分自身をオープンにできない。
 そして二人は《逃避行》を選ぶのですが(以下ちょっとネタバレを含むので白文字で)、荷造りをして、街を離れるバス乗り場に向かった二人は、再びギャンクたちに取り囲まれ、しかし今度は、暴行を受けるアダムを守ってラドニーはギャングに立ち向かい、結果として相手の一人を刺殺してしまう。これは悲劇ではあるんですが、それと同時に、ラドニーは《一歩踏み出す》勇気を持ったということでもあります。
 そしてアダムもそれに呼応する形で、最終的にはラドニーを実家に連れて帰る。アダムもまた、リスクを恐れず《一歩踏み出し》て両親と対峙することで、自分自身の人生を手に入れたわけです。

 という感じで、このゲイ・カップルを描いたエピソードは、彼らを取り巻く現実の苦さや残酷さをきっちり踏まえつつ(ホモ狩り以降のくだりは、けっこう見ていて辛い部分もあるんですが)、でも最終的には、見ていて思わず笑みがこぼれてしまう結末を迎えるし、前述したテーマの有効性などもあって、個人的にはかなり佳良。

 Magdalena Piekorz監督の演出は、前の”Pręgi“同様に、派手さはないもののしっとりとした滋味あり。それぞれの役者も、けっこうイヤなヤツだったジェブロフスキーも含めて、アンサンブル全体が好印象。
 後味も上々で、そこに加えてゲイ映画的な良さもあったので、個人的にはかなり満足のいく佳品でした。

 オマケ。アダムとラドニー。
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『セデック・バレ(賽德克·巴萊 / Seediq Bale)』

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『セデック・バレ(賽德克·巴萊)』(2011)ウェイ・ダーション(魏徳聖)
(台湾盤Blu-rayで鑑賞、YesAsiaで購入可能→YesAsia.com

 昭和初期、日本統治下の台湾における先住民セデック族が抗日蜂起した《霧社事件》を描いた台湾映画。2012年の第7回大阪アジアン映画祭で上映、コンペティション部門で観客賞を受賞。
 Blu-rayボックスは、ディスク1に『第一部 太陽旗』『第二部 虹の橋』のフルバージョン4時間強、ディスク2にボーナス・マテリアル、ディスク3には全二部を一本に纏めた2時間半の短縮版『インターナショナル版』をそれぞれ収録。

『セデック・バレ 第一部  太陽旗(賽德克・巴萊 太陽旗)』
 ストーリー等はググれば出てくるので割愛しますが、期待通り重量級の見応え。
 抗日運動を題材にしているとはいえ、視点は極めてニュートラルな印象。もちろん台湾統治下における日本人から蕃社(先住民)に対する差別が鍵とはなっているのだが、それがイコール「野蛮とは何か」という問いかけとしても機能している印象。
 つまり、民族のアイデンティティや誇りといったテーマを扱いつつも、同時にそれが文明と野蛮の衝突にもなっているあたりがミソで、じっさい第一部の終盤では、救出された娘が父に「首狩りをやめられないの?」と問うたりします。
 絶対悪としての抑圧者と正義の非抑圧者という安直な構図にはせず、文化的な衝突やディスコミュニケーションを踏まえ、《野蛮》或いは《原始》という、現代人とは異なる価値観をしっかり描いているのには大いに好感。
 ただその反面、価値観を共有できないが故の感情移入が難しくなるという難点もあり。特に《首狩り》という《儀式的殺人》に関しては、まずその描写が直裁的であり、加えてハリウッド映画のような「子供が殺されるシーンは描かない」といった《逃げ》もないので、正直どうしても見ていて辛いものがある。
 そういった、安直な善悪に落とし込まない公平さは、イコール作品世界全体を俯瞰する視点の高さにも繋がり、エモーショナルな部分が揺すぶられにくい(ただし情緒的な部分を除く)ところがあります。
 作劇も、堂々とした風格がある反面、いささか中だるみを感じなくもないんですが、それでも力強くグイグイと引っ張っていくので、二時間半の長尺も全く気にならず、このパワフルさは素晴らしい。
 映像は美麗でスケール感もたっぷり。スケール感が過ぎて、CG使用部分に関しては、場面によってはファンタジー映画に見えてしまうほど。歌舞要素があったのも個人的にはツボ。
 多少の思うところはあるものの、とにかく堂々たる大作史劇であり、力作であることは間違いなし。

『セデック・バレ 第二部 虹の橋(賽德克・巴萊 彩虹橋)』
 実は、第二部になるとひょっとしてテンションとか出来映えとかが下がるのでは…とかも想像していたんですが(良くあるパターンなので)、それは全くの杞憂でした。
 極めてパワフルな作品で、これまた二時間強を一気に見せる。いや、スゴい。
 内容的には、何しろほぼ全編戦闘&殺し合いの連続だし、それ以外のエピソードもアレコレ辛い内容ばかりなので、見ていてかなりキツいのは事実。ただ、見せ方が娯楽映画的にスペクタキュラーなせいもあり、見ていて必ずしも暗澹とした気持ちになるというわけでもないのが特徴かも。
 文化のコンフリクトや、文明と野蛮といった要素に関しては、キャラクター単位で事象として提示されているものの、そこからもう一歩踏み込んだ考察にまでは至らないのは、良くもあり悪くもあり。個人的にはそこいらへんを、セリフや単独エピソードだけではなく、もう少しドラマ的に描いて欲しいという気もしました。
 また、史実に沿ったという側面もあるんでしょうが、結末をこういった形に持って行くのならば、もう少しモーナ・ルダオという人物の内面に踏み込むか、或いは対峙するキャラクターを立てて、それとの拮抗という要素を入れた方が良いような気もしますが、まぁそこいらへんは無いものねだりかなぁ……。
 とはいえ、とにかく見応えはタップリ。
 正直、エンディング場面に代表されるようなロマンティシズムと、全体を見渡す視点の高さには、乖離が生じてしまっているとは思うし、善悪を挟まずに《出来事》のみを描く視点と、全体を貫くスペクタクル・アクション娯楽映画的な手法も、ちょっと相反する気はするんですが、そういった対峙するアレコレが混然となったパワフルさも、また作品の魅力の一つであることも確か。
 というわけで、まず見て損はない一本なので、一般公開希望!

『セデック・バレ インターナショナル版(Seediq Bale)』
 さて、オリジナル全二部4時間半強を、2時間半に編集した短縮版も見たんですが、うーん、これは……ひょっとしたら、純粋に作品的完成度のみを見た場合は、こちらの短縮版の方が高いかも。もちろん喪われたものは多いのだが、その分全体がスッキリとしたことは否めない感じ。
 その大きな要因として、まず一つ、オリジナル版第一部クライマックスの《血の禊ぎ》から、最も神経を逆撫でされる(であろう)シークエンスが丸々カットされていること。「うわぁ、これを描くか!」と驚嘆したシーンではあるのだが、それがないことによって、セデック族への感情移入が比較的容易になっていることは確か。
 もう一つは、ラストの大幅な変更。ドラマ的なクライマックスをはっきりと一カ所に定め、以降の史実に沿わせたアレコレがバッサリとカットされており、これが逆に、モーナ・ルダオというキャラクターの掘り下げ不足ではなく、ヒロイックに補完してくれるような印象に繋がっている。
 結果、全体の印象がロマンティシズム主導に近い形になり、ある意味で枝葉もなくスッキリとまとまっていると言えそう。
 しかしその反面、当然の如く文化的なコンフリクトや、野蛮とはいったい何であるかといった要素は、エピソード的には残っているものの、映画全体の印象からはかなり薄味な感じになっているのも確か。
 そういう意味では、大きな魅力の一つであったカオティックなまでのパワフルさは、インターナショナル版ではかなり喪われてしまっているものの、しかし娯楽主体のまとまりとしては、この短縮版(というより再編集版といった印象)も充分「あり」という印象。
 作品の自己矛盾も含めたパワーや見応えをとるか、それとも多少単純化されていたり薄味になっていてもいいから、スッキリとしたまとまりをとるか……これはもうお好み次第という感じ。
 どちらにせよ、両バージョン共に見て損はない作品であるのは確か。

『セデック・バレ』予告編(第一部&第二部込み)

『セデック・バレ』第二部(及びインターナショナル版)のエンド・クレジットで流れる歌。前半は普通に良くあるバラード系のアジアン・ポップという感じですが、5分頃〜終曲部分の民族音楽風のコーラスのリフレインが感動的で好き。

 さて、ここから後はネタバレも含む、『完全版』と『インターナショナル版』の比較なんぞを少々。お嫌な方は、以降は読まれませんように!

 この二つの印象の違いとしては、やはりまず完全版では第一部のクライマックスとなる、セデック族による霧社襲撃〜虐殺場面での、描写の違いが大きい。
 完全版では、襲撃に加わったセデック族の少年が仲間を率いて、自分を差別した学校の教師、同級生、その母親などを襲撃し、殺害するシーンがあるんですが、インターナショナル版では、このシークエンスはすっぽり省かれています。
 この場合の殺人は、あくまでも儀式的な側面があるので、単純に報復云々ではないのですが、それにしてもやはり年端もいかない子供が、己の行為の正当性を信じて堂々と殺人を犯す場面を見せられるのは、なかなか辛いものがあります。
 そしてこの少年は、完全版では第二部、インターナショナル版では後半でも、重要なキャラとして登場し続けるんですが、先述のシークエンスを見てしまうと、完全版ではどうしてもキャラクター的に感情移入がしにくい部分がある。また同時に、子供がそうなったことへの責任といった意味で、その保護者にあたるセデック族の大人たちへの感情移入も、同様にしにくい結果に。
 対して、件のシークエンスがないインターナショナル版では、そこいらへんの抵抗感が払拭……というか隠匿されているので、完全版を見ているときのような、どこかモヤモヤしたものがなく、割と普通に感情移入しながら、セデック族側の立場から物事を見られるんですな。
 つまり、完全版ではある種の《きれい事》が作用しているが故に、エグ味が抜けて薄味にあっている分、娯楽映画的には破綻を免れているという側面がある。

 もう一つの大きな差異は、ちらっと前述したようなエンディングの違い。
 Wikipediaによると、

11月初めにはモーナ・ルダオ(筆者注:セデック族の反乱を率いた中心人物で、映画の主人公)が失踪し、日本側は親日派セデック族を動員し、11月4日までに暴徒側部族の村落を制圧した。モーナの失踪後は長男のタダオ・モーナが蜂起勢の戦闘を指揮したが、12月8日にタダオも自殺した。
とあるんですが、完全版は基本的にこの事実に即して描かれます。
 完全版の最終部分の流れを大まかに追うと、以下のようになります。
 日本軍との最後の大規模な白兵戦があり、セデック族が橋を渡りかけたところを爆破というシークエンスの後、空から赤い花弁が降り注ぎ(しかし実際は花弁ではなく投降勧告のビラ)、モーナ・ルダオは妻たちと幼い子供たちを殺し、独り山中深くに姿を消し、以来消息が知れなくなる。
 残された年長の息子たちは、山中に籠もって抵抗を続け、里の家族たちからの支援なども受けつつ、それでも破れて最終的には自害する。反乱が全て収まった後、日本軍の将校たちは咲き誇る真紅の桜に驚きつつ、セデック族の勇猛さに喪われた武士道を見る。
 そして残ったセデック族の強制移住が描かれ、更に四年後、モーナ・ルダオの遺骨の発見が描かれ、続けてテロップによって、台湾大学での保存〜霧社への返還などが説明される。
 映画のラストは、遺骨を発見した若者が、山頂で空に掛かる虹を見上げる中、モーナ・ルダオ以下、亡くなったセデック族の人々が雲海の上、晴れやかな顔で民謡を歌いながら、父祖の住まう世界に向かって《虹の橋》を渡っていく姿が描かれ、その後、お伽噺のような情景の中、セデック族の由来を語る神話が語られてエンド・クレジット。
 対してインターナショナル版は、白兵戦〜橋の爆破から、空から赤い花弁が降り注ぐところまでは同じなんですが、それが投降勧告のビラだったという部分はなく、代わりにここでセデック族由来神話が語られます。そしてそこからダイレクトに、日本軍将校たちが真紅の桜と共に武士道を思うシーンへと続く。
 その後はテロップによる事件の顛末の説明や、強制移住の場面などが描かれますが、完全版にあった、モーナ・ルダオによる妻子の殺害〜失踪、残った若者たちの抵抗〜里の家族との交流〜自害といったエピソードは一切割愛されています。
 エンディングも異なっており、完全版でモーナ・ルダオの遺骨を見つけた青年は、インターナショナル版でも同じく山中に踏み入っていきますが、遺骨の発見シーンはなし。当然その顛末のテロップもなく、青年はそのまま山頂に登り、天空の虹を見る。そして、セデック族の魂が《虹の橋》を渡っていくシーンはなく、そのままエンド・クレジットへ。

 つまりこうして二つを比較してみると、完全版は、細部に渡って出来事を描いてくれる反面、ドラマ的なダイナミズムは犠牲になっている感があり、対してインターナショナル版は、エピソード的な欠落はあるものの、クライマックスからエンディングへの流れはスムーズ。
 また、モーナ・ルダオによる妻子の殺害〜失踪というエピソードに関しても、前者はその行動をもたらす要因が、現代社会の価値観とは全く異なる異文化的な道であるのが、やはり感情移入を阻害してしまうし、後者に関しては説明不足な感が残る。
 対して、それらを割愛したインターナショナルでは、そういったモヤモヤ感がなく、顛末が曖昧に暈かされているのも(橋の爆破の後、赤い花弁を見上げるモーナ・ルダオたちのカットが入りますが、そこに被さる由来神話の語りの効果も加わり、彼らは既に爆破で亡くなっていて、それは彼岸の光景であるかのように見えます)、現実の事件から伝説へと繋がる効果になっている。
 完全版のラストにある、セデック族の魂が《虹の橋》を渡っていくシーンは、イメージ的には美しいし、歌われる民謡も大いに効果的なんですが、残念ながらヴィジュアルとしての完成度がちょっと低いのと、それまでの極めてニュートラルで現実的な視点に対して、いささかロマンティシズムやファンタジー性に過ぎるという印象もあったので、そういった直裁的な描写をカットして、虹を見上げる青年の姿だけに留めたインターナショナル版の方が、全体の纏まりという点では評価できる部分も。
 というわけで、確かにインターナショナル版は短縮版ではあるんですが、単に完全版を短く切り詰めたというものでは決してなく、間口の広さや娯楽映画的な纏まりの良さを主眼に再構成しているというのが、私の印象。
 機会があれば、是非お見比べあれ。

【追記】その後めでたく一般公開&日本盤ソフト発売。

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『ウォーリアー (Warrior)』(2011)ギャヴィン・オコナー

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“Warrior” (2011) Gavin O’Connor
(アメリカ盤Blu-rayで鑑賞→amazon.com

 総合格闘技の世界に身を投じた兄弟とその父親を通じて、闘い、確執と許し、そして再生を描く、エモーショナルなヒューマン感動作。
 2011年制作のアメリカ映画。ギャヴィン・オコナー監督、出演トム・ハーディ、ジョエル・エドガートン、ニック・ノルティ。

 元海兵隊員のトミーが、長く離れていた故郷に戻り父親を訪ねる。
 アルコール依存から立ち直ろうとしている父親ポップは、息子との再会を喜ぶが、過去の確執と母親の死のせいでトミーは冷たく当たる。
 トミーは格闘技のジムに行き、そこののスター選手の練習相手として自分を売り込み、あっという間に相手を倒してしまう。実はトミーは幼い頃から、父ポップからレスリングの英才教育を受けた元選手だったのだ。
 一方、トミーの兄でありながら彼とは長く疎遠であり、父のポップとも彼のアルコール依存が原因で絶縁しているブレンダンは、これまた元は総合格闘技の選手だったが、今は引退して高校の物理の教師をしている。妻と二人の娘もいて幸せだったが、娘の心臓手術の費用を工面するために、家を失う危機に直面していた。
 ブレンダンは収入を増やすために、ストリップクラブの駐車場で開催されているアマチュアの格闘技大会に参戦して賞金を得るが、それが学校で問題となり停職処分になってしまう。
 そんな中《スパルタ》という名の総合格闘技大会の開催が決まる。世界中から強豪が集まり、優勝賞金は5百万ドル。トミーはそれに出場するために父にコーチを頼む。しかしそれはあくまでも選手とコーチというビジネスライクな関係であり、父と子の絆とは無縁のものだった。
 一方のブレンダンも、手術費用のために《スパルタ》に参戦し、兄弟は久々に再会するが、トミーは過去の確執から兄のことも父のことも、肉親の絆は冷酷なまでに拒否し続け……という内容。

 いや、これは感動的でした。
 全体的にとても丁寧な作りで、最初はちょっと「う〜ん、丁寧なのはいいけど、ちょっと勿体ぶりすぎじゃない?」って感はしたんですが、もう中盤以降の吸引力がスゴいのなんのって……。
 様々な愛憎が交錯する人間ドラマ部分もエモーショナルならば、迫力タップリの試合シーンもエモーショナル。そして、そんな二つのエモーションが、並行して徐々に進行しながら、クライマックスで一つに重なるもんだから、もう熱いのなんのって……目頭熱くなります。
 ストーリー的にはけっこう多層的な構造で、現代アメリカの抱える様々な問題を盛り込みながら、家族の崩壊と再生を描き、それをド迫力な格闘技モノという要素に重ねつつ、更にメルヴィル『白鯨』の引用や、トミーの《贖罪》がキリストにダブるようなイメージもあって、娯楽なんだけれど文学的でもあるような味わい。

 それぞれのキャラも良ければ、役者も良し。
 トミー役のトム・ハーディ(私の目当ての一つ)も良いんですが、それ以上にブレンダン役のジョエル・エドガートンが素晴らしい。息子たちから愛を拒否されるニック・ノルティの哀れさも良し、ブレンダンの妻やコーチ、その他のちょっとしたキャラも全て良し。
 しかしやっぱり、何と言ってもトム・ハーディとジョエル・エドガートン。二人とも、とても役者とは思えない……ってか総合格闘技の選手にしか見えない。試合相手は本職の格闘家さんたちらしいんですが、肉体的にも存在感的にも、彼らと並んで全くひけをとらない役作り。もう驚嘆の一言。
 マーク・アイシャムのスコアも良ければ、クライマックスで流れるThe Nationalというバンドの”About Today”という歌も、ちょいとベタな感じはしますが、それでも特に後半、ポストロック風の展開部分と映像のマッチングによる高揚感なんか、もうたまらないです。
 ポスターもムチャクチャかっこいい。

  というわけで、格闘技映画としても面白く、感動的なヒューマンドラマとしても面白いので、見てるこっちも思わず拳を握りしめてしまうといった具合。
 男の映画&熱い映画&感動的な映画が好きな方だったら、文句なしのオススメ作。いや〜、えがった!
 これは何とかして日本公開、それが無理ならせめて国内盤でのソフト化を望みたいところ。

 で、前述したようにこの映画、主演二人の肉体作りがすさまじいんですが、その二人および映画に出演している本物の格闘家たちの肉体を捉えた、”The Men of Warrior”という写真集も出ています。
book_TheMenOfWarrior_cover
 これまたなかなか良い写真集で、内容のサンプルはこちら(水色帯のBEGIN SLIDESHOWをクリック)。他にも、こんな感じや
book_TheMenOfWarrior_1
こんな感じの、
book_TheMenOfWarrior_2
バイオレントでスタイリッシュな写真もあり。
 カメラマンはティム・パレンという人。
 本のサイズも大判ですし、映画から離れた単独写真集としても見応えありなので(実は私、この写真集の方を先に購入していました)、「おっ」と思った方にはオススメです。

The Men of Warrior The Men of Warrior
価格:¥ 2,488(税込)
発売日:2011-08-09

 マーク・アイシャムのサントラも、もちろん購入。

Warrior Warrior
価格:¥ 1,574(税込)
発売日:2011-09-13

 マーク・アイシャムによる”Warrior”サントラ、スライドショー付きのオフィシャル・サンプル・クリップ。

【追記】めでたく日本盤ソフト発売されました。劇場での限定公開も。
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ちょっと宣伝、『エンドレス・ゲーム』第6話です

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 6月21日発売の「バディ」8月号に、集中連載『エンドレス・ゲーム』第6話掲載です。
 前回はエピソードのブリッジ的な回でしたが、今回はいよいよ《セックス・ショー》。
 というわけでエロエロです。ガチムチ淫乱ヒゲ坊主のアキラが、バリタチの龍アニキを相手に、人前であんな姿やこんな姿、あられもない恰好を晒しまくり……とか、エロビの宣伝文句っぽく書いてみたり(笑)。
 連載という形態の利点と「バディ」の誌面の大きさを活かして、大ゴマの連打でお送りしているので、春画的な絡み絵画集みたいにもお楽しみいただけるかと。
 そして、最終ページを見て頂ければお判りかと思いますが、次回もまたエロエロな予定なので、よろしかったらぜひ続けてお買い求め下さいませ!

Badi (バディ) 2012年 08月号 [雑誌] Badi (バディ) 2012年 08月号 [雑誌]
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2012-06-21

ちょっと宣伝、アートブック“FUR: The Love of Hair”に作品掲載

fur_cover2
 先日ドイツのBruno Gmünder社から出版された、体毛ラブなゲイ・アート・アンソロジー、”FUR: The Love of Hair”に作品数点掲載です。
 二年ほど前にも、同社から出た同テーマのアートブック“Hair – Hairy Men in Gay Art”に作品を提供しておりますが、今回の“FUR: The Love of Hair”はまた別編集(エディターも違う)の本。とはいえ内容的には”Hair”同様に、やはり体毛やヒゲをモティーフにしているアーティストの絵や写真を集めたアートブック。
 ただ、約A5サイズとコンパクトだった”Hair”に比べて、今回の”FUR”は約A4サイズと大判。こんな感じで、”Hair”や「バディ」なんかと大きさを比較すると、その大判ぶりが良くお判りかと。
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 サイズが大きい分、当然図版のサイズも大きくなり(基本1ページ1点か見開き1点)、迫力も倍増。
 ハードカバーのフルカラーで、ページ数も250ページ以上。いつものことながら印刷や造本もしっかりしていて、アートブックとしてはなかなかステキな仕上がりです。
 価格は国によって異なりますが(Bruno Gmünderは拠点こそドイツですが、販売網はワールドワイド、ヨーロッパから南北アメリカ大陸まで、幅広く販売されています)、だいたい3500円程度といったところでしょうか。

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 で、私の作品は(確か)3点掲載されているんですが、うち2点はこのように見開きでの掲載なので、自分で見てもかなりの迫力。
 ページの右上にハングル文字があるのは、これは本全体を通じて、FUR(毛皮)を意味する言葉が、各国語であちこち書かれている……というデザイン処理のせい。じっさい私の絵が載っている他のページでは、ペルシャ語(アラビア文字)が配されていたり(笑)。

 というわけで、私以外にも体毛系の絵や写真がギッシリで、例えばこんな感じ(左/スペインのヴィクトル・ヴィレンの絵、右/アメリカのデヴィッド・グレイの写真)だったり、
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はたまたこんな(左/イギリスのチャーリー・ハンターの絵、右/アメリカのクリス・ローマの写真)だったり。
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 左右にそれぞれ、モチーフやポーズ的に共通点のある絵と写真を、対比させて並べてあったりして、そういった全体の構成も楽しい本です。
 版元Bruno Gmünderのサイトでも、内容見本が見られます。こちら。書影右にあるflip throughというオレンジ色のタブをクリックすると、本の中味が数ページぺらぺら捲って見られます。少し捲ると私の絵も出てきますんで(笑)。

 他にも、私の知り合い系だと、アメリカのミノルとか、
fur_minoru

フランスのギイ・トーマスとか。
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 また、知り合いとかじゃありませんが、チャーリー・ハンターのこのドローイングとかも、実に惚れ惚れしますね。インデックス見たら、私と同い年でした。
fur_CharlieHunter

 というわけで、熊好き体毛好きなら存分にお楽しみ頂ける一冊だと思うので、是非一冊お買い求めを……と言いたいところなんですが、残念ながら例によって、日本のアマゾン「だけ」取り扱いなし。
 ただ検索してみたところ、ジュンク堂のカタログにはありました。こちら
 海外のアマゾンだと、どこでもちゃんと取り扱っているので、とりあえず、アメリカアマゾンイギリスアマゾンのリンクを貼っておきます。多分イギリスからの方が、送料も含めて安く買えるのではないかな?(経験から言うと)

「映画秘宝」とか『スパルタカス』とか

 現在発売中の「映画秘宝」7月号で、小特集「海外ドラマ夏の陣! 今、本当に面白い最新ドラマはこれだ!」に、私、連続TVドラマ版『スパルタカス』について、文章を書かせていただいております。あと、巻末の近況欄にもちびっと。
 よろしかったら是非お買い求めくださいませ。

映画秘宝 2012年 07月号 [雑誌] 映画秘宝 2012年 07月号 [雑誌]
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2012-05-21

 このTVドラマ版『スパルタカス』、記事にも書いたようにエログロ度がハンパないんですが、ゲイ目線でもうちょい追補しておきませう。
 まずとにかく、メインの登場人物が奴隷剣闘士なので、基本的にマッチョばっか、加えて常に半裸。更に全裸シーンもふんだんにあり、逞しいケツはおろかナニも丸出しに。
 同性愛要素&描写もしっかりあり、男同士のラブはもちろん、ガンガン肛門性交するシーンまで登場。
 責め場も盛り沢山で、鎖で繋がれたり鞭で打たれたりといった基本はもちろん、宴会で見せ物的に女とセックスさせられる羞恥系とか、アレをちょん切られて晒し者といった無残系も。
 古代ローマのグラディエーターネタなので、マッチョが惨殺される場面にも事欠かず、しかもかなりのゴア描写。
 そんなこんなで、残酷度とエロ度は過去の類作を遙かに凌駕する充実っぷりなので、普通に見ても充分に面白いんですが、下心で見てもタップリ堪能できるかと。

スパルタカス ブルーレイBOX [Blu-ray] スパルタカス ブルーレイBOX [Blu-ray]
価格:¥ 13,650(税込)
発売日:2012-05-11
スパルタカス DVDコレクターズBOX スパルタカス DVDコレクターズBOX
価格:¥ 9,240(税込)
発売日:2012-05-11


 内容的にはプリクエルに当たるシリーズ番外編も来月リリース。

スパルタカス序章 ゴッド・オブ・アリーナ ブルーレイBOX [Blu-ray] スパルタカス序章 ゴッド・オブ・アリーナ ブルーレイBOX [Blu-ray]
価格:¥ 6,300(税込)
発売日:2012-06-22
スパルタカス序章 ゴッド・オブ・アリーナ DVDコレクターズBOX スパルタカス序章 ゴッド・オブ・アリーナ DVDコレクターズBOX
価格:¥ 5,040(税込)
発売日:2012-06-22

<6月29日追記>
『スパルタカス序章 ゴッド・オブ・アリーナ』の方も全話鑑賞したので、感想を簡単に。
 あのキャラの過去はどんなものだったのか、とか、こいつがどんなきっかけで正編に見られるような態度へと変わるのか、とか、正編に続く仕掛けが様々施されたプリクエルとしての面白さもさることながら、独立した一作品として見ても良く出来ていて、正直期待以上の内容。
 表現面の《容赦ない人体破壊描写+隙あらばエロ》のコンボは相変わらず健在ですが、ストーリー自体が全6話とコンパクトなこともあって枝葉も少なく、ラニスタとグラディエイターそれぞれの上昇志向を、闘技場の建設&こけら落としの大会開催と重ね合わせて見せる構成が、実に巧み。ラストの処理も上手く、後味も上々。
 個々のエピソードも、ぶっちゃけ正編を見ていると「こいつは死なない」というのが判ってしまうんですが、それを「じゃあどうやってここを切り抜けるのか」みたいな見せ方を上手く組んでいます。逆に「こいつは正編に出てこないから、きっと途中で死ぬか消えるかするだろう」というキャラにもいるんですが、こちらはいつものようにハラハラしながら見ていればいいし、更にこちらの予測を良い意味で裏切ったりもしてくれるので、やはり実に面白い。
 ゲイ目線のお楽しみどころとしては、相変わらず半裸のマッチョだらけ&ケツやチンコ丸見え場面多々ありなのに加えて、正編で登場したゲイ・カップルが、いわば《マッチョ&お稚児》的な関係だったの対して、こちらの序章では剣闘士同士、つまり《マッチョ&マッチョ》のカップルなのが大いに嬉しい。こいつらがいかにも、野郎臭く荒々しく互いを求め合うラブシーンは、描写自体はさほど過激ではないんですが(キス、ハグ、そしてフェラチオの暗喩表現くらい)、それでも見ていてなかなかグッときます。
 SM目線としては、第1話からして早速、道端で全裸で鞭打たれているシーンあり。剣闘士が仲間に騙されて、ローマ人にケツを掘られてしまう……なんてエピソードもあり、これもなかなかグッときたんですが、残念ながら実際の行為場面は描かれず。……ケチ(笑)。

同人アンソロ「大江戸春画枕絵考察 どうしてこうなった?!」のお知らせ

 今週末、5月26日(土)開催の野郎系オンリー同人イベント「野郎フェス2012」にて初売り予定の、岡惚屋淫鉄(岡田屋鉄蔵)さん主催による同人アンソロ「大江戸春画枕絵考察 どうしてこうなった?!」に、私も参加させていただいております。
 アンソロの趣旨は、歌川国芳が描いた男色春画『吾妻婦理』を元に、参加作家が各々イマジネーションを膨らませて、絵やマンガなどを描くというもの。参加作家は主催の岡惚屋淫鉄さんを筆頭に、五十音順に奥津直道さん、かふおさん、ZINさん、山田参助さん……等々、実に豪華というか濃ゆいというか、独特の布陣となっております。

・アンソロの詳細はこちら→OKDY オフ情報〜岡田屋鉄蔵(岡惚屋淫鉄)さんの同人情報ブログ
・イベント「野郎フェス」の詳細はこちら→野郎フェス2012〜公式サイト

 で、私はと言うと、16ページのマンガ『どうしてこうなった! 江戸春画枕絵考察』を描かせていただいております。
doushitekounatta
 内容は、前述のように歌川国芳の『吾妻婦理』が、いったい何がどうしてそうなったのかというのを想像して描いたものです。
 せっかく商業誌的な制約のない同人誌なので、ちょいと技法的な実験なども試みております。具体的には、浮世絵的なシンプルな線描に通じる魅力が出せないかと思い、体毛以外は全て筆ペンを使って描いてみました。
 また、背景もデザイン的に処理してみたかったので、手描きではなくIllustratorのパスで作成し、それをPhotoshop上で手描きのキャラクターと合成してみたり、更に、フキダシからシッポを全て排除してみたり……といったようなこともやっていたり。
 というわけで、普段雑誌に描いているマンガとは、ちょっと画面の印象が異なっているとも思いますが、そんなところも含めてお楽しみ頂けると幸いです。

 岡田屋さんからは、イベント後には通販などの手段も考えていると伺っているので、ご希望の方はOKDY オフ情報 をマメにチェックして下さい。(ただし岡田屋さんへの直接のお問い合わせ等は、ご迷惑になるのでお控え下さい)

<5月29日追記>
 通販情報アップされました。こちら

「肉体派」シリーズ、最終号です

kilt
 本日発売の「肉体派ガチ! vol.3 特集/着衣エロ」に、折り込みカラーポスターとインタビュー(4ページ)が掲載されています。
 カラーポスターの方は、お題が《着衣エロ》ということなので、最近ちょっとマイブームの《キルト男子》を描かせていただきました。
 さて、この号の奥付にもあるように、「肉体派」シリーズはこの号をもって休刊となります。理由は、詳細は省きますけれど、ざっくり言うと都条例がらみということで。
 前身の「筋肉男」から数えると、もうこのシリーズとのお付き合いも十年になりますが、BLとゲイの垣根を取っ払ってしまった意義のあるシリーズなだけに、終了は残念至極。描くのも読むのも、どちらも楽しいお仕事でしたし、忘年会などをきっかけにして、執筆作家の皆様とも楽しく交流させていただけたので。
 タイミング的に、この最終号への執筆がマンガではなく、カラーイラストとインタビューになってしまったのは、ちょっと口惜しい気もしますが、是非ご覧くださいませ。

肉体派ガチ! VOL.3 (OKS COMIX) 肉体派ガチ! VOL.3 (OKS COMIX)
価格:¥ 920(税込)
発売日:2012-05-23