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アメリカの「野郎系パルプ雑誌」のカバー画集2種

itsamansworld mensadventure
“It’s A Man’s World” A Feral House Book (ISBN 0-922915-81-4)
“Men’s Adventure Magazines” Taschen (ISBN 3-8228-2515-4)
 ここんところ立て続けに、個人的に大好きな昔のアメリカのパルプ雑誌の表紙絵の、それも「実録男性誌」系の表紙絵を集めた画集が、二冊続けて出版されたのでご紹介。

 このテのイラストの、基本は二つ。
 まず、バイオレンス経由のマッチョイズム賛美系。これは、逞しくもむさ苦しい、いわゆるゲイ業界用語(笑)で言うところの「野郎臭い」男が、敵と闘い苦境に陥っている、とゆーパターン。その敵もいろいろで、大西部でネイティブ・アメリカンや無法者と戦ったり、またある時は大自然の中で猛獣や毒虫と戦ったり、更には第二次世界大戦でナチと戦ったり。
 で、逞しい半裸の男たちが、猛獣や猛禽に肉を引き裂かれていたり、南洋の秘境で生贄にされそうになっていたり、捕虜収容所で鞭打たれていたりする光景が、コテコテのアメリカン・リアリズムで描かれる。いや〜、ここいらへんは私的に実にオイシイ(笑)。
 もう一つのパターンは、ズバリSEX&SMで、下着姿の美女が絶叫してるヤツ。これは圧倒的にナチものが多くて、縛り鞭打ちは当たり前。火責め水責め氷責め、生体実験に電気ショック、あげくは溶鉱炉で金の彫像にされたり、壁の中に塗り込められたり。ま、よーするに「ナチ女囚もの映画」のイラスト版。ダイアン・ソーンのファンなら必見(笑)。
 ナチ以外にも、カストロ風の軍服男たちに拷問される美女とか、ヘルスエンジェルスやチャールズ・マンソンみたいなバイカーやヒッピー系に捕まった美女とか、日本軍に襲われるゲイシャガールなんて絵もあり。

 で、そーゆーのを見ていると、「敵」にもインフレや時代の変遷があるようで。
 たとえば大自然アドベンチャー系だと、闘う相手がオオカミやらライオンやらサメやらなら納得もいくんですが、イタチやらセンザンコウやらイグアナやらヤシガニやらを相手に闘っているのを見ると……いや、本当はそーゆーのも危険なのかも知れませんが、絵面的には野郎どもが必死の形相だけに、どーにもマヌケ。まあ、そーゆー「ヘン」さも愛おしいけど(笑)。
 相手が人間になると、これはその時代の「仮想敵」なんでしょうなぁ。前述のナチスやカストロや日本軍の他にも、毛沢東や旧ソ連、クメール・ルージュとかが登場。現在だったら何になるか、これはもう火を見るより明らかで、こういった要素はPCにうるさい人なら、眉をひそめること間違いなし。これも一種のお国柄なのか、それとも人類の持つ普遍的な本質なのか。
 そういや、個人的な話ですが、以前アメリカでゲイSM関係の人と面談したときに、先方から「日本人の残酷性について」話題を振られたことがあり、そのときは「ああ、これも黄禍思想の根深さか」なんて思いましたが、案外こういったパルプ雑誌が、直接的なルーツなのかも。
 表紙に踊るコピーの数々も面白い。
 前述のような野郎野郎した絵や、「悪魔の大蛇との死闘!」とか「俺は地獄の収容所から生還した!」なんていう勇ましいコピーと一緒に、必ず「浮気妻のセックス・ライフ」やら「スクープ! 日本のヌード・マーケット」なんてコピーが(笑)。
 他にも「殺人豚に生きながら喰われる!」とか「俺はセイロンで吸血ヒルと闘った!」とか「人喰いカニが這い寄ってくる!」とか「人喰いネズミの島!」とか、いったいどーゆー記事なのか読んでみたくなるし(笑)。あ、でも前に『風俗奇譚』か何かで、これ系のイラストが載ったや記事を読んだっけ。あれはきっと、このテの雑誌から転載したんだろーな。なーんだ、しっかり読んでたんじゃん、自分(笑)。

 しかしこーやって「野郎ども危機一髪!」みたいな絵を続けざまに見せられると、「こいつらマゾなんじゃないか?」な〜んて思いも頭をよぎる。
 ただこれは、マゾはマゾでも自分を卑しめることに陶酔するマゾではなく、苦難に耐えるカッコイイ自分に酔うという、ナルシシズムとヒロイズムの混じったマゾですな。結局のところ彼らは、こうやって苦境に耐えることで、自らの男性性を再確認しているに過ぎない。これはあくまでも、彼らの思うところの「本物の男」になるためのイニシエーションであって、そこに屈辱や服従の甘美さといったマゾ的な感情はない。彼らが何かと半裸であるのも、肉体美の誇示による男性性の強調でしょう。ビーフケーキの類ですな。つまり、この野郎どもの受難の果ては、あくまでも「英雄として生還」するか「英雄として殉死」するのであって、決して「奴隷の悦びに目覚め」たりはしない。
 で、現実ではこーゆー男ってのは概してホモフォビックなもんですが、じっさい内容紹介で「君のホモ的傾向は?」とか「俺はホモだった!」なんてのがある。彼らが自分をホモセクシュアル、すなわち「彼らが考えるところの、本物の男ではない男」だと、周囲から思われることへの警戒心が強いことが、ここいらへんから伺われます。
 こういうタイプは、現実に身近にいると鬱陶しいし厄介な存在ですが、マイSM的には実にオイシイ被虐者。そーゆー男が、その盲信ゆえの苦難に陥り、抵抗空しく男の矜持を徐々に打ち砕かれていく……ってのが、私の大好きなパターン(笑)。つまり、これらの絵と私のマンガは、方法論的には極めて近しいんですな。ただ、辿り着くべきゴールが違うってだけで。
 また実際のところ、マッチョイズム云々を抜きにしても、図像表現的には立派にノンケの男マゾものとして通用するイラストも少なくない。船乗りが女護ヶ島で縛られて生贄にされそうになっていたり、捕虜が収容所で美人看守から鞭打たれていたり。ハーケンクロイツの烙印を押されていたり、タトゥーの入った生皮を剥がれてランプシェードにされそうになっているなんてゆー、まんまイルゼ・コッホみたいな図もある。
 個人的に特に秀逸だと思ったのは、これは”Men’s Adventure Magazines”の方に載っていたんですが、収容所で男の捕虜二人が、二人の女性兵士に人間馬として騎乗され、鞭打たれながらレースだか騎馬戦だかを競わされているヤツ。ノンケの馬系のマゾ男さんには、ぜひ見ていただきたい逸品。で、これ実は加虐者側が日本軍なんで、私的にはそこいらへんも逆ヤプーみたいで面白さ倍増。

 画集としては、どちらも様々なカバーアートを、フルカラーでたっぷりと見せてくれます。嬉しいことに、どちらも表紙からの複写だけではなく、現存している原画から新たに分解した図版も少なからずあり。リアリズム的に上手い画家が多いので、こうした画質の劣化のない図版の数々は、大いに見応えがあります。上半身裸の兵士が、雄叫びを上げながら銃剣構えて突進してる絵なんて、もう男絵的にすこぶるカッコ良くって、このまま額に入れて飾りたいくらい。
 二冊で重複する表紙絵も多いので、どちらか一冊と言われたら、ページ数や収録図版の数で勝っている”Men’s Adventure Magazines”の方がオススメかな? 版元のTaschenは、日本支社もあるから店頭で見かける機会も多いかも。Taschenのサイトで、ちょっとだけ内容見本も見れます。ただ、ここで見れるサンプルには、私的にオイシイ図版は全く入っていないんだけどね(笑)。
 原画からの図版に関しては(おそらく)ダブりはないので、マニアや好き者だったらぜひ二冊とも揃えたいところ。値段は、”It’s A Man’s World”が$29.95、”Men’s Adventure Magazines”が$39.99と、後者の方が分厚い分10ドルほど高価。造本や印刷クオリティは、どちらも負けず劣らずの高レベル。
 二冊とも、お好きな方には自信を持ってオススメできる画集ですぞ!
“It’s a Man’s World” (amazon.co.jp)
“Men’s Adventure Magazines” (amazon.co.jp)

ソード&サンダル映画ドイツ盤DVDボックスいろいろ

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ソード&サンダル映画のドイツ盤DVDボックスが幾つか溜まってきたので、まとめてご紹介。個々の作品の詳しい感想は、また改めて次の機会に。既に見たことがあるものに関してのみ、簡単な備考を併記しました。
なおこれらのボックス、ほぼ全て単品のバラ売りもあるようです。もし「買ってみようかな〜」なんて酔狂な方がおられましたら、ご参考に。(写真をクリックすれば拡大できます)
左上
Black Hill社“Kino Kolossal”(5枚組)
1)スティーヴ・リーヴス主演 ”Aeneas Held Von Troja”(1962)
伊題” La Leggenda di Enea”・英題”The Avenger”
*アエネイアスを主役にしたトロイア戦争もの『大城砦』(1961)(伊題”La Guerra di Troia”・英題”The Trojan Horse”)の続編。ヴェルギリウスの叙事詩との関係は、未読のため不明。Movies Unlimitedで米盤DVDも売っていますが、画質が粗悪な上にDVD-Rなので要注意。因みに『大城砦』の米盤DVDは、Trimark Home Video社の”The Adventures Of Hercules”ボックスに収録。こっちはトリミング版ではありますが、画質は及第点、英文字幕も付いている佳良品です。
2)ゴードン・ミッチェル主演 ”Achilles Der Zorn Des Kriegers”(1962)
伊題”L’Ira di Achille”、英題”Fury of Achilles”
3)マーク・フォレスト主演 ”Maciste Held Von Sparta”(1964)
伊題”Maciste, gladiatore di Sparta”、英題”The Terror of Rome Against the Son of Hercules”
4)マーク・フォレスト主演『豪勇ゴライアス』 ”Die Rache Des Hercules”(1960)
伊題”La Vendetta di Ercole”、英題”Goliath and the Dragon”
*Something Wired社からノートリミングの米盤DVDが発売されていて、これはオマケも充実した好ソフト。ただし画質は独盤の方が上。
5)エド・フューリー主演『獅子王の逆襲』 ”Ursus Im Tal Der Lowen”(1961)
伊題”Ursus nella valle dei leoni”、英題”Ursus in the Valley of the Lions”
*追記*
全ディスク共通の映像特典として、ソード&サンダル映画の歴史を綴る58分のドキュメンタリーTV番組”Kino kolossal – Herkules, Maciste & Co”(2000)を収録。色々な映画のハイライト・シーンの他に、すっかりお爺ちゃんになったブラッド・ハリスやゴードン・ミッチェルのインタビューが見れます。他にもリッカルド・フレーダやモイラ・オルフェイ、フッテージの流用を含めると、シルヴァ・コシナやセルジオ・コルブッチ、更にはセルジオ・レオーネやらレニ・リーフェンシュタールやらアーノルド・シュワルツェネッガーまで登場。独語オンリーなんで話の内容はワカンナイのが、すっげー悔しい(笑)。
右上
Marketing Film社“Monumentalfilm Box”(3枚組)
1)ブラッド・ハリス主演 ”Die Ruckkehr Der Straksten Gladiatoren Der Welt”(1971)
伊題”Il Ritorno del Gladiatore piu Forte del Mondo”
*内容はここで紹介済み。
2)ゴードン・スコット主演 ”Die Schlacht Der Gladiatoren”(1964)
伊題”Coriolano: eroe senza patria”、英題”Coriolanus: Hero Without a Country”(“Thunder of Battle”)
3)マッシモ・ジロッティ主演 ”Judith Das Schwert Der Rache”(1959)
伊題”Giuditta e Oloferne”、英題”Head of a Tyrant”
*非マッスル系。ユディトとホロフェルネスの話。
左下
e-m-s社“Cinema Colossal 1 – Rome”(3枚組)
1)ブラッド・ハリス主演 ”Die Letzten Stunden Von Ponpeji”(1962)
伊題”Anno 79 : La Distruzione Di Ercolano”
2)マーク・ダモン主演 ”Der Sohn Von Caesar Und Cleopatra”(1964)
伊題”Il Figlio di Cleopatra”、英題”Son of Cleopatra”
*非マッスル系ですが、鞭打ちシーンあり。
3)ベリンダ・リー主演 ”Messalina”(1959)
伊題”Messalina Venere imperatrice”、英題”Messalina”
*メッサリーナの話なんで、当然主演も女性。
右下
e-m-s社“Cinema Colossal 2 – Hero”(3枚組)
1)ブラッド・ハリス主演『ヘラクレスの怒り』 ”Samson, Befreier Der Versklavten”(1962)
伊題”La Furia di Ercole”、英題”The Fury of Hercules”
*今回これを見て、前にここで紹介した”Samson”と、この『ヘラクレスの怒り』は、同じ制作年、同じ監督、同じキャスト、同じセットながら、内容は全く違う別の作品だということが判明。こっちの方がいいです(笑)。
2)ダン・ヴァディス主演 ”Hercules, Der Starkste Mann Der Welt”(1964)
伊題”Il Trionfo di Ercole”、英題”The Triumph of Hercules’
*米盤DVDはTrimark Home Video社の”The Adventures Of Hercules”ボックスに収録。画質は許容範囲内、英文字幕付きの悪くないソフトですが、トリミング版なのが残念。画質も独盤の方が上。
3)アンソニー・クイン主演 『侵略者』(『侵略者アッチラ』) ”Attila, Die Geissel Gottes”(1954)
伊題”Attila” (“Attila, il flagello di Dio”)、英題”Attila”
*非マッスル系ですが、監督は『ヘラクレス』『ヘラクレスの逆襲』のピエトロ・フランシスキ。共演はソフィア・ローレン、イレーネ・パパス。
e-m-s社の”Cinema Colossal”シリーズは、今後も”3 – Saga”、”4 – Eros”、”5 – Mars”と発売が続く予定。
具体的な収録作品はまだ不明ですが、同社のカタログから推察するに、カーク・ダグラス主演の『ユリシーズ』、セルジオ・レオーネ監督の『ロード島の要塞』、リチャード・ハリソン主演の『七人のあばれ者』、カーク・モリス主演のアトランティスもの、レックス・バーカー主演のアラブもの、ロジャー・ムーア主演の『サビーヌの掠奪』なんかが入るんじゃないかと思います。

『スパルタカス』(TV版)

スパルタカス [DVD] 『スパルタカス』(2004)ロバート・ドーンヘルム
“Spartacus” (2004) Robert Dornhelm

『スパルタカス』というと、どうしても1960年版(スタンリー・キューブリック監督作)と比較したくなってしまうのが人の情。でもまあ、TVムービー相手に、それは酷ってもんだよなぁ。
 特にスケールに関しては、1960年版にはあの戦闘シーンがあるからねぇ。丘陵に整然と居並ぶモブのスゴイこと。あれを見たら、この映画に限らず、大概のスペクタクル映画は影が薄くなっちゃう。俳優陣も、あっちは主演のカーク・ダグラスはまあ置いといても(何でじゃ……って、あんまり好きじゃないのよ、私)、他はローレンス・オリヴィエ、チャールズ・ロートン、ピーター・ユスティノフ、ジーン・シモンズなんつー、錚々たる面子だもんなぁ。比べるだけ酷です。
 とはいえ、この2004年版が出来が悪いとか、そーゆーわけでは決してなく、これはこれで充分に楽しませてくれる内容です。
 1960年版は、スケール感のある堂々たる大作ではあるものの、エピック的な単純で骨太な部分と、近代的な人間の内面を描く部分が、いささか乖離を見せいている感が否めない、というのが私的な印象。それに比べると、今回のバージョンは全体的にこぢんまりしている分、逆に人間ドラマ的な部分に焦点がカッチリ合ってる。圧倒的なパースペクティブとか、物量のスゴさといった、スペクタクル映画的な興奮度には欠けるが、その分、ドラマ的な面白さがタップリあります。
 鉱山奴隷だったスパルタカスが剣闘士養成所の所長に目を付けられて買い取られ、剣闘士としての訓練を受けつつ、やがて反乱を起こしてローマに戦いを挑むといった前半の展開は、けっこう細かな部分も含めて1960年版とほぼ同じ。これはきっと、原作としてクレジットされているハワード・ファストの小説が、こういうお話なんでしょうな。
 後半、スパルタカスが反乱軍を興して以降は、若干展開が異なってきます。今回は反乱軍対ローマ軍の細かな戦闘が幾つもあり、そこにローマ側のパワーゲームが絡んできたり、反乱軍の内部も、単細胞のガリア人とか、思慮深いユダヤ人とか、ベビーフェイスだけど脱ぐとスゴいマッチョとか(笑)、キャラが立っているせいもあって、なかなか面白く進めてくれる。ここいらへんは、ちょっと『ブレイブハート』みたいな感じ。
 あとまあ、あんまりネタバレになるのもアレなので詳述は避けますが、ラストもところどころちょっと変わっている。まあ、いきなり三角関係みたいな話になっちゃって「???」となるあたりは同じですが(笑)。冒頭からしつこく出てくるアレは、絶対にラスト・シーンの伏線だと思ったのに、それがなかったのは、ちと拍子抜け。
 全体を通して、当然のことながらクラシック作品と比較すると展開のテンポが早いので、冗長さは全くない。ただ、その反面、悪く言えば重厚さには欠けるので、これはもうどちらが好みに合うか、人それぞれでしょう。
 美術やセットは、TVムービーでこれだけ見せてくれるんだから、これはもう充分以上に合格点。細部の汚し等のリアル感などは、逆に昔の映画では無かった味わいだし、アレコレ重箱の隅つついて文句言う必要もないでしょう。
 
 主演のゴラン・ヴィシュニックは、TVシリーズ『ER』に出てた方らしい(実は『ER』を見たことがない私)です。ルックスの方は、若干鼻の穴が目立つのが気にはなるものの(笑)、まあ「GQ」あたりの表紙を飾りそうな、スーツが似合いそうなフツーにカッコイイお方でした。ただ、正直なところ、こーゆーコスプレは似合わないな〜。特に皮鎧の剣闘士スタイルは、肩幅が足りないせいもあって、もう絶望的なまでに似合わない。その余りの似合わなさに、私同様にカーク・ダグラスがあまり好きではない相棒も「う〜ん、これだったらカーク・ダグラスの方がまだマシかも……」なんて申しておりました(笑)。
 仇役クラッススのアンガス・マクファーデンは、どっかで見た顔だと思ったら、同じくTVムービーの『アルゴノーツ 伝説の冒険者たち』(佳品)でゼウス役を演っていたお方ですな。他にも『ブレイブハート』や『タイタス』なんかでお見かけしました。自信過剰で憎々しいんだけどビミョーに小物でもある感じ、悪くないです。でもこの方、今回初めて知ったけど、首の上と下が「別人?」ってくらい雰囲気が違うのね。顔だけ見ると、さほど太っているようなカンジはしないのに、ヌード・シーンでは見事なまでの太鼓腹。思わず、撫で回したくなります(笑)。
 ヒロインを演じるロナ・ミトゥラも、芯の強さと同時に凛とした気品のようなものも感じさせ、なかなか美しくて良うございました。
 アグリッパ役のアラン・ベイツは、これは流石。単純に悪とも善とも言えない複雑な役どころですが、しっかり魅力的に見せてくれます。特にラスト近辺なんか、この人によって映画全体がかなり救われている印象。ただ、エンドクレジットに Dedicated to … の文字が出て、初めて知ってビックリしたんですが、この方、昨年亡くなられていたんですねぇ。個人的に、ケン・ラッセルの『恋する女たち』で魅せられて以来「出てくると嬉しい俳優さん」のお一人だったし、最近でも『ゴスフォード・パーク』やTVムービーの『アラビアン・ナイト』なんかで再会できて嬉しかっただけに、何とも残念であります。そういえば、その『恋する女たち』で一緒に素っ裸でレスリングを見せてくれたオリバー・リードも、同様の史劇『グラディエーター』が遺作になってしまったっけ。う〜む、ちょっとシンミリ。
 その他、前述の「アタシ、脱ぐとスゴイんです」ベビーフェイス君(このコはかなりカワイイ)や、反乱のきっかけとなる黒人剣闘士、その他モロモロ、マッチョ好きには目のご馳走のお方たちも、まあイロイロよりどりみどり(笑)。
 ああ、そういや『エクソシスト ビギニング』に引き続き、これにもベン・クロスが出てたなぁ。こっちは情けない役だった(笑)。
 え〜、責め場についても書いておきましょうか(笑)。
 まず主演のスパルタカス君、冒頭の鉱山シーンで、タコ殴りに鞭打ちの後、磔姿を見せてくれます。鞭打ちは打撃とシンクロして肌に赤筋が走るし、磔は位置がかなり高いことと、両脚が少し開かされていることもあって、この一連のシークエンスはなかなかヨロシイです。カーク・ダグラスみたいに着衣なんて無粋なこともなく、ちゃんと腰布一枚だし。
 また、羞恥責め系ですが、ユダヤ人奴隷剣闘士が、「え〜、ユダヤ人って割礼するんでしょ〜、アタシ、割礼した○○○って見たことな〜い」とヌカすスケベ女に、腰布解いてソレを見せろと強要されるシーンなんぞもあり。私、けっこう好きです、こーゆーの(笑)。
 あと、放火犯が、見せ物として磔で火炙りにされるシーンなんてのもあったっけ。
 ラストの有名なシーンは、現在の技術を生かしてスゴい画面を見せてくれるかと期待していたんですが、残念ながら比較的アッサリ気味。でもまあ、絵面としては悪くなかったけど。
 責め場らしい責め場はこんなもんですが、まあ奴隷剣闘士の反乱の話ですから、鎖に繋がれたり檻に入れられたり、殺し合いをさせられたりするシーンは枚挙に暇がありませんし、男の半裸もふんだんに出てきますんで、そーゆー意味でのお楽しみは盛り沢山です(笑)。
 もう一つ。
 1960年版では、ホモセクシュアルの要素があったことが有名(そのシーンは長らく削除されていたが、現在販売されている「完全版」DVDでは復元されている)ですが、残念ながら今回のヴァージョンでは、そこいらへんの絡みはハナっからいっさいナシ。ソッチを期待すると肩すかし食らいますんで、ご注意をば。

“Retro Stud”

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“Retro Stud” David Chapman
ここんとこ、続けざまにソード&サンダル映画について書いていたら、タイミング良くこんな本を入手。
副題に Muscle Movie Posters from Around the World とあるように、50’s〜70’sのソード&サンダル(+マッスル)映画のポスターをコレクションした画集です。いや〜ン、欲しかったのよ、こんな本(笑)。
版型は約22×21センチでハードカバー。およそ130ページ弱、フルカラーで、スティーブ・リーブス、ゴードン・スコット、レジ・パーク、マーク・フォレスト、ブラッド・ハリス、アラン・スティール、カーク・モリス、ダン・ヴァディス、ゴードン・ミッチェル、etc、etcの主演映画ポスター画像が、これでもか、これでもかってなくらいに収録されております。
もう、どのページめくっても半裸のマッチョばっかりで、皆さん顔を顰めて歯ァ剥いて、鎖をブン廻したり、人や巨石を持ち上げたり、縛られて悶えたり、スパイクの生えた石壁に押し潰されそうで危機一髪だったり……ああ、暑苦しい(笑)。
Around the World と銘打つだけあって、アメリカ、イタリア、フランスあたりはモチロンのこと、ベルギー、スペイン、メキシコはおろか、トルコのポスターまで収録されているのにはビックリ。
見比べると、いろいろお国柄があって面白いです。イタリアは筋肉描写にリキが入っているのが多く、流石にルネッサンスのお膝元ってカンジだし、フランスは変に色が鮮やかだったり筋肉がアッサリだったりして、ロココか印象派ってカンジ(ホントかよ)。トルコのポスターは、なんかキッチュでかわいいなぁ(笑)。日本のポスターがないのは残念。
印刷・造本等のクォリティはおおむね良好ですが、アップの図版の中には、デジタル製版でモアレを回避する際の弊害なのか、微妙な色ムラや粒状感といったノイズが出ているのものがあるのは残念。
あと、図版の収録数が多い反面、どうしてもサイズが小さくなってしまうものもあり、これは仕方ないこととはいえ、でもやっぱり全部でっかいサイズで見たかった……ってのは、ワガママなファン心理か(笑)。
“Retro Stud” (amazon.co.jp)

『ヘラクレス』&『ヘラクレスの逆襲』

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『ヘラクレス』(1957)+『ヘラクレスの逆襲』(1959)ピエトロ・フランシスキ
“Die unglaublichen Abenteuer des Herkules” (1957) + “Herkules und die Konigin der Amazonen” (1959) Pietro Francisci
(前回の続き)というわけで、こういった映画の元祖にして定番中の定番である、スティーブ・リーブス主演のヘラクレス映画二本(因みに伊語原題はそれぞれ”Le Fatiche di Ercole”と”Ercole e Ia Regina di Lidia”、英題は”Hercules”と”Hercules Unchained”)のドイツ盤DVDを買ってみました。二枚組ワンセットのお買い得盤です。
で、結論から申し上げましょう。このドイツ盤、かなり「当たり」でした。
残念ながら現在販売されている米盤は、『ヘラクレス』は退色してディテールも潰れ、傷やノイズも多く、音声も割れ……と、フィルムの状態がかなり悪い。加えて画面も、トリミングで左右が切れたテレビサイズで、クォリティ的には下の上クラス。『ヘラクレスの逆襲』(以下『逆襲』)は、『ヘラクレス』に比べると若干状態が良いですが、それでも暗部の潰れやディテールの再現性には不満が残るし、やはりトリミング版なので、中の中どまり。
対してドイツ盤(あ、もちろんPALです。リージョンは2)は、まず二作共にノー・トリミング版。『ヘラクレス』はスクィーズなしのビスタのレターボックスですが、『逆襲』はシネスコのスクィーズ収録。
画質もかなり良く、『ヘラクレス』の方がいささか劣り、少々ボケている感はありますが、退色もなく、発色は極めて美麗。上の下クラス。『逆襲』は更に状態が良く、米メジャー作品のDVDと比較しても全く遜色のない(いや、下手なクラシック作品と比べると上回るかも)上の上クラス。
この画質の良さは実にありがたく、特に花や泉や海といったロマンチックな色彩設計のシーンや、また、色照明や凝ったセットによる人工美のシーン(ここいらへんは、この二作で撮影と照明を兼任し、後のイタリアン・ホラー映画で名を馳せるマリオ・バーヴァが、その実力のほどをたっぷりと発揮しています)などでは、その差は歴然とします。ホント、『逆襲』のオンファーレの宮殿なんか、こうやって改めて高画質で見ると、もう溜め息が出るほど美しい。まるで、動く「ピエールとジル」です。
音声も割れやノイズはなく、加えてありがたいことに独語と英語の二カ国語収録。ただこの英語音声は米盤に収録されているものとはまた別のバージョンのようで、役者の声も違うようだし(独盤収録の英語音声は、米盤と比べるとリーブスの声が少し高め)、セリフの内容が変わっている部分もありました。
一つ残念なのは、独盤は米盤よりランニング・タイムが短いこと。
『ヘラクレス』は、米盤が105分なのに対して、独盤は88分と20分近く短い。『逆襲』も、米盤の98分に対して、独盤は90分と、これまた10分近く短い。
どこがどうカットされているのか、厳密に比較していないので詳しくは判りませんが、『ヘラクレス』をざっと見て気付いたところでは、イフィトス(イフィト)がライオンに殺された後ヘラクレスがシビラの元に再度赴くシーンと、アルゴ船の出航前にヘラクレスとイオレ(ヨーレ)が噴水の前で諍うシーンが、丸々カット。特に前者は、雷雨の中でヘラクレスが父ゼウス(ジュピター)に呼びかける、いわば「見得を切る」良いシーンなので、ここがないのはかなり残念。他にも、細かいところであちこちつままれているかも知れません。
また、オープニング・クレジットのデザインも違うし、米盤にはあったエンド・クレジットが、独盤にはない等の違いもありました。もっともこれらはどちらがオリジナルに近いのか、日本公開当時まだ生まれていなかった私には判りませんが……。
まあとにかく、このランニング・タイムの短さという点さえなければ、ほぼ百点満点のソフトなだけに何とも残念です。
映像特典は特になし。映画の予告編が入っていますが、同じメーカーから出ている新作映画(『バレット・モンク』とか『アンダーワールド』とか……)ばかりで、『ヘラクレス』や他のソード&サンダル映画とは何も関係なし。
ただ、『逆襲』の米国版オリジナル・ポスターのレプリカ(ジャケットに使われているのと同じ図柄で、およそB3サイズ)が、オマケに付いていまして、これはちょっと嬉しいかも。折り畳まれて、パッケージの中に入っています。
何だか映画の内容についてはちっとも触れていませんが、とにかく、これらの映画で見せるスティーブ・リーブスの「神のごとき美しさ」は、この後ゾロゾロ出てきた他のフォロワーとは確実に一線を画していますし、現代に至るまで比肩する男優はいない、と、個人的には考えております。動くギリシャ彫刻というものがあるとすれば、それはまさにこのリーブスのことでしょう。
フランシスキ監督の、品格がありつつ同時に程良い俗っぽさもある、娯楽大作のツボを押さえた安定した演出も良い。私はこの監督の作品は、これら以外は”The Queen of Sheba (La Regina di Saba)” (1952) を見ただけですが、そのときも同じ印象を抱きました。前述したような画面づくりの美しさや、あるいは神殿の倒壊や合戦などのスペクタクル・シーンも、大きな見所の一つ。まあ、たまに覗くB級っぽさも、それはそれでご愛敬(笑)。
二作通じてのヒロインであるシルヴァ・コシナの、まだセクシー系になる以前の初々しい白いミニスカ姿を楽しむも良し、『ヘラクレス』のアマゾンの女王や『逆襲』のオンファーレのような、どーみてもドラァグ・クィーンにしか見えないほどのゴージャスなオンナっぷりを楽しむも良し。特にオンファーレは、個人的に「あんた『黒蜥蜴』かいっ?!」ってカンジで、もう大好き(笑)。
あるいは、『ヘラクレス』の若い戦士のトレーニング場のシーンで、仄かに香る「フィジーク・ピクトリアル」的なホモ・エロティシズムや、『逆襲』でのヘラクレスとオデュッセウス(ユリシーズ)の関係に、微かなホモ・セクシュアルの気配を感じるのも、お楽しみの一つかも。
いや、実はこういった関係性の描き方とか、前述したようなゴージャスな画面作りとか、女性キャラの描き方とか、とにかくミョーに「そこはかとなくゲイっぽい」んだよな〜、この二作は(笑)。
で、この二作、実は「責め場」は全くありません。いちおうリーブスは敵にとっ捕まったりしますし、いたるところでその怪力っぷり(という名のもとの筋肉美)を見せてはくれますが、いわゆる拷問されたりはしないんですな。ジャケになってるポスター画像も、実はこんなシーンはどこにもありゃしないし(笑)。
とはいえ、やはりこの二作は、ソード・&サンダル(+マッスル)映画の、マスターピースにしてエバーグリーン。必見の名品です。
なのに、国内ではDVDはおろかビデオも出ていないなんてなぁ……(泣)。

“Die Ruckkehr der Starksten Gladiatoren der Welt”

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“Die Ruckkehr der Starksten Gladiatoren der Welt” (1971) Bitto Albertini
ブラッド・ハリス主演のソード&サンダルもの輸入DVD。ドイツ盤なんで、タイトルも独語。伊語原題は”Il Ritorno del Gladiatore piu Forte del Mondo”っつーらしいんですが、英題や邦題は調べたけど判りませんでした。
オハナシは……すいません、ドイツ語なんてチンプンカンプンなんで、サッパリ判りません(笑)。
ともあれ舞台は、キリスト教が迫害されていた頃のローマ。迫害されるキリスト教徒を庇った軍人(タイトルにはグラディエーターとあるけど、そんなカンジはしなかったなぁ)が、政敵に陥れられて無実の罪を着せられたり、山賊(だと思う)の一人を味方に付けて暴れたり、ローマとゲルマン人(だと思うんだけど)の戦いがあったり……う〜ん、やっぱりよーワカラン(笑)。まあ、とにかくイロイロあって、大戦闘の末に仇敵を倒して、城を落として「いい人たち」を助けて万々歳。
戦闘シーンは、モブも多いしスケールもけっこうでかいし、なかなかの迫力ではありますが、おそらくこれは、他の大作のフッテージの流用だろうなぁ。メイン・キャラとモブが、同一画面で絡まないしね。だから、クライマックスはせっかく大戦闘シーンなのに、カンジンの仇敵を倒す場面は、誰もいない野っぱらでタイマン勝負(笑)。
主演のブラッド・ハリスは、今回はヒゲ全くナシのツルツル顔なんで、案の定、ぜんぜんイケませんでした(笑)。肉体の方も、この間の”Samson”から十年後に撮られた映画のせいか、残年ながらかなり萎んじゃっていて、お肌の方もしなび気味。まあそれでも、マッチョはマッチョなんですけどね。
仇敵を演じるジョン・バラクーダことマッシモ・セラートは、このテのソード&サンダル映画だと、ミッキー・ハージティ&ジェーン・マンスフィールドというオカマウケ必至の夫婦(何故だか判らない方は、ジェーンのことをググって調べてね。その生き様を知ったなら、例え主演映画は一本も見たことなくっても、オカマ心の持ち主ならばファンになること間違いなしだから)が主演した”The Loves of Hercules”(「B級もここまでいけば天晴れ!」ってなカンジの爆笑映画です)の仇役なんかで見覚えがありますが、他にもイロイロ出ているみたいですね。ソード&サンダル以外でも、ニコラス・ローグの『赤い影』(大好き!)に出てたなんて……う〜ん、ちっとも覚えていない(笑)。
さて、お楽しみの責め場の方ですが、この映画では一カ所だけです。
DVDのジャケット(オリジナル・ポスターの図柄らしい)にもなっている、両手首を縄で縛られ、左右から馬に引っ張られる「馬裂き」シーン。まあ、このテの映画では、もう何度見たか判らないくらいお馴染みの責め場ですが、ハリス君、なかなか熱演していてけっこうヨロシイ。筋なんかギンギンに浮かび上がって、表情も苦しそうで迫力あります。
また、このシーンの前には、腰布一丁でセント・アンドリュース・クロス(X字刑架)に磔になっているショットが(短いけど)あるし、馬裂きの後にも、ぐったりとなったハリス君を、兵士たちが左右から押さえて、腹にパンチ、棒きれでタコ殴り、地面に倒れたところを蹴っ飛ばす……なんてシーンが続くのもヨロシイ。
全編通して、ハリス君が肌を見せるのはここオンリーだけど、出し惜しみしただけあって(そうかぁ?)、そう長いシーンではないにも関わらず、満足度はけっこうあります。それをポスターにするんだから、まあ制作者も観客が何を見たがっているのかはお判りのようで。私自身、まんまとそれにつられてジャケ買いしちゃったわけだし(笑)。
ドイツ盤なんで、当然NTSCではなくPALのDVDです。リージョンは2。画像サイズはノートリミングで、スクィーズなしのワイド、レターボックス収録。音声は独語吹き替えのみで、おそらく音楽も差し変わってるっぽい。字幕なし。特典は映画のスチル数点&オリジナル・ポスター画像のスライド・ショー。スチルの方はモアレが出ているので、印刷物からのスキャンっぽいですな。
画質の方は、かなり良いです。色味は若干黄色がかっていますが、退色はそれほど目立たず、充分許容範囲内。ディテールも鮮明で、暗部のツブれもなし。まあ贅沢を言えばきりがないけど、これならほぼ問題なしのクォリティと言えるのでは。上の下ってとこでしょうか。
さて今回の買い物で、「ひょっとしてドイツ盤のソード&サンダル系DVDは、フランス盤同様に、画質的に比較的ハイ・クォリティ揃いかも?」と味をしめたので、今後は集中してドイツ盤をいくつか購入してみる予定。ドイツ語わかんないクセに(笑)。

“Samson”

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“Samson” (1961) Gianfranco Parolini
またまた輸入DVDのご紹介。ブラッド・ハリス主演のソード&サンダル映画です。
ヤヤコシイことにIMDBを見ると、この”Samson”(伊語原題”Sansone”)の他に、制作年も監督もキャストも全く同じ”The Fury of Hercules”(伊語原題”La Furia di Ercole”)という映画が、別々の作品としてクレジットされている。後者は『ヘラクレスの怒り』というタイトルで日本公開もされているっぽいんですが、果たしてこの二本は同じ映画なのか。配役表を見ると、同じ役者でも役名がそれぞれ違う。ハリスの役名は、前者はサムソンで後者はヘラクレス。共演のやはりマッチョ俳優であるアラン・スティール(珍作だけど責め場はなかなか良い”Hercules Against the Moon Men”の人です)の役名も、前者はマシーニョで後者はカルドス。さらにヤヤコシイことに、前者の仏語版”Samson contre Hercule”では、スティールの役名は更にエルキュール(つまりヘラクレスですな)に変わってたりするんで、あーもうヤヤコシイ(笑)。多分、それぞれ固有名詞を変えているだけで、話や画像自体は同じ作品だと思うんですけど。
話の内容は、とある国(祀っている神がヴォータンだったりするので、イメージとしては北方系? でもヴィジュアルはギリシャ・ローマってカンジだけど)で、悪の女王と腹心の宰相が、本物の女王を地下牢に監禁して、国を乗っ取って支配していると、そこにサムソン(念のため、こーゆー映画の常ですが、旧約聖書のアレとはまったく関係ありません。単に怪力の英雄の名前ってことで。このサムソン君は「ゼウスよ!」なんて言ったりするんで、おそらくギリシャ系なんでしょう)がやってきて、国を本来の女王の手に取り戻す……ってなもの。で、実は悪の女王はサムソンと昔恋仲だったり、侍女は本当は正統の女王の忠臣で、しかもサムソンが偶然出会ったもう一人の怪力男(これがアラン・スティール)の妹だったり……ってなドラマが絡みます。
まあ話自体は、ありきたりとは言えそんなにつまらなくはないんですが、いかんせん演出が悪いんで、どうも全体的にノンベンダラリとした印象。殴り合いのケンカやら、レスリングやら、拷問やら、闘技大会やら、それなりに盛り沢山ではあるんですが、どれもこれも演出にタメがないので緊迫感がない、ワザとらしいコメディー・リリーフのヤセとデブ二人組による、下手なユーモア描写もマイナス要因にしかなってないし、スケール感も乏しく、セット共々このテの映画ではありがちな安さが漂う……ってなわけで、どうにもこれといった見所に乏しい。
ただ、一つヘンな見所(?)はありまして、悪の女王の宰相を演じているのが、何と若かりし頃のセルジュ・ゲーンズブル(!)なのだ。真っ赤なヒラヒラのチュニック着て、鞭を片手にヘンタイっぽい演技。アンタ、こんな仕事やってたのかい(笑)。
ブラッド・ハリスは、ガタイはいいですね〜。筋肉モリモリだし、固そうだし、切れもいい。顔は、まあそんなに好きなタイプじゃないけど、今回はフルフェイスのヒゲが似合ってるのでOK。そういや、ナチ女囚拷問映画『獣人地獄!ナチ女収容所』(トンデモナイ映画なんだけど、実はけっこう好き)で、やはりフルフェイスのおヒゲで神父さん役をやってたときも、けっこうイケたっけ。でも、ヒゲを剃ったら絶対イケないタイプだろうなぁ(笑)。同じ女囚モノの『(秘)ナチス残酷物語/アフリカ拷問収容所』(ホンットーにショーもない映画だけど、実はブラッド・ハリス以外にも、『七人のあばれ者』のリチャード・ハリソンとか、これまた果てしなく安い珍作なんだけど責め場だけはけっこう良い”Giant of Metropolis”のゴードン・ミッチェルといった、往年のマッスル・スターが揃い踏みだったりする)とか、『超人ハルク』で有名なルー・フェリグノの『超人ヘラクレス』(これもアホな映画だけど、実はけっこう好き。DVD化を切に希望)なんかにも出てたみたいだけど、そっちはちっとも記憶にないや。
ハリスとタイマンはるアラン・スティールも、肉体の重量感はバッチリ。ただ、ハリスの筋肉がなんとなく岩っぽいゴツさなのに対して、スティールの筋肉はちょっとお饅頭っぽい丸さ。マーク・フォレストなんかも、このお饅頭系ですな。アタクシはゴツい方が好きなので、ハリスの身体の方が好みでございます。スティールの顔は、何だかジャガイモみたいで可愛いんですが、今回はヒゲがないからな〜……ヒゲフェチの私としては、ちと物足りない。
さて、お楽しみの「責め場」でございます。
まず、サムソンが石牢に閉じこめられ、ハンドルが廻されると、別室の部下二人が手首を鎖で吊り上げられ、同時にサムソンにも鉄のスパイクの生えた石壁が迫ってくる……というシーン。アイデアは悪くないんですが、前述した演出の悪さで緊迫感ゼロ。手首吊りはちっとも辛そうに見えないし、石壁も怪力であっさりクリア。む〜ん、こんなんじゃ物足りんわい。
次に、馬裂きにされそうになる侍女の救出シーン。サムソンが現場に駆けつけ、侍女の手首の縄を握って耐える……と思ったのもつかの間、これもあっさりクリア。物足りなさ×2。
クライマックスの闘技場のシーン、その1。燃える炎を挟んで、サムソンが多勢を相手に鎖で綱引き。じりじり引きずられて、肌が炎に炙られそうになる……なんてオイシイ描写もなく、またまたあっさりクリア。物足りなさ×3。
闘技場、その2。サムソンが目隠しをされて、丸木橋の上に乗せられ、剣で闘わされる。丸木橋の下は、一面の鉄のスパイク。しかも闘う相手は、アラン・スティール演じる朋友! 彼もまた目隠しをされていて、互いに相手が誰だか判らない。闇雲に振り回す二人の剣が触れ合い、丸木橋から落ちそうになり……なんてスリルもそこそこに、相手が「かかってこい!」ってな一声。サムソンは目隠しを外して「お前かぁ!」相手も目隠し外して「サムソン!」あとは二人で力を合わせて悪人退治。ここらへんで、物足りなさは既に臨界点に。
まったくもー、どれもこれも演出が悪すぎ!
ただまあ、「責め場」以外の「肉体の見せ場」は、こちらはそれなりに充実しております。
開始早々、偶然であった半裸のマッチョ二人は、狩りの獲物のイノシシ巡って殴り合い。ガツンと殴られると、相手の強さに感心して「はっはっはっ」と笑い、殴り返す。で、取っ組み合って、投げ合って、ケンカの最中にリンゴ囓って、また殴り合い。う〜ん、体育会系(笑)。重量級二人の筋肉のぶつかり合いを、タップリ堪能できます。
それからも、サムソンが宮殿でレスリングの御前試合したり、酒蔵で再会した怪力男二人が、またまた殴り合ったり、二人で力を合わせて、寺院の石柱を引き倒したり(ここは演出のマズさ=タメがないので、イマイチですが)、まあマッチョ一人より二人の方が二度オイシイってなわけで、肉体美そのものはタップリ拝ませていただけます。
DVDのリージョンはフリー、画像サイズはトリミングされたTVサイズ。字幕・特典共に無し。
画質はかなりボケていて、しかも退色も激しく、全般に赤茶けちゃってます。中の下。
“Samson” DVD (amazon.com)

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で、実はこの映画、PAL版のDVDも出てまして、それがこちらの”Samson contre Hercule”。
フランス盤です。そのせいか、ジャケットにハリスやスティールの名前はなくても、ゲーンズブールの名前だけはしっかり入ってる(笑)。
こちらの画質は、アメリカ盤に比べるとかなり良好。多少はボケてますが、それでもディテールの再現性はアメリカ盤を遙かに凌ぐし、加えて色もビックリするほどキレイで鮮やか。
リージョン・コードは2。画像サイズはノートリミングで、スクィーズなしのレターボックス収録。トリミング版だと避けられない、ワイド画面の構図の狂いがないのは、やっぱ良い。音声は仏語吹き替えのみ。字幕無し。特典は、予告編(ただしオリジナルではなく、同じ会社が発売しているソード&サンダル関係のソフトの画像を、独自に編集したもの)、ハリス、ゲーンズブール、監督のフィルモグラフィー(仏語ですけど)、フォトギャラリー(のふりして、実はスチルではなく、単にビデオのキャプチャー画像を並べただけというインチキもの)。
まあ、とにかく画質で言うなら、こっちの方が断然「勝ち」なので、PALの再生環境をお持ちの方なら、フランス盤の方がオススメです。
あ、でもジャケはちょっといただけないけど(笑)。

“Samson and the Seven Miracles of the World”

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“Samson and the Seven Miracles of the World” (1961) Riccardo Freda
新着輸入DVDのご紹介。ゴードン・スコット主演のソード&サンダル映画です。
タイトルを直訳すると『サムソンと世界の七不思議』だけど、映画のストーリーとはな〜んも関係なし(笑)。舞台はモンゴル民族に征服されていた頃の中国で、圧政に苦しむ人民と、反乱軍と、それを後押ししている僧院、そして中国の正統のプリンセス(ヨーコ・タニ)を、いずこからか遣わされた半裸のマッスル・ヒーローが救う……って、どこが世界の七不思議だ(笑)。
監督は、ジャケではリッカルド・パロティーニとなっていますが、IMDBで調べると、リッカルド・フレーダとクレジットされてます。マッスル系やソード&サンダル系だと、スティーブ・リーブスの『怪傑白魔』や、カーク・モリスの”The Witch’s Curse”、スパルタカスものの”Sins of Rome”、アルゴナウティカものの”The Giants of Thessaly”なんてのを撮った監督さんですな。
で、今回の”Samson and the Seven Miracles of the World”ですが、まあお約束通りの展開とはいえ、途中で飽きさせたり萎えさせたりすることもないし、ロケやセットのスケール感もあるし、全体的にはなかなか堅実な仕上がり。特筆すべきは、ヒーローがチャリオット相手に大立ち回りを演じるアクション・シーン。ここはかなりの迫力で見せます。クライマックスの王宮の崩壊シーンも悪くない。
音楽は、エキゾ系・ラウンジ系で有名なレス・バクスター。いかにもスペクタクル映画然とした音楽に加え、今回は中国が舞台ということもあり、お得意のエキゾものっぽい要素も聞かせてくれて、これはなかなか良いです。

ゴードン・スコットは、こういった神話的なヒーローものを演じるには、正直顔も身体もイマイチ押しが弱いんだけど(美形というよりは人好きのする好青年どまりだし、バルクもさほどない)、ただ、そこいらへんのフツーっぽさに、個人的には何となく色気を感じるので、けっこう好きな役者さんです。言うなれば、ナチュラル・マッチョってカンジでしょうか。
このスコット君、映画の中ではジャケ写のような、徹頭徹尾腰布一丁のお姿なんですが、他の登場人物は、中華ものというせいもあって、皆さんフツーに長袖長ズボンの衣類を着ておられる。で、この着衣の集団の中で、一人だけ半裸ってのが、何だか羞恥プレイみたいで変に面白い。奇妙に歪んだエロスを感じてしまいました(笑)。
ヒロインのヨーコ・タニは、あたしゃこの映画で初めて知りましたが、古い映画ファンなら名前を記憶している、海外で活躍した日本人俳優の草分け的存在らしいです。他にも、悪の一味なんだけどヒーローに心動かされるヴァンプ系美女とか、幼いけど勇気はある王子様など、脇キャラにもけっこう魅力的な顔ぶれ多し。
さて、このテの映画のお約束ア〜ンド個人的なお楽しみの一つ、「ヒーローの責め場」に関してですが、今回スコット君が受ける責めは、壁に開いた細長い穴(棺桶くらいのサイズ)の中に横たえられ、手足を鎖で繋がれて、そのまま蓋をされて生き埋めにされる……ってな、比較的地味なもの。
心理的な圧迫感を考えると、それなりに良いカンジの責めではあるんですが、こーゆーのって、小説ならともかく(バローズのペルシダー・シリーズのどっかで、主人公が真っ暗な穴に監禁されて、精神に異常をきたしていく……ってなシーンがあり、けっこうコーフンした記憶があります。しかもそこに大蛇が入ってきて、裸の肌にウロコが触れ合い……ってな展開もエロかった)、ヴィジュアル的には動きもインパクトもないので、映像としてそれほど面白くはないのは残念。
ただ、その他大勢への責め場も含めると、中華風の板の首枷をはめられて連行されたり、首から上だけ残して身体を土の中に埋められて、チャリオットに付いた刃で首を刈り取られる……なんつーシーンがあります。あと、美女が鞭で打たれるシーンなんてのもございますが、残念ながらアタクシは、そんなもの見ても面白くもなんともございません(笑)。まあ、鞭打った傷を、塩水に浸した羽でなぞって更に苦しめるなんてのは、ネタとしてはよろしゅうございましたが。
DVDのリージョンはフリー。画像サイズはノートリミングで、スクイーズなしのレターボックス。字幕無し。映像特典として予告編を収録。
画質の方は、かなりボケ気味だし、暗部もつぶれちゃってますが、とりあえず色が残っているだけマシ。こういった海外のB級もののソフトとしては、中の上ってトコでしょうか。ヒドいのはホントにヒドい画質ですから。まあ、そもそも定価7ドルもしない廉価盤ですからね。けっこう良い方だと思います。
あ、でも間違っても、日本でフツーに売られているDVDとかと比較しちゃいけません。「なんじゃこの劣悪画質は!」ってコトになります(笑)。
“Samson and the Seven Miracles of the World” DVD (amazon.com)

『ザ・ヒル』

ザ・ヒル [DVD] 『ザ・ヒル』デヴィッド・デコトー
“Leeches!” David DeCoteau

 レンタルDVDで鑑賞
 え〜、下心バリバリで借りました。っつーのも、何でも裸のイケメンマッチョが大勢出てきて、そいつらがバタバタ殺されてく映画だっつーし、IMDbでもallchinema Onlineでも「ホモ大喜び」みたいなユーザーズ・コメントが登録されてるし、「やだ、ひょっとして野郎版ジャーロ? 憧れの野郎系スラッシャー?」なんてワクワクしちゃいまして。
 んでもって再生。タイトル・デザインはクラシックB級SFみたいなグニャグニャのクリーピー系で、ちょっといい感じ。
 そして早速、競泳ビキニ一丁のイケメンが。カメラがスローモーションで、その肉体美を舐めるように追いかける。……どこのゲイビデオですか?
 ストーリーは、大会目指して特訓中のカレッジの水泳部部員が、次々に巨大化したモンスター・ヒルに襲われて、その餌食になっていく…というもの。あとはそれにちょっと殺人事件やドーピングが絡んだり、馬鹿馬鹿しい青春映画チックな乱痴気騒ぎがあったり。
 まあ、低予算なのには目を瞑りましょう。モンスター・ヒルはどう見ても、ゴム製のスリッパかナベツカミに、人が手を突っ込んでウネウネ動かしてるだけだし、床を這うときは露骨にテグスで引っ張ってるし、身体に吸い付いた小型のヒルは、身動きひとつせずにブラ〜ンとぶら下がってるだけだし、まあローテクと言ったらローテクに失礼なんじゃないかっつーくらい、果てしなく底なしに安い。
 で、お目当てのイケメンマッチョの方はというと、これはまあ惜しげなく出てきます。しかも、ほとんど服を着ない。まあ、水泳部だからってのもあるんですが、プール以外でも何のかんのでとにかく脱ぐ。ただ、全員イケメン揃いってのもクセモノでして、とにかくみんな似たタイプなもんだから、誰が誰やら区別が付かない。どーゆーイケメン・マッチョが出てるのかというのは、まあこちらの公式サイトのギャラリーをご覧あれ。……えー、もう一度。どこのゲイビデオですか?
 というわけで、こいつらがゴム製のスリッパに襲われて次々とくたばっていくんですが、はっきり言ってスリルもサスペンスも全くない。当然のことながら、恐怖感も皆無。シャワーを浴びたりプールに浸かったりする裸のイケメン相手に、カメラが動いたりスローモーションになったりしても、それはスリルやサスペンスの演出とは全く無関係。安手のイメージビデオよろしく、イケメンの筋肉美を撮すだけ。
 ……とすると、いささか変態ちっくで面白いかとも思われるけど、残念ながら変態性は「ホモっぽい」だけに留まっていて、それ以上のものは何も無し。襲われるシーンも、派手な音楽が鳴り響いて、色照明の中でアタマを振るイケメンのクローズアップばっかりで、工夫のないことはなはだしい。シャワー室で昏倒したイケメンの口に、件の巨大ヒルが潜り込む……なんてシーンは、ちょいと変態ちっくで期待させられるんですが、それだけ。(だいたい、何でヒルのくせに口に入るんだ???)まあ、撮影の裏側を想像すると、裸のイケメンにスタッフの男たちが群がり、「ヒル手袋」をはめた手で凌辱している……と考えられないわけでもないので、そこんとこは変態っぽいっちゃあ変態っぽいけど。
 まあ、こんな具合で、ハラハラドキドキも全くせず、緊張感も微塵もないまま、ダラダラと話が進んでクライマックスへ。ヒルが巨大化した理由が告げられるアタリは、もう突っ込む気力も起きずに乾いた笑いが。ラストのどんでん返しも「ふ〜ん、さいですか」だけ。やれやれ。
 なんかな〜、襲われるのが裸の男ばっかりなんつーホラー映画は稀少なんだから、もうちょっと何とかして欲しかった。これで『マニアック・コップ』や『エルム街の悪夢2』ばりの、ステキな惨殺シーンがあれば、もう大絶賛しちゃうし、DVDだって即購入しちゃうんだが……残念。
 こうして私のよこしまな期待は、シュウ〜と音を立てて萎んでいきましたとさ。
 でも、感想を書いていたら、何だかもう一回見たくなってきた……(笑)。