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“Boystown (Chuecatown)”

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“Boystown” (2007) Juan Flahn
(米盤DVDで鑑賞→amazon.com英盤DVDあり)

 2007年製作のスペイン産クマ系ゲイ映画。原題”Chuecatown”。
 マドリッドのゲイエリアを舞台に、連続殺人に巻き込まれたクマ系カップルを描いたコメディ・スリラー。2008年の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭でも上映されたらしいです。

 イケてるオシャレ系ゲイの不動産屋は、実は独り暮らしの老婦人を殺害しては、空いた部屋をオシャレなゲイカップルに斡旋していた。その目的はゲイエリアを丸ごとオシャレにすること。そして主人公たちは、同エリアに住む、オシャレじゃない肉体労働&クマ系ゲイカップル。
 楽しく暮らしていた二人だが、仲良くしていた隣の老婦人が殺されてしまい、しかも老婦人が遺言で住まいをベアカブ(小熊、ベア系カップルの若い方)のレイに遺していたために、容疑者となってしまう。レイはそこに自分の母親を住まわせようとするが、パートナーのレオと母親の折り合いが悪い。
 一方イケメン不動産屋(ヴィクター)は、レイのものとなった部屋をまだ狙っていて、今度は色仕掛けでレオに近付く。レオは普段からモテ系のレイにヤキモキしており、しかも今度はレイの母親にも邪魔されるようになり、二人の仲がギクシャクしてきたこともあって、ついヴィクターになびいてしまう。
 ヴィクターは別の部屋を狙って、レイとレオの友人女性も手に掛けてしまう。レイの母親も犯人はレオだと勘違い。殺人事件を担当するのは、シングルマザーの女警視と、その部下で警視の息子で、しかも実はゲイの刑事。果たして彼らは殺人鬼を捕まえられるのか? そしてレイ&レオ二人の仲はどうなる??

 ……ってな、サスペンス・コメディ仕立ての映画で、なかなか楽しめました。テンポも悪くなく、コメディなんで早口なセリフが多く、英語字幕についていくのが大変だったりもしましたが(笑)、それでもダレたり飽きたりすることなく、スイスイ快調に見られます。
 笑いのタイプはさほど狂騒的でもないクスクス系。ゲイネタはもちろん、嫁姑劇のゲイ版とか、エロティック・サスペンスのヒロインをゴツい男に置き換えたホモ版みたいな面白さもあり。追われて逃げ込んだ先がゲイサウナとかいった、コテコテのゲイ向けサービス場面もしっかりあり(笑)。
 個人的には、オシャレ系ゲイとオシャレじゃない系ゲイの、感覚のすれ違いがけっこうツボでした(笑)。特に、オシャレ系ゲイ、ヴィクターのスノッブさは、実に「いるいる、こんなヤツ!」って感じ(笑)。で、対するオシャレじゃない系ゲイカップルのレオとレイは、実はアメコミおたくだったりして、ボールペン使ってウルヴァリンごっこしてたり、警察の取調室でもアメコミクイズに興じていたりで、これまた「判る判る!」って感じ(笑)。
 そんな組み合わせなもんだから、ヴィクターのステータスを匂わせた会話が、レオとレイに全く通じず、「あの有名な建築家のフォスター氏が」「……ジョディ・フォスター?」「違う、ノーマン」「……『サイコ』の?」なんてやり取りになっちゃうあたりは、かなり笑えました(笑)。
 役者も佳良。特にベアカブのレイは、実にかわいくて上玉。絵に描いたようなベア系のレオもマル、かなりビッチなレイの母親のキャラも楽しい。他にも、事件を担当する××恐怖症まみれの中年女刑事とか、その息子で実は隠れホモで、ストーリーの進行と共にどんどん服装とかゲイゲイしくなってっちゃう青年刑事とか、濃ゆ〜いキャラばっかりで笑わせてくれます。

 というわけで、ユーモア・ミステリーとしてのストーリーを軸にして、ゲイ向けのネタをふんだんに散りばめながら、同時にゲイ・カルチャーに対する風刺もチクチク仕込まれた、軽く楽しく見られる一本でした。全体的にゲイ映画的な閉塞感がなく、安っぽさを感じさせないのも良し。予告編で「お!」と思った方ならオススメです。
 ……ま、個人的にはとにかく、ベアカブのレイがか〜わいいんだわぁ(笑)。

“Do Começo ao Fim (From Beginning to End)”

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“Do Começo ao Fim” (2009) Aluisio Abranches
(ブラジル版Blu-rayで鑑賞/米盤DVD英盤DVDあり)

 2009年製作のブラジル映画。英題”From Beginning to End”。監督/脚本、Aluisio Abranches(アルイジオ・アブランシェス?)。
 子供の頃から仲の良かった兄と弟が、互いに抱く深い愛情はそのままに、やがて成人して同性愛関係になるという話を、叙情的に描いた作品。

 フランシスコとトマシュの兄弟は、幼い頃から大の仲良し。弟のトマシュは兄のフランシスコをヒーローのように慕い、兄は弟を親の様に庇護する関係。優しい母親や彼女の再婚相手である義父、そして実の父親といった周囲の大人たちは、二人の関係が余りにも密接すぎることに、時に微かな不安を感じたりもするが、それでも兄弟を暖かく見守る。
 やがて時は流れ、二人は立派な青年へと成長したが、母親が亡くなる。義父は、このまま愛する妻の想い出が詰まった家で暮らすのは辛いと、二人を残して家を出る。二人きりになった兄弟は、まるで来るべき時が来たかのように、ごく自然に互いの愛を確認し、肉体関係を結ぶ。
 愛し合う二人は幸せに暮らすが、そんなある日、水泳選手であるトマシュに、オリンピック出場に向けてロシアでの強化合宿の話が持ち上がる。躊躇う弟に、フランシスコは是非行くべきだと薦める。しかしそれは、今まで片時も離れたことのない二人が、3年間離ればなれになることを意味していた……という話。

 意外だったのは、兄弟という近親間での同性愛という題材を扱いながらも、そこにタブー的な要素がいっさいなく、どちらかというと、「運命的な愛」をひたすらリリカルに描いた、お伽噺のような作品だった……ということ。何と言うか、ここまで障害も波乱もないラブストーリーってのも、ちょっと珍しいような気がします。
 いちおう後半は、ブラジルとロシア、離ればなれになった兄弟の間に、会えないゆえのギクシャクが生じたりはするんですが、それでもまあ、いわば遠距離恋愛にはありがちな話というだけでしかない。加えて、周囲の人間も全員善人ばかりなので、ドロドロもしなければ痛い展開もなし。
 で、この映画、おそらくテーマは2つあって、まずは前述した様な、最初から定められ最後まで変わることのない、運命的な愛の絆。そしてもう一つは、自分の愛と自分の進む道は、自分の意志で貫き通す素晴らしさ。ここいらへんは、生後間もない弟が自分の意志で目を開けるなんていう伏線が、上手く機能しています。
 そんなこんなで、とても純粋というか、真っ直ぐで清々しく好感は持てるし、雰囲気も良いし役者さんも好演してるんですが、いかんせんドラマの弱さはカバーしきれない感じ。そのせいで、どうも全体がフワフワとした絵空事のように見えてしまい、それが逆に、テーマ自体を薄っぺらく見せてしまうのが惜しい。

 ただし、ロマンティック&ホモエロティックな、ピュアで美しい叙情詩だと割り切って見れば、見所はいたるところにあります。
 前半は可愛い子供たちが仲良くスクスクと育っていく様子を、後半は恋人同士になった二人のキャッキャウフフを、きれいな映像とロマンティックな音楽にのせて延々と見せてくれます。現実の苦みとは無縁の、ひたすらスウィートなゲイのファンタジー世界。
 特に後半は、美麗画像による清々しい青年二人のフルヌードがふんだんに出てきますし、キスやらセックスやらスカイプセックスやら、イメージの中で二人が全裸でタンゴを踊ったりとか、ゲイエロス的な目の御馳走がタップリ。ロマンティック方面も、ハーレクインかトレンディドラマかといった、こっ恥ずかしいくらいのベタ展開がタップリ。
 ただ、私のテイストから言うと、やはりもうちょい人間ドラマとしての深みが欲しい。ぶっちゃけ前半の子供時代は、映画としてもかなり引き込まれて、「お、これは!」と期待も高まる。二人の子役は実に良いし、母親役の女優さんは魅力的、他の大人たちも全員いい感じ。
 その反動もあって尚更、後半の大人になってからの展開が、ドラマ的には失速して映画的な見応えも薄れてしまい、見所はゲイの願望投影イメージビデオみたいな部分だけ……なんて印象になっちゃった感もあり。
 しかし高校時代の私……もう30年前だ(笑)……だったら、映画に男同士のキスが出てきたり、ましてやフルヌードやらゲイセックスなんてのが出てきた日にゃ、心臓が口から飛び出すくらいドキドキしたもんだけど、それが今じゃ「見所そこだけ!」なんて文句たれてるんだから、まったく良い時代になったというか、我ながら贅沢言ってんなぁ……という気も(笑)。

 そんなこんなで、題材が興味深く映像や音楽も良いだけに、ついつい「惜しい!」気分が勝ってしまいますが、期待するポイントを間違えなければ、ゲイが見てロマンティックでセクシーな気分になれる要素はテンコモリだし、同性愛に対するポジティブさという点では、この映画では既に、アイデンティティとしてのゲイという要素すら必要としていないのは、ある意味天晴れでもあります。米アマゾンのレビューも、絶賛の嵐。
 ……でもやっぱ私は、もうちょい「切なさ」みたいなスパイスが欲しい(笑)。

 余談。
 元々この映画、YouTubeで予告編を見て、「これは見たい!」とツイッターで呟いたところ、私をフォローしてくださっているブラジル人のファンの方が、「こっちでソフトが出たら、良かったら送りましょうか?」と言ってくださり、それで目出度くBlu-rayを入手できたといういきさつがあります。
 もちろん送っていただいた後は、折り返し御礼をお送りしましたが、なにせ地球の反対側、ツイッターを通じてこういうことが起きちゃうあたり、なんとも感慨深いものがありました。この場を借りて、同氏に再度御礼を……って、日本語で書いても判らないか。
Thanks again for your kindness, Mr. Metal Gear Red! 😉

“Eyes Wide Open (עיניים פקוחות / Einayim Petukhoth)”

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“Eyes Wide Open” (2009) Haim Tabakman
(アメリカ盤DVDで鑑賞→amazon.com英盤DVDあり)

 2009年製作のイスラエル映画。原題” (עיניים פקוחות / Einayim Petukhoth)”。監督はHaim Tabakman(ハイム・タバクマン?)。
 エルサレムの超正統派ユダヤ教徒のコミュニティを舞台に、既婚男性と青年の同性愛関係を描いた作品。

 主人公のアーロンは、エルサレムの超正統派ユダヤ教徒のコミュニティ内で肉屋を営む、妻子持ちの男。父親を亡くしたショックで暫く店を閉めていたが、ある日意を決して店を開け、求人の貼り紙をしたところ、余所から来た若いイェシーバー(ユダヤ教の神学校)の学生が、電話を借りたいと立ち寄る。
 その若者エズリは、友人を訪ねてエルサレムに来たのだが、その友人とコンタクトをとれない。宿と職が必要なエズリを、アーロンは雇って店の二階に住まわせ、職を与えると共に、落ち着き先の新たなイェシーバーが見つかるまで、自分がメンター(導き手)として面倒を見ることにする。
 エズリはアーロンの家庭やシナゴーグにも招かれ、次第にコミュニティに溶け込んでいくが、その一方で二人は互いに惹かれていき、やがて一線を超えて肉体関係を持つ。そんな中、エズリに関する悪い噂がコミュニティ内に流れ、やがて壁に告発文が貼られ、二人の関係が明るみに出るのだが……といった内容。

 これは大いに見応えあり。
 超正統派ユダヤ教徒のコミュニティ内の、しかも神学生とその教父の同性愛関係という、ある意味スキャンダラスな内容を、センセーショナリズムに堕すことなく、抑制された淡々とした演出でしっかりと描き、その映像の美麗さも相まって、ゲイ映画云々を超えたレベルの、アーティスティックな風格も備わっています。
 同性愛の捉え方に関しては、これはシチュエーション的に当然のごとくタブー的な存在ではあるんですが、制作者の視点がそれをタブー視しているわけではなく、また、安直なメロドラマの道具として使っているわけでもないので、いわゆる「禁断の愛のドラマ」的なものを見せられたときのような、制作側の傲慢な視点ゆえの不快感はゼロ。
 奔放な年少者と、軋轢も多い年長者という具合に、キャラクター自体の抱いている同性愛観に幅があるのも、ストーリーに膨らみを持たせているし、コミュニティによって阻害される若い男女の自由恋愛というサイドエピソードや、アーロンの家族関係といったドラマも、ストーリー全体の幅を拡げるのに貢献している。
 もう一つ、愛や人生と、信仰という二つの間の揺れや、それらに関する問いかけなども、ストーリー的なテーマの一つだと思うんですが、こちらは残念ながら私の英語力不足と、ユダヤ教に関する基本的な知識不足もあって、かなりアレコレ拾い損ねた要素が多々ある感じ。
 全体のムードは極めて静かで、特に映像的に斬新さを感じるタイプの作品ではありませんが、その静かなトーンと寒色系の落ち着いた映像が実に印象的。

 役者さんは、まず年長のアーロンを演じているZohar Shtrauss(ゾハール・シュトラウス、日本公開作では『レバノン』に出演)が見事。魅力的な異邦人によって、今までとは異なる自分に目覚めていき、それが人生そのものにも影響していくという、いわば『テオレマ』タイプのストーリーなんですが、そういった感情の揺れ動きを、抑えた演技で実に説得力豊かに演じてていて、その抑制ゆえに瞬間迸る激情が尚更効果的に。
 立ち位置的には「誘惑者」となる、年少のエズリを演じるRan Danker(ラン・ダンカー?)も、いわゆる耽美系の誘惑者のような退廃味ではなく、ある意味無邪気とも言える真っ直ぐな好青年を好演。超正統派ユダヤ教徒なので、髪形や服装などが一般的な視点から見れば奇異なものであるにも関わらず、男性として完成された立派な肉体と、どこか少年の気配を残したナイーブさのあるハンサムぶりが、実に魅力的。

 ゲイ映画としても、そういったジャンルフィクション的な限定抜きの一般的な映画としても、どちらも大いに見応えがあり、クオリティも高く、静謐な力強さが感じられる作品。
 結末が観客に解釈を委ねるタイプなので、ストーリー的なオチを求める人には向かないかもしれませんが、モチーフに興味のある方はもちろん、単館系の映画好きならオススメできる一本だと思います。

 この予告編は、映画自体の印象よりもかなり扇情的な感じなので、御参考までに本編からのクリップも貼っておきます。
 こんな感じで、全体の雰囲気は実に静か。

ジャック・スナイマン、ラグビー選手でカウンターテナー

 南アフリカのラグビー選手で、マッチョ系モデルで、しかもカウンターテナーでもあるジャック・スナイマン(Jacques Snyman)という人が、イジメなどで自殺してしまうLGBTの青少年に向けて「それは一時期のことだよ、そのうち状況は良くなるから頑張って!」と応援する “It Gets Better” プロジェクト(このプロジェクトの詳細はこちら)の一環として、この夏コンサート・ツアーをするそうな。

 もう何と言うか……何から何まで「ステキだ!」としか言いようがないお方であります。
 ブラボー!!!
 

Hypeでインタラクティブ・アニメーション効果とか動画の埋め込みとか

 先日ここで書いた、HTML5ベースのアニメーション等を簡単に作成できるオーサリング・アプリHypeですが、引き続きアレコレいじってみて、思いついたことを気ままにテストしてみました。
 というわけで、簡単なテスト結果を幾つか。

【インタラクティブ・アニメーション効果のあるギャラリーページを作ってみた】
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 実際のページはこちら。【公開終了】
 要するにマウスオーバーやクリックに反応するアニメーションを使って、フォトギャラリー的なページに遊び要素を付け加えてみたものです。
 Hypeでは一つのシーンに複数のタイムラインを持たせることができるので、サブのタイムラインでドアの開閉やライトの明滅のアニメーションを用意して、ターゲットのクリックやマウスオーバーで、それらが動くようにしてみました。クリック用のマップは、写真の上に不可視のボックスを配置することで対応。
 全体を4シーンで構成。タイムラインの数は、多いときでメインを含めて7つ。シーン間の移動は、クリックでリンクを飛ぶタイプと、タイムライン終了後にオートで移動するタイプの二つを使っています。
 後者の、タイムライン終了後の次のアクションをどうするか(何もしない、シーンを移動、タイムラインの再生、Java scriptの再生、等)を指示できるのは、なかなか便利で面白いんですが、どうも1つのシーン内でサブのタイムライン個々に別々の指定をすることができないのが残念(サブのタイムラインを選択した状態で、タイムライン終了後のアクションを指定すると、それがメインのタイムラインにも適用されてしまう)。

【YouTube動画やムービーファイルを埋め込んでみた】
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 実際のページはこちら。【公開終了】
 まずYouTube動画の埋め込み。
 これはデフォルトでそういう機能が用意されているわけではありませんが、フォーラムを見たら事例があったので試してみました。
 具体的には、Hypeにはそれぞれのオブジェクトにinner HTMLというものを記入することが出来るので、それを使います。線と塗りをオフにしたボックスを配置し、そのinner HTMLに、YouTubeで取得できる埋め込み用のEMBEDコードを記入するだけ。
 結果として上手くはいきましたが、いったんYouTubeのEMBEDコードを記入してしまうと、なぜかエディタ上でタイムラインが操作できなくなるという現象あり。結果、先にアニメーションを指定しておいて、EMBEDコードは最後に記入するという方式で回避できましたけど。
 次に、サーバ上に用意したムービーファイルの埋め込みについて。
 いちおうHypeのマニュアルに書かれていたように、Safari、Chrome、IE、Firefoxなど、それぞれのブラウザに対応したフォーマットの動画ファイルを複数用意して(具体的には、H264 (mp4)、Theora (ogv)、 VP8 (webm)の3種類)埋め込んであるんですが、なぜかFirefoxは、ローカル環境では問題なく作動していたのに、サーバにアップするとエラーが出て再生できなくなるという現象あり。
 IE、Windows環境、iPhoneやiPadのiOSでどうなっているのかは未検証。
 動画を埋め込んだときの問題点は、アニメーション用のタイムラインと動画自体のタイムラインが別々に作動し、前者が優先されるということ。
 具体的には、例えば動画の再生が終了したら、自動的に次のシーンに飛ぶといったことが指示できない。タイムラインでそう指示していても、動画の再生は必要な読み込み時間などでタイムラグが発生し、結果、動画はまだ再生途中なのに、タイムライン上で「終了」と判断され(おそらく「動画の長さ=タイムラインの長さ」になってしまい、読み込み時間などの誤差は無視されてしまう)、次のシーンに飛んでしまいます。
 フォーラムで対応策がないか調べたんですが、どうやら現時点では無理らしいです。
 最後の、文字が一文字ずつ出てくるアニメーションですが、これもテキストのinner HTMLを使っています。こんな感じて、例えばテキストの文面が3秒後に自動で丸々変化する、なんて設定もできます。

【強引に音声ファイルを埋め込んでみた】
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 実際のページはこちら。【公開終了】
 Hypeは音声ファイルの埋め込みには対応していない(フォーラムによると、現状、ブラウザごとの対応ファイル形式がビデオ以上に錯綜した状態にあるのが、非対応の主な理由らしいです)んですが、ビデオの埋め込みを応用して、そこに強引にmp3ファイルを埋め込んでみました。
 これが上手くいけば、BGM付きのスライドショーなんてのも作れるかな……と思ったんですが、結果を先に言うと、あまり現実的ではない感じです。
 とりあえず出来たHTML5を、Twitterで有志の方にそれぞれの環境でチェックしていただいたんですが、マトモに動作したのはSafariとChromeだけという結果に。Firefox、IE、iPhone、iPadは音声が再生できず、Androidだと逆に音声だけ再生だった模様。
 理由としては、音声ファイルの対応フォーマット以外にも、ブラウザがオートスタートに対応しているかどうかもあるようですが、おそらくビデオのときと同様に、埋め込みファイルのタイムラインとHype自体のタイムラインを完全に同期させるのは難しいのではないかと。
 そんなこんなで、音と絵が同期したBGM付きスライドショーは、あらかじめ別アプリで作った動画を埋め込むしかない感じです。

Hypeでマンガの宣伝ページ作ってみた

「うだうだ解説なんか読んでられない、何を作ったのかさっさと見せろ!」という方は、とりあえずこちらをどうぞ(笑)。
 ちょっと読み込みに時間かかるかも知れません。

 先日この記事を読んで、Hypeというアプリケーションに興味を持ちました。
 どうやらHTML5をベースにしたインタラクティブなアニメーションを、手軽に作れるというものらしい。そういうものだとFlashがありますが(以前体験版でちょっといじったことあり)、このテのことで私がやってみたいのは、簡単なスポットアニメーションとか動的効果のあるギャラリーページくらいのものなので、正直それだけの目的だとFlashはお値段が高すぎる(笑)。
 その点このHypeは、なんと3500円というお手頃さ。高めのCDか中くらいの値段のDVD1枚分のお値段なので、これならちょっと遊ぶだけでも充分に元がとれそう。しかもHTML5ベースなので、Flash未対応のiPadでも問題なく再生可能なはず。
 ……ってなわけで、ちょいとポチってしまいました(笑)。App Storeでのお買い物も、これが初体験。

 で、これがそのHypeを起動した画面です。
fuyunobanyaPR
 上のウィンドウが作業画面、下部がアニメーション用のタイムラインになります。
 操作は簡単。上の画面に画像やテキストを配置して、それぞれの動きや効果のタイミングを、下のタイムラインにキーフレームを配置して決めていくだけ。Flashなどのアニメーション用アプリをいじったことのある人だったら、何も見なくてもすぐ操作できそうですが、そうでなくてもチュートリアルビデオを見れば、大体のことは飲み込めるはず。
 で、とりあえず一つ作ってみました。
 今回作ったもの、インタラクティブ要素は何もない、単なるスライドショーのようなものです。マンガのPR用の、スポットアニメーションみたいな感じで。
 そんなこんなで、あ〜でもないこ〜でもないと作り始めたんですが……しまった、楽しい(笑)。
 これ、上手くハイパーリンク使えば、簡単なゲームっぽいものとかも作れそうな気が。ヴィジュアルノベルみたいなヤツとか。

 そして出来上がったのが、こちら
(データの読み込みが終わって、いざビデオがスタートするまで、ちょっと時間がかかるかも知れません。プログレスバーとかは出ませんが、待っていればじきに自動的にスタートします)
 現在「バディ」誌で連載中のマンガ、『冬の番屋』のPRページです。いじりはじめてから、3時間くらいで完成。

 ついでに、作業して感じたことを幾つか。
 もともとIllustratorで作ったロゴなどは、ベクターデータのSVGの方が軽くてキレイなのかな、と思ったんですが、いざイラレからSVGで書き出したものをアニメートして、最終的にHTML5に書き出そうとしたところ、かなりの種類のブラウザで「未対応」というアラートが出てしまいました。
 今までSVGなんて扱ったことがなかったので、これがイラレからの書き出し時の設定ミスなのか、それともSVG全体がダメなのかは判りませんが、ともあれ未対応ブラウザの数が多かったので、最終的にロゴ類は、SVGはヤメにして透過PNGを使いました。
 このHTML5への書き出し時のアラートは、他にも出まして、例えば透過PNGもIE 6では未対応と出ました。

 また、イメージを立体的に回転させることができるんですが、これもまた書き出し時に、やはり何種かのブラウザで未対応というアラートが。試しにいったん書き出して、Safari 5とFirefox 4でブラウズしてみたところ、Safariは問題ないんですがFirefoxでローテートせず。

 私は試していませんが、動画の埋め込みなんかもできるようで、しかしこれまたブラウザによってエンコードの種類が異なってくるらしいです。ここいらへんは、プラグイン一つで事足りるFlashの方が、アドバンテージは高いかも。
 私がやってしまった、初歩的なミス。

 アニメーションで使う画像は、作業中は外部のファイルとリンクしている状態で、最終的にHTML5として書き出す際に、リソースフォルダにそのままコピーされる仕組みらしいです。書き出し時に画像の縮小等が行われるわけではない。
 私はそこいらへんを考えず、まあ大は小を兼ねるからいいか……と、かなりデカい画像ファイルを使ってしまったもんだから、ローカルでテストしている分には判らなかったんですが、いざサーバにアップして確認してみると、まあ読み込みに時間がかかることかかること(笑)。
 というわけで、Photoshopで画像を適宜なサイズに縮小して、それと差し替えたものを再アップ。無精しないで、ちゃんとWeb用の画像を使わないといけませんね(笑)。

 バグ的なもの。
 BoxやTextを使う際に、どうしたことか色の変更が出来なくなることがありました。あれこれ試行錯誤してみたものの、最終的には一度ファイルを保存してアプリも終了し、そして再度立ち上げてファイルを開くと、今度は問題なく色が変えられるように。
 また、テキストをあれこれいじっていたら、プレビューと最終的に書き出したファイルとでは、見え方が違ってしまったことも、一度だけですがありました。やはり自動でHTMLやJAVAを書き出すわけですから、あまりぐちゃぐちゃいじっていると、エラーが出やすくなるのかも知れません。

木村了子さんの個展『楽園』開催中

 現在、中目黒にある画廊ミズマ・アクションで、日本画家の木村了子さんの個展『楽園』が、6月4日まで開催中です。
 木村さんは伝統的な日本画技法を用いて、艶やかでエロティックでウィットのある美男子を描き、世界的に活躍なさっているアーティストなので、アートおよびメイル・ヌードに興味のある方なら見逃せない展示です。
 個展の詳細は、ミズマ・アート・ギャラリーの公式サイトで。
 木村了子さんについては、ご本人のサイトへどうぞ。
 この個展、私も先週拝見してきました。下の写真が、そのとき木村さんと一緒に撮った記念写真。
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 この写真からもお判りのように、ギャラリー入ってすぐの部屋の両壁を覆い尽くす、巨大な屏風絵のド迫力といったら……! こればっかりは、ホント現物を見ないと判りません。スゴいエネルギーです。私がチマチマ机の上で描いている絵とは、もう桁が違う感じ。
 木村さんご本人も、とてもエネルギッシュな方で、なるほど、このエネルギーがあってのこの作品なのだな……と、つくづく思いました。屏風絵を描き上げた後は、だいぶ痩せられるとのお話でしたが、それも納得。
 別室には小品もあり、また期間中に公開制作もなさっているとのことですので、事前にお調べの上、ぜひお出かけあれ。ギャラリー近くの目黒側沿いは、オシャレなお店やカフェもいろいろあるので、デートコースにもよろしいかと(笑)。
 で、木村さんなんですが、私が初めて作品を拝見したのは、前にここで紹介した、アニエス・ジアールの本”L’imaginaire Erotique Au Japon”でご一緒したときでして、もう一目惚れ、すぐググって調べたほど。
 そして昨年、ツイッター上でコンタクトをとることができて(熊谷蘭冶さんが仲介してくれました)、先日初めて直接お会いした……というわけでもなく、実は去年のヴァニラ画廊での拙個展にいらしていただいていたそうで、私と握手もしていたそうで……いやぁ、お名乗りにならないから、ちっとも気付きませんでした(笑)。
 そして今回、お会いして色々とお話させていただいたところ、木村さんも私の作品を、やはりアニエスの本で知り、そしてググって拙サイトをご覧になったとのことで、いやはや、全く同じパターンだったというのが何だか面白かったです(笑)。
 そんなアニエスの本ですが、いろいろドタバタに紛れてご紹介するのをすっかり失念していましたが、実は昨年暮れに、日本語翻訳が出ています。
 本国盤がフルカラーの大判本だったのに対して、日本語版はモノクロのA5版なのが残念ですが、それでも木村さんのことも私のことも載っていますので、よろしかったら御一読くださいませ。

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発売日:2010-12-18

ちょっと宣伝、『冬の番屋』第5話です

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 5月21日発売の「バディ」7月号に、短期連載『冬の番屋』第5話掲載です。
 今回はもう、全編しっぽりとエロエロ展開(笑)。アナル描写が久々だったもんだから、消しゴムかけをしてくれるアナル好きの相棒が、なんかエラく喜んでおりました(笑)。
 この連載、キャラが良く動いてくれるので、こういうイチャイチャエロエロだけでも、余裕で4、5回は描けちゃえそうですけど、全7回で終わらせることにしたので、そういうわけにもいかない(笑)。最終回に上手く予定エピソードを収めるためには、今からちゃんと計算して配分しておかないとな〜……。
 というわけで、残すところあと2回。
 最後までよろしくお付き合いくださいませ〜。

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ちょっと宣伝、スペイン語版『外道の家』3巻(最終巻)、発売されました

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 先月末、スペインで拙著“La Casa de los Herejes”こと『外道の家(スペイン語版)』の3巻が発売され、私の手元にも著者謹呈用の本が届きました。
 出版社はEdiciones La Cúpula
 これでスペイン語版も全3巻、無事出版完了となったわけですが、1巻の発売が去年の6月、2巻が12月でしたから、2巻と3巻の間はちょいと刊行ペースが早まったわけで、ということはけっこう順調だったってことかな、なんて嬉しく思ったり。
 あちらの書店に3巻が並び始めた頃、さっそく買ってくれたスペインのファンから、メールやFacebookのメッセージで感想が届いたりして、中には「自分の買った本屋のオヤジが、売れ行きが良いってビックリしてたよ!」なんて内容のものもあって、これまた嬉しくなりました。……たとえお世辞だとしても、ね(笑)。

 造本等に関しては、基本的に1巻2巻と同じですけど、一つ違うのは、私の後書きも載っているということ。
 スペイン語版用に新たに後書きを書いた記憶はないので(笑)、おそらく日本語版のそれがまんま翻訳されているんだと思いますが、これは過去のフランス語版やイタリア語版ではなかったパターン(フランス語版では後書き等は一切なく、イタリア語版では翻訳者による解説や私のインタビューが載っています)ですね。
 ただ、後書きは翻訳掲載されているものの、後書き中に謝辞として名前が出てくる、大西祥平さんによる解説や、児雷也画伯や藤本郷君によるゲストイラストコメントは載っていないので、そこいらへんがちょっと判りにくいのでは……なんて思ったり。また、手塚治虫の『奇子』とか、横溝正史&市川崑の『病院坂の首縊りの家』なんていう固有名詞も見あたらないので、何というかこのスペイン語版後書きは、オリジナルの抄訳みたいな感じになっているのかも知れません。
 裏表紙や中身のサンプルなんかは、英語ブログの方に何点か画像を載っけましたので、興味のある方はそちらをご覧ください。

ちょっと宣伝、『冬の番屋』第4話です

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 4月21日発売の「バディ」6月号に、短期連載マンガ『冬の番屋』第4話掲載です。
 じっくりしっぽりなストーリーのせいか、白ヒゲ親爺が脱ぐまで58ページもかかりました(笑)。1ページめからマッパということも珍しくない私のマンガとしては、これはちと珍しいかな〜(笑)。
 相手役の気弱アンチャンの方は、第2話の回想シーンで既に脱いではおりますが、現時制での脱ぎ場は、これまた今回が初めて。
 で、登場人物が裸になると、ペン入れに必要な時間がドカンと増えるというのを、今回の作画で改めて痛感したり(笑)。
 いや、服のシワとかは、そんな厳密である必要がないので、極端に言うと下描きなしでも大丈夫なんですけど、筋肉だの肉体のアレコレはそういうわけにもいかず、加えて量感を出すためのタッチとか、体毛とかも描き込まなければならないので、描画に要する時間もグッと増えるというわけ。
 そんなこんなで、話もそろそろ佳境にさしかかっており、よろしければぜひお読みくださいませ。
 来月号は、更にしっぽりエロエロにいく予定でゴザイマス(笑)。

Badicover201106 Badi (バディ) 2011年 06月号 [雑誌]
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2011-04-21