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『復讐無頼・狼たちの荒野』

Tepepa
『復讐無頼・狼たちの荒野』(1968)ジュリオ・ペトローニ
“Tepepa” (1968) Giulio Petroni
 前回からトーマス・ミリアン繋がりで、彼主演のマカロニ・ウェスタン映画のイタリア盤DVDのご紹介。
 20世紀初頭、メキシコ革命の渦中に、英国人医師ヘンリーがとある街にやってくる。街の監獄には革命派の英雄テペパが捕らえられており、明日にも銃殺刑に処せられようとしていた。処刑当日、ヘンリーはテペパを救出する。しかしそれは、テペパの命を助けるためではなく、ヘンリーの想い人だった女性がテペパに犯されて自殺した復讐として、自らの手でテペパを殺したいからだった。しかし、警察署長のカスコッロ大佐に追わているうちに、ヘンリーとテペパの間には、不思議な絆が生まれていく……ってなお話しです。
 メキシコ革命を背景にしているとはいえ、政治的なヤヤコシイことが描かれるわけではなく、あくまでも、圧制者としての官と自由を求めて闘う農民というシンプルな構図の中、三人の男たちの思惑や運命が交錯していく娯楽作。
 マカロニウェスタンには疎いので、良く判らないんですが、いわゆる「アウトローたちが見せる、胸の空くようなガンファイト!」みたいな要素は少な目な印象。それ系のハッタリやケレン味は、少ないほうなんじゃないだろうか。それよりも、革命に生きたテペパという男の半生を描いた歴史物、みたいな雰囲気があります。
 もっとも、このテペパが実在した人物なのか、それともフィクションなのかは、調べてもちょっと判りませんでした。名前からは、何となくエミリアーノ・サパタを連想しますね。ヴィジュアル的には、チェ・ゲバラっぽい感じもある。
 実在かフィクションかは横に置いても、このテペパのキャラクターは、大いに魅力的。痛快なアクション・ヒーロー的な面もあり、激動の時代に生きた悲劇の英雄的な面もあり、ひょうきんな面もあり。必ずしも善とは言えない部分や、人間的な弱さもある。加えて私は、テペパを演じるトーマス・ミリアンが好きなので(あと、ゲバラも大好き……っても、顔と雰囲気がですが)、なおさら魅了されちゃいました(笑)。
 また、医師のヘンリーも良くキャラクターが立っているし、他にも、テペパに救われながら後に裏切る仲間とか、まっすぐな瞳が印象的な少年とか、回想シーンで出てくる女性の美しさとか、登場人物は魅力的な面子揃い。ドラマも、それらのキャラクターの複雑な心情が絡み合って、グイグイ引っ張られる感じで、ラストはけっこう感動的でもある。
 音楽はエンニオ・モリコーネで、メイン・テーマはいかにもこの人らしい、凛々しくてちょいと泣きも入っている、メロディの立ったカッコイイ曲。ちょいとノスタルジックでトラッドな香りもあって、かなり好き。あと、映画のラストで流れる、情熱的な女性ヴォーカルによる “Al Messico che vorrei” っつー曲が、映画の後味とも相まって、えらいカッコイイです。近々、日本盤サントラCDが出るようなので、購入の予定。
 主演のトーマス・ミリアンは、こりゃもう文句なしに良くって、ひょっとしたら私が見た彼の出演作の中では、このテペパ役が一番好きかも。あんまりキャラクター的にツボだったので、その百面相ぶりを見ているだけでも満足できるくらい(笑)。
 医師のヘンリー役は、ジョン・スタイナー。フィルモグラフィーを調べたら、『悪魔のホロコースト』と『炎の戦士ストライカー』は見たことあるはずなんだけど、正直ちっとも覚えてない(笑)。この映画では、いかにも線の細いインテリで、しかもちょっと歪んだ部分もあるというキャラクターに、上手くハマっている感じで好印象。
 敵役のカスコッロ大佐に、オーソン・ウェルズ。大物のはずですが、今回の演技は憎々しさにもカリスマ性にも欠けていて、悪役としての魅力があまりない。不明瞭にモゴモゴ喋る、ただのデブって感じで、正直イマイチです。
 DVDは紙のアウターケース入りで、トップの図版がそれですが、あたしゃこれより、中身のジャケの方が好み。スクイーズのシネスコで、画質は佳良。
 音声は、伊語ドルビー5.1chと、伊語モノラルと、英語モノラルの三種類。英語音声が入っているのは嬉しいんだけど、残念ながらインターナショナル版の尺が本国版より短いのか、あちこち英語音声が欠けているところがある。で、そーゆーときに自動的に伊語音声に切り替わって英語字幕が出る……なんてサービスもなく、いきなり無音になっちゃうもんだから、最初はビックリしました(笑)。
 DVDと一緒にサントラCDもついていて、本来なら喜ぶべきところではありますが、前述したように国内盤CDが出るので、あまりありがたみなし。しかも、このオマケCDの収録曲数は10曲なのに対して、国内盤は18曲だし。
Tepepa_whip 最後に、責め場情報。半裸の男が牛追い鞭で打たれるフロッギングのシーンあり。
 実は、この映画のポスターとかには、必ずこの鞭打ちの絵が入っているので、あたしゃてっきりトーマス・ミリアンがやられるのかと思って、ワクワクしてたんですけど、実際に映画を見たら、鞭打たれるのは別の男でした(笑)。
 とはいえ、こっちの被虐者もタイプ的にはOKなので、これはこれで良し。シーンとしては短いですが、けっこう痛そうだし、迫力もあります。
【追記】日本盤DVD出ました!

復讐無頼~狼たちの荒野 スペシャル・エディション [DVD] 復讐無頼~狼たちの荒野 スペシャル・エディション [DVD]
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2009-10-02

“Beatrice Cenci”


“Beatrice Cenci” (1969) Lucio Fulci
 ルチオ・フルチ監督の日本未公開映画、フランス盤DVD。

 映画の内容は、16世紀のイタリアで実際にあった事件。美少女ベアトリーチェ・チェンチは、暴君で知られる父親フランチェスコから監禁・凌辱され続け、ついに義母や兄や恋人と共謀して父親を殺害する。しかし、それが発覚。チェンチ家を取りつぶして財産を没収したい教皇庁の思惑も絡み、チェンチ一族は酷たらしい拷問の末、全員斬首されてしまう……っつー、神も仏もない話(でも実話)です。
 ルチオ・フルチって、グロくて汚いだけのホラーを撮る監督というイメージで、実はあんまりいいイメージがなかったんですが、この映画を見たら、少しイメージが変わりました。
 冒頭の移動撮影による、当時処刑場だったサンタンジェロ城周辺の描写、細かなカット割りと極端なクローズアップやパンフォーカスによる、処刑人がベアトリーチェを連行しにくるシーンの緊張感、フランチェスコ・チェンチが男を犬に喰い殺させるシーンの、激しく揺れる手持ちカメラの迫力……などなど、画面に驚くほど力がある。ちょっとビックリです。
 気になって調べてみたら、この”Beatrice Cenci”は、フルチにとって意欲作だったらしいですな。でも観客の反応はブーイングで、評価もされずに落ち込んじゃったらしい。画面のあちこちから、この映画にかける意気込みのようなものは、ひしひしと伝わってくるので、何だか気の毒な気がします。

 ただまあ、諸手を挙げて絶賛というわけでもなく、例えば前述のパンフォーカスが多用されるんですが、厳密にはパンフォーカスではなくって、画面の左右をそれぞれマスク分けしたもの(こういう技法って、何て言うんでしょ?)。だから、マスクの境目にまたがったオブジェクトは、左右でいきなりフォーカスが変わっちゃうので(例えば、人の顔と胸にはピントが合ってるのに、肩だけボケる、みたいな感じになる)、かなり不自然さが気になる。凝っているわりには、感覚が雑。
 あと、過去と現在と時制をカットバックしながらモノガタリが進行していくスタイルなんですが、ちょっと捌ききれていなくて混乱している印象もあり。ただ、これはイタリア語の鑑賞だったので、私が内容を把握しきれていないだけかも知れません。でも、ベアトリーチェの置かれた状況の悲惨さとか、殺人にいたるまで追いつめられていく様子とかは、正直あんまり伝わってこなかったなぁ。

 しかし、映画全体に漂っている「しょせん人の世なんて醜くて汚いんだよ」とでも言わんばかりの、何とも言えない不潔感と厭世観は良かった。これだけでも、前述した不満点を凌駕する価値ありです。
 前述した、犬に人を食い殺させるとか、あるいは拷問シーンなんかに、そういったエグ味があるのは、まあ当然と言えば当然なんですが、この映画の場合、そういったもの以外のちょっとしたシーンでも、ほぼまんべんなく同じグロテスクな雰囲気がある。
 例えば食事のシーンでは、他者の肉を喰らう「欲」としての食欲が露悪的に強調されているような感じだし、裁判官(かな?)が話し合っているシーンとかでも、変に密閉感のある暗い部屋で、しかも汗がだらだら流れてたり。男女共にヌードシーンも多々あるんですが、これまた裸体の美しさなんて微塵もなく、あえて醜悪に撮っている感じ。…まぁこれに関しては、私はヘンタイなので、そういった醜悪な裸体でも、「う、これはけっこうエロいぞ」なんて、別種の美を感じますけど(笑)。
 中でも特に気に入ったのは、被虐者が無惨な拷問を受けている横で、それを大した興味もなさそうに眺めながら、鶏の脚か何かをムシャムシャ食っているヤツがいるあたり。この発想の悪趣味さと凶悪さは、かなりポイント高いです。
 まあ、そんなこんなで、汚穢の美学みたいなものが全体に漂っていて、そういうのが好きな人だったら、けっこうツボな内容だと思いますよ。

 ベアトリーチェ役のアドリエンヌ・ラルッサは、小さな顔に細い顎と大きな目玉に、なんだか神経症的な魅力がある、なかなかの美人です。ホラーやサスペンス映えしそうなお顔。ただ、悲劇のヒロインとして感情移入するには、いまいち清純さや悲劇性には欠けるかも。
 暴君フランチェスコ・チェンチ役のジョルジュ・ウィルソンは、これは秀逸。恰幅のいい身体に、目つきに凄みがある髭面で、好色や強欲でギラギラしている悪漢としての、説得力も魅力もある。ヒゲ熊オヤジ好きには、全裸水浴びシーンのオマケ付き(笑)。
 ベアトリーチェの恋人オリンポ役は、トーマス・ミリアン。この人、私けっこう好きでしてねぇ。基本的な顔立ちはハンサムなんだけど、ギラギラして薄汚れているのが似合う系だし、しかも映画ごとに、例えば『情け無用のジャンゴ』の被虐エロスとか、『走れ、男、走れ』のヘナチョコな可愛さとか、違った魅力を見せてくれる。あと、脱ぎっぷりや責められっぷりもいい(笑)。『情け無用のジャンゴ』の腰布一丁磔責めは、マイ・フェイバリットの一つだし、『走れ、男、走れ』でも、風車の羽に縛り付けられてグルグル回されたり、両手吊りで縛られて脱がされちゃったりしてます(笑)。今回はヒゲなしなのが残念だったけど、でもしっかり脱ぎ場と責め場はあり。……白状すると、私がこのDVDを買った最大の目当てって、このトーマス・ミリアンの拷問シーンだったんですけどね(笑)。

 DVDはフランス盤。ジャケ写からも感じが判ると思いますが、デジパックの外箱入りで、ルチオ・フルチの映画とは思えない高級感(笑)。音声は伊語と仏語、字幕は仏語のみ。スクイーズ収録のワイド。画質は佳良。特典映像で、フルチのドキュメンタリーやインタビューのオマケが、合わせて一時間少々。
 なかなか見応えのある映画なので、日本盤がでて欲しいけど、まあ望み薄でしょうなぁ。どうせなら、『マルペルチュイ』『怪奇な恋の物語』と併せて、「ヨーロッパ・カルト・ホラーBOX」とか銘打って出してくれると嬉しいんだけど(笑)。

 最後に、責め場情報。前述したように、トーマス・ミリアンの拷問シーンあり。
 まずは、拷問柱を背にしてバンザイ縛りで、引き延ばし責め。ロングありアップあり、被虐者の熱演に腕の関節部分に血筋が浮く等の効果もあって、単純な責めながら見応えあり。
 お次は、車輪縛りで焼き鏝責め。これまた、じっくりたっぷり見せてくれます。更に嬉しいのは、引き延ばし責めでは下半身着衣だったけど、焼き鏝責めでは服や下着ではなく、性器のみを布で覆ったスタイルになっているところ。片方の腰が丸ごと裸なのが、何ともエロティック。
 まあ、具体的にどんな感じかは、下の画像をご覧あれ。こんな感じで、マッチョ好きには物足りないでしょうけど、拷問シーンそのものの出来映えは、かなり良いですぞ。

関西クィア映画祭で”Desert Dungeon”上映

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 前にここここで書いた、趣味でシコシコ自主制作している3DCGアニメーション "Desert Dungeon" が、7月20日から24日まで大阪で開催される関西クィア映画祭で、上映されることになりました。
 日時は7月20日(金)19:30から、同映画祭のオープニング・プログラム「タイヘン×ヘンタイ」の中で上映されます。チケットや場所等の詳細は、関西クィア映画祭の公式サイトをご覧ください。前売りは6/10(日)から発売開始だそうです。

 この "Desert Dungeon"、昨年11月にも渋谷のアップリンク・ファクトリーにて、『日本のゲイ・エロティック・アート vol.2』刊行記念イベントの一環として上映されました。そのときのバージョンは、act 1から6までの合計約20分でしたが、今回の関西クィア映画祭では、それに未発表分も含めた act 7から9までを追加した、約30分バージョンでの上映になります。
 基本的にひたすら趣味で制作して、自分のサイトで公開してきたシリーズですが、容量の問題から小さいサイズでの公開でしたし、しかもサーバ負荷の問題から、過去のactは順次公開終了せざるをえない状況。こうしてパブリックな場での上映機会をいただけるのは、本当に嬉しい限り。お招きくださった同映画祭スタッフの方には、感謝感激であります。
 で、この作品、実は現在もう一つ、海外のインディペンデント映画祭からもお誘いを受けております。まだ調整中でどうなるか判りませんが、これも実現してほしいもの。

 で、お話しをいただいたときに「予告編とかはありますか?」とのお問い合わせがありまして、そんなものはなかったんですけど、せっかくだからいい機会なので作ってみました。

 例によってiMovieで制作したもの。YouTubeの規制に引っかからないよう、念のためにマスクをかけました。BGMは、前に作った "Memnon" という自作曲を、尺に合わせてエディット。

 そんなこんなで皆様、よろしかったらぜひご来場くださいませ。
 あ、それと映画祭ではボランティア・スタッフの募集もしているそうです。
 どんなイベントでも、人手不足や資金難はつきもの。更にこーゆーイベントって、スタッフとして参加すると、お客さん視点とはまた違った楽しさがあるものです。興味のある方は、尻込みしていないで、じゃんじゃんお手伝いしちゃいましょう。

『怪奇な恋の物語』


『怪奇な恋の物語』(1969)エリオ・ペトリ
“Un tranquillo posto di campagna” (1969) Elio Petri

 先日、雑誌で「フランコ・ネロとヴァネッサ・レッドグレーヴが去年結婚した」という記事を読んで、相棒と二人で「え〜っ、なんで今になって?」とビックリしてしまいました。
 だって、この二人が付き合ってたのって、1967年の『キャメロット』で共演したとき。その頃に同棲して、間に子供もできたけど、けっきょく結婚はしなかった。それが30年後に、あらためて結婚したってんだから、まあビックリもしますわなぁ。でもまあ、二人とも好きな俳優さんなので、何となく嬉しい気もします。
 で、そんなこんなでビックリしていたら、久々に見たくなったのが、二人が共演した、この『怪奇な恋の物語』という映画。
 私が、フランコ・ネロの何が好きかっていうと、ぶっちゃけ「顔」です(笑)。
 周囲に言わせると、私はメンクイなんだそうですが(……まあ、否定はしません)、でも、いわゆるツルッとした二枚目ってのはあまり好きじゃない。王子様系とかサワヤカ系には、全く興味なし。メンクイなんだけど、「ちょいワイルド系入ってます」とか、「ハンサムだけど薄汚れてます」とか、「顔は整ってるんだけどギラギラしてる」とか、そんなタイプが好きなんですな。フランコ・ネロは、そこいらへんのツボをモロに押される(笑)。

 で、この『怪奇な恋の物語』なんですが、実はこれは私にとって、長いこと「見たいのに、すっごく見たいのに、それでも見る機会がなかった」幻の映画でした。何でそんなに見たかったのかというと、その昔、芳賀書店から出ていたシネアルバムという本のせいでして。
 このシネアルバムってのは、いわばスターの写真集&フィルモグラフィーみたいなシリーズなんですけど、その、フランコ・ネロ編に載っていたこの映画のスチル写真が、彼が「フルフェイスのヒゲ&パンツ一丁で、椅子に縛られている」とこと、「首にギプスをして車椅子に乗っている」とこと、「ナイフを突きつけられている」とこだったんですな。
 これが男子中学生の股間を直撃しちゃいまして(笑)。覚えたての劣情が刺激されまくり、「死ぬまでにゼッタイに見たい映画リスト」のトップに入っちゃった(笑)。
 上の画像は、そのスチルとは違うんですけど、同じシーンの撮影風景です。……ね、筋肉とかはあんまりないけど、ヒゲモジャ&体毛ボワボワ&ボンデージで、私の描く絵みたいでしょ(笑)。
 でも、なかなか見る機会がなくて、それから20年後くらいに、ようやく覚えたてのインターネット通販で、アメリカ版VHSビデオを発見。大喜びしてそれを注文購入し、念願叶ってようやく見られた……ってないきさつががあります。

 映画の内容は、前衛芸術家が田舎の屋敷をアトリエに借りると、それが幽霊屋敷で、現実と幻想が交錯していく……ってなサスペンス・ミステリー。
 現代的な(あ、当時における、ね)アヴァンギャルド・アートと、古色蒼然としたゴシック・ロマンっつー、いっけん相反するような要素が絡み合い、独特な雰囲気を醸しだしているのが面白い。制作年代を反映して、ちょいとサイケなムードがあるのもいい感じ。音楽も、これまた現代音楽的な前衛系と、スキャットを使ったサイケ・ムードが混在しててステキ。後年、サントラCDを見つけて購入したんですが、その時になって初めて、エンニオ・モリコーネだったと知った(笑)。
 で、目当てのスチル写真のシーンですが、「いつ出てくるんだろ〜?」とワクワクして見ていたら、映画の冒頭、十分足らずのところで、もう「パンツ一丁ボンデージ」は出てきてしまって、ちょいと拍子抜け(笑)。メイン・ディッシュのつもりが、アペタイザーだった、みたいな(笑)。
 でもまあ、そんな下半身絡みは抜きにしても、印象的で好きなタイプの映画です。今回、改めて調べてみたら、イタリア盤DVDが出ているのを発見したので、買おうかどうか思案中。
 ホントはね、日本盤が出てくれりゃ一番いいんだけど、こういうカルトというにはイマイチ地味な、マイナー系のヨーロッパ映画って、なかなかそういう可能性も少ないし……ね。

 あ、しまった、ヴァネッサ・レッドグレーヴについて何も書いてねぇや(笑)。
 とりあえず『肉体の悪魔』と『ジュリア』と『ダロウェイ夫人』の日本盤DVDの発売を祈願。
 あ、ついでに『トロイアの女』も。なんでついでかっつーと、この映画ではヴァネッサ・レッドグレーヴよりも、キャサリン・ヘップバーンとイレーネ・パパスの方がスゴかったから(笑)。

ゴードン・スコット追悼

 去る4月30日、ターザン映画やソード&サンダル映画でお馴染みの、ゴードン・スコットが亡くなりました。このブログでも何度か書きましたが、個人的に好きな俳優さんでした。享年80歳。合掌。
 ということで、追悼を兼ねて現在入手可能なゴードン・スコット主演映画のDVDを並べてみました。残念ながら日本盤はありませんが……。
“Tarzan and the Trappers” (1958)
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 ターザン役者として有名なスコットだけど、DVD化されているのは、おそらくまだこの一作だけ。日本未公開らしく、邦題も見つかりませんでした。
 写真左はバスター・クラブ主演の『蛮勇タルザン』”Tarzan the Fearlee” (1933) とのカップリングのアメリカ盤。
 右は、同じくバスター・クラブ版と、エルモ・リンカーン主演の『ターザン』”Tarzan of the Apes” (1918)、ハーマン・ブリックス(ブルース・ベネット)主演の『鉄腕ターザン』”Tarzan and the Green Goddess” (1938)(クリフハンガー・シリアル『ターザンの新冒険』”New Adventures of Tarzan” (1935) の再編集版)、グレン・モリス主演の『大ターザン』”Tarzan’s Revenge” (1938) がカップリングされた二枚組。アメリカ盤。
 画質はどれも「古かろう、安かろう、悪かろう」の、似たり寄ったりです。
 因みに、エルモ・リンカーンのやつとグレン・モリスのやつは、日本盤DVDも出てます。特にグレン・モリスの『大ターザン』は380円と安価なので、ターザン好きならぜひゲットしておきたいところ。(ここで買えます)
『逆襲!大平原』”Romolo e Remo” (1961)
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 スティーヴ・リーヴスと共演した、ローマ建国神話ネタのスペクタクル映画、フランス盤。前にここで紹介しました。DVDは、ドイツ盤とスペイン盤も出ていますが、持っていないので内容は未確認。
“Maciste alla corte del Gran Khan” (1961)
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 これもここで紹介済み。「マチステ中国に行く」といったキワモノ系ネタにも関わらず、けっこう見応えのある良作。アメリカ盤。
“Il Gladiatore di Roma” (1962)
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 これまたここで紹介済み。責め場好きなら、これがマスト。イタリア盤。
“Goliath e la schiava ribelle” (1963)
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 アレクサンダー大王に協力して、ペルシャの暴君を滅ぼす冒険活劇。スコット君自身の脱ぎ場や責め場はありませんが、筋肉美は黒人ボディービルダーのサージ・ヌブレットが見せてくれます。あと、共演のミンモ・パルマーラが、普段はまったくイケない私ですが、この映画だとヒゲ&胸毛&露出度高めの衣装というトリプルコンボで、かなりセクシーでイケてます。ジョルジュ・マルシャル主演のソード&サンダル映画とのカップリング。ドイツ盤。ノートリミングで画質も極めて良好。
“Ercole contro Molock” (1963)
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 邪教の生贄の美女を救い、暴君を倒して民衆を解放する系の、アクション・スペクタクル。ボンデージはあるけど、責めと脱ぎはなし。犬みたいな鉄仮面のモロク神と、髪を振り乱して太鼓を叩く半裸の美人巫女集団絡みのシーンが、サイケなホラー・テイストでちょっと面白いです。ドイツ盤。ノートリミングだけど画質はイマイチ。
“Il Colosso di Roma” (1964)
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 ローマもの。ローマ軍人スタイルのスコット君、なかなかコスチュームが決まってカッコイイです。ビリビリに破けたチュニック&血まみれで、岩山の丸木橋を渡るシーンがセクシー。炎の中に自ら手を差し入れて苦痛に耐える、なんてシーンもあり。脱ぎ場はなし。左がドイツ盤、右がアメリカ盤。
 アメリカ盤はワイドスクリーン・エディションと謳っていますが、これは一度テレビサイズにトリミングされたものを、更に上下にマスクをかけたインチキワイド。画質も、マスターは8ミリですかってなくらいのザッラザラ。リチャード・ハリソンのグラディエーター映画とのカップリング盤。
 ドイツ盤は、オマケは何もないけれど、ノートリミングで画質も佳良。
“Coriolano: eroe senza patria” (1964)
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 ローマもの。ジャケはグラディエーターものみたいですが、こんなシーンはないし、剣闘士も出てきません(笑)。あ、でもスコット君がチュニックをはだけて、酷たらしい古傷を見せるシーンがあったから、もしかしたら元剣闘士の話なのかな。ドイツ盤。ノートリミング、画質はまあまあ。
“Hercules and the Princess of Troy” (1965)
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 テレビ映画のヘラクレスもの。海の怪獣と闘います。チープだけど、モンスター好きなら楽しめるかも。左がゴードン・ミッチェルの “Atlas in the Land of Cyclops” と、リチャード・ハリソンの “I Giganti di Roma” とのカップリング盤。右がゴードン・ミッチェルの “The Giant of Metropolis” とのカップリング盤。どちらもアメリカ盤。
 因みに “The Giant of Metropolis” は、ソード&サンダル meets Sci-Fi の果てしなく安っちい怪作なんですが、キワモノ好きならオススメの逸品。責め場も、怪光線(……に見立てた、ただのスポットライト)とか、ハイテク電撃棒(……に見立てた、木の枝みたいなただの杖)とか、毛むくじゃら侏儒猿人軍団に噛みつかれるとか、見どころ(?)いっぱいです。
その他、ボックスセット系。
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 ”Tarzan and the Trappers” 収録。他の収録作は、ハーマン・ブリックス版とグレン・モリス版のターザンものと、スティーヴ・リーヴス、レジ・パーク、アラン・スティール、ダン・ヴァディス、ロッド・テイラー、ピーター・ラパス、カーク・モリスのソード&サンダル映画。三枚組、アメリカ盤。画質はボロボロ。
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 ”Ercole contro Molock” 収録。その他に、スティーヴ・リーヴス、マーク・フォレスト、ミッキー・ハージティ、ダン・ヴァディスのソード&サンダル映画が7本収録された4枚組。アメリカ盤。トリミング版ですが画質は佳良。
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 ここで紹介済み。
 オマケの珍盤。
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 これはスティーヴ・リーヴスの『怪傑白魔』のDVDなんだけど、なぜかジャケ写がゴードン・スコットっつーシロモノ(笑)。リーヴス君は遠慮がちに、下の方に小さく横たわってます(笑)。

“Centurians of Rome”

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“Centurians of Rome” (1980) John Christopher

 今まで、ソード&サンダル映画のソフトについて、何度か書いてきましたが、今回はちょいと変化球です。
 いや、変化球っつーか、これは反則か(笑)。だってこれ、ゲイポルノ史劇だから(笑)。でも、そう言うと何だかキワモノのようですが、あにはからんや、これは私が見た古今東西のゲイ・ポルノ映画の中でも、三本の指に入るマイ・フェイバリット。
 とゆーわけで、今回の記事は「エロ」ですから、お嫌な方はパスするように。

 ポルノ+史劇というと、有名なのはティント・ブラスの『カリギュラ』ですよね。公開当時は日本でも話題になりましたし、ゴージャスな画面や残酷趣味などの見せ物的な面白さはありましたが、まあ正直なところ、アーティスティックという面でもポルノグラフィックという面でも、どっちつかずの中途半端さで、さほど面白い作品ではない。
 理由はいろいろありますが、私にとって最大のそれは、単に豪奢なセットの中で乱交するだけで、エロティックな表現そのものに目を見張るようなものがなかったってことです。そういう意味では、富士見ロマン文庫から邦訳が出た、ノヴェライズの方が面白かった。ペントハウス誌のオーナーにして映画の制作総指揮も努めたボブ・グッチョーネが、映画の仕上がりに不満で手を入れたとは聞きますが、私はティント・ブラスの作品は、そーゆー横槍がないはずの『サロン・キティ』でも退屈だったから、そもそもこの監督とは相性が悪いのかも知れません。
 しかし、大金を投じて(『カリギュラ』は46億円らしい)ポルノ映画を撮るってこと自体は、結果はどうあれ、その心意気に拍手したい気持もあります。

 さて、そんな『カリギュラ』の向こうを張って……かどうかは判りませんが、その翌年に公開されたのが、この “Centurians of Rome” です。もちろん『カリギュラ』ほど大金がかかっているわけではなく、それでもIMDbのトリビアには「最も高い制作費を投じた(10万ドル近い)ゲイ・フィルム」とあります。
 まぁ、いくらゲイポルノとしては破格の予算を投じていても、『カリギュラ』とは桁が二つ違うし、実際の画面もゴージャスには程遠いです。50年代後半から60年代中頃のソード&サンダル映画の、安っちいクラスの作品と比べても、ず〜っとず〜っと貧乏くさい(笑)。
 でも、それなりに頑張ってはいて、例えば、何もない野っ原にローマ風の石柱をポツンと置いて、遺跡風の雰囲気を出していたり、建物の外観とかは、どこぞの図書館だか博物館だかにありがちな、ギリシャ・ローマ風のエントランスとかを使って撮っていたり、頑張って史劇らしいムードを出そうという努力や工夫は、充分以上に感じられます。
 そして特筆したいのが、この映画は『カリギュラ』と違って、ポルノグラフィーに徹しつつ、なおかつモノガタリとしても面白いんですな。

 映画は『スター・ウォーズ』のパロディで始まります。星空を背景に「昔々、ローマからそう遠くない所で……」ってな黄色いテロップが流れる(笑)。で、舞台はローマ郊外らしき野っ原に移り、そこで畑を耕すかなんかしてる仲良し二人組、黒髪にフルフェイスのヒゲのディミトリアス(ジョージ・ペイン)と、ブロンドに口ヒゲのオクタヴィアス(スコルピオ)がメイン・キャラクター。
 二人は親戚同士で、オクタヴィアスが税金が払えなくて困っている、みたいなことを会話で説明した後、一休みしようかと昼寝する。ここで見る淫夢が、最初の濡れ場。ロマンティックな音楽……因みにこれ、富田勲の『ダフニスとクロエー』を、おそらく無断で勝手に使ってるんですが(笑)……が流れ、色照明の中、二人のヒゲ男は全裸になって愛を交わす……ってな具合。
 そこに百人隊長(エリック・ライアン)が部下と共に馬に乗ってやってくる。「税金払え」と言われ、オクタヴィアスが「金がないから払えない」と答えると、その場で取り押さえられてしまう。百人隊長は、ディミトリアスに空の財布を投げ与えて、「明日までに金を持ってこい」と命令すると、下帯一つの裸にされたオクタヴィアスを縄で縛って、馬で引いて連れて行ってしまう。
 連行されたオクタヴィアスは、百人隊長のテントの中で、「美しい、天使のようだ!」とか何とか迫られて、部下と一緒に数人がかりで凌辱されてしまう……ってのが二番目の濡れ場。その夜、ディミトリアスがオクタヴィアスを助けにテントに忍び込む。で、「俺はこいつを始末してから行くから」と、オクタヴィアスを先に逃がして、石を拾って百人隊長を殺そうとするのだが、根が善人なのか実行できない。すると百人隊長が目を覚ましてしまう。
 こうして、オクタヴィアスは脱出できるが(因みにこのシーンでは、今度はエルマー・バーンスタインの『十戒』の音楽が……)、ディミトリアスが捕まってしまう。百人隊長はディミトリアスを縛ると、「お前を奴隷に売って、その金を税金にあててやろう」とか言いながら、裸にして身体に悪戯……ってのが、濡れ場じゃないけど三番目のエロ・シーン。
 この後、ディミトリアスは奴隷の競り市に出され、そこに来ていた、いかにも退廃メイクなフェミニン系の皇帝の目に留まり、お買い上げ、他の奴隷と一緒に地下牢に繋がれて、マッチョな調教師からセックス調教の開始。いっぽうオクタヴィアスは、ディミトリアスを助けるために、自分を「美しい」と言っていた百人隊長に色仕掛けで近付くが、それをきっかけに二人の間に情が通いはじめる。その頃、調教が終わったディミトリアスは、ついに皇帝の夜伽をするために寝室に連れて行かれ、寝台の柱に縛られ……ってな具合に、話が進みます。

 あらすじの紹介が長くなりましたが、こんな感じで、ジャンル・フィクションで期待されるクリシェを上手く使い、同時に要所要所をしっかり濡れ場で押さえつつ、キャラクターの性格や心情も絡めたストーリーをきちんと展開していく。内容も盛り沢山で、凌辱や縛りや鞭打ちもあれば、キスやラブラブや恋愛もあり、モノガタリ的なドンデン返しまである。
 ここまでちゃんとした「おはなし」があって、それがエロ・シーンと全く乖離していないのは、ポルノグラフィー的なモノガタリのレベルが極めて高いとゆーことで、もう「お見事!」って感じ。私が本作を、マイ・フェイバリットの一本にあげる、最大の理由がこれ。
 それと私の場合、幼少のみぎりから『十戒』やら『ベン・ハー』を見て、映画としての面白さと同時に、性的にもモヤモヤと惹かれていた……って事情もあります。
 で、映画を見た後、勝手に頭の中で「アレがあの後、あ〜なってこ〜なって……」ってなHな妄想を繰り広げて、エロい二次創作(笑)をオカズにマスターベーションしたりしてたわけですから、そーなるとこの映画は、もうある種の夢の具現化です。今からもう、20年も前になりますか、知り合いに初めてこの映画の裏ビデオを見せてもらったときは、「ひゃ〜、こんなのがホントにあったの!」と、マジでビックリかつ感激したもんです(笑)。

 あとまぁ、やっぱりポルノですからね、俳優陣がイケるかどうかってのも重要なんですが、これまた幸いなことに、私の好みに合致してる。
 昔の、まだフィルム撮りだった頃のゲイ・ポルノですから、皆さん今みたいにゴリゴリのマッチョやらビルダーやらってのではないですが、肉体労働系のナチュラルな逞しさで、これはこれでまた良きかな。顔も、メインの三人はいずれも私的にオッケーなタイプだし(特に黒ヒゲのジョージ・ペインの顔は好きだなぁ)、脇でも、ダンジョンの調教師なんかカッコいいし。
 不気味系の皇帝陛下も、他の役者とのコントラストが、逆にエロい気分をかき立ててくれるし、役者としてもけっこう見せてくれる。特にラストで見せる表情なんて、『サンセット大通り』のグロリア・スワンソンばり……までいくと褒めすぎだけど、でも、かなりの凄み。
 最近制作のゲイ・ポルノでも、こういった史劇風のものってのも、全くないわけじゃないんですが、残念ながらクオリティが、この作品の足下にも及ばないものばかりです。
 なんかね、ローマ風の衣装を付けて、それ風のセットでセックスしたりはするものの、キレイにタンニングした肌にビキニ跡がクッキリとついていたり、ラテックスのコンドームを使ってたりすると(まあ、これは仕方ないことではありますが)、興ざめも甚だしい。もちろん、モノガタリなんてあってなきが如しで、コスチューム・プレイではなく、悪い意味での「コスプレ」にしかなっていないんですな。

 あと、ハードコアのポルノビデオって、どうしても「結合部分をよく見せる」とかの工夫ゆえに、本来ならば陰になる部分にも照明を当てるから、結果として画面がフラットになりがちだったりします。まあ、上手いスタジオだとそこいらへんも上手くて、二灯三灯使いながらも陰影にはメリハリを付けて、全体も局部も共に見応えある画面作りはしていますが、そーゆー優良スタジオは限られている。
 でも、この “Centurians of Rome” は、そこいらへんがけっこう「映画的」なんですな。シーンによっては、オーラルセックスやアナルセックスをしていても、性器や結合部分が完全に影に隠れてしまっていたり、暗すぎて見えないことも多々ある。でも、それがかえってナチュラルな淫靡さを醸し出していたり、エロティックな雰囲気だったり。光と影で画面を作るという意識や、最近のAVでは見られなくなった職人的な技術が、しっかりあるという感じです。

 DVDの画質は、もちろん私が以前持っていた裏ビデオ版と比べると、問答無用の良画質ですが、こういうクラシック・ゲイ・ポルノのソフト全般と比べても、かなり佳良です。デジタル補正しているようで、映像はかなりシャープで鮮明。ただ、シャープネスをきつくかけたせいなのか、ちょっと全体的にフィルムの粒状感が目立ってしまったような、ザラザラした感じはあります。
 画質のサンプルは……う〜ん、内容が内容なだけに、キャプチャ画像をアップするのは差し控えます(笑)。どんな内容か知りたい人は、Centurians of Rome でGoogleのイメージ検索をすれば、スチル写真やキャプチャ画像が幾つかヒットするので、それを参考にしてください。
 ディスクは、プレスではなくDVD-Rですが、フルカラーのピクチャーディスク仕様。メニュー画面あり、チャプター付き。

“Maciste en las Minas del Rey Salomon”

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“Maciste en las Minas del Rey Salomon” (1964) Piero Regnoli

 前にここで「責め場がなかななか良い」と書いた、レジ・パーク主演のソード&サンダル映画のスペイン盤DVD。伊語原題”Maciste nelle miniere di re Salomone”、英題”Maciste in King Solomon’s Mines” a.k.a. “Samson in King Solomon’s Mines”。
 まあ、お話としては、マチステものは大概そうなんですが、この映画もお手軽この上ない内容。悪人によって国を乗っ取られた王子と王女を助けて、筋肉マンが大暴れ、民衆も味方に付けて悪人どもを退治して、いずこへともなく去っていく……ってだけです。新味やら独創性やらは、ほぼ皆無(笑)。私は基本的に、フィクションの「お約束」ってのは好きですし、自分の作品でも、けっこう意図的にクリシェを援用したりするんですが、しかしここまで「お約束オンリー」ってのも、ちょっとねぇ(笑)。
 ただまあ、ソロモン王の宝窟ネタなのでアフリカが舞台だから、お話はともかくとしても、雰囲気は何となくマチステ映画とターザン映画が混じったようで、ちょいと独特です。そういや、ターザン映画っつーと、アメリカでワイズミューラーのターザンBOXの第二弾が出たけど、これ日本盤は出ないんだろうか。期待して待ってるんだけど、リリース情報がない。
 この映画には関係ないけど、ソロモン王の宝窟ってネタも、ハガードの小説が大好きなので、ここらで最新技術を使ってマジメな映像版を見てみたいもんです。リチャード・チェンバレン主演のヤツは、コメディタッチでそれなりに楽しめたけど、所詮はインディ・ジョーンズのバッタモンって感じで、ぞくぞくやワクワクはしなかったし。最近もホールマーク製のヤツを見たけど、これはイメージのショボさ演出の外しまくりにガッカリだった。ハガードとかメリットとかの秘境探検小説を、正攻法で映像化してくれないもんかなぁ。でも、PC的に引っかかる要素が多すぎるからダメかなぁ。
 話がズレましたが、そういうわけでこの映画、内容的にはさほど見るべきものはないですが、モノガタリの構成そのものは緩急があるし、セットのスケール感なんかも、目を見張るほどではないけれどショボ過ぎもしない、といった感じで、肩の凝らない娯楽作としては、そこそこ手堅い出来です。

 でもまあ、私にとっての最大の魅力と言えば、やっぱりレジ・パークの責め場なんですけどね(笑)。ヘラクレスものでは責め場がなくて残念だったから、この映画で責め場があるのは、とっても嬉しい(笑)。
 ただ、残念ながら今回、ヒゲがないんですな。この人のご面相って、ヒゲがあればそこそこかっこよく見えるし、時にチャーミングだとも思うんだけど、ヒゲがなくなると、どーにもこーにも……(笑)。
 それはそれとして、お目当ての責め場はどういうものかというと、善玉を助けに来たマチステが、網をかぶせられて捕まった後、公衆の面前で鳥カゴみたいな檻に入れられて、両腕を馬裂きにかけられる、ってな内容。
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 まあ、馬裂きそのものは、これはもうソード&サンダル映画のお約束みたいなもんで、もう何回見たか判らないくらい、しょっちゅう出てくるネタ。ホント、当時のボディビルダー男優って、みんな一度は馬裂きを経験してるんじゃないかってくらい定番(笑)。
 ただ、今回の馬裂きは、檻の内側に刃物が突き出していて、引っ張られてバランスを崩すとブッスリってなアレンジが加わっていることと、レジ・パークが実に良く熱演しているということと、更にこのシーンの尺がかなり長く、おまけに様々なアングルと丁寧なカット割りで、他の映画の馬裂きと比べると、かなり見応えがあるし満足度も高い。
 ホント、これでヒゲ付きだったら最高だったのに(笑)。
 そして馬裂きの後は、マチステ君は催眠術だか魔法の足輪だかのせいで、鉱山労働の奴隷にされちゃいます。責め場ってのとはちょっと違いますが、奴隷とか強制労働とか好きの人なら、ここも嬉しいポイント。
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 あと、この映画は全般的に、レジ・パークの筋肉美を見せるフェティッシュなカットが多くて、責め場でも強制労働でも怪力発揮シーンでも、かなりのクローズアップで筋肉の動きを舐めるように見せてくれたりするんで、ボディビル好きや筋肉マニアだったら、けっこう楽しめるはず。スティーヴ・リーヴスとミスター・ユニバースの覇者を競い、シュワルツェネッガーのアイドルだったボディービルダーの肉体を、タップリ堪能できまっせ。
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 パーク以外の責め場では、善玉青年が鞭打ちやスパイクの生えた板でプレス責め、なんてシーンもあります。う〜ん、これをヒゲ付きのパークでやってくれたら、どんなに嬉しかったか(笑)。
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 あ、因みに女責めもあります。ブロンド美女を、ラックに縛って引き延ばし責め。
 ってな感じで、責め場とかはけっこう見応えありなんですが、俳優とか演技とかキャラクターとかは印象が薄い。記憶に残るのは、悪の女王のウンコみたいなヘアースタイルくらいで(笑)。
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 DVDはPAL、リージョン2。スクイーズなしのビスタ。音声はスペイン語とイタリア語、字幕はなし。
 アメリカ盤DVDは“Warriors 50 Movie Pack”に収録。色は落ちちゃってるし左右も切られちゃっていますが、ディテールはそれなりに残っているので、アメリカ盤としては画質は悪くないほうかな。
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“Hellbent”

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“Hellbent” (2004) Paul Etheredge-Ouzts

 前に『ザ・ヒル』っつーC級以下のホラー映画(笑)を紹介したとき、「やだ、ひょっとして野郎版ジャーロ? 憧れの野郎系スラッシャー?」なんてことを書きましたが、いや、あるもんですね、世の中にはそんな映画が。
 っつーわけで、「そんな映画」の “Hellbent” をご紹介。
 と言ってもこれは、2004年制作のアメリカ映画なので、もちろんジャーロ映画であるわけもなく、今どきのスラッシャー映画です。
 ただ、ちょっと面白いのは、スラッシャー映画であると同時に、ゲイ映画でもあるんですな。それも、サイコ系映画でありがちな犯人がゲイだとか、あるいは殺されるのがゲイばっかりだとか、そーゆーレベルではなく、ゲイ・コミュニティの中での出来事を描いた、ゲイしか出てこない映画。
 つまり、スラッシャー映画とゲイ映画という、二つのジャンル・フィクションが合体した映画、というわけ。

 物語の舞台はウェスト・ハリウッド、ハロウィンの前夜から始まります。
 深夜の公園でハッテンして、カーセックスの真っ最中のゲイのカップルが、悪魔のマスクを被った上半身裸のマッチョ男に、鎌のような刃物で首チョンパされて殺されてしまう。
 翌日、警察でバイトをしている主人公エディ(健全にニコニコしている好青年で、万人受けしそうなタイプの、ノンケさんの世界で例えると、ヒロインタイプのカワイコチャン系ゲイ)は、署長さんだか誰だかから、この事件に関するチラシを、ゲイ・コミュニティ内のショップとかに配ってくれと頼まれる。
 余談ですが、この段階でエディが、ノンケ社会で問題なく暮らしている、カムアウト済みのオープンリー・ゲイだってのが判ります。
 で、実はエディは、自分も警察官になりたかったんだけど、ある理由でなれなかった、警察マニアのゲイなので、ハロウィンだし、警察のビラ配りの仕事という大義名分も得たので、趣味の警官コスプレの恰好で、嬉々として街にくりだす。で、ビラを置かせて貰いに行ったタトゥー・スタジオで、ちょいワル系のジェイクに出会って一目惚れ。
 ビラ配りのバイトを終えたエディは、ハロウィンのパーティーに行くために、友達と待ち合わせ。その顔ぶれは、フェロモンムンムンのラテン系バイセク男で、レザーのカウボーイ・スタイルに身を固めたチャズ、ルックスはナード系なのに、似合いもしないハードゲイ系のコスプレをしてしまったジョーイ、素材はマッチョな大男だけど、ゴージャスなドラァグ・クイーンに化けたトーベィ。
 仲良しゲイの四人組は、車でパーティー会場に向かう途中、よせばいいのに例の殺人があった公園に寄り道する。で、肝試し気分なのか「ここで昨夜、生首切断殺人が起きたんだぜ〜」なんてぬかしながら、ツレションしてるところに、例の殺人鬼に出くわしてしまう。彼らはそれを、ハッテン中のお仲間だと勘違いして、からかったりするのだが、男の手に鎌が握られているのを見て、ちょいとヤバそうだと退散する。
 パーティー会場に着いた四人は、屋台を冷やかしたり、バンドのライブを見に行ったり、バーで飲んだり、クラブで踊ったり、男を引っかけたりと、ハロウィンの夜を楽しむ。エディはタトゥー・スタジオで一目惚れしたジェイクに再会するし、モテないナード系のジョーイにも、何とジョックス系のボーイフレンドができそうな気配が。
 しかし、そんな楽しい四人組の側には、例の悪魔マスクの殺人鬼が影のようにつきまとっていて、やがて一人一人、生首狩りの餌食になっていく……ってなオハナシです。

 ストーリーからもお判りのように、基本的な構造は「乱痴気騒ぎをする馬鹿な若者たちが、次々と連続殺人鬼の犠牲になっていく」という、『13日の金曜日』あたりから続くスラッシャー映画のパターンを踏襲しています。で、その合間合間を、現代アメリカのゲイ・コミュニティーの風俗描写で繋いでいく。
 で、このふたつの要素が絡み合っていく。どんな具合かと言うと、まず冒頭で殺人をツカミに置き、その後はゲイ的な小ネタやディテール描写で各々のキャラクターを立てていき、こっちもだんだんキャラに感情移入してきて、同じゲイとしてゲイ映画的にハッピーな気分になりかけたとき、その頃合いを見計らって殺人シーンでそんな感傷をブッタ切るっつー、かなり邪悪な(笑)構成。これはなかなかのもので、ここまでは文句なしに面白かった。
 また、二種類のジャンル・フィクションの合体という点では、ある種のスラッシャー映画において、被害者の死が「アモラルな若者への罰」のような解釈が可能なように、この映画でも、四人組が殺されていくのは「年長のゲイに対する無神経な言動への罰」としても解釈できるのが面白いですね。
 もう一つ、ジャーロ系の要素とゲイ映画の合体という意味で、女装系には見向きもしなかった殺人鬼が、彼がカツラを取って「ホラ、男としてもイケてるでしょ?」と自分をアピールしたとたん、毒牙にかかってしまうってのが、ジャンル・フィクションの構造自体に対するパロディのようで面白かったなぁ。
 スラッシャー映画としては、殺しが鎌で生首チョンパという派手な手口さだし、シーンの描写も、サスペンスとショッカーを織り交ぜた見せ方で、これまたなかなか悪くない。グロ描写自体は控えめですが、首を刈り取られた死体とか、低予算だろうに特殊効果は頑張っている。
 レンタルビデオ屋の棚に並ぶ、大量の安〜いホラーと比べても、かなりマトモな部類。見ていて、下手でウンザリするってなことは、決してありません。

 ゲイ映画としては、恋愛の奥深さとかエロなセックスとかはないですが、散りばめられたゲイ的な小ネタは、それなりにけっこう楽しい。
 個人的にウケちゃったのは、犯人はどんなヤツなんだろうと四人組が話しているときに出てくる、「きっと、年寄りのゲイがあたしたちみたいなのに嫉妬して、クローゼットから出てきたのよ!」っつーセリフ。じっさい、自分の「秘密」がバレることを恐れるクローゼット・ゲイが、職場でカムアウトしているオープンリー・ゲイにホモフォビックな嫌がらせをしたり、あるいは、ゲイ・パレードのような「公の」ゲイたちに対して、批判的な言動をとることはあるので、こういったセリフもまんざら冗談では済まされない点がある。
 その反面、オープンリー・ゲイである若い四人組が、年輩のクローゼット・ゲイに対して、明らかに侮蔑的であるとか、ジョックス軍団(つまりモテ筋の体育会ゲイ)はナードなジョーイを馬鹿にするとかいった具合に、ゲイ・コミュニティーを「明るく楽しいパラダイス」としてだけ賛美するのではなく、その内に存在する「ゲイがゲイを見下す」差別的なヒエラルキーも、きちんと描写するという、視点のニュートラルさも好ましい。

 そんな具合で、前半はかなりノリノリで見られたんですが、いざ四人組が一人ずつ殺されていく後半になると、ちょいとダレてくるのは残念。
 と言うのも、この四人組はそれぞれ別行動中に襲われるので、誰かが殺されても、他の連中にはそれが判らない状況なのだ。だから、登場人物たちにとって、死は「不意に唐突に訪れる」だけで、「自分たちが何者かに狙われている」「次に殺されるのは誰だ?」「生き延びるにはどうしたらいい?」といった、サスペンス的な要素が全くない。しかも、無作為な無差別殺人ではないので、ショッカー・シーンも増やせない。
 これを、主人公エディとその相手ジェイクのロマンスや、その他諸々のゲイ映画的な小ネタだけで繋いでいくのは、いかにも苦しく、どうしても後半は間延びした印象になってしまう。物語としては、エディが警察官になれなかった理由とかの伏線もあるし、個々の描写が面白い部分も多々あるんですが、やはり軸が弱い。総合的には、スラッシャー映画としてもゲイ映画としても、ちょいと中途半端の虻蜂取らずになってしまったのが惜しいです。
 冒頭で、エディが警察のデータベースから、自分のタイプの犯罪者の写真をプリントアウトしてたりするので、ひょっとしてこれは、ナルシズムやサドマゾヒズム的な要素を含めた展開への伏線か、なんて期待もしたんですけどね。単なる小ネタでしかなかった。スラッシャー映画には、映画を見ることによって、観客が殺人行為を、加害者的あるいは被害者的に疑似体験するとか、時に現実的なモラルが逆転して、殺人鬼が観客にとってのヒーローになる(ジェイソンだのフレディだの……ね)といった、ねじくれたサドマゾヒズム的な要素があるんで、そこいらへんに絡めてくれたら面白かったのに。

 役者さんは、それぞれキャラも立っていて、全体的に好印象。
 私の一番のお気に入りは、ラテン系のチャズ(この子)なんですけど、殺され方も一番凝っていたから嬉しい(笑)。この映画では全体的に、殺しはズバッと一発で終わる感じなんですが、この子だけ、ちょっとジワジワ嬲り殺し的な要素があるし……って、こんなことで喜んで、自分のセクシュアリティが、前述のねじくれたサドマゾヒズムそのものだと、カムアウトしてどうする(笑)。
 殺人鬼の方も、こんな感じでなかなかカッコいい。アスペクト比の狂いか、リンク先の写真はちょいと細身に見えますけど、実際はもっとゴッツイです。
 こういったキャラを使って、内容がもっとヘンタイ的だったら良かったのに(笑)。あ、でも、映画前半タトゥー・スタジオのシーンで、血の滴が裸の背中を伝って、ジーンズの隙間に入りそうになる寸前、それを彫り師が手袋で拭う……ってのは、フェチ的にゾクッときました(笑)。
 あと、私事ではありますが、パーティー会場で Nick Name というゲイのパンク歌手がゲスト出演しているんですが、私、以前この方からファンメールをいただいたことがありまして。パフォーマンスを拝見するのはこの映画が初めてなんですが、超マッチョ二人を従えた、シアトリカルなスラッシャー風パフォーマンスで、ちょいと面白かったです。

 DVDは米盤、リージョン1、ビスタのスクィーズ収録。
 日本盤は出てませんけど、おそらく出る可能性もないでしょうなぁ。ビデオ撮りとはいえ、こういった映画が商品として成立しうる、アメリカのゲイ・マーケットの大きさは、やはり今さらながらうらやましい。
 佳品どまりではありますが、決して悪くはない映画です。少なくとも、『ザ・ヒル』よりゃ百倍マトモよ(笑)。
“Hellbent” DVD (amazon.com)

“Il Gladiatore di Roma”

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“Il Gladiatore di Roma” (1962) Mario Costa

 ゴードン・スコット主演のソード&サンダル映画DVD、イタリア盤。英題”Gladiator of Rome”。
 イタリア語での鑑賞だったので、物語の細部は判りませんが、どうやらカラカラ帝時代のローマで、とある裕福な一族が、濡れ衣を着せられるか難癖を付けられるかして、家人は殺され、使用人は奴隷に売り払われてしまう。で、軍役か何かで家を離れていて助かった息子と、彼と愛し合っている使用人の娘、その娘を守る力持ちの使用人という三人を軸に、仇敵を倒して家を再興する……ってな話みたいです。

 ゴードン・スコットは怪力の使用人の役。いちおう主役にクレジットされていて出番も多く、奴隷にされて連行されている途中に、溺れている貴族を助けたために、後になって幸いに繋がるといった、まんま『ベン・ハー』みたいなエピソードやら、宿場の娘とのラブ・ストーリーとか、脱走に失敗して殺されかけたところを、剣闘士にスカウトされるとかいった、ドラマティックなエピソードも用意されています。
 ただ、いかんせん役回りが、「無実の罪で陥れられた者の復讐譚」の中で、「陥れられた者その人」ではなく「それを助ける助力者」という、モノガタリの中心軸から外れた存在なので、どうも映画全体の焦点も定まらない印象。
 それと並行して、助かった息子の帰還とか、捕らえられた恋人の救出劇なんかが描かれるんですが、これまたどうも印象が薄い。ひょっとすると、セリフをしっかり理解しながら見れば、また違う印象になるのかも知れませんが。
 あと、ゴードン・スコットは剣闘士にはなるものの、描かれるのは訓練所の光景ばかりで、剣闘士としてアレーナで闘うシーンがまったくない(とゆーか、そもそもアレーナ自体が一回も出てこない)のも、何だか肩すかしをくらった感じ。

 という感じで、映画そのものの出来は、ちょいとイマイチ感が拭いきれないんですが、ゴードン・スコットを愛でるという点のみにおいては、実はけっこういい感じです。
 まず、ありがたいことにヒゲ付きなんですな、スコット君。加えて、ローマものにしては珍しく、徹頭徹尾腰布一枚の上半身裸。服を着ているシーンが一度もないので、肉体美(まあ、スコット君だから、バルクはそれほどないんですが、ナチュラル・マッチョって感じで、個人的にはけっこう好きな体つきです)は最初から最後までタップリ拝めます。元ターザン役者の、本領発揮ってトコでしょうか。……違うか(笑)。
 それとね、責め場が二カ所あって、これがどちらも悪くない。
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 まず、最初に脱走に失敗して、一緒に捕まった主人の恋人共々、石壁に鎖で磔に。このシーン、鞭で引っぱたかれるのは娘だけっつーのは、私としてはかなり物足りなくはあるんですが、両手両脚喉元を太鎖で拘束されて、腋窩も露わな大の字の磔姿そのものがセクシーだってことと、二股になった焼き鏝で目を潰されそうになるってのが、かな〜り嗜虐心をそそられます。私、スコット君の顔が好きなもんですから、こーゆー姿でそーゆー演技をしているのを見るだけで、けっこう満足度大。
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 もう一カ所は、また脱走に失敗して、今度は主人の恋人と宿屋の娘まで一緒に、三人そろって石切場で磔にされて、火あぶりにされそうになるところ。スコット君だけ、セント・アンドリュース・クロス(X字刑架)に後ろ手縛りという、変則的なスタイルなんですが、後ろ手拘束は私の好物でもありますし、今回もまた首元にジャラジャラ巻き付いた鎖が、残酷味があってヨロシイ。まあここは、積んだ薪に火を点けられそうになるってくらいで、責めらしい責めはないんですが、でもまあそれなりに身を捩ったり、悶えたりして目を楽しませてくれます。
 そんなこんなで、「ヒゲの生えたゴードン・スコット好き」な方だったら、けっこうそこだけでも楽しめると思います。
 DVDはPAL、非スクィーズのシネスコ、レターボックス収録。音声はイタリア語のみ、字幕なし。特典等もなく、チャプターがあるだけ。画質は、ちょっとボケた感じはありますが、目に付く傷や退色などはなく、暗部のツブレや明部のトビも気にならず、おおむね良好。
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 アメリカ盤DVDは、前に紹介した “Warriors 50 Movie Pack” に収録されていますが、そっちの方は、トリミング版、フィルムはボケボケの傷だらけで、トビまくりツブレまくりのハイコン状態、色なんてほとんど残ってやしないっつー、とっても悲惨な画質です。マニアだったら、やっぱりこっちのイタリア盤を押さえておきたいところ。

『闘将スパルタカス』

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『闘将スパルタカス』(1963)セルジオ・コルブッチ
“El Hijo De Espartaco” (1963) Sergio Corbucci

 スティーヴ・リーヴス主演のソード&サンダル映画、スペイン盤DVD。伊語原題 “Il Figlio di Spartacus”、英題 “The Slave” a.k.a. “Son of Spartacus”。

 リーヴス演じるローマ軍人ランダスは、隣国の提督のもとに間諜として派遣されるが、船旅の途中で海に落ちてしまう。何とか岸までは泳ぎついたものの、今度はそこで奴隷商人に出くわして、捕らわれて奴隷にされてしまう。ほどなくランダスは、奴隷仲間と共に脱出し、目的地であった提督の館に着くが、そこでは民人が虐げられていた。そしてランダスは、奴隷仲間の一人の導きによって、自分がスパルタカスの遺児であると知り、以来、黒い鎧兜で正体を隠した姿で、民衆のために戦う義賊となる……ってのが、大筋。
 この内容で『闘将スパルタカス』っつー邦題は、一種の詐欺ですな(笑)。

 全体のノリは、史劇やスペクタクルというよりは、西洋チャンバラ映画に近く、「弱きを助け強きを挫く」系の、痛快娯楽作。
 じっさい、正体を隠したランダスが立ち去った後には、壁に「S」の文字が残されている……といった、まんま「怪傑ゾロやん!」みたいなネタも(笑)。ただまあ、ローマ時代ということもあって、中世ものみたいな華麗な剣戟シーンとかはないですけど。
 有名人のご落胤ネタというのも定番ですが、同じソード&サンダル映画だと、マーク・ダモン主演の “Son of Cleopatra” なんかと同系統ですな。そういや、どっちもロケ地がエジプトで、ピラミッドやスフィンクスがデ〜ンと出てくるのも同じだ(笑)。
 監督は、前に紹介した『逆襲!大平原』と同じセルジオ・コルブッチ。画面にはスケール感があり、アクション・シーンのキレも良く、手堅くしっかり見せてくれます。
 音楽がピエロ・ピッチオーニ、仇役がジャック・セルナスってのも、『逆襲!大平原』と同じ。
 更に、またまたジョヴァンニ・チアンフリグリア君もチラッと出てくるんですが、今回の役どころはというと、港でオンナノコを鞭打っているところをリーヴスに止められる……って、これまた『逆襲!大平原』とおんなじなのが可笑しい(笑)。
 全体的には『逆襲!大平原』よりは軽いノリなので、大作感はない反面、娯楽アクション作品としての面白さはタップリ。ただ、惜しむらくはクライマックスが、まず仇敵の提督&ジャック・セルナスと対決して、その後は反逆者としてローマと対峙するという、二段構えになっているせいもあって、カタルシスが分散してしまった感はあり。
 ちょっと面白かったのは、悪役の倒し方が、悪人の集めた黄金を鍋に入れて、それを熱して溶かしたものを顔面に浴びせる……っていう、比較的エグめの方法だったこと。ソード&サンダル映画では、意外とこういう残酷趣味のようなものにはお目にかからないので、これまた “The Pirates of the Seven Seas” のときに書いたのと同じく、史劇映画からマカロニ・ウェスタン映画への過渡期を感じさせる要素でした。

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 今回のリーヴスは、ヒゲがないからちょっと寂しくはありますが、正体を隠した義賊スタイルの時は、なかなかカッコいいです。上半身裸の剣闘士スタイルで、顔は兜で見えないんですが、兜の色が黒いせいもあって、ブラック・レザーやメタルのような、ちょいとハード系のフェティッシュな魅力がある。
 DVDのジャケットになっているステキシーンですが、これは前半でリーヴスが奴隷商人に捕らわれたときの姿。でも、残念ながら映画本編では、上半身裸ではなくチュニック・スタイルなんだよな。首枷のまま鎖に繋がれて連行されたりはしてくれるんですが、肌は出し惜しみしていて、馬に引きずられて服が破けても、乳首も見えない程度の破れかたなので、物足りないのと同時に、なんか「……だまされた」感が(笑)。
 他には、後半で再度捕まって、木の檻に入れられるシーンとかもあります。ここは、檻の横木に両手も括り付けられるので、けっこうそそられはするんですが、太い木格子に邪魔されて身体が良く見えないのが残念。
 この前段でも、地下牢で追いつめられて捉えられるときは、前述した上半身裸の剣闘士スタイルなのに、牢屋に入れられた後は、なんでわざわざマントなんか着せるかなぁ(笑)。裸で鎖に繋いどきゃいいじゃん(笑)。
 あと、クライマックスで磔にされかけたりもしますが、残念ながら未遂。
 そんなこんなで、責め場はそこそこあるんだけど、そこで肉体美を出し惜しみしちゃってるあたりが、かえってすっげ〜残念で欲求不満が溜まります(笑)。
 リーヴス以外では、まず冒頭で奴隷の磔刑がありますが、それよりも中盤に出てくる、奴隷だか反逆者だかを十人くらい堀の中の柱に縛り付けて、そこに水を入れて水責めにするシーンの方が見応えあります。ここはけっこう悪くない。あと、宴席の真ん中に半透明のテントを設えて、そこに人を入れて煙でいぶし殺して余興にする……ってシーンもありますが、アイデアほどには見た目は面白くない。
 DVDはスペイン盤なのでPAL。ビスタ、非スクィーズのレターボックス。リージョン・コードは2。音声はスペイン語とイタリア語。字幕なし。
 画質は、ちょっと経年劣化による色調の変化が気になるし、いささかボケ気味ではあるものの、まあ佳良な部類。少なくとも米版VHSよりは遙かにきれい。ただ、ワイド画面のわりには、左右が切れている感じがするので、一度スタンダードにトリミングされたものを、更に上下を切ったという可能性あり。

【追記】アメリカ盤DVD-R出ました。画質良好。
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