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『ヘラクレス/ヘラクレスの逆襲』オリジナル・サウンドトラック

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“Le Fatiche di Ercole / Ercole e la Reggina di Lidia (O.S.T.)” by Enzo Masetti
 マカロニ・ウェスタンやジャーロ映画のサントラ復刻でお馴染みのDigitmoviesから、スティーヴ・リーヴスの『ヘラクレス/ヘラクレスの逆襲』のサントラが、二枚組CDで発売。いや〜、まさかまさかの復刻なので、実に嬉しい。
 音楽はエンツォ・マゼッティ。この二本以外は良く知らない人なので、ちょっと調べてみたところ、イタリア映画音楽の先駆者として尊敬されている人物、とのことで、何と生年は1893年、19世紀生まれの方でした。『ヘラクレスの逆襲』が最後の仕事で、2年後の1961年には既に亡くなっている。う〜ん、これだけキャリアの古い方だと、馴染みがなくても当たり前かも。
『ヘラクレス』も『ヘラクレスの逆襲』も、スペクタクル映画とはいえ、ハリウッド製の本格史劇とは異なり、どこか軽い楽しさや陽性な明るさがあるのが魅力的な作品ですが(キリスト教絡みではないので、辛気くささや説教くささも皆無だしね)、劇判の方も同様で、重厚さや大仰さよりは、親しみやすいポップな楽しさや、ロマンティックさが印象に残ります。
 特にロマンティックさの方は、流麗なストリングスや美しいコーラスの効果も相まって、ラウンジ系のムード・ミュージックにも似た、実にデリシャス・ゴージャスな味わい。中でも二作通じての「愛のテーマ」とでも言えそうな”Con te per l’eternita”(というタイトルだと、今回初めて知りました)は、なかなかの名曲。
 CDの作りは、復刻盤として丁寧に作られています。
 オーケストラ・スコアが収録されたオリジナル・マスターを基に、映画の時系列に併せて再構成されたものらしく、モノラルながら音質的には問題なし。もちろん過去には未発表だった音源も多々あり、珍しいところでは、ミックス違いやデモ音源なども、ボーナス・トラックとして収録。
 一つ残念だったのは、『逆襲』のイオレの歌(演じていたのはシルヴァ・コシナですが、歌は吹き替えで、実際に歌っているのはのMarisa Del Frateという人だそうな)が、権利の関係か収録されていなかったこと。ライナーを読むと、過去にこの二作のサントラ盤は、ナレーションやダイアローグ付きのバージョンとか、Marisa Del Frateの歌が収録されたバージョンが、アナログで出ていたらしいので、どうせならそれも併せて復刻できていれば、もうパーフェクトだったんですけどね。
 あ、でも『ヘラクレス』のアルゴ船の乗組員たちが歌う船乗りの歌が、ちゃんと入ってたのは嬉しかったなぁ。この歌、映画で見るとちょっと唐突でビックリしちゃうんですけど、個人的にはけっこう好きなもので(笑)。
 音以外のジャケット等に関しては、パッケージ自体は何の変哲もない二枚組用のジュエルケースですが、12ページあるブックレットは、なかなか佳良。
 もちろんサイズはCDサイズと小さいんですが、両映画の各国版ポスターやロビーカードの画像が、フルカラーで掲載されています。CDの盤面も、これらの図柄を使ったピクチャー・ディスク仕様で、なかなか美しい。
 白黒のスチル写真も何点か掲載されており、プロモーション用のスチルもあるんですが、多くは舞台裏の楽屋写真なのが、何だか楽しくてヨロシイ。ヘラクレスの扮装のまま、カチンコ持ってふざけているリーヴスとか、撮影担当だったマリオ・バーヴァと談笑しているリーヴスとか、スクリーン上の凛々しさとは異なるくだけた笑顔が実にカワイイ。無防備に大股開きで椅子に座ってるもんだから、パンチラどころかパンモロだし(笑)。
 さて、気になるのがこのCD、”The Italian Peplum Original Soundtracks Anthology Vol.1″ と銘打たれているんですな。で、この「イタリア製ピラピラ映画」って、おそらくはソード&サンダルと同義だと思うんで、するってーと、今後の発売も楽しみに。
 何が出るのかな〜、ワクワク(笑)。
『ヘラクレス』『ヘラクレスの逆襲』サントラCD輸入盤(amazon.co.jp)

『ヘラクレス(ワイド版)』+ “Mole Men Against the Son of Hercules”

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 前にドイツ盤フランス盤を紹介した、スティーヴ・リーヴスの『ヘラクレス』ですが、ワイドスクリーン・エディションのアメリカ盤DVDが出たのでご紹介。因みに、アメリカ盤DVDは既に何種類か発売されていますが、いずれもテレビサイズのトリミング版で、ワイド版はおそらくこれが初めて。あ、VHSならワイド版も出ていましたけどね。

 で、気になる品質ですが、おおむねオッケーでした。とりあえずは、キャプチャ画像をご覧あれ。
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 経年劣化による色の変化はあるものの、発色は自然だし、質感などのディテールの再現性もかなり良いのがお判りになるかと。ご覧の通り画面サイズはシネスコで、スクィーズ収録。
 画質は、暗部に若干の潰れがあり、エンコード品質のせいか全体的にちょっと粒状感があるのと、少しボケもあって、フランス盤よりは劣る感はあるものの、それでも色は良く残っています。少なくとも、これまで出ていたテレビサイズのアメリカ盤とは、比べものにならないくらい画質は向上しています。前述の粒状感やボケも、さほど大きくないモニターならまず気にならないであろう程度。
 音声は、割れや歪みがちょっと気になりますし、全体に低いノイズがのっていて、これはフランス盤はもとより、ドイツ盤と比べても落ちるかも。ただ、鑑賞の邪魔になるほどでもないので、まあ許容範囲内といったところでしょうか。でも、米amazonのカスタマー・レビューを見ると、「吹き替えのバージョンがイマイチ」なんつー、マニアックなご意見もあり(笑)。
 尺はフランス盤とほぼ同じ97分。タイトルバックもフランス盤やドイツ盤同様の、赤地に黒の飾り罫に白抜き文字のパターンで、これまでのアメリカ盤のハンナ・バーベラ風(笑)じゃありません。
 リージョン・コードもフリーなので、PALには手を出すつもりがない方であれば、最初の一枚としてオススメです。もちろん、既にテレビサイズ版DVDをお持ちの方も、買い換えの価値は充分アリだと思いますよ。
 日本で売られているPDのDVDの中には、もっと酷い画質のものも幾らでもあるから、どっかの会社がこのマスターを買って、日本語字幕付きの日本盤を出してくれないもんですかねぇ。

 そしてこのDVD、更に2in1のオマケ付き両面ディスクだったりもします。
 で、カップリングされているのが、マーク・フォレスト主演の “Mole Men Against the Son of Hercules” (1961) Antonio Leonviola、伊語原題 “Maciste, l’uomo pi forte del mond”。
 これは「モグラ人間対ヘラクレスの息子」なんてタイトルからも察せられるように、まあ内容的にはけっこうスットコドッコイな映画(笑)。
 要するに、ヘラクレスの息子・マチステが、地底人と戦って打ち負かすんですが、地底人の国にはセクシー女王がいて、案の定それが次第にヒーローに惚れてしまい……ってな、お約束もテンコモリのファンタジー・アドベンチャー。で、ヒーローのマチステがマーク・フォレスト、女王が「ソード&サンダル映画の安い悪の女王ならアタシにおまかせ!」のモイラ・オルフェイ。
 でも、それなりに頑張ってはいて、地下帝国の宝石採掘に使われている巨大機械のスケール感なんか、かなりいい感じだし、話も危機また危機で飽きさせず悪くない。一連の Son of Hercules もの(見たことある方ならお判りだと思うけど、ミョーに脳天気な「♪ざ〜まいてぃ〜さん〜おぶ〜は〜きゅり〜ず……」って主題歌のヤツね)の中では、けっこう上出来な部類ではないかと。
 しかし、個人的に最大の見どころというと、この映画、責め場がかなり良いのだ(またかい)。マーク・フォレストにヒゲがないのは残念だけど、その欠点(じゃないだろ)を補って余りある充実した内容。加えて、メインのマーク・フォレスト以外にも、サブ・ヒーローのポール・ウィンターという黒人ボディービルダーがいまして、これまたタップリ責められてくれるもんだから、もう二倍オイシイ。

 で、具体的にはどんな感じかと言いますと…
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 二人仲良く後ろ手に縛られて、地底人に連行されるマチステ(マーク・フォレスト)とバンゴ(ポール・ウィンター)。画像だと判りにくいけど、後ろ手と喉に繋がって縄が掛けられているあたりの凝り方が、またウレシイ(マニア視点)。この後、互いに戦わせられたり、檻の中に入れられてゴリラだか猿人だかと戦わせられたりします。
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 一度は脱出したマチステだが、バンゴを助けるために罠にかかって再度捕まり、もう一人の仲間も加えて、三人一緒に拷問にかけられる。頭上に石版の重石を次々に乗せられ、重みに耐えかねてマチステが屈んでしまうと、縛られて寝かされた仲間二人を刃が貫いてしまうという仕掛け。
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 このシーン、最初は立っていたマチステがじりじりと膝をついていく様子を、ロングもアップも取り混ぜて、尺も長くタップリとネッチリと見せてくれるので、かなり満足感アリです。
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 マチステは試練に耐えたものの、バンゴは引き続き地下牢で吊されて拷問。
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 他にも、マチステは首枷付きの内側にナイフが突き出した檻に入れられたり、はたまた鉱山の採掘用の重石に押し潰されそうになったり。
 バンゴはバンゴで、初登場シーンからしてボンデージだし、その後も棒状の猿轡噛まされて立木に縛られて囮にされたり、猿轡のままマチステを閉じこめた檻を担いで運ばされたり、そうやってヘタったところを水をぶっ掛けられて足蹴にされたり。
 あと、二人一緒に他の奴隷たちに混じって、鞭打たれながら鉱山採掘の巨大機械を押して回したり、とにかくオハナシの大半が「地底人に捕まっている」状況なので、当然のように、縛られてたり鎖に繋がれてたり檻に閉じこめられてたりするシーンも多い……ってわけです。
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 あと、脇キャラですが、この責め場もお気に入り。地底人だから、日の光に当たるとエライコトになっちゃって悶え苦しむ……ってなシーン。
 ってなわけで、まあ、フィルムは退色しまくっているし、キズやらボケやら当たり前だし、左右も切れちゃっていますが、マッチョの責め場好きには、けっこうお得感アリですよ、この “Mole Men Against the Son of Hercules”。
“Hercules + Mole Men Against the Son of Hercules” DVD (amazon.com)
 因みに、つい先日紹介した “Warriors 50 Movie Pack” にも入っています。画質は似たようなもんですが、エンコードの品質のせいか、今回のDVDの方がちょっとだけマシかなぁ。まあ、あくまでも「ちょっとだけ」ですけど(笑)。

『ヘラクレス 選ばれし勇者の伝説』

ヘラクレス 選ばれし勇者の伝説 [DVD] 『ヘラクレス 選ばれし勇者の伝説』(2004)ロジャー・ヤング
“Hercules” (2004) Roger Young

 前にここで「日活さんあたりが、ちゃんとノーカット版のDVDを出してくれることを願います」と書いた、ホールマーク製のTV版ヘラクレス、願い通り、日活さんからノーカットDVDが発売。いやぁ、割と最近も『NERO ザ・ダーク・エンペラー』ってのを見たら、またもや80分ほどカットされた短縮版でウンザリしていたところなので、全長版で見られるだけでもありがたい(笑)。

 内容は、ホールマークだからファミリー向けのファンタジー・アドベンチャー路線だろうと思っていたら、意外と硬派でした。
 ヘラクレスものの映画って、エピソードの幾つかに伝説からの引用を絡ませたりはするものの、基本的には「ヘラクレス」というキャラクターを借りただけの、完全オリジナルストーリーが多い印象なんですが(スティーヴ・リーヴスの『ヘラクレス』も、この例外ではない)、今回の『ヘラクレス 選ばれし勇者の伝説』は、それらと比較すると、物語自体はかなりギリシャ神話に近付けています。
 もちろん、アレンジは大幅になされてはいるんですが、基本的にギリシャ神話のヘラクレス伝説に則って、その上で「アレとアレの順番を入れ替える」とか「アレとアレをくっつける」といった具合に、エピソードを組み立てている。ギリシャ神話のアレンジ具合を楽しむという点では、過去の類作と比べると、かなりポイントは高い。
 以下、ちょっと具体例が多くなるので、ネタバレが嫌な方は、次の段は飛ばしてください。
 例えば、エリュマントスの大猪やヒュドラのエピソードを「十二の功業」以前に持ってくるとか、臨終の火葬壇のエピソードをメガラとの間の子殺しにくっつけて、それを前半部のクライマックスにしたりしてます。そういった諸々は、なかなか上手いと感じたものもあり、ちと無理矢理といった感じのものもあり。ディオメデスの人食い馬とアマゾンの女王ヒッポリュテをくっつけたあたりは前者、ステュムパロスの怪鳥とヘラの乳房をくっつけたあたりは後者でしょうか(笑)。
 また、個人的に一番興味深く感じたのは、背景にあるゼウスとヘラの諍いを、実際の神々は出さずに、それぞれの神々を信仰している人々の間でのパワーゲームとして処理しているところ。
 更にその背景には、ヘラを「嫉妬深い結婚の女神」ではなく「男権社会によって抑圧された地母神」として位置付けるなど、男権制と女権制の争いといったニュアンスも感じられて、文化人類学的な臭いもするところも面白い。ここいらへん、ちょっと興味を持って調べてみたら、バーバラ・ウォーカーという人の『神話・伝承辞典−失われた女神たちの復権』なんていう、なかなか面白そうな本がヒットしました。意外とこれが元ネタだったりして(笑)。
 で、そういった構造に基づいて、「ゼウス/父・夫・男」であるアムピトリュオンやヘラクレスと、「ヘラ/母・妻・女・母の庇護下にある子の」アルクメネやメガラやイピクレスといったキャラクターが拮抗していく。デルポイの巫女の代わりに、「ヘラ(の代理であるアルクメネ)によって盲目にされた両性具有の預言者ティレシアス」を配するあたりも興味深い。
 更に、モノガタリ全体の裏の軸に「男ではあるが地母神の息子(この場合はヘラの信奉者)」のアンタイオスを置き、それがゼウスの化身と勘違いされるエピソード(つまり、アンタイオスがヘラクレスの本当の父親というわけ)を配し、物語の要所要所に絡めながら、最終的に、男権と女権の争いの不毛さや信仰の本質への問いかけへと繋げていく。
 モノガタリのクライマックスも、ヘラクレス自身の言によって、神話時代の運命論から人文主義への転換がもたらされ、拮抗していた二つの勢力も、ヒュロスとイオレの結婚によって和合するといった具合に、全体の構造はなかなか凝っています。
 ただその反面、これらは神話への考察による神話世界の解体でもあるので、モノガタリの着地点は、ギリシャ神話ともヘラクレス伝説とも程遠い、今どきの人間が喜んで受け入れそうなハッピーエンド(笑)。ここは、好き嫌いが別れそうではあります。私個人の好みで言えば、やはり伝説的な英雄譚は悲劇で幕を降ろして欲しいんですが(笑)。
 さて、こいうった具合にモノガタリの構造はなかなか凝っていて面白いんですが、残念ながら表現がそれと相反している。
 それなりに金もかかっていそうだし、セットや衣装も決して安っぽくはないんですが、それらのデザインの基本にあるのが、いかにもファンタジー、それもぶっちゃけ『ロード・オブ・ザ・リング』の影響が顕著な「それっぽい要素をコラージュしたもの」なので、ギリシャ的な雰囲気は極めて希薄。同時に、『ロード・オブ・ザ・リング』ほど堅牢な世界の作り込みもないので、歴史物っぽい雰囲気もない。
 じっさい、ロケ地がニュージーランドらしく、雪渓を望む雄大な背景に、山の尾根を歩くヘラクレスを空撮、しかもお供は狂言廻し的な役割のショーン・アスティン……なんてシーンを見せられると「……パロディですか?」なんて気もしてしまったのが正直なところ(笑)。流れるBGMも「それっぽい」感じだったし(笑)。
 あと、モノガタリの基本が神話世界の文化人類学的な解体・再構成だから、神様は出てこないのに、でもファンタジー系のクリーチャーは出てくるってのは、そりゃちょっと矛盾してるっしょ(笑)。まあ、マーケティング的に必要だってのは判るんだけどね、それにしても、ステュムパロスの怪鳥とハルピュイアをくっつけてたり、ネメアのライオンをスピンクスにしちゃったりとか、ちょいとやり過ぎの感あり。
 あ、この間の『ナルニア』とは違い、ケンタウロスの顔が人間のそれだったのは、ちょっと嬉しかった。でも、ヘレニズム的ではなく、おそらくネイティブ・アメリカンをイメージしたっぽい感じだったけど(笑)。
 つまり、ファンタジー・アドベンチャー的には、映像的にはさほどけなすような出来ではなく、逆にTVものにしては健闘している部類だとは思うんですが、物語的な面白さが、ファンタジー・アドベンチャー的なそれではなく、前述したような構造に基づいて繰り広げられる、愛憎絡み合うドロドロの陰謀劇風なので、そこいらへんが水と油な感じ。
 もし『ロード・オブ・ザ・リング』っぽくではなく『トロイ』っぽく、ファンタジー的なクリーチャーはなし、衣装や美術は自由度を生かしつつも、古代幻想的な質感を重視する、といった作り方をしていたら、かなり見応えのある良作になっていた可能性もあり。
 けっしてつまらなくはないんだけど、ネタに対して調理法が間違っている感が、どうしても拭えないのが残念でした。
 役者さんは、まずヘラクレス役のポール・テルファーですが……いかんせん顔がねぇ(笑)。良く言えばワイルドな風貌だけど、ウィレム・デフォーみたいなカエル口だしねぇ(笑)。でも、身体はいいですよ。一緒に見ていた相棒も「うん、この身体は『買い』だね!」と言ってました(笑)。神話上の英雄的な風格は微塵も感じられませんが、これはまあ役柄がそういうキャラなんだから仕方なし。
 アムピトリュオン役のティモシー・ダルトンは、「血は繋がっていないけれども、良い父親」という美味しい役どころなので、なかなか魅力的。だいぶ老けたけど、いい感じに年を重ねておられる感じ。
 ヘラクレスの音楽の師匠リノス役に、ショーン・アスティン。リノスが実は生きていて、以後狂言廻しにってのは、悪くないアイデアだとは思うんですが、それにしてはアスティン演じるキャラは、ちょいと軽やかさに欠ける感じ。もっと三の線で良かったのでは?
 お目当てのタイラー・メインはアンタイオス役。モノガタリの裏の要なだけに、力持ちの大男なだけではダメなんだけど、正直言って力不足かなぁ。
 女優陣は、情念ドロドロ系のエリザベス・パーキンス(アルクメネ)とリアンナ・ワルスマン(メガラ)は、いずれも佳良。リーリー・ソビエスキー(デイアネイラ)は、もうちょっと神秘性か野性味か、どっちかが欲しかった。
 ああ、そういや裸の青年二人がベッドインしている、ホモセクシュアル絡みのシーンもチラッとありました。油断していたからビックリした(笑)。ことさらに強調もされず、さらっとした扱いだったのは、いかにも古代ギリシャ世界らしく好印象。
 責め場? ありません(笑)。

“Warriors 50 Movie Pack”

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“Warriors 50 Movie Pack”
 米Mill Creek Entertainmentから出た、ソード&サンダル映画50本セットDVDのご紹介。
 これはいわば激安モノで、簡素なペーパー・スリーヴに入った、表裏合わせて映画を4本ずつ収録した両面ディスク×13枚が、やっぱり簡素な紙箱に入ってます。で、値段は$29.98っつー安さなんですが、Video Universeとかだと更に値引きで、$17.95とかで売られています。
 実は同社の同シリーズでは、”Sci-Fi Classics 50 Movie Pack”という商品に、60年代のB級SFや日本のガメラ映画なんかに混じって、ソード&サンダル映画も何本か収録されていたり、また、ソード&サンダル映画+ターザン映画の”Adventure 10 Movie Pack”なんて商品があり、そのうち紹介しようかなぁなんて思っていたんですが、こんなもんが出ちゃあ、もう意味なしですな(笑)。ソード&サンダル映画だけに関して言えば、真打ち登場ってとこでしょうか。

 まあ、このシリーズは安いだけあって、画質や音質などは決して褒められるシロモノじゃありません。フィルムのキズ、ボケ、退色、音声の歪みなんかは、あって当たり前の世界。パッケージも極めてチープ。
 ただ、アメリカで販売されているソード&サンダル映画のDVDは、ごく一部の例外を除くと、フィルムの状態はズタボロなものばかりなので、それらも画質的には、この”Warriors 50 Movie Pack”とどっこいどっこい。あと、流石に50本もあると、単品ではDVD化されていない(であろう)作品も多いので、まあ値段を考えても、このテのものが好きだったら、けっこうお買い得だと思いますよ。
 中身のレビューは、とてもじゃないけど50本全部見るのは時間もかかるんで、それは後の機会に譲るとして、今回はとりあえずご参考までに、収録先品のリストをば。

スティーヴ・リーヴス主演作
“Hercules Unchained”「ヘラクレスの逆襲」
“The Giant of Marathon”「マラソンの戦い」
“The White Wattior”「怪傑白魔」
“Sandokan, Pirate of Malaysia”

レジ・パーク主演作
“Hercules and the Haunted World”「ヘラクレス 魔界の死闘」
“Hercules and the Captive Women”「アトランティス征服」
“Maciste in King Solomon’s Mine”

ゴードン・スコット主演作
“Samson and the Seven Miracles of the World”
“Hercules and the Princess of Troy”
“Hero of Rome”
“Gradiators of Rome”

マーク・フォレスト主演作
“Son of Samson”「マチステ」
“Goliath and the Dragon”「豪勇ゴライアス」
“Goliath and the Sins of Babylon”「鉄腕マチステ」
“Hercules Against the Barbarians”「ヘラクレス/闘神伝説(ヘラクレス対バーバリアン)」
“Hercules Against the Mongols”「ヘラクレス/モンゴル帝国の逆襲」
“Kindar the Invulnerable”
“The Lion of Thebe”
“Mole Men Against the Son of Hercules”

カーク・モリス主演作
“Colossus and the Headhunters”
“Devil of the Desert Against the Son of Hercules”
“Triumph of the Son of Hercules”

ゴードン・ミッチェル主演作
“Atlas in the Land of Cyclops”「片目の巨人」
“Fury of Achilles”
“Ali Baba and the Seven Saracens”

アラン・スティール主演作
“Hercules Against the Moon Men”
“Hercules and the Masked Rider”

キャメロン・ミッチェル主演作
“The Last of the Vikings”「海賊王バイキング」
“Caesar the Conqueror”

ダン・ヴァディス主演作
“The Son of Hercules in the Land of Darkness”
“The Ten Gladiators”

エド・フューリー主演作
“Ursus in the Valley of the Lions”「獅子王の逆襲」
“Ursus in the Land of Fire”

リチャード・ハリソン主演作
“Gradiators Seven”「七人のあばれ者」
“Two Gladiators”

ブラッド・ハリス主演作
“Fury of Hercules”「ヘラクレスの怒り」

サムソン・バーク主演作
“Vegeance of Ursus”

レグ・ルイス主演作
“Fire Monsters Against the Son of Hercules”

ジョー・ロビンソン主演作
“Thor and the Amazon Women”

リチャード・ロイド主演作
“Vulcan, Son of Jupiter”

ジョルジュ・マルシャル主演作
“Ulyssess Against the son of Hercules”

ピーター・ラパス(ロック・スティーヴンス)主演作
“Hercules and the Tylants of Babylon”

ロッド・テイラー主演作
“Colossus and the Amazon Queen”「アマゾンの女王」

ローランド・キャレイ主演作
“The Giants of Thessaly”

リク・バッタリア主演作
“The Conqueror of the Orient”

ガイ・ウィリアムス主演作
“Damon and Pythias”

アラン・ラッド主演作
“Duel of Champions”

エドマンド・パードム主演作
“Herod the Great”「エロデ大王」

ロジャー・ムーア主演作
“Romulus and the Sabines”「サビーヌの掠奪」

デブラ・パジェット主演作
“Cleopatra’s Daughter”

 ……ってな具合で、リスト後半はマッスル・ムービーじゃないのも混じってますけど、全体的にはなかなか充実しているかと。
 個人的には、高画質な独盤や仏盤は持っているもののセリフが判らないのが残念だったヤツの、英語バージョンが幾つかゲットできたとか、映画自体は珍作の類だけど、責め場がなかなか良いレジ・パークの”Maciste in King Solomon’s Mine”を、DVDで入手できたとか、「ヘラクレスの逆襲」のオンファーレ役でお気に入りだったシルヴィア・ロペスが出ているので気になっていた「エロデ大王」が入っていたりとか、嬉しいポイントはけっこう多々ありでした(笑)。
 あ、因みに、パッケージには”Spartacus and the Ten Gladiators”と表記されているのに、実際に収録されているのは、同じダン・ヴァディス主演でも”The Son of Hercules in the Land of Darkness”だった、なんてミスも発見。まだ中身を全部確認したわけではないので、このテのミスはまだあるかも。
“Warriors 50 Movie Pack Collection” DVD (amazon.com)

『ヘラクレス』フランス盤DVD

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『ヘラクレス』ピエトロ・フランチーシ(1957)
“Les Travaux d’Hercule” (1957) Pietro Francisci
 前にここでドイツ盤DVDを紹介した、スティーヴ・リーヴスの『ヘラクレス』(1957)の、フランス盤DVDを入手したのでご紹介。因みに同盤は既に廃盤っぽく、出遅れて購入しそびれてしまい残念に思っていたんですが、先日amazon.frのマーケット・プレイスに出ていたんで、ようやく購入できました(笑)。

 まず、尺の話から。
 米盤の105分、独盤の88分に対して、この仏盤は97分。IMDbでは Runtime:98 min / USA:107 min とあるので、とりあえずインターナショナル・ヴァージョンとしては全長版ってことでしょうか。
 では、米盤との尺の差は何なのかというと、DVDで見る限りは、一つはオープニング・タイトルとエンド・クレジットの違い。仏盤と独盤のオープニング・タイトルは、赤地に黒の壺絵風の飾り罫の中に白文字でタイトル等が出るというパターンですが、米盤は星座や稲妻のアニメーション仕立て。で、仏盤と独盤にはエンド・クレジットがないんですが、米盤では前述した未使用だった壺絵風のオープニング・タイトルが、エンド・クレジットとして映画の最後に挿入されている。このダブリの有無が、尺の差の一つ。
 ただ、それだけだと8分もの差は出ないので、他に何か米盤にはあって仏盤にはないシーンが何かあるのかとも思いますが、現時点では発見できず。少なくとも、独盤の紹介時に書いたような明白な欠如はないみたいです。
 あと、DVDソフトという点だけに限って言えば、NTSCとPALの違いもあるのかも知れませんね。試しに、米盤と仏盤をタイミングを計って同時に再生してみると、仏盤の方が少しずつ前へ前へとズレていきました……って、なに暇なことやってんだ、自分(笑)。

 次に画質と音声。
 画質は、極めて良好。退色、ボケ、傷等は、ほとんど気にならないレベルで、音声に若干ノイズがのる部分があるくらいで、メジャーのクラシック作品と比較しても遜色はない。米盤の極悪画質に馴染んでいると、もう涙ちょちょぎれんばかりの美麗さ(笑)。下の方に比較用のキャプチャ画像をアップしたんで、ご参考に。
 加えて収録はスクイーズ。ただ、ちょっと良く判らないのが、以前ここで紹介した『海賊の王者』イタリア盤同様に、S-VHS接続で見ると4:3の非スクイーズなしで、コンポーネント接続のプログレッシヴ再生で見ると16:9スクイーズになる。これ、私が知らないだけで、そーゆー規格があるんでしょうかね、DVDに。
 音声は仏語、伊語、英語を収録。字幕は仏語のみ。一つ残念なのは、伊語や英語で再生中は、仏語字幕が強制的に表示されて消せないこと。

 さて、以上のようにソフトとしては大満足……と言いたいところなんですが、一つ腑に落ちないことがあり。ちょっと、米盤独盤仏盤を比較した、キャプチャ画像を見て下さい。
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 画質に関して言えば、米盤は退色してるわボケボケだわ傷だらけだわと、もう悲しくなっちゃうようなレベルなのに対して、独盤と仏盤は実に鮮明なのがお判りかと。特に仏盤は良く、独盤は画像がややボケ気味で、色合いも鮮やかではあるものの、いささか彩度が高すぎて不自然なのに対して、仏盤は画像は締まってディテールの再現性も良く、色合いも自然かつ退色も見られない。
 が、腑に落ちないのは画質の話ではなく、画角なんですな。
 米盤は左右がトリミングされたテレビサイズ、独盤はビスタ、仏盤はシネスコなんですが、米盤や独盤と比べると、仏盤には上下に欠けがある。となるとこのシネスコは、ビスタの上下にマスクをかけたものなのかと思いきや、画面の左右は独盤では入っていない部分がある。う〜ん、どれがオリジナル・サイズなんだろう?
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 タイトル画面を見比べると、まずこれは仏盤のものですが、壺絵風の飾り罫が左右にも入っていて、天地の比率もほぼピッタリ収まっています。
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 次に独盤を見ると、飾り罫は上下のみ。となると、タイトル・デザインを見る限りでは、シネスコを前提として制作されているような気はします。
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 ついでに、アメリカ盤のタイトルはこれ。……って、どーよ、これ(笑)。ハンナ・バーベラのアニメじゃないんだからさぁ(笑)。
 ……とまあこんな具合で、尺と画角に不明点はあるものの、とりあえずこの仏盤、現時点で私が入手した『ヘラクレス』のDVDでは一番ベスト。PALの再生環境がある方だったら、オススメ。
 米盤では色が抜けて見る影もなくなっちゃっているシルヴァ・コシナの居室とか、やはり米盤では色もディテールもベタッと潰れてしまっているアマゾネスの宮殿とか、仏盤で見ると息を呑むほど美しいです。あ、もちろんリーヴスの肌の艶とかもね、もうツヤツヤでスベスベで、頬ずりしたくなるくらい(笑)。私もこーゆー人に、チャリオットで後から抱かれてみたいもんです(笑)。

石塚冨朗さんのブログ

 画家の石塚富朗さんが、男性ヌード画をメインとしたブログアダム画廊を始められました。
 もうかれこれ20年以上前、まだ私が学生だった頃、石塚さんの絵を雑誌『ムルム MLMW』で拝見し、ああキレイだな〜、ステキだな〜なんて思っていたものですが、後にひょんなことから(ウチの相棒と古い顔なじみだったのだ)お知り合いになることができました。
 石塚さんは、いわゆる男絵専門ではないので、作品には女性像や花や抽象などもありますが、いずれも同じく端正で色彩が美しい作品ばかり。そちらの男性ヌード以外の作品を展示しているギャラリーへは、ブログの「I.TOMIOのキャリア」というコンテンツからリンクで行けます。
 で、私のブログをご覧になった石塚さんがおっしゃるに「自分もスティーヴ・リーヴスのファンだった」とのこと。わ〜い、思わぬ所にファン仲間が(笑)。
 ブログでは「なんちゃってウォーホール風スティーヴ・リーヴスのポートレート作品」(石塚さん談)も掲載されております。というわけで、思わずその記事にトラックバック(笑)。

“Les Pirates de Malaisie”

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“Les Pirates de Malaisie” (1964) Umberto Lenzi
 先日の『逆襲!大平原』に引き続き、スティーヴ・リーヴス主演映画フランス盤DVDのご紹介。
 伊語原題 “I Pirati della Malesia”、英題 “The Pirates of the Seven Seas” aka “The Pirates of Malaysia”。日本未公開らしく邦題は不明。

 これはソード&サンダル映画じゃなくて、タイトル通り海賊ものです。リーヴス演じるのは、主人公の義賊サンドカン。おそらく同じ監督の『サンドカン総攻撃』(1963) の続編なんでしょうが、残念ながら『サンドカン…』は未見のため、詳細は判らず。
 で、どうやらこのサンドカンってのは、イタリアでは有名な児童文学だか大衆文学だそうで。調べてみると、海賊に扮した虎のキャラクターのアニメーションとか、お懐かしやカビール・ベディ主演のテレビシリーズなんかがヒットする。カビール・ベディっつーと、中学生の頃だったか『バグダッドの盗賊』って映画を見に行きましてね、ムサい髭面に惚れたもんです(三つ子の魂百まで)。まあ映画そのものは、ガキながら「何だか安っぽいな〜」なんて思いましたが。あ、あと忘れられないのが、ヒロインを演じてたバブラ・ユスティノフ! ピーター・ユスティノフの娘なんだけど、これがブスでねぇ(笑)。まあ、パトリシア・ヒッチコックほどの破壊力じゃないけど(笑)。
 話がズレました。で、このサンドカンってのは、インド人だかインド系マレー人だかで、植民地時代、英国人に両親を殺されるかなんかして、民族の独立のために立ち上がって戦う義賊になった……みたいなキャラクターらしいです。

 続編(たぶん)のこの映画では、漂流している小舟に乗った男が、サンドカンの船に助けられるところから始まる。サンドカンは助けた男の口から、知人のインド人大公が誘拐監禁され、家族は皆殺しになったとことを知る。犯人は、黄金の採掘権を狙った英国軍人。こうしてサンドカンと英国軍人の闘いが始まる。
 展開は盛り沢山で、サンドカンは水夫に化けて黄金の輸送船に潜入したり、そこで殺されたと聞いていた大公の姫と会ったり、でも姫は、目の前で母親を殺されたショックから放心状態で、サンドカンのことも判らなかったり。はたまた大公の居所を探るために、今度は難破した貴族になりすまして、大胆不敵にも仇敵の懐に飛び込んだり、捕らえられて殺されそうになった仲間を、ロミオとジュリエットみたいな計略を働かせて助け出したり。
 かと思えば、アジトにしていた僧院の寝込みを襲われ、あわや殺されるところを、姫の懇願で除名されて、鉱山の強制労働に送り込まれたり、そこで他の囚人を扇動して暴動を起こしたり。次から次へと繰り出されるアイデアは、なかなか楽しめます。ただ、盛り沢山なわりには、これぞという大ヤマに欠けるので、ちょっと全体にチマチマした印象もあり。海賊と銘打つわりには、海のシーンより陸の戦いの方が多いし、アクション的にもスペクタクル的にも、どうも小粒感が拭えない。絵面そのものはシンガポールロケで良い雰囲気を出しているし、風景のスケール感なんかもけっこうあるんですけどね。

 監督のウンベルト・レンツィは、前述の『サンドカン総攻撃』の他にも、リチャード・ハリソン主演の『勇者ヘラクレスの挑戦』なんかも撮っていますが、後にはマカロニ・ウェスタンやジャーロ映画やB級アクションやホラーを手掛けた、B級職人監督さん。と言っても、実は私、その中で見たことのあるのは『人喰族』(『食人族』じゃないのよ)だけなもんですから、個人的には「サイッテーの監督!」というイメージが(笑)。
 この『人喰族』、巷では残酷描写のドギツさで悪名高いですけど、私としてはそれはOKなんですが、それより前半、動物虐待によるグロを延々と見せられるのが、とにかく不愉快でして。「動物ばっか殺してないで、さっさと人喰えや、ゴラァ!」と、マジで怒りが込み上げてきた記憶があり。
 でもまあ、この海賊映画を見ている限りでは、それほどヒドくもないですな。一人称カメラの切り替えで見せる、鉱山でも殴り合いのシーンなんか、けっこう迫力があってイイ感じだし、画面のスケール感なんかも、ショボくて情けなくなる程でもない。ただ、場面ごとの出来不出来のムラがあり、特にこの映画でマズかったのは、クライマックスに当たる断崖絶壁の上に立つ僧院での銃撃戦と、仇敵との一騎打ちのシーンが、とにかくショボショボでさまにならないこと。おかげで全体の印象も低下。残念ながら総合点では、同じリーヴス主演の海賊映画で比べても、前に紹介した『海賊の王者』よりも、かなり劣ると言わざるを得ないかな。
 ちょっと興味深かったのは、鉱山での暴動でリーヴスが敵をマシンガンで撃ち殺していくのを、延々と見せるシーン。このシーンは敵を倒すというより、圧倒的に勝る力で虐殺しているように見えるせいか、どこか暗い翳りのようなものが感じられます。本作はリーヴスのフィルモグラフィの中でも最後期(最後から二本目)に位置し、時代も史劇が廃れてマカロニ・ウェスタンへと移行していくあたり。そういった時代の結節点の反映が、このシーンに見られるような気がします。因みにリーヴス自身も、この映画から4年後、自ら脚本にも加わったマカロニ・ウェスタン『地獄の一匹狼』を最後に、映画界から引退しています。
 また、このシーンの後にも、共に鉱山を脱出した連中が、意見が分かれて道を別にしたところ、反乱だか戦争だかに巻き込まれて、あっさり全員殺されてしまう……といった、シニカルな展開があります。他にも、墓穴を掘っているとシャレコウベが出てくるシーンとか(これはアメリカ版ビデオではカットされていました)、土の中に生き埋めにされてしまうシーンとかも、やはり何となくマカロニ・ウェスタンへの過渡期を感じさせるような。

 主演のリーヴスは、今回はラウンドひげ。白いシャツを腹の上で縛った海賊スタイルや、キラキラゴージャス系のエキゾ衣装なんかも見せてくれますが、脱ぎ場は少なく、着替えのシーンと鉱山のシーンのみ。分量的には『怪傑白魔』や『逆襲!大平原』と同程度。
 冒頭で助けられる漂流船の男に、ソード&サンダル映画の脇ではお馴染みのミンモ・パルマーラ。
 大公の姫に、ジャクリーヌ・ササール。余談ですが、ガキの頃に読んでいた『スクリーン』で、よく「青春スター特集」みたいな記事があり、そういうときに必ず載っていた女優さんなんで、この人の顔は『芽生え』というタイトルとセットでアタマに刷り込まれています。おかげで、何となく麻丘めぐみとイメージがダブってますが(笑)。で、私は『芽生え』も『お嬢さん、お手やわらかに!』も見ていないので、動くササール嬢を拝見するのはこれが初めてなんですが、動きが少ない役柄だし、レンツィ監督の撮るラブシーンがぜんぜん良くないせいもあって、正直あまり印象に残らない。でも、スキッとしたキレイな顔だとは思います。顔をドーランで黒く塗って、インド人に化けているんですが、それほど珍妙でもない。少なくとも、『黒水仙』のジーン・シモンズとかよりは、よっぽど様になってます(笑)。
 で、またまたどっかにジョヴァンニ・チアンフリグリア君が出ていないかと目を凝らしていたんですが、残念ながら今回は見当たらず。ただ、オープニング・クレジットにドメニコ・チアンフリグリアという名があり、ひょっとしたら兄弟か何かかしらん。サンドカンの手下に、ちょっとジョヴァンニ・チアンフリグリアに顔が似ていて身体は少し細い男がいて目を引かれたんですが、ひょっとしてアレがそうかな? この人、確か『逆襲!大平原』でも、ゴードン・スコットの背後にいるその他大勢の中にいて、やっぱり目を引かれたんだけど(笑)。

 さて、恒例の「責め場」ですが、残念ながら今回は、リーヴスのそれはなし。
 その代わりといっちゃあ何ですが、ミンモ・パルマーラの責め場があります。川縁で強制労働させられているところ、脱走しようとした罰に、川の中に突っ立った杭に、胸の下まで水に浸かる形で後ろ手に縛られる。で、裸の胸板をナイフで切られる。すると、滴って水に混じった血の臭いに引かれて、河原にいたでっかいワニが川の中に。身動きできな囚人に向かって、ワニがゆっくり泳いで近寄ってくる……ってなシーン。
 まあ、リーヴスじゃないのは残念だけど、ミンモ・パルマーラもガタイはいいし、アイデア的にも面白いので、責め場としては悪くない。ただ、個人的にこの人の顔が好みじゃなくってねぇ……(笑)。でもまあ、これは単に好みの問題だから、シルベスタ・スタローンとかが好きな人ならオッケーだと思います(笑)。
 DVDはフランス盤なのでPAL。スクィーズなしのシネスコのレターボックス収録ですが、画質はこの間の『逆襲!大平原』以上に良好で、ボケやらキズやらにじみなどはもちろん、経年劣化による退色すらなし。アップになると、リーヴスの肌に浮かぶ汗の滴まで見えます。スクィーズではないものの、画質は下手なメジャーのクラシック作品以上。どのくらい美麗かは、キャプチャ画像をご覧あれ。
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 音声は仏語のみ、字幕なし、特典なし、チャプターすらなし(笑)という仕様は『逆襲!大平原』と同じ。
 ランニングタイムは、パッケージには80分と表記されているんですが、再生してみると実際は110分ほど。前述したように、米版VHSでは見られなかったシーンもあるので、IMDbのデータを見る限り、どうやら全長版のよう。他の国でのDVDソフト化は、今のところ情報なし。VHSなら米版が入手可能ですが、これは画質がかなりメタメタで、シャドウは潰れて画質も暗く、薄暮や夜のシーンなんか鑑賞するのが辛いくらい。しかも、そーゆーシーンが多いんだ、この映画(笑)。

『悪魔の棲む家』

悪魔の棲む家 (2005) アンドリュー・ダグラス
The Amityville Horror (2005) Andrew Douglas
 リメイクの話を聞いたとき、実は「あ、けっこういいアイデアかも」と思いました。っつーのもオリジナルの1979版は、有名なわりにはそれほど恐くも面白くないから(笑)、オリジナルを越えるリメイク版の制作も、あながち夢じゃないと思いまして。
 で、結果は……微妙(笑)。まあ、退屈はしないしそこそこ楽しめるけど、それだけ。テンポはオリジナル版より良いけど、その反面、話の構成は雑に。脅かし系のショッカー演出は頻出するけど、恐いっつーよりビックリするっつー感じだし。可もなく不可もないという意味では、オリジナルもリメイクもどっこいどっこいかなぁ。
 まあ、マジメに考えるといろいろ言いたいことはあります。恐怖の対称が、惨殺された子供の幽霊と、惨殺した殺人鬼の憑依と、元凶となった過去の因縁と、三つあるんですが、その絡ませ方や盛り上げ方がぎこちなく、フォーカスが散ってしまっているとか、神父を出すタイミングが明らかに間違っていて、おかげで出す意味すらなくなっているとか、あそこで××を殺しちゃだめだろう、××は家族の一員なんだから、それを殺しちゃったら、いくら脱出しても家族の絆は再生しないだろうとか、まあ他にもいろいろと。
 でもまあ、そーゆーことに目くじらをたてなければ、それなりには楽しめます。世の中、もっとヒドいホラーはいくらでもあるし(笑)。
 で、実は私、オリジナル版はさほど好きではないにも関わらず、DVDは持ってたりします。値段が999円だったっつーのもあるんですが(笑)、最大の理由は主演のジェームズ・ブローリンでして。
 ちょっとバッチイひげモジャでね、それが話が進むにつれて、どんどん憔悴してドロドロになっていく様が、もう何とも言えずに色っぽくて。もう、それ見たさだけでオリジナル版のDVDを買ったといって過言ではない(笑)。『ジャグラー/ニューヨーク25時』のDVDも出ないかなぁ。このときのブローリンも実に良くて、しかも映画そのものも面白いから、DVDが出たら即買いなんだけど。
 つまりまあ、私にとってオリジナル版『悪魔の棲む家』の最大の魅力とは、ホラー的な見せ場でも何でもなくって、実はジェームズ・ブローリンの姿形だったりするのだ(笑)。
 で、今回のリメイク版ですが、これまた同じで、個人的に最大の魅力は、オトーサン役のライアン・レイノルズという役者さんでした(笑)。もう、やっぱりちょいバッチイひげモジャでね、加えて身体はゴツくて、ブローリンよりずっとマッチョ。
 で、こいつが悪霊に取り憑かれて、ドロドロになっていく様子が、これまた何とも色っぽくて(笑)。パジャマの下だけを腰で履いているヌード姿とか、風呂場でバケモノに襲われるシーンとか、もう実にステキで嬉しくなっちゃいました(笑)。スルーしてた『ブレイド3』、今度借りてこなくちゃ。
 とゆーわけでオリジナル版とリメイク版、私的には「ホラー映画としては可もなく不可もなくの出来」だけど「主演のオトーサン役がツボに直撃なんで全てオッケー!」という意味で、ホント全く同じような作品でしたとさ(笑)。
 リメイク版のDVDも、出たら買うと思います、たぶん(笑)。
 最後に、ちょっと残酷ネタ。
 リメイク版で、オトーサンが「ネイティブ・アメリカンを拷問・虐殺していた地下室」を幻視するシーンがあるんですけど、ここで出てくる、ネイティブ・アメリカンのサンダンスの儀式や、ファキール・ムサファーのパフォーマンスみたいな、「胸の肉に鉄鉤を刺して吊られている裸の男」のシーンは、短いんだけど、拷問図的にはけっこう良くて、お得感アリ。
 まあ、これをネイティブ・アメリカンへの「拷問」にするのは、ちと変ではありますが、この際そーゆーツッコミはなしということで(笑)。

『逆襲!大平原』

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『逆襲!大平原』(1962)セルジオ・コルブッチ
“Romulus et Remus” (1962) Sergio Corbucci

 新着ソード&サンダル映画DVDのご紹介。フランス盤。伊語原題 “Romolo e Remo”、英題 “Duel of the Titans” aka “Romulus And Remus”。
 スティーヴ・リーヴスとゴードン・スコットの共演ということで、その筋のマニアには「ヘラクレス vs ターザン」ってな感じで有名な作品です。
 で、早速ですが、またまたジャケがダウト(笑)。これ、同じスティーヴ・リーヴス主演でも、『逆襲!大平原』じゃなくて、『マラソンの戦い』のスチルです(笑)。
 それにしても『逆襲!大平原』って……ヒドい邦題だなぁ(笑)。原題を見ればお判りのように、これはローマの建国神話・ロムルスとレムスの話なんですが、この邦題から誰がそれを想像できよう(笑)。

 ローマ建国以前に栄えていたアルバロンガ王国で、国を乗っ取る陰謀のため、王位継承者の双子の兄弟・ロムルスとレムスは、赤子のときに川に流されてしまう。それを雌狼が拾い乳を与えて育てた後に、雌狼を射た羊飼いに拾われ、その息子として育てられる。やがて逞しく成人した二人は、自分たちの出自を知って敵を倒すが、二人の母(巫女です)の今際の際の予言で、アルバロンガ王国を継ぐことはせず、別天地に「永遠の都」を築くため、民草を率いて旅立つ。ここまでが前半。
 このとき、王女ユリアはロムルスを愛して同行するのだが、レムスもまた彼女を愛してしまう。しかもロムルスには野心がないのに対して、レムスは「自分が王になりたい!」という権力欲に取り憑かれてしまい、二人の間には次第に溝が拡がっていく。それと並行して、新天地を目指して放浪する一行を、ユリアの婚約者とユリアの父王が、軍勢を率いて追い……ってのが後半。

 物語的には、良く知られたローマの建国神話を元にしつつ、娯楽映画的に大幅にアレンジされています。
 前半は、細かなアレコレよりも娯楽映画的な見せ場を重視した作りで、アルバロンガの祭りの狂乱、炎を馬で跳び越える障害物レース、捉えられたロムルスが競技場でかけられる処刑と、それを救出しにきた仲間たちの大暴れといった具合に、次から次へとヤマ場を盛り込んで、なかなか見せる。
 それに比べると、放浪と心理劇が主体の後半は、地味になってしまうんですが、その中にも、ちょっとした合戦を使ってヒロイックな見せ場を作ったり、レムスがロムルスと袂を分かって、自らに従う民を率いて別天地を目指すと、火山の噴火に会ってしまうといった、スペクタクル映画的な見せ場はあり。
 あと、後半は物語自体の工夫が面白く、例えば、ロムルスに同行する王女ユリアなんてのは、伝説にはないオリジナルのエピソードっぽいんですが、実はユリアはアルバロンガではなくサビーヌの王女。で、最終的にユリアの父王とロムルスの闘いは、ユリアが「私は自分の意志でロムルスと一緒になったんです」とか語ることで回避されるんですが、なるほど、これは伝説としてはこの話より後の出来事の、サビーヌの女たちの掠奪のエピソードを踏まえてあるわけですな。
 また、火山の噴火なんてエピソードを挟みつつも、それでも兄弟の最後の闘いは、ロムルスが鋤で地面に線を引き「この境界線を越えた者は敵だ」とか宣言しているところに、噴火から生き延びたレムスが現れ、その線を踏みにじってロムルスに闘いを挑む……といった具合に、これまたレムスがローマの城壁を飛び越えたことで殺されるという伝説と、ちゃんと重ね合わせています。
 恋愛要素も、ロムルスとレムスとユリアとユリアの婚約者という四角関係に加えて、レムスに報われない想いを寄せる女戦士とか、ユリアの侍女とレムスの部下の恋なんてエピソードも絡めて、話の転がり方やキャラクターの立て方に工夫している。
 まあ正直なところ、アクション主体の娯楽大作としては、いささか辛気くさい要素や悲劇的な要素が多いし、逆にシリアスな歴史スペクタクルとしては、物量や重厚感に欠けるといった具合に、いささか虻蜂取らずになってしまっているきらいはあるんですが、それでも頑張って作っているとは思います。

 ロムルス役のスティーヴ・リーヴスは、まあ良い役どころではあるんですが、キャラそのものがいい人過ぎてイマイチ魅力がないのと、得意の筋肉生かして超人的な大暴れといったシーンもないので、どうも全体的に影が薄い。ヒゲもないし(笑)、キャラクター的には『ポンペイ最後の日』のときみたいな弱さが。ただし、「そっち系」のリーヴス・ファンには、ちゃんと「見せ場」は用意されております。これは後述(笑)。あと、この映画とは直接は関係ないけど、リーヴスは同年に『大城砦』で、このロムルスとレムスのご先祖様にあたる、アエネイアスも演じてるってのが、何か面白いですな(笑)。
 レムス役のゴードン・スコットは、逆に複雑な役どころなので、いささか力不足の感は否めませんし、この人は「気さくなアンチャン」といった面構えなので(ちょっと「犬っぽい」んだよね)、影のある役には不向きだとは思いますが、それでも頑張ってはいると思います。ま、個人的にけっこう好きな顔だし、贔屓目もあるかも知れませんが(笑)。あと「肌見せ」系では、リーヴスよりもシーン多いです。
 因みに、プロデューサーは当初リーヴスの一人二役を考えていたけれど、リーヴスがそれを辞退して、代わりにスコットを推薦した……なんてエピソードが、IMDBのトリビアに載ってました。なんか、いい話っぽいですな。
 ヒロインのユリアにヴィルナ・リージ、ユリアの婚約者にジャック・セルナス、ユリアの父王にマッシモ・ジロッティと、ワキにはそこそこ名のある役者や、ある程度の大物を揃えるというのは、このテの映画のお約束ですな。
 そうそう、ほんの一瞬だけど、例のジョヴァンニ・チアンフリグリア君も出てました(笑)。アルバロンガの祭礼のシーンで、半裸で信者たちをを鞭打つ男たちの一人で、ヴィルナ・リージを引っぱたこうとしたところ、リーヴスに殴り飛ばされちゃう役。セリフも一言だけあり(笑)。
 あと、これは一緒に見ていた相棒の言ですが、群衆の中の一人のユーモラスな太ったオジサンが、「『ローマの休日』に出ていた愉快なオッサン」だそうです(笑)。
 監督のセルジオ・コルブッチは、マカロニ・ウェスタンで有名な人ですね。あたしゃソッチ系には疎いんで良く判りませんが、本作では特にだれたり白けさせたりすることもなく、しっかり手堅く演出しています。パン・フォーカスで顔のアップと遠景を同時に見せたり、目だけの極端なクローズアップをしたりといった、このテの映画にしては凝った画面も見せてくれます。同じくリーヴス主演で『闘将スパルタカス』も撮ってますね。
 音楽のピエロ・ピッチオーニは、最近でもラウンジ系コンピとかで人気ですが、本作ではもちろん内容が内容ですから、人気のジャズ・ボッサとかじゃありません(笑)。でも、キャッチーで力強いハッキリしたメロディーを据えながら、裏で転調しながらのリフレインでグイグイ盛り上げていく曲とか、ちょいと異教的な感じのする曲とか、なかなかカッコ良いし雰囲気も良くて、個人的にはお気に入り。
 因みに脚本には、セルジオ・レオーネの名も。

 さて、前述の「そっち系の見せ場」、つまり、リーヴスの責め場です。
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 とっ捕まったリーヴスが、ダンジョンで回転するセント・アンドリュース・クロスに縛られ、グルングルン回されながら鞭でビシバシ引っぱたかれます。で、この回転が半端じゃなく早い(笑)。相棒は「すごいね〜、これじゃ目が回っちゃうんじゃない?」とか申しておりましたが、いや、拷問だからね、目を回すためにやってるんだと思います(笑)。
 短いシーンではありますが、ダンジョンのセットは凝ってるし(手前で男が逆さ吊りにされてるのが嬉しいねぇ)、回転が止まった後のアップもあるし、責め場としてはなかなか楽しめる好シーンです。……とゆーわけで、キャプチャ画像をサービス(笑)。
 因みにこのあとリーヴス君は、半裸のまま闘技場に引き出され、両手は鎖で繋がれ、背後は尖った杭の突き出た木格子で後退できないという状態で、素手で熊と戦わされます。

 DVDはフランス盤なのでPAL。スクィーズなしのシネスコのレターボックス収録ですが、キャプチャ画像でもお判りのように、画質はかなり良好。経年劣化による退色はありますが、ボケやらキズやらにじみなどは、ほぼ気にならず。少なくとも、前に持っていた米版VHSとは、もう月とスッポンの美麗さです。音声は仏語のみ、字幕なし、特典もなし。それどころか、実はチャプターすらない(笑)。メニュー画面で選べるのは「再生」だけなんて、今どき珍しい必要最低限な作りのソフトだなぁ(笑)。
 米版VHSのランニングタイムは90分ですが、今回のDVDは105分。ロムルスが捉えられた後、救出に向かう前に、レムスと他の仲間との間で一悶着あって剣を交わすとか、兄弟の育ての親の死のシーンがちょっと長いとか、炎上するアルバロンガで母親とはぐれてしまった少女が、新天地へ向かう途中で路傍に泥だらけの犬を見つけて、駆け寄って抱きかかえたときに母親とも再会できるとかいった、細かなシーンがちょこちょこ増えてます。
 同じメーカーからは、やはりリーヴス主演の海賊映画 “Les Pirates de Malaisie”(共演はジャクリーヌ・ササール)のDVDも出てます。そっちの紹介は、またの機会に。

【追記】ドイツ盤DVDに英語音声収録。画質良好。
[amazonjs asin=”B000G6H538″ locale=”DE” title=”Romulus und Remus”]

『鉄腕ゴライアス・蛮族の恐怖』

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『鉄腕ゴライアス・蛮族の恐怖』(1959)カルロ・カンポガリアニ
“La terreur des Barbares” (1959) Carlo Campogalliani
 先日、ここで「これはレグ・パークでもアラン・スティールでもなくって、スティーヴ・リーヴス主演の『鉄腕ゴライアス・蛮族の恐怖』だぁ〜ッ!」とジャケにダウトを出しましたが、せっかくだからちゃんとした『鉄腕ゴライアス・蛮族の恐怖』(伊語原題 “Il Terrore dei barbari”、英題 “Goliath and the Barbarians”)の輸入DVDもご紹介しませう。
 フランス盤です。これは中身もちゃんと同映画なんですが、う〜ん、ジャケは先日のダウト盤の方が良いかも(笑)。
 映画の内容は、ヘラクレスものやマチステものとは違い、神話やファンタジー風味はなく、ゲルマン民族の大移動で、6世紀中頃にランゴバルド族に侵略されたイタリアを舞台にした歴史物。
 とはいえ本格史劇ではもちろんなく、立ち上がって侵略者に対抗したヒーローを描く、アクション・アドベンチャーです。で、そのヒーローのエミリアーノ役がスティーヴ・リーヴスで、その勇猛さから伝説の巨人ゴライアスと呼ばれる……ってのがタイトルの由来。でもさぁ、ゴライアスってゴリアテのことでしょ? 伝説だとダビデにパチンコで殺されちゃうわけで、あんまり縁起のいい呼び名じゃないような気もするんだけど(笑)。
 まあともかく、リーヴスはそんなこんなで大暴れ、敵将の娘で小悪魔系のチェロ・アロンゾとのロマンスもあり、戦闘シーンもセクシーダンスもある。大作感のない小粒ではあるものの、娯楽に徹した作りが小気味良く、さほどツッコミどころも度を超したチープさもない、手堅くまとまった佳品です。
 リーヴスのコスチュームが、時代背景と関係なく毛皮の腰布一丁とゆーサービス具合だとか、音楽が個人的にご贔屓の、ラウンジ&エキゾチカ系の名人レス・バクスターだってのも、個人的な好きポイント。
 しかし、何といっても一番なのは、責め場の良さなんですな(笑)。リーヴスの責め場の中では、この映画のそれが一番なのはもちろんのこと、ソード&サンダル映画全体の中でもトップクラスかも(笑)。
 とゆーわけで、今回はキャプチャ画像付き責め場解説(笑)。
 まず、最初はコレ。
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 とっ捕まって横木に縛られたリーヴスを、蛮族の将軍がナイフでいたぶる。
 で、次はコレ。
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 判りづらいけれど、リーヴスの首枷は、背後から綱引きよろしく、数人の男たちに引っ張られている。で、背後の板からは槍の穂先が何本も突き出していて、そのままジリジリ引きずられいくと、背中にブッスリ刺さってしまうという仕掛け。
 そして、最後はコレ。
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 お馴染みの(笑)馬裂きです。縄で縛られた両腕を、左右から二頭の馬に引っ張られている。
 この一連の責め場を、尺もけっこう長くタップリと見せて、リーヴスもしっかり熱演してくれるもんだから、このテのが好きな人間には、もうタマランワイなわけです(笑)。
 オマケに、こんな感じの筋肉美の見せ場もしっかり用意されてます。
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 まあ、そんなこんなで私はこの映画を、個人的にひたすら愛しているわけでゴザイマス(笑)。
 どのくらい愛しているかというと、コレくらい愛している(笑)。
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 初公開、私のパソコンのデスクトップ画像(笑)。サイン入りスチル写真の画像を、個人的な趣味でセピアにしてます。
 因みに、もう一台のパソコンも、壁紙をリーヴスにしておりまして、そっちは『ヘラクレスの逆襲』のスチル写真だったりするのだ(笑)。
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 DVDはフランス盤なのでPAL。画質は、キャプチャを見ての通り、なかなか佳良。暗かったり色調が偏っているのは、これが夜のシーンのせい。若干ボケた感じはありますが、退色や傷はほぼ問題なし。画面はノートリミングのワイドで、スクィーズなしのレターボックス収録。音声は仏語のみ、字幕なし。
 アメリカ盤DVDは出ていない様子ですが、VHS版だったら、Steeve Reeves International Society のサイト(www.stevereeves.com)で販売しております。私はここで何度か買い物をしており、”STEVE REEVES His Legacy in Films” という写真満載のオンデマンド本とか、”Steve Reeves The Man The Legend” というドキュメンタリーDVDとか、かなりお気に入りではありますが、通信販売は at your own risk だというのはお忘れなく。