投稿者「Gengoroh Tagame」のアーカイブ

イベント、無事終了しました

 油断していたら日が明けてしまいましたが、日曜日のイベント、無事終了しました。
 主催側に伺ったところ、大してパブを打つ前の段階から予約が集まり、何と宣伝用フライヤーが刷り上がったときには、既に予約でほぼ満席になってしまっていたそうで(笑)。
 というわけで、もし「行きたかったけど予約間に合わなかった〜」という方がいらっしゃいましたら、どうも申し訳ありませんでした。
 さて、イベントの方は、ゲスト一人ずつ+ホストという組み合わせのトークを、大越孝太郎先生、私、町田ひらく先生という順番で、一人あたり30分くらい(?)で一巡して、その合間に東方力丸さんのマンガ朗読(紙芝居のようなもの、と思っていただければ)を挟みつつ、最後に三人一緒に鼎談、という形でした。
 マンガ朗読は、大越先生のが『猟奇刑事マルサイ』から「恍惚の女医」、町田先生のが『たんぽぽのまつり』から「#9(…だったと思います、間違っていたらゴメンナサイ)本日確認したら、朗読作品は「たんぽぽの卵 #9」で、『たんぽぽのまつり』は収録単行本名でした……私のが『男女郎苦界草紙 銀の華』から冒頭部分、という内容でした。
 東方さんの朗読はシアトリカルで、私の『銀の華』に関しては、音の入っていないモブシーンでも、それっぽいガヤを入れてくださったり、全体的に男っぽい感じの声音だったのが、何だか嬉しかったです(笑)。
 町田先生のときに、バックスクリーンの投影画像にミスがあって、画像の天地がひっくり返ってしまっていたりしたのは、ちょっと残念でした。
 トークの方は、大越先生も町田先生も、流石に個性的で内容の濃いマンガを描かれているだけあって、お話しに一本「ドン!」とした芯が通っていて、実に聞き応えがありました。ポリシーというかフィロソフィというか、そんなものをしっかり持っておられるのだな、と。拝聴している私も、改めて我が身を振り返り、背筋がシャンと伸びるような、そんな心持ちに。
 で、質問コーナーでは私も調子に乗って、町田先生にネーム(セリフ)構成のコツなんかを、お聞きしてしまったり(笑)。いや、個人的に町田先生の作品の「余白」に、ずっと心惹かれておりましたもので……。
 大越先生のお話しでは、『猟奇刑事マルサイ』を巡るあれこれが、個人的にいろいろと考えさせられるものがありました。第三者である私がオープンにして良い内容なのかどうか、ちょっとその判断が難しいので、ここで詳細には触れませんが、何はともあれ本というものは、いつか買おうと思っているうちに、諸般の理由でいつの間にか市場から消えてしまい、気がついたときにはもう入手できなくなっている……なんてことが幾らでも起こりうるものなんですな。
 おそらくこういったリスクは、市場が狭かったり内容が先鋭的であったりする、マニアックでコアなものほど高いので、皆様、欲しいと思ったときが買い時ですよ、私の単行本も含めて(笑)。
 私も改めて、「『天国に結ぶ戀』と『マルサイ』の単行本、買っておいて良かった〜!」と思いました。
 事前の打ち合わせや出番の合間には、三人でアレコレ雑談をしていたんですが、「ひょとしてこういう話こそ、トークショーでやった方がいいんじゃない?」なんて言い合っていたくらい、イロイロと面白い話も出ていたので、これはお聞かせできなかったのが残念(笑)。
 で、ワタクシ、「せっかくの機会だから両先生の本を持参して、サインをお願いしようかな〜」なんて、事前には考えていたんですけど、当日そのことをコロっと忘れてしまい……てゆーのも、例によってめったに使わない携帯電話の発掘と充電で頭がパニックっちゃいまして、他のことがスッ飛んでしまい、更に打ち合わせの待ち合わせ場所まで間違えてしまったくらい、あたふたしてしまいまして……カバンに本を入れ忘れ(泣)。
 でも、諦めきれなかったので、急遽カバンに入っていたメモ帳(……がわりの折りたたんだコピー用紙)を出して、失礼を承知でサインお願いしちゃいました。
 それが、こちらこちら
 このまま保存しようか、それとも両先生の本の見返しに貼り付けちゃおうか、現在思案中(笑)。
 そんなこんなで、個人的には思いっきり楽しめちゃったイベントだったんですが、ご来場くださった皆様にも、ご同様にお楽しみいただけていたら良いんですけど。
「サインを…」と話しかけてくださった方、差し入れをくださった方、などなど、皆様どうもありがとうございました!

フランク・フラゼッタ逝去

 本日、起きてPCの電源を入れ、Twitterにアクセスしたところ、ショッキングな訃報がTLを駆け巡っていました。
 2010年5月10日、フランク・フラゼッタ逝去。享年82。
 ……これはマジで、ちょっとヘコむ。

 このブログでも、過去の記事でその名前を、何度も引き合いに出してきていることからお判りのように、自分が中学生の頃、雑誌「スターログ」やムック「SFファンタジア」で知って、その重厚な筋肉描写とパワフルな画風に惹かれて以来、ずっと好きな画家だったもので……。
 フラゼッタは、一種ファンタジー・アートの1ジャンルの創始者的な部分があるので(厳密に言うと、圧倒的な個性と存在感のある作品であるとはいえ、その画風のルーツは、フラゼッタの先輩にあたるロイ・クレンケルの作品に見ることができますし、そこから更に前の世代のアレン・セント・ジョンへと遡ることができるので、別に突然変異的に突如出現したというわけではないのだけれど)、以降、その作風は作家の個性から、一つの様式になってしまったという部分があります。
 よって、その後続の中には、単純に描写力とか技術力という面を取り出すと、元祖フラゼッタを凌駕する技能の作家も大勢いるんですが、それでもフラゼッタの作品の持つ圧倒的な力強さは、そういったフォロワーたちを遙かに凌駕する孤高のものであるように、個人的には思っています。
 そこいらへんについては、以前この記事の中盤でちょっと触れていますので、興味がある方はどうぞ。

 ともあれ、私にとっては大いにリスペクトしている現代の巨匠のお一人でした。
 謹んでご冥福をお祈りいたします。

 さて、フラゼッタを知らないとか、知ってるけど画集とかは持っていないという方には、現在市販されている画集で、”ICON”、”LEGACY”、”TESTAMENT”という三冊があるので、そのどれかから始められるのが良いかと思います。
 個人的には、出版順にまず”ICON”からゲットし、次に”LEGACY”、そして”TESTAMENT”という順番が良いかとは思うんですが、残念ながら”ICON”は現在品切れの模様。とはいえ、三冊とも充実した内容で、収録作品の重複もないので、とりあえず目に付いたものから買われても、特に問題はないです。

Icon: A Retrospective by the Grand Master of Fantastic Art Icon: A Retrospective by the Grand Master of Fantastic Art
価格:¥ 2,953(税込)
発売日:2003-10
Legacy: Selected Paintings and Drawings by Frank Frazetta Legacy: Selected Paintings and Drawings by Frank Frazetta
価格:¥ 2,707(税込)
発売日:2008-04-28
Testament: A Celebration of The Life & Art of Frank Frazetta Testament: A Celebration of The Life & Art of Frank Frazetta
価格:¥ 2,953(税込)
発売日:2008-04-28

 既にフラゼッタのファンだよという方には、よりマニア向けの”ROUGH WORKS”もオススメ。
 A5程度の小振りな画集ですが、アイデア・スケッチ、フィギュアのラフ・ドローイング、構図用のサムネイル、ペン入れ途中の原稿、有名な作品のカラー・ラフなど、他の本では見られないものがぎっしり。カラー・ラフを見ると、フラゼッタの油彩画作品の背景で良く見られる、渦巻くような「もやもや」が、決して偶発的なものによる効果ではなく、ラフの段階から計算されているということが判ったりもします。

Rough Work: Concept Art, Doodles, and Sketchbook Drawings (Spectrum Presents) Rough Work: Concept Art, Doodles, and Sketchbook Drawings (Spectrum Presents)
価格:¥ 1,967(税込)
発売日:2007-09-28

 因みにこれらの画集なんですが、私が持っているのは旧判で表紙デザインとかが違うんですよね。
book_frazetta_all
 欧米では、どうも画集を増刷するという発送がないのか、よくこういった形で表紙もISBNも変えて、でもタイトルとコンテンツだけはそのままの新判を出すようで。
 これ、どういう理由があるんだろう……と、以前からずっと不思議。

“Devdas”のBlu-ray

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 わが偏愛映画の一本、サンジャイ・リーラ・バンサーリ監督の”Devdas” (2002) の、台湾盤Blu-rayを購入したので、そのレポートなんぞを。

 まず画質ですが、残念ながらBlu-rayソフトとしては、決して良いとは言えない内容。
 ただし、この”Devdas”のソフトは、まず正規盤のDVDからして、かなり劣悪な画質でした。私の持っているのは、ボックス入りの限定版なんですが、パッケージのハードケースは豪華だし、美麗カードのオマケなんかも付いているわりには、肝心のソフトそのものの画質がトホホな出来でして。まあ、インド映画のDVDって、こーゆートホホなことって決して少なくはないんですが、その中でも”Devdas”は、最近の映画にしては、ちょっと「う〜ん……」な画質だったんですな。
 そういう事情があるので、このBlu-rayは、一般的に言ったら決して良い画質とは言えないものの、それでも既発のDVDよりはずっとキレイではあります。また色調も、DVDがちょっと暗く沈んでいたのに比べると、Blu-rayの方が明るい。反面、ちょっとハイライトが飛び気味の感はありますけれど。

 ソフトの作りは、音声はオリジナル、字幕は中国語二種と英語から選択可能。
 チャプター分けはされていますが、内容に沿ったものというよりは、全体の尺を機械的に割った、いわばオート・チャプター的なもの。インド映画のDVDにつきものの、歌と踊りの部分だけのチャプター画面なんてゆー、親切な機能は付いていません。
 映画の内容ですが、原作はインドの有名な古典悲恋小説(……らしいです。原作小説は邦訳も出ていますが、まだ読んだことがない)の『デーヴダース』で、過去にも何度か映画化されている定番ネタなんだそうです。ちょうど先月も、大阪アジアン映画祭で『デーヴ D』(2009) というインド映画が上映されたようで、未見なんですけど、あらすじに出てくるキャラクター名からして、どうも同じ『デーヴダース』の現代版らしい。
 ただまあ私としては、この”Devdas”は、ストーリー云々とかよりも(もちろんストーリー的にも切なかったりはするんですが)、何よりかにより、その圧倒的な映像美そのものが一番の魅力でして。どこもかしこも、信じられないような贅沢で豪奢の美の固まり! もう、それ見てるだけでボ〜ッと酔えるくらいで(笑)。で、前にここで書いたように、イッパツでこの監督、サンジャイ・リーラ・バンサーリのトリコになっちゃった(笑)。

 とゆーわけで論より証拠、私の一番好きな場面を貼っときましょうかね。これ見てるだけでイケちゃう、至福の6分間。コレオグラフィー、カメラワーク、編集の見事さをご覧あれ。

 しかし台湾盤とかを買うと、毎度のことながら、「中国語は良くワカンナイけど、とりあえず漢字は読める」ギャップが面白いですな。”Devdas”の中国題は『寶萊塢生死戀』ってらしいんですが、なんだか判ったようなワカンナイような(笑)。
 あと、今回は帯部分のコピーが面白くて「印度第一美女 艾許維亞瑞伊」って書いてある。ふ〜ん、アイシュワリア・ラーイって、中国語だとこう書くのか(笑)。

 最期にご参考までに。
 邦訳が出ている原作小説は、こちら。

デーヴダース―魅惑のインド デーヴダース―魅惑のインド
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2006-04

ちょっと宣伝、トークイベントに出ます

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 5月16日(日)に開催されるイベント、「聖ヴァニラ学園 大創立祭 表現のエロスと遺伝子」に、トークショーなどで出演します。
 出演者は私の他に、大越孝太郎さん(マンガ家)、町田ひらくさん(マンガ家)、東方力丸さん(漫読家)など。
 以下、宣伝文より引用。

背徳の地下学園「聖ヴァニラ学園」。創立際には特別講師に三人の劇画家を迎え華々しく開校!
前代未聞の異色カルチャースクール「聖ヴァニラ学園」が、いよいよ五月に開校となる。その第一回目は、ゲイ・エロティック・アートの大家・田亀源五郎氏、リリシズムに溢れたロリータポルノ作品に定評のある町田ひらく氏、猟奇と耽美に満ちた異世界を描き出す漫画家・大越孝太郎氏、それぞれ全く違うフィールドで活躍する三人の漫画家を特別講師として迎え、自身の著作について、そして昨今の漫画界を廻る問題について大いに語っていただく。この非常に稀有な機会に、表現者のエナジーの反応と融合とを肌で直に感じていただきたい。またテキスト朗読には、日本唯一のプロ漫読家・東方力丸氏を招き、お三方の作品朗読を行う。この上ないキャストで華々しく幕を開ける「聖ヴァニラ学園」。その裏には一体どんな秘密と陰謀が隠されているのか…?いよいよ、あなたは歴史の生き証人となる!
予約制
5月16日(日)開校18:00/授業開始18:30~終了21:00(予定)
授業料/3.500円 1ドリンク付 定員30名
会場/銀座ブラックハート

 場所の詳細や予約方法など、詳細はイベントの公式ページをご覧下さい。

今月の『芸術新潮』はマストかも(特集『股間若衆』)

 特集に興味があるときだけ購入している『芸術新潮』ですが、今月号は見逃せない小特集が載っているので、ご紹介します。

芸術新潮 2010年 05月号 [雑誌] 芸術新潮 2010年 05月号 [雑誌]
価格:¥ 1,400(税込)
発売日:2010-04-24

 現在店頭に並んでいる雑誌『芸術新潮』5月号。
 表紙でお判りのように、メインの特集はエドゥアール・マネなんですが、スゴいのは第二特集。
 題して「股間若衆」!
 副題に「日本近代彫刻の男性裸体表現の研究」とあるように、明治以降、日本の作家による西欧的な伝統に基づく写実彫刻において、股間、つまり男性性器はどのように表現(或いは秘匿)されてきたのか、という流れを、豊富な図版と共に論じた内容です。

 特集頭の「曖昧模っ糊り」という章から、ユーモアと皮肉をたっぷり効かせながら、ヌードという「セックス」を含む「芸術表現」に対する日本的な欺瞞を、ものの見事に暴き出してくれていて痛快至極。ここだけでも、表現規制についてアレコレかまびすしい昨今、一読の価値ありです。
 もちろん、メール・ヌード美術全般に興味のある方だったら、その着眼点といい、内容の希少性といい、これはマストだと思うので、激オススメ。

 個人的には、芸術だの隠す隠さないだのといった問題とは無縁の、輸出用に作られた名匠による工芸品としての「生き人形」が、掲載図版の中では最もコンテンポラリー・アート的な印象を受けるのが、何とも興味深かったです。
 つまり、いかなる理由があろうとも、在るべきものを表現しないとか、そこにオブジェ以上の意味を(勝手に)感じて(或いは配慮して)「隠す」という行為には、どうしても「ノイズ」という結果がつきまとってしまい、表現の「純度」を損なうんだな、ということ。そこには、「猥褻を意識するがゆえの猥褻感」が存在してしまう。
 北村西望の『怒濤』なんて、実に日本的なメール・ヌード像としての逸品だと思うんですが、しかし、その奇妙な股間の表現には、どうしてもそういったノイズが感じられてしまう。対して、前述の生き人形には、それがないんですな。
 基本的に、自分が日本人であることには何の不満もないんですけど、こういった明白な事例を見る時ばかりは、「あ〜あ、やっかいな国に生まれちまったなぁ……」と思っちゃう(笑)。

 前述の「アートとしての生き人形」に関して、もう一つ付け加えると、そこには「芸術であらんとしよう」というノイズもない。それゆえにシンプルで純粋であり、だからこそ逆説的に、その「作品」が「芸術的」に感じられる。
 これは、私にとって一つの理想的なありようです。私にとって、それが芸術であるか否かは、制作動機や目的ではなく結果が全てであり、しかもそれは、個の主観による判断に基づくものだ(つまり汎的な芸術というものは存在しえない)、というのが、私自身の考え方なので。
 もし、この特集内で、どれか一点作品を貰えるとしたら(私は良く、展覧会等でもこういった発想で、マイ・フェイバリット・ワンは何かを考えます)、もう問答無用で「農夫全身像/鼠屋伝吉・作」ですね。それから少し離されて、二番目が前出の「怒濤/北村西望」かなぁ……。
 ンなこと考えたって、貰えっこありませんが(笑)。

【2012年4月9日追記】この『股間若衆』、後に掲載された『新股間若衆』や書き下ろし原稿などと共に、目出度く単行本化されました。オススメの一冊。

【追記2】2017年4月には、続編『せいきの大問題:新股間若衆』も出版されました。こちらも是非。

“Star Wars: Uncut”

 一人15秒間、思い思いの方法で『スターウォーズ』の「あの場面」を「再現」した映像を作り、それをインターネットを通じて繋いでいき、アタマからケツまでの「完成品」を作ろう、というプロジェクトらしいです。
 サンプル動画は、『エピソード4/新たなる希望』後半の「名場面」。

Star Wars Uncut “The Escape” from Casey Pugh on Vimeo.

 いや〜、こりゃ楽しい(笑)。
 詳細を知りたい人は、www.starwarsuncut.comへどうぞ。
 誰でも手軽に動画製作が出来る時代と、インターネットならではの集合知を活かした、ナイス・アイデアなプロジェクト。

新しいテレビとかブルーレイとか

 ちょっと前からテレビの調子が悪くなり、電源ONにしても初めのうちは画面がボケボケで、しばらく待っていると徐々にピントが合ってくる……ってな状態でした。
 で、その「待ち時間」が日々少しずつ長くなっていって、先週末くらいからはとうとう、マトモに映るようになるまでスイッチ入れて一時間以上かかるわ、真ん中に黒い帯が出るわ、色もブレるわ、更には垂直方向にブラーみたいなもんまで出て……という具合になったので、ようやく重い腰を上げて、長年使ったブラウン管テレビを、地デジ対応の薄型に買い換えました。

 さて、これでようやくハイビジョン環境が整ったので、テレビと一緒にBlu-rayプレイヤーも買うことにしました。
 私はヘビースモーカーなので、光学ディスク再生機は「消耗品」っぽいところがあるし、テレビ番組の録画とかは全くしないので、とりあえずは再生専用機で安いヤツにしよう……と思い、これを購入。

Lg_br_player LG電子 ネットワーク対応ブルーレイディスクプレーヤー BD370

 ネットワーク対応ということで、LANケーブルをブッ刺せばYouTubeが見られるってのが面白そうだってのと、DVD部分に関しては裏技でリージョン・フリー化できるってのが、決めポイント。

 諸々セッティングも済ませ、地デジのキレイさにビックラこき、リージョン1のDVDを再生してリーフリ化を確認したり(方法はググれば簡単に見つかります)、同じDVDでも、これまでのコンポジット接続よりHDMI接続の方がキレイなんだな〜と感心したり。
 Blu-rayの方は、とりあえず最初の一枚として、廉価版発売前ということでバーゲン品だった、これを購入。

300 〈スリーハンドレッド〉 コンプリート・エクスペリエンス [Blu-ray] 300 〈スリーハンドレッド〉 コンプリート・エクスペリエンス [Blu-ray]

 設置スペースの問題もあってテレビが32インチなので、フルHDではないんですけど、それでも画質の違いは良く判る。こーゆーのを見ちゃうと、『トロイ ディレクターズ・カット』とか『キングダム・オブ・ヘブン ディレクターズ・カット』とかも、Blu-rayで買い直したくなっちゃうなぁ(笑)。

 そんなこんなで、ふと世界のBlu-ray状況に興味がわいたので、外国ではどんなのが出てるんだろう……と、あちこち覗いてみました。で、さっそくアメリカ盤で『バラカ 地球と人類の詩』が出てるのを見つけて、しかも日本のアマゾンでも販売しているもんだから、即注文しちゃったり(笑)。

Baraka [Blu-ray] [Import] Baraka [Blu-ray] [Import]

 これ、日本盤DVDの画質が、ほんとヒドかったのだ(泣)。でも、米盤DVDは美麗だったので、Blu-rayも期待できそう。

 ヨーロッパ盤は、DVDとは状況が逆になって、Blu-rayではリージョンの問題があるようだけれど、それでもいちおうソフトをチェックしていたら……ソード&サンダル映画DVDのとき同様、ドイツ盤がけっこうウラヤマシイ状況。
 だって、『キング・ナレスワン(THE KING アユタヤの勝利と栄光)』は出てるわ、”Queens of Langkasuka”はあるわ、”Jodhaa Akbar”はあるわ……
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 見たことないけど、こんなロシア映画とか、こんなスウェーデン映画とか……
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 見たいな〜と思ってるアレハンドロ・アメナーバルの”Agora”も、ずっと先だけど発売日が決定してるし……
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 いいな〜、ドイツ人に生まれたかった(笑)。

 でも、残念ながらスティーヴ・リーヴス様のBlu-rayは、米独仏伊西、どこを探しても見つからなかった……。

【追記】その後、日本発売されたソフトあれこれ。
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「田舎医者(後編)」休載のお知らせとお詫び

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 先ほど「バディ」編集長氏のブログでもご報告がありましたが、今月20日発売の「バディ6月号」掲載予定だったマンガ、『田舎医者(後編)』ですが、先月末、締め切り前に右手が腱鞘炎になり、絵を描ける状態ではなくなってしまったために、編集部にご相談した結果、一回休載ということにさせていただきました。
 これで完結編となるところ、楽しみにしていてくださっている読者の皆様と、ご迷惑をおかけしてしまったバディ編集部の皆様に、この場を借りてお詫び申し上げます。

 腱鞘炎の方は、一時期は絵を描くことはおろか、マウスを持つこともできないほど痛みましたが、現在では既に本復しておりますので、ご心配はご無用にお願いいたします。
 発症時、このままでは締め切りに間に合わなさそうだと見込まれた段階で、早めに担当編集氏にご相談して、やはり早めに休載という措置をとっていただけたおかげで、それ以上の無理をしないで済んだのが、スムーズな回復へと繋がったのではないかと思います。

 それにしても、腱鞘炎なるものは初めての経験だったので(今まではどんなに無理をしても、鉛筆を持てなくなるほど痛むようなことにはなりませんでした)、症状が最も酷かった時期は、メンタル面でかなりこたえました。このまま絵を描けなくなるんじゃないか、とか、直ったと思っても再び描き始めたら、またすぐ痛むようになるんじゃないか、とか。
 というわけで、少し休んでからマンガ作業を再開したとき、痛みが戻ってこなかったのには、心底ホッとしました。

 そんなこんなで、『田舎医者(後編)』の掲載は、来月発売の7月号になります。
 上に載せた下絵でお判りのように、モブが多くて作画が厄介な回ですが(笑)、頑張って作業中ですので、来月までいましばらくお待ち下さいませ。

“Chronicle of an Escape”

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“Chronicle of an Escape” (2006) Adrián Caetano
 アルゼンチン映画、原題”Crónica de una fuga”。

 1970年代末、軍事政権下のアルゼンチンで、思想犯の疑いで政府の秘密警察に拉致された、男子大学生たちの辿る運命を描いた実話モノ。

 主人公は、サッカーチームでゴールキーパーをしている、政治運動とは全く無縁の大学生だったが、ある日試合の後いきなり秘密警察に拉致され、目隠しをされて郊外の一軒家へと連れていかれる。
 そこで待ち構えていたのは、容赦のない拷問。主人公は「自白」を迫られるのだが、何のことだか全く判らない。実は、先に摑まっていた男が、拷問に絶えかねて彼の名前を「密告」していたのだった。
 その館には、他にも大勢の学生たちが監禁されていた。ときおり仲間の誰かが、どこかへ連れて行かれるのだが、その行方も運命も判らない。長期に渡る監禁と拷問の恐怖で、学生たちは次第に卑屈に洗脳されていく。
 やがて主人公たち4人は、へと連れていかれ、服を脱がされ全裸のまま、ベッドに手錠で繋がれて屋根裏部屋に閉じ込められる。彼らへの辱めといたぶりは果てることなく続き、ついに生命の危険を感じた4人は、嵐の夜に全裸のまま、館から脱出しようと試みる……。

 というわけで、これが実話だけに、何ともオソロシイ内容ですが、極めて真面目に作られたなかなか良い映画です。
 ドキュメンタリー・タッチを基調にしながら、要所要所でサスペンスフルな演出も挟み、沈黙の恐ろしさや静かな緊張感といった、映画的な見所も多々あり。追い詰められていく人間の心理描写といった、キリキリするような感覚の描出も上手いので、見方によっては、ソリッド・シチュエーション・ホラーみたいなテイストもあり。
 ただ、もう20年以上前になりますが、この映画と同じくアルゼンチン軍事政権下での学生たちの拉致・監禁・拷問・虐殺を描いた映画で、『ナイト・オブ・ペンシルズ』(ビデオ題『ミッドナイト・ミッシング』)というのがありまして、これはホント神も仏もないって感じのトラウマ級の内容だったので、あれに比べると、ちょっと「弱い」感はあります。
 その反面、この”Chronicle of…”の方が、内容に「救い」があるので、見終わって落ち込んだり暗鬱になったりしないで済む、娯楽映画的に楽しみやすいものになっています。でも、時代背景の予備知識なしで、この映画で初めて、こういった歴史上の実話を知る人だと、やっぱりショッキングな内容かも……。
 というわけで、先日紹介した“Playroom”と違って、映画としても佳良なのでフツーにオススメできる感じ。

 さて、では責め場的な見どころについて。
 まず、肉体的な拷問シーンに関しては、これはさわりを見せるだけでハッキリとは描かれなので、そういう意味での見所はさほどなし。拷問内容までしっかり出てくるのは、バスタブに頭を沈める水責めくらい。
 ところが、前述したように心理描写系が巧みなので、そういったメンタルな責めに、なかなか見所が多いんですな。
 例えば、主人公が他の囚人に引き合わされるとき、看守たちは彼らに「Girls!」と呼びかけ、そして主人公のことを「She is…」と紹介する……つまり男扱いされないという辱めとか、目隠しを外されても看守の目を見てはいけなくて、視線は常に床に落としていなければいけないとかいった、日常的なディテールのリアルさが、SM的に見てもなかなか滋味深い。
 そして後半、いよいよ残った4人が全裸で監禁されてからは、そういった「メンタル面での辱め」がピークに達して、ここが大いに見応えあり。
 4人は、髪を短く切られた後、服を脱ぐよう命令され、素っ裸でベッドに仰向けに寝かされ、手錠でバンザイスタイルに繋がれる。そして、その姿を鏡で見せられ、「どうだ、この中に何が見える。自分が自分だと判るか。お前のお袋さんが見たって、これが自分の息子だとは判らねェさ」など、惨めに変わり果てた自分らの姿を嘲笑されて、屈辱に顔を歪ませながら涙する。
 更に囚人の1人は、全身にバケツで汚水を掛けられ、看守から「貴様は性根から腐っているから、これで掃除してやろう」と、床掃除用のモップで全身をゴシゴシと、顔面から股間まで擦られる。
 あるときは、ズボンだけ履いて部屋から出ることを許され、階下の食堂で看守たちがテレビを見ている横で、料理や給仕と奴隷のように使われる。またあるときは、全裸で目隠しをしたまま一列に並ばされ、銃を突きつけられ、「これから貴様らを処刑するが、殺される前に、最期の望みを一つず聞いてやろう」などと嬲られる。
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 そういったあれこれが、前述したような心理描写や緊張感に長けた演出の巧みさもあって、実にしっかりと描かれるので、肉体的な責め場がなくても、充分以上にSM的な興趣が擽られます。しかも、徹底してリアリズム準拠の演出なので、腰をよじらせたりアングルを工夫して局部を隠すなんてこともなく、見えるときは見えるという自然のまま。
 オマケにこの4人は、このまま全裸で脱走するので、映画のクライマックスはずっと、股間丸出しのヒゲ男4人の熱演が続きます。そして逃げ出した先でも、夜の街で人に見られて、怪訝な顔をされてしまったり。

 そんなこんなで、下心メインでも見所多しですし、これまたDVD Fantasiumから日本語で購入可能なので、興味と再生環境のある方は、どうぞお試しあれ。
 米アマゾンの商品ページは、こちら