投稿者「Gengoroh Tagame」のアーカイブ

ちょっと宣伝、マンガ『エンドレス・ゲーム』第3話掲載です

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 3月21日発売の雑誌「バディ」5月号に、集中連載マンガ『エンドレス・ゲーム』第3話掲載です。
 先月ちょっと一回お休みしてしまいましたが、今回もエロエロでございます。何つっても《日常ベースのこってりハードなエロマンガ》が基本コンセプトなもので(笑)。
 けっこうキャラが自然に動いてきたので、予想していたよりも少し長くなるかもな……なんて予感も。主人公のヒゲ坊主も、描いていてけっこう楽しいし(笑)。
 ただまぁぶっちゃけこの手の話は、長くしようと思えば幾らでも続けられるので、落としどころをどこに持ってくるか……ってのが勝負どころで、全体の長さもそれに左右されるという感じではありますが。さて、どうなりますやら(笑)。
 とりあえず来月もまたエロがメインの展開を用意しておりますので、いましばらくお付き合いくださいませ。

Badi (バディ) 2012年 05月号 [雑誌] Badi (バディ) 2012年 05月号 [雑誌]
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2012-03-21

“1920 Bitwa Warszawska (Battle of Warsaw 1920)”

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“1920 Bitwa Warszawska” (2011) Jerzy Hoffman (Jerzego Hoffmana)
(ポーランド盤DVDで鑑賞、米アマゾンで入手可能→amazon.com

 2011年制作のポーランド映画。インターナショナル題”Battle of Warsaw 1920″。監督は『ファイアー・アンド・ソード』『THE レジェンド 伝説の勇者』のイェジー・ホフマン。
 第一次世界大戦直後のポーランド・ソビエト戦争を描いた戦争スペクタクル+メロドラマで、ポーランド初の3D映画だそうな(私は2Dで鑑賞)。

 第一次世界大戦直後、レーニン&スターリン以下ボリシェビキは、欧州全体に社会主義国家連合を打ち立てるために、まずポーランドを押さえようとする。
 主人公の軍人ヤンは、赤軍の侵攻に備えての出征前夜、キャバレーの歌姫オーラに唐突に結婚を申し込み、オーラもそれを受諾する。二人は結婚式を挙げ、ヤンはオーラに「必ず戻ってくる」と約束して出征する。しかし出征先で、妻のオーラの写真を娼婦だと揶揄されたせいで諍いとなり、結果共産主義者の濡れ衣を着せられ処刑されそうになるが、そこに赤軍が攻め込み、ポーランド部隊は破れヤンは捕虜になる。
 一方ワルシャワでは、独立したばかりのポーランド国家元首ピウスツキ元帥とその腹心が、ボリシェビキの侵攻に対して策を練っており、やがてグラブスキ首相を廃して新首相を立て、農村や聖職者も巻き込んだ挙国一致の愛国精神を盛り上げることに成功する。
 そんな中オーラは、かねてから彼女を狙っていた男に、ヤンは生きているが赤軍に寝返ったという情報を元に脅され、身体を強要されそうになるが、やがて彼女自身、自分にもできることがあるはずだと、看護婦となって戦場に赴く。
 ヤンも無事に赤軍の手から逃れ、コサック兵の助けもあってポーランド軍に復帰するのだが、赤軍はワルシャワに向かって着々と侵攻中しており……といった内容。

 視覚的な部分に限定して言えば、あれこれ目の御馳走的な見所が沢山あり、それだけでもけっこう楽しかったんですが、映画全体の出来はと言うと……う〜ん、これは決して褒められたものではないかな、というのが正直なところ。ドラマとしては、安っぽいドクトル・ジバゴみたいな感じです。
 イェジー・ホフマン監督の、ちょいと前時代的な娯楽センスは、個人的にはけっこう好きなんですが、古典原作の時代もの『ファイアー・アンド・ソード』や、エピック・ファンタジーの『THE レジェンド 伝説の勇者』では、それがオーセンティックな味わいに繋がって有効だったのが、こういう近代ものになると、ちょっと裏目に出てしまった感あり。
 例えば、ヒーロー&ヒロイン周りには、彼らの数奇な運命を盛り上げる様々な事件が起きるんですが、なんつーか、ジュール・ヴェルヌの冒険小説ですかってな感じで、エピソードの内容もキャラの立て方も、箸休めのユーモア場面の入れ方も、何ともかんとも作劇の感覚が古くさい……。
 それでもまぁ、そういったクリシェ多用の娯楽活劇に徹してくれれば、それはそれでいいと思うんだけど、戦闘シーンになると、今度はいきなり今様のリアル志向で、戦争という名の殺し合いをきっちり描く系の生々しさになるんで、メロドラマ部分との水と油感がスゴい。
 かと思えば、ピウスツキ元帥を中軸としたパワーゲーム的な部分は、そのとき歴史が動いた系の再現ドラマみたいな感じ(鑑賞後にウィキペディアでいろいろ見てたら、けっこう皆さん本人にそっくりなので驚きましたが)なので、なんかもう軸足をどこに置いて見たらいいものやら……。

 ただ、映像自体は、過去のイベントの再現という意味でも、スペクタクルな見せ物という意味でも、物量感やスケール感は申し分なく見応えあり。デジタル・コンポジットは使っているとは思いますが、CGくささは殆どないので、重量感もかなりのもの。
 それと、ピウスツキ元帥役にダニエル・オルブリフスキー、Bolesław Wieniawa-Długoszowski(読めない……)役にボグスワフ・リンダ、グラブスキ首相役にミハウ・ジェブロフスキー、音楽がクジェシミール・デブスキ……なんて面々も、個人的には好き要素。
 また、映画の内容と合っているかどうかは別としても、ニヒルなコサックとか、薄幸の女性脇キャラとか、ヒロイックな神父様とか、逆境に立ち上がるヒロインとか、センチメントなエモーションの盛り上げ方とか、予定調和とか、昔の冒険活劇やソード&サンダルを思い出させるような、個人的にはある意味で楽しい要素もアレコレあり。

 という感じで、映画自体の出来としてはイマイチ(IMDbで4.6/10、ポーランドの映画サイトで5.1/10という評価も納得 )ですけど、歴史の絵解きとしての映像的な見せ物と割り切って見れば、お好きな方なら目の御馳走はいっぱいあると思います。
 事前の期待値がけっこう高かったので、個人的にはちょっと残念な感はありますが、それでも映像だけでも満足できちゃうような、そんな大作ではあります。
 因みにポーランド盤DVDは、英語字幕付き&メニュー画面もちゃんと英語も用意されているというインターナショナル仕様で、ケースもデジパック&写真いっぱいのブックレット式で、なかなか豪華な作りでした。
【本国版予告編】

【インターナショナル版予告編】

【追記】2014年9月26日に、『バトル・オブ・ワルシャワ 大機動作戦』の邦題で、目出度く日本盤DVD発売!
[amazonjs asin=”B00M9NTY7G” locale=”JP” title=”バトル・オブ・ワルシャワ-大機動作戦- DVD”]

“Karzan, Jungle Lord (Karzan, il favoloso uomo della jungla)”

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“Karzan, Jungle Lord” (1972) Demofilo Fidani
(”The Italian Jungle Collection”と題された2 in 1米盤DVDで鑑賞→amazon.com、併録作は女ターザンものの”Luana”)

 1972年制作のイタリア製ターザン……ならぬカーザン映画。どう見てもお馴染みのキャラクターなのに、権利の関係でちょびっとだけ名前が変わってます……ってな系統の良くあるパターン(笑)。伊語原題”Karzan, il favoloso uomo della jungla”。
 主演のカーザン役は、ジョニー・キスミューラー・Jr……って、誰(笑)。いちおうIMDbによるとアルマンド・ボッティンという役者さんで、この映画でのみ、このキスミューラー・Jrを名乗っている模様。
 なお監督のデモフィロ・フィダーニという人は、ツイッターでフォロワーさんに教えていただいたんですが、「マカロニ・ウェスタンファンの間ではクズ映画ばっかり撮ることで名高い監督」なんだそうです(笑)。

 アフリカ奥地、ジャングルの蔦を使ってサーカスのように移動する、謎の半裸白人男性の映像が撮影される。
 探検家のフォックスは、おそらく十数年前に同地で消息を絶った飛行機と関係があるのではと推測し、富豪のカーター卿に探検のスポンサーになってくれと頼む。野人を捕らえ、再度文明化することができるかということに、学術的興味を感じたカーター卿は、スポンサーを引き受け、恋人のモニカと共に探検に同行するとにする。
 アフリカに渡ったカーター卿一行は、現地で曰くありげな男《クレイジー》やポーターを雇い、毒蜘蛛や毒蛇に襲われながらも、野人の住むタブーの台地へと近づいていく。しかし、そこで原住民の襲撃を受け、隊員の一人が死に、荷担ぎ人足は逃げ帰り、残りの者は捕まってしまう。
 探検隊は柱に縛られ、あわや危機一髪…というときに、崖の上に件の野人カーザンが姿を現すが、その横には革ビキニを着たブロンドの女野人シーランの姿もあった!(えっ)
 シーランは原住民のアフロヘアーの女とキャットファイトを始め(ええっ)、そしてカーザンはモニカ一人を助け出し、自分の第二夫人にするために樹上の住居に連れ帰り(えええっ)、モニカはシーランに言葉を教えるが、シーランとカーザンはモニカを尻目に泉で水泳を始め(はあ?)、ムーディなラウンジ風オルガン音楽にのせて、腰布&革ビキニの男女のスローモーションが延々延々延々と続き……(誰か助けて…)。
 しかしモニカの協力で、カーザンとシーランは探検隊に捕まってしまい、縄で縛り上げられて連行されてしまう。そこにチンパンジーのチータが、二人を救いにくるのだが、カーザンだけは助かったものの、シーランは囚われの身のまま。
 カーザンはシーランを助けだそうと、隊の後を尾けるのだが、そこにワニが襲いかかったりゴリラの着ぐるみが襲いかかったり…ってな内容。

 え〜とまぁ、何と言いますか…久 々 に ヒ ド い も の を 見 た って感じ(笑)。
 前半の延々と続く、スリルもへったくれもない探検行の段階から、早くも退屈で死にそうになるんですが(まぁ、猛獣と人間が決して同一画面にはフレームインしないなんてのは、低予算映画のお約束なので目を瞑りますけど……)、その後、いったん原住民を撃退して助かったはずなのに、次のカットで何の説明もなく、いきなり捕まって柱に縛られているあたりでは、見ていて思わず相棒と一緒に「ええっ?」と、素っ頓狂な声を上げてしまったくらい(笑)。
 後はもう、シッチャカメッチャカとしか(笑)。モニカが野人に掠われたのに、ちっとも心配したり救出に向かおうとしない他の隊員たちとか、掠われたモニカが唐突にシーランに言葉を教え始めるくだりとか、突っ込みだしたらきりがないシロモノ(笑)。
 時代の反映なのか監督の趣味なのか、ヘンにクローズアップやあおりを多用した、カットアップみたいなサイケ風味の演出の意味不明さとか、最後の「ええっ、そんなオチ???」という驚天動地のい〜かげんエンドとか、サルが砂浜に棒で《THE END》と書くエンドクレジットとか、もう勘弁して(笑)。

 まあ、どんだけヒドいかってのを、ちょっとネタバレ込みで説明するので、お嫌な方はこの段は飛ばしてください(笑)。
 まず、曰くありげな《クレイジー》というキャラ。ニヒル系な外見の白人男性で、いちおう初登場時には「こいつは口がきけないが、腕は立ち、しかも第六感があるので役に立つ」と紹介されて、それで探検隊に加わるわけです。
 さて、こいつが探検隊に加わって何をするかというと、歩いているときも野営の間も、ひたすらハーモニカを吹いているだけ。で、そのハーモニカを落っことしてしまい、それを探している間に隊から遅れてしまい、オマケに蛇に襲われる(笑)。
 原住民との交戦が始まると、草むらの中に身を伏せているときに、目の前をトカゲだかなんだかが歩いているのを見つける。で、周囲の騒動はどこ吹く風で、それを捕まえて歯で頭を食いちぎる。それだけ(笑)。
 最終的には、原住民の投げた槍から隊長を庇って殺されちゃうんですが、え〜と、第六感とゆー設定はどこに消えたのかしら……しかもちっとも役に立ってないし……これで墓標にハーモニカを添えられても、感動どころか苦笑しか浮かばないんですけど(笑)。
 もう一つ、「ええっ、そんなオチ???」という驚天動地のい〜かげんエンドについても。
 いちおうカーザンは、シーランを連れて行った探検隊に追いついて、彼女を助け出すんですが、自分は銃に撃たれて負傷し、捕まってしまう。で、フォックスは「こいつを見せ物に出して云々」と、儲け話の皮算用を始めるが、カーター卿は「自分の興味は学術的なもので、金儲けではない」と反対する。
 そしてカーター卿は、「最初は、いったん野人となった人間を、再度教育して文明化することで、科学の発展に貢献できると思っていたが、しかし今カーザンを連れ去ってしまうと、ジャングルに一人残されたシーランは、可哀想に、生き延びることができないだろう」と主張し始め、逃げたシーランが茂みの中でメソメソしているのを、猿のチータが慰めるカットなんかを挟みつつ、カーザンを解放すべきだと主張するカーター卿と、いや、このまま連れ帰って見せ物に出すと言い張るフォックスの口論が続き、カーター卿が「金が目的なら私が出そう!」とか何とか言った、次の瞬間。
 シーンは陽光まぶしく波頭きらめく浜辺(どこ???)に変わり、ムーディーなラウンジ音楽が流れる中、原初世界のアダムとイヴよろしくキャッキャウフフと戯れあうカーザンとシーランの映像になり、チータが棒きれで砂に《THE END》の文字を書いて、はいおしまい。見ているこっちは、あまりの唐突さに、ただただポカ〜ン(笑)。

 という具合で、特にヒドかった二つをピックアップしましたが、ぶっちゃけ全編こんな感じなので、ホント突っ込みだしたらキリがないです(笑)。
 こういう《偽ターザン映画》は、インド版とかトルコ版とかエジプト版とか(日本版とかポルノ版とかも……)見ましたが、その中でもこのイタリア版は、かなりヒドいシロモノなので、ネタとして楽しみたいという方以外には、決してオススメいたしません(笑)。
 ”Karzan, Jungle Lord”から、シーランを追うカーザンが、唐突にゴリラ(の着ぐるみ)に襲われるシーンのクリップ。これまた余りの唐突さに加えて、着ぐるみとか吠え声とかいろいろヒドさに、飲んでたコーヒー吹きそうになりました(笑)。

単行本『田舎医者/ポチ』予告編(& Hype 1.5.0 レビュー)

 4月13日発売予定の新単行本『田舎医者/ポチ』の、収録作品のアニメーテッド・プレビュー付き予告編を作ってみました。
 下の画像をクリックするか、このリンクをクリックすると見られますので(読み込みにちょっと時間がかかるかも知れません)、お時間のある時にでもどうぞ。
 収録作品が映画の予告編みたいに動きます(笑)。
inakaisya-pochi-preview

 予告編の制作には、前にここここで書いた、HTML5をベースにしたインタラクティブなアニメーションを作れるアプリケーション、Hypeを使いました。
 先月メジャー・アップデートがあったので、今回初めてバージョン1.5.0を使ってみました。レイアウトやアニメーション編集の機能強化、HTMLウィジットやメールフォームの追加、iBooks Authorへのエクスポートなど、様々な機能がバージョンアップしたんですが、確かにバージョン1.0と比べて格段に使いやすくなっています。
 というわけでその中から、使ってみて「良くなった!」と感じたものを、幾つかピックアップ。

【Locking and Visibility】
 Adobe Illustratorを使ったことのある方なら判ると思うんですが、Hypeも画像やテキストといったオブジェクトを、下から上に重ねていくように画面をレイアウトしていきます。で、今まではそれが重なっていくと、どうしても下に隠れたオブジェクトを選択するのが難しくなっていったりしました。
 新バージョンではタイムライン上で、可視/不可視のオン/オフが、アイコンのクリック一つで出来るようになったので、そういった「うが〜、この下にあるオブジェクトを選択したいのに、上のが邪魔で選択できねぇ!」みたいなストレスが皆無に。
 そしてアニメートしないオブジェクトをロックすることも出来るようになったので、つい間違ったオブジェクトを動かしてしまってundo……ってなこともなくなりました。

【Sweet Snapping】
 これはIllustratorのスマートガイド機能と似たような感じで、この機能をオンにしておくと、いま選択してドラッグしているオブジェクトと、他のオブジェクトとのセンター合わせや距離(ピクセル数)などのガイドが表示されるようになる、というもの。
 前のバージョンでは、画面全体のセンターあわせくらいしか、こういうガイドは出なかったので、この新機能でオブジェクトの位置を揃えたりするのが格段に楽になりました。

【Rulers and Guidelines】
 作業ウィンドウの上方と左方に、ルーラー(定規)が表示できるようになりました。このルーラーからはPhotoshopと同じ要領で、ガイドを引っ張り出すことができます。
 当然このガイドにはオブジェクトをスナップできるので、これまたレイアウト作業が格段に便利に。そしてこのガイドは、現在作業しているのとは別のシーンにコピーもできるので、複数シーン間でのレイアウトの統一なども、ぐっと楽に。

【Grouping】
 複数オブジェクトをグループ化できるようになりました。
 以前は、複数のオブジェクトを同時に同じ動きをさせたい場合、複数オブジェクトを選択した状態で、録画機能をオンにしてまとめてドラッグ&ドロップ……とかしなきゃならなかったのが、このグループ化機能によって、アニメーションを各オブジェクトにではなく、グループ全体に適用するころができるようになりました。
 これはまさに切望していた機能強化で、実際すごく便利!

【Redesigned Animation Interface】
 アニメーション用のタイムラインが、今までは一つだったのが、新バージョンではオブジェクト用と各オブジェクトのアニメーション用の、二つのウィンドウに分かれました。
 これによって、上のオブジェクト用ウィンドウでオブジェクトを選択すると、選択されたオブジェクトのアニメーション用タイムラインが下のウィンドウに表示されるという形になり、今までのようにアニメートしたいオブジェクトの属性を、いちいち開いたり畳んだりという手間が省かれました。
 更に、オブジェクト用ウィンドウに表示されているアニメーションのタイムラインを直接選択&ドラッグすることで、開始位置や終了位置を変えたり、全体の位置そのものを移動したりできるようになりました。
 これまた、以前は変更したいアニメーション用のキーフレームを、タイムライン上で全て選択してからドラッグしたりしなければいけなかったので、タイミングの微調整はもとより、いったん全体を作ってしまってから、頭や途中に別のアニメーションを挿入したくなったので、そこから後のアニメーション全てをまとめて後ろに動かしたい……なんて作業が格段に楽になりました。

【Bounce and Instant Timing Functions】
 アニメーションのモーション指定が、今までのLinear(一定速度)、Ease In Out(最初と最後だけゆっくり)、Ease In(最初だけゆっくり)、Ease Out(最後だけゆっくり)の4種類に、新たにInstant(途中経過のアニメートなしでモーションがいきなり切り替わる)とBounce(最後に弾むようなアクション)が加わりました。
 特にInstantがありがたく、例えば今までオブジェクトをいきなりパッと表示したい場合、まずタイムラインの一番頭に透過100%のキーフレームを置き、次に表示したい時間の1フレーム前にも透過100%というキーフレームを置き、1フレーム後の目的のフレームに透過0%のキーフレームを置く……なんて作業が必要だったのが、このInstantを使えば、1フレーム前にキーフレーム云々という作業がいらなくなります。

 以上、今回初めてHype 1.5.0を使ってみて「うぉ〜便利になった!」と自分が感じたポイントを、幾つかピックアップしてみました。
 操作方法もPhotoshopやIllustratorといった定番ソフトのそれに似ているので、特にマニュアル等で確認しなくても、勘と見当でサクサク使える感じです。

ちょっと宣伝、新マンガ単行本『田舎医者/ポチ』4月13日発売です

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 お待たせしました、新刊マンガ単行本『田舎医者/ポチ』、4月13日にポット出版から発売です。
 ホントはもっと早く出る予定だったんですが……いろいろ事情があって(って単純に私のせいなんですが)遅れてしまいました。そこいらへんの経緯は、後書きをお読みくださいませ(笑)。
 収録作品は主に近年の「バディ」掲載作から、『田舎医者(単行本用に6ページ加筆)』『スタンディング・オベーション』『傀儡廻(くぐつまわし)』『ポチ』『ジゴロ』『LOVER BOY』、そしてやはり「バディ」掲載作ですがお蔵出しの旧作『43階の情事(1999年)』、そして単行本用描き下ろし新作『見知らぬ土地で奴隷にされて(24ページ)』の、計8作となります。
 ポット出版さんからの単行本なので、ページ数は一般的なマンガ単行本とかよりはかなり多めの、計270ページオーバー。とはいえ、本文の紙質が良く、わりと薄手の紙なので、単行本の厚み自体はさほどありませんが。
 収録作の内容見本などはこちら
 表紙絵メイキングはこちら
 現在、版元のポット出版さんでは、直接通販の予約受付も始まっています。送料無料で、書店に本が並ぶよりも、少し早めにお手元に届くはず。
 先着30名様限定ですが、私の直筆サイン本サービスもあり。
 予約方法等、詳しいことはこちらのページをどうぞ。
ポット出版へ直接のご予約いただくと先着30名様まで田亀源五郎直筆サイン入り!!─『田舎医者/ポチ』(著●田亀源五郎)の予約を開始しました

【追記】なんかあっという間に30名をオーバーしまったそうで、編集さんと話して急遽倍の60名様までに増やしたんですが、それも間もなく定員に達したそうです。ありがとうございました!
 サイン本の受付は終了しましたが、通常の予約は引き続き受付中です。ご希望の方はどうぞご利用ください。
ポット出版/『田舎医者/ポチ』予約ページ
 というわけで、もうじきにお届けできると思います。お楽しみに!
 アマゾンでも予約可能。
『田舎医者/ポチ』amazon.co.jp

●書誌データ
『田舎医者/ポチ』田亀源五郎
希望小売価格:2,400円 + 税 (非再販商品)
ISBN978-4-7808-0178-1 C0979
A5判 / 272ページ
ゲイ・コミックの巨匠にして、世界的なゲイ・エロティック・アーティストである田亀源五郎が描く傑作短篇集。
表題作「田舎医者」(初出時より6頁加筆)をはじめ、描き下ろし作品「見知らぬ土地で奴隷にされて…」(24頁)収録。
輪姦(和姦)もの、ハードSMもの、ショタ系……などなど、さまざまなバラエティに富んだ計8篇。著者自身による作品解説付。
目次
◎田舎医者
◎スタンディング・オベーション
◎傀儡廻(くぐつまわし)
◎ポチ
◎ジゴロ
◎Lover Boy
◎見知らぬ土地で奴隷にされて…
◎43階の情事
・初出一覧
・あとがき
・プロフィール

“Yamada: Way of the Samurai (ซามูไร อโยธยา)”

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“Yamada: Way of the Samurai” (2010) Nopporn Watin
(イギリス盤DVDで鑑賞→amazon.co.uk、”Muay Thai Warrior”のタイトルで米盤DVD&Blu-rayあり→amazon.com

 2010年制作のタイ映画。山田長政を主人公にしたフィクショナルな時代アクション映画。
 主演はタイで活躍する日本人男優、大関正義。タイ語原題”ซามูไร อโยธยา”、別題”Yamada: The Samurai of Ayothaya”等。

 ナレスワン大王治世下のアユタヤ王朝。未だ敵国ホンサワディー(ビルマ)の脅威衰えぬ中、アユタヤ日本人町の侍、山田長政は、アユタヤで敵国の手先となって暗躍する者の中に日本人がいるらしく、その頭目を突き止めろとの命を受ける。
 しかしその直後、忍者たちの襲撃を受けた長政一行は、その黒幕が身内の日本人重臣だと知る。仲間は皆殺されるが、長政は一人、通りがかったタイ人の衛兵たちに救われ、彼らの元で治療を受ける。
 命を救われた恩義もあり、長政は次第に彼らに親しみを覚えるようになる。しかし自分の正体を知られた黒幕は、唯一の生き証人である長政に刺客を差し向ける。長政はそれを撃退るが、タイ人衛兵たちは、彼が同じ日本人から命を狙われていると知り、不信感を覚える。しかし、衛兵たちの師である僧侶は、「人には他人に言えない秘密もあるものだ」と、彼らの猜疑心を諫める。
 一方で長政は、自分の日本古武道でタイ人衛兵たちに試合を挑むが、彼らのムエタイに手もなく打ちのめされてしまう。長政は、件の僧侶にムエタイの伝授を頼み、最初はそれを拒んだ僧侶も、長政の「自分は日本生まれだが、アユタヤで死にたい」という決意を聞き、彼にムエタイを教えることにする。
 やがて長政のムエタイは上達し、タイ人衛兵の一人とも親友になり、ついにはナレスワン大王の近衛兵を選抜するトーナメントにも出るようになる。しかしその一方で、ホンサワディー軍はアユタヤ侵攻を計画しており、また、依然自由の身のままの例の黒幕も、長政の命を狙い続けていて……といった内容。

 え〜、ぶっちゃけ、山田長政とナレスワン大王が同時代に出てくるという点から言っても、史実的には全く則しておらず、完全なフィクション作品です。
 映画全体のテイストも、いわゆる史劇ではなく完全に娯楽アクション映画。昔のソード&サンダル映画のノリに近いです。
 で、私はこれ、好きです。
 何でも衛兵たちは本物のムエタイ選手たちだそうで、訓練にしろ戦闘にしろ、アクションシーンの見応えはバッチリで、話も、愛国心とか友情とかコッテコテのオトコノコ系で、同時に日タイ友好に関する目配せもしっかりあって、しかも基本的に、全編半裸のアジアン・マッチョしか出てこない(笑)。
 200人の敵を10人で迎え撃つなんて燃え系展開もあれば、宴会なんかで歌舞シーンが入ったり、キレイどころとの仄かなロマンスがあったり、おませな少女キャラによる箸休めがあったり……と、内容的には往年のソード&サンダル系娯楽映画を彷彿させるサービス具合。エピソード構成なんかも、古式ゆかしき大衆娯楽活劇映画のクリシェに則ったという感じで、基本的にそういうのが好きな私なんかは、ちょっと嬉しくなっちゃうくらい。一方、それが古くさいと感じてしまう方もおられそうではありますけど。

 アクションの演出も、血飛沫こそCGですけど、基本はエフェクトで誤魔化したりしない正当派。その肉体をフルに使った立ち回りだけでも、なかなかの充実感&見応えでした。無双の戦士たちが返り血で真っ赤になって、スゴい形相で相手をバッタバッタ斃していく様は、カッコいいと同時に、何だか戦いというより「Massacre!」って感じもして、見ていて敵が気の毒になってくるくらい(笑)。
 日タイ友好という点でも、例えば僧侶が長政にムエタイを伝授するくだりで、「ムエタイの真髄は、手・肘・足・膝といったものを武器として用いる《攻め》にあるが、日本古武道の真髄は、相手の力を受けつつ、それを利用して攻撃に転ずるところにある。よって、もしそれらの異なる二つを共に習得し、それを合体させれば、そなたは無双の武術を身につけることになる」と説いたり、また、長政が友となったタイ人衛兵に、日本刀の柄をアユタヤの木工細工に変えた得物を送り、それをイコール、彼らの理想とする生き様に重ねて見せるなどといった形で描いていて、これもクリシェ通りながらも上手く表現しているなという感じ。
 また、生まれや国は違っても、どこの土地に骨を埋めるか、何を愛して何を守るか、それさえ同じならば同士であるといった部分も、男泣き系の燃え要素としては、けっこうグッとくる部分。
 で、ちょっと面白かったのが、《見かけや出自が違っても同じ人間》ということを表現する場合、我々の感覚だと《肌の色は違えども血の色は同じ》というのがあると思うんですが、タイだとどうもそうではないらしいということ。映画の中で長政は、タイの少女から「白い顔」などと呼ばれ、日焼けによる肌の色の違いという意識があるようなんですが、更に《血の色は違っていても》という言葉が頻繁に出てくる。まぁ、英語字幕の翻訳に因るのかもしれませんが、この《出自の違い=血の色が違う》というのは、ちょっと日本人にはない感覚ではないか……なんて思ったり。

 主演の大関正義氏は、顔はちょっと冴えないかな〜という気もしますが(すいません)身体は立派。あとナレスワン大王役が、個人的にご贔屓のウィナイ・クライブットだったのが嬉しいサプライズ。まぁ、特別出演的な感じで、さほど登場シーンもありませんでしたが……。
 因みに師となる僧侶役も、『ナレスワン大王(ザ・キング 序章・アユタヤの若き英雄、アユタヤの勝利と栄光)』や『マッハ!弐』の僧侶(後者は未見ですが)や、『ランカスカ海戦 パイレーツ・ウォー』のお師匠さん役とか、『ビューティフル・ボーイ』や『スリヨータイ』にも出ていた、ホントしょっちゅうお見かけする(そしていつもお師匠様的ポジションの)のソラポン・チャトリ。

 正直スケール感はあまり……というか全くない映画なんですが(基本的にアクションがメインで、大規模な合戦シーンなどは皆無)、全体のテイストが完全にコスチューム・アクション映画に統一されているので、それがさほどマイナス要素にはなっていない。ただ、ウチの相棒は「ちょっと安っぽくてイマイチ」と評価。
 個人的な好みとしては、もうちょっとキャラクターを掘り下げるための生活描写などのディテールが欲しかった気はしますが、これはDVD特典の未公開シーンを見たところ、実は長政とヒロイン、おしゃまな少女、子供たちなどによる、ユーモラスかつハートウォーミングなシーンあれこれが、撮影はされていたのに最終的にはカットされてしまったんですな。おそらくテンポ重視で中だるみを避けたんだと思いますが。
 結果、尺も全部で1時間半弱とスピーディな展開ですし、気楽に見られるアクション映画としては充分佳良だと思います。

 まぁ、ぶっちゃけた話、内容的には山田長政である必要は全くなく(What if的な楽しみ方は全くできず)、むしろタイに骨を埋めた無名のサムライの話にした方が、全体の収まりは良くなるのではないかとは思うんですけれど、コスチューム・アクション好きな方なら、お楽しみどころもいろいろありだと思います。
 どっか買い付けて、DVDスルーでいいから日本盤出してくれないかしら……。

Photoshopによるマンガ原稿の仕上げ動画


 先日、ふとした拍子に「Mac OS Snow Leopard以降のQuickTime Playerでは、PCの作業画面の動画キャプチャができる」ということを知って、なんか試してみたくなったので、いつもやっているマンガのPhotoshop上での仕上げ作業をムービークリップにしてみました。
 いざ録画した素材を編集する段になって、ようやくPCの壁紙がちょっとアレなことに気づき、う〜む、もっと無難なものに変えておいた方が良かったか……などと思いましたが、もう後の祭り(笑)。というわけで、画面の真ん中でこっちを睨み続けるヴィクラム様が気になるかもしれませんが(因みに映画『Raavanan』のスチル)、まあ気にしないでください(笑)。

 基本的には、マンガ1ページ分の作業をそのまま丸々録画して、それを4倍速と8倍速を織り交ぜて再生したものです。
 但し、普段ならアクションとバッチを使って、複数ファイルを一度にまとめて処理している作業(この場合は【スキャン画像補整>2値化>セル化>ゴミ取り準備】まで)や、ファンクションキーを割り振ったアクションで、ボタン一発で処理している作業(【グレー画像の網点化】や【完成画像のグレースケールから白黒2値への変換】)などは、そのままだと何が起きているのかちょっと判りにくかったので、この動画クリップ制作用に、後から改めてアクションを使わずに再作業したものを録画した部分もあります。
 また、最後に出てくる完成画像には、キャラクターの上腕にタトゥーが入っていますが、作業動画にはそれが含まれていません。
 というのも、このキャラがタトゥーを入れているということを、すっかり失念して数ページ作業を進めてしまい、気づいたときには既に作業画面の録画も終えてしまっていて……という事情がありまして(笑)。なんか、それ用にわざわざ再作業するのもアレだよなぁ……ってな感じで、そこはそのままにしてしまいました。
 いちおうここで補足しておきますと、タトゥーはベクター画像のパスデータを、Photoshopのカスタムシェイプに登録しておき、それを自由変形とワープを使って形を整えて貼り込んでいます。

 動画制作に関しては、QuickTime Playerでの録画は【ファイル>新規画面収録】で行えます。
 再生スピード変更はQuickTime Proを使って、【ファイル>書き出す>イメージシーケンス】で目的の再生スピードに合わせてコマを落とし、それを再度【ファイル>イメージシーケンスを開く】で動画に戻しています。編集も、これは時系列で繋げばいいだけなので、QuickTime Proの【コピー>ペースト】で大概は済ませています。
 こうして出来た作業動画を、iMovieに読み込み、頭の写真と最後の画像を足し、BGMやテロップを付けています。
 BGMは昔GarageBandで作った曲を使用。Logic Expressでブラッシュアップしたフルコーラス版は、ここにアップしています。

ちょっと宣伝、スパンキングマンガ描きました

endline 本日2月23日発売の「肉体派ガチ! vol.2 特集/雄尻」に、読み切りマンガ『END LINE』掲載です。

 特集が《雄尻》なので(因みに《おしり》と読みます)、スパンキングものを描いてみました。ゲイもののネタとしては定番(特に欧米では)な気がしますが、考えてみると合意のプレイ系スパンキングものって、私は殆ど描いたことがないような気がしたので(『PRIDE』でちらっと出したくらい?)、それをメインに据えて描くのは今回が初めてかも。
 キャラは、大学アメフト部員とそのコーチという組み合わせ。ラブ要素を目に見える形では出さず(水面下でどうなのかは、また別の話)、パターンとしては体育会系ゲイポルノの王道的な様式。

 実はこれを描く際に、エロ部分の修正基準について編集さんから詳しく聞き、それを元に「画面的には修正を入れる必要が全くないのに、でもエロエロ」というのをやってみようと思ったんです。
 いろいろな事情もあって、「肉体派」シリーズの修正が前号からキツくなりまして、実は前号に描いた『モンスター・ハント・ショー』も、かなりキツめのモザイク修正が入るということを事前に伺い、ならばそれを逆手にとってやろうと、ああいう内容にしたんですな。若干の皮肉も込めて(笑)。
 で、今回は更に、モザイクを入れるコマが全くないのに、でもエロい……ってのをやろうと思ったんですが、その作業途中で、諸般の事情でこの「肉体派ガチ! vol.2」から、成年コミックマークが入ることになり、その結果、修正基準も以前のラインに戻ったので、この狙いはあんまり意味がなくなっちゃいました(笑)。

 ってな裏話はともかくとして、いい感じにコンパクトな小品に仕上がったと思うので、よろしかったらお読みくださいませ。お尻好き(穴じゃなくて臀球の方)の方には、特にオススメです(笑)。

肉体派ガチ! VOL.2 肉体派ガチ! VOL.2
価格:¥ 920(税込)
発売日:2012-02-23

“Dabangg”(ダバング 大胆不敵)

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“Dabangg” (2010) Abhinav Kashyap
(インド盤Blu-rayで鑑賞、米アマゾンで入手可能→amazon.com

 2010年製作のインド/ヒンディ映画。肉体派サルマン・カーン主演。義賊気取りの腕っ節の強い警官を主人公にしたアクション映画。タイトルの意味は「恐れ知らず」。
 数々の記録を塗り替えた大ヒット作品だそうで、同国フィルムフェア賞で作品賞を含む6冠を獲得。

 主人公は幼い頃父親を亡くし、母の再婚相手の義父や、後に生まれた弟とは上手くいっていない。やがて成長した彼は、腕っ節が自慢の警察官になるが、義父や弟との関係は改善されていなかった。
 ある日主人公は銀行強盗を一人でブチのめすが、義賊を気取って、取り戻した金は自分が着服してしまう。弟はある娘と恋に落ちるが、彼女の家の貧しさが障害となって、両方の親から結婚の許可を貰えない。思い詰めた弟は、兄の隠していた金を盗んでしまうが、それを母親に見られてしまう。
 一方の主人公も、捕り物中に出会った娘に恋をするが、そんな中で母親が急逝してしまい、それを切っ掛けに主人公と義父との亀裂は決定的なまでに拡がってしまう。更に主人公が、弟の結婚式を横取りするような形で、自分の結婚式をあげたことによって、兄弟関係も更に悪化する。
 それを件の銀行強盗の黒幕の悪徳政治家が利用し、弟に兄を殺させようと仕組むのだが…といった内容。

 これは確かに面白かった!
 正直ストーリー的には新味はなく、ド派手なアクション、歌と踊り、家族の確執と再生、ヒーローと美女のロマンス、政治家のパーティーが絡んだ陰謀、お笑い……等々、古いタイプのインド映画のお約束要素がテンコモリなんですが、3時間越えも珍しくないそういったタイプの映画に比べて、本作はテンポ良く2時間でスッキリとまとめているのに、何よりも感心。
 クリシェのさばき方も上手く、例えば歌と踊りにしても、いきなり海外ロケというお約束を、主人公たちのハネムーンという設定にしていたり、また、お色気サービスで入るダンスも、ギャングの宴会に主人公率いる警察隊が潜入するという、エピソードの繋ぎとして上手く活用していたり、古くからのお約束ごととしての定型を守りつつも、それを構成上無理がないようにする工夫が見られるのが、個人的にはかなりの高評価。
 ド派手なアクションシーンも楽しく、蹴られた人が数メートルも吹っ飛んで壁をブチやぶるなんてのはお約束ですけど、クライマックスにどっかんどっかん爆発を持ってきて、その後に、上半身裸になったマッチョ同士の対決を、エモーショナルな盛り上げとシンクロさせて持ってきたりして、これまた構成の組み方や見せ方の工夫が巧み。
 で、そんなアクションや歌舞シーンが、なんかヒンディ映画というよりタミル映画っぽかったので、てっきり南インド映画のヒンディ版リメイクなのかと思っていたら、さっき調べたらそうではなかったのでビックリ。
 主人公が単なる正義感やマッチョ一本槍でなく、金をくすねたりユーモラスな一面もある、人間味を感じさせるキャラなのも効果的。ヒロインはこれがデビュー作らしいですが、まあ次から次へ美人が出てくるもんだなぁと、これまた感心。
 感動要素が過度にベタベタしていないのも佳良。
 音楽も踊りも、主題歌的な男っぽい”Udd Udd Dabangg”を筆頭に、全体的にゴキゲンな仕上がり。ただ正直、サルマン・カーンの踊り自体は、少し動きのキレに欠けるかな〜という感あり。

 というわけで全体のノリとしては、クラシックな要素をモダンな感覚で再構築したみたいな良さがあります。いろいろテンコモリでトゥーマッチな楽しさもありつつ、かといってそれほど強引な感じもせず、コンパクトで見やすく後味も良しで、「あ〜、満足満足」って感じ。
 インド映画ファンでもあまり馴染みのない方でも、痛快娯楽作が好きな方だったらタップリ楽しめること請け合いの、広くオススメしたい一本。

“Udd Udd Dabangg”

【追記】『ダバング 大胆不敵』の邦題で、2014年7月に目出度く日本公開されました。

“Band Baaja Baaraat”

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“Band Baaja Baaraat” (2010) Maneesh Sharma
(インド盤Blu-rayで鑑賞、米アマゾンで入手可能→amazon.com

 インド/ヒンディ映画。タイトルの意味は「ウェディング・ミュージック・バンド」。
 恋愛抜きの約束で組んでウェディング・プラン会社を立ち上げた、大学を出たての若い男女の仕事と恋の顛末を、若者向けのフレッシュでポップな味付けで、タイトル通り音楽タップリに描いた作品。

 デリーの大学を今年卒業する主人公は、特に将来の展望もなく、出会ったカワイコチャンにコナをかけたりしているがそれも不振。そんなとき家族から、卒業したら田舎に帰れと言われる。
 実家で彼を待っているのは、サトウキビを刈り取る農作業なので、それは嫌だと、何とかこのまま都会で仕事に就こうと考える。そこで先日ソデにされた、卒業したらウェディング・プランの会社(会場の手配や飾り付けや食事や余興と行った、結婚式&披露宴の演出を請け負う)を立ち上げるというカワイコチャンに、一緒に仕事をさせれくれと頼み込む。
 最初は警戒していた彼女も、初めての仕事のトラブルで毅然とした態度をとった彼を見直し、恋愛抜きのビジネスパートナーという約束で共に会社を立ち上げる。
 二人の始めた会社は、少ない予算の結婚式でも、アイデアと真心で立派なものにし、そんな二人の心意気に惹かれた仲間も増え、口コミで評判も呼んで順風満帆。次から次へと仕事も舞い込み、遂には今までにない大規模で大予算の結婚式の演出も手掛けることになる。
 順調な仕事と並行して、二人の関係もどんどん接近、そしてついに一線を越えてしまうのだが、果たして恋のパートナーと仕事のパートナーは両立するのか、その両方の行方はいかに……? といったような内容。

 とにかく元気いっぱいな内容。
 フレッシュで溌剌とした主演俳優二人、動的なカメラワークと早いカット割りでテンポよく進む展開、若い感性が手掛ける結婚式ということで、まるで下北沢の雑貨屋みたいな、カラフルでキラキラでポップな映像の数々、ゴキゲンな音楽……と、前半戦は文句なし。
 ただ後半、フォーカスが恋愛と仕事の問題に移ると、展開面がいかにもなクリシェに偏ってしまって目新しさに乏しいのと、それと並行して、前半で見られたような青春ドラマ的なフレッシュな魅力が薄れていってしまうのが残念。
 例えば、二人の関係がギクシャクしていったところに、ヒロインに金持ちの男との縁談話が持ち上がるなんてのは、いかにも類型的に過ぎて興ざめするし、仕事の上でも袂を分かった二人が、それぞれ相手を蹴落として自分が注文をとろうとするあたりは、フレッシュでひたむきだった前半のキャラの魅力に、かなり翳りを落としてしまっている感じ。
 こういった要素は、やはり展開をお約束に頼り切ってしまった弊害だと思うので、最後は予定調和でいいにせよ、そこに至るまでは脚本にもう少し、工夫やひねりが欲しかったところ。全体の出来が上々なだけに、何とも残念。

 とはいえ、これは一種の音楽映画でもあるんですが、そういう面はかなり上手くできています。
 なんと言っても、楽曲が良い。まだ学生時代の主人公たちの日常描写に併せてBGM的に流れる、凝ったコード進行とアレンジによるロック/ポップステイストの”Tarkeebein” 、予算が少ない結婚式の余興に自分の友達のバンドを呼んだものの、ロック風の音楽にお客の反応が悪いので、ヒーローが自らそこにインド風味を加えて、更にヒロインを巻き込み、身体を張って盛り上げようとする、モダンなロック風の要素とバングラ・ビート的な要素をミクスチャーした”Ainvayi Ainvayi”、大規模な結婚式の大物ゲストの代わりに、自分たちがステージで歌い踊って見せる、やはりロック的なテイストとインド的なテイスト、そしてヒップホップ風味もある”Dum Dum”あたりは、音楽的にも映像的にも大きな見所。
 全体の中での音楽シーンの配置の仕方、ストーリーの中への溶け込ませ方なども、良く考えられていて成功している印象。
 また、予定調和的とはいえクライマックスはしっかり盛り上げてくれるし、オマケに前出の”Ainvayi Ainvayi”にブラスセクションを加えた変奏による、エンドロールのキラキラでポップな楽しさは一見の価値ありで、これのおかげで全体のお株もぐぐっと上昇した感あり。
 もちろんサントラは速攻でゲットしました(笑)。

 そんなこんなで、若干の惜しい部分はあるものの、全体的にはフレッシュな魅力に溢れていて、後味も良く、鑑賞後の満足度も高い一本でした。
 インド映画好きにも、インド映画には馴染みがない方にも、どちらにもオススメできる佳品だと思います。
 逆に、インド映画に「ヘンなもの」を期待する方には、まったくオススメしませんが(笑)。

“Tarkeebein”

“Ainvayi Ainvayi”

“Dum Dum”

“Ainvayi Ainvayi – Delhi Mix”(エンド・クレジット)