マッチョ」カテゴリーアーカイブ

『蛇女』”Kuon puos keng kang”

dvd_snaker
“Kuon puos keng kang” (2001) Fai Sam Ang

バーン・ラジャン』で惚れ、『ナンナーク』で更に惚れ、『アリゲーター 愛と復讐のワニ人間』でもやっぱり惚れ、タイ語オンリー字幕なしなのに『クイーンズ・オブ・ランカスカ』のDVDまで買ってしまった、お気に入りのタイ人男優Winai Kraibutr(ウィナイ・グライブット/ビナリ・クレイブート)の出演映画。
 ゲットしたのは、英語字幕付き台湾盤DVD。『蛇女』というタイトルの上に「鬼嫁2」とあるので、どうやら『ナンナーク2』としてリリースされたみたいですな。英題は”Snaker”とか”The Snake King’s Child”とかいうらしい。
 映画を見るまでは、てっきりタイ映画だとばかり思っていたところ、タイトル・クレジットでいきなりクメール文字が出てきてビックリ。
 で、調べてみたところ、カンボジアとタイの合作映画で、何とカンボジア映画としては、クメール・ルージュ時代以降、最初に作られた長編映画なんだそうな(参照)。

 ストーリーは、カンボジアの民話を基にしたものだそうで、とある村に夫婦と娘一人が住んでいるが、夫は行商で留守がちで、家にいたらいたで酒に酔い、妻を虐待するという日々。
 そんなある日、妻が娘と一緒に農作業に出掛けると、鍬の先がスッポ抜けて大蛇の側に落ちてしまう。そこで妻が「大蛇さん、大蛇さん、お願いだからその鍬の先を返して、それをなくすと旦那に殴られちゃう」と頼むと、大蛇が「オイラのお嫁になってくれたら返してあげるよ」と答える。暴力旦那が怖い妻は、しかたなく承諾、無事に鍬の先を取り戻す。
 その晩、夫が行商で留守の家に、大蛇が夜ばいにやって来る。「ひぇ〜!」となった妻だったが、そのとき大蛇が、キラキラのウロコみたいなお洋服を着たハンサム青年に変身、二人は結ばれるのでありました。そんなこんなで、蛇の優しさと蛇男のハンサムさに、妻はすっかりホの字に。昼は大蛇を抱いて愛しく語り合い、夜は人間に変身した彼に抱かれるという幸せな日々が。
 とことが、娘はそれが面白くない。まあ、ママが蛇と浮気しているわけだし、しかも自分が、「今ならお父さんは家にいないよ」と、蛇に報せに行く役をやらされているもんだから、無理もないです。そうこうしているうちに、ママのお腹が膨らんできた。ひぇ〜、蛇の子を妊娠しちゃったの!?

 さて、一方ここは、町に住む金持ちの家。
 いかにも財産目当ての親族関係でドロドロしていそうな状況で、本家の奥様がご懐妊。それを知った分家の奥様はキーッとなって、「自分も子宝が欲しい!」と魔女の家に行きます。
 その頃村では、帰ってきた夫が、妻が妊娠していることに気付き詰問する。何とかごまかしていた妻だったが、そこで娘の裏切りが。「ママは蛇と浮気してる」とパパにチクったもんだから、夫は怒りに燃えて蛇を叩き殺し、しかもそれを料理して妻に喰わせてしまう。
 愛する恋人を殺され、しかもその肉を食わされて悲しむ妻を、夫は言葉優しく騙して河原に連れ出し、そこで豹変、「浮気者を成敗してやる!」と、鎌で斬りかかる。哀れ妻は、抵抗空しくボテ腹を鎌で切り裂かれ絶命。すると腹の中から、大量の子蛇がニョロニョロと!
 怒りと恐怖に燃えながら、夫は子蛇を鎌で切り刻んで行くが、そのとき濡れた岩で脚が滑り、転倒したはずみに鎌が腹にブッスリ! そこに娘もやってきて、パパとママが血まみれで死んでいるのを見て、「うえ〜ん!」と泣いたはずみに、これまた脚が滑って後頭部をゴツン、可哀想に、これまた死んじゃいました。
 後に残されたのは、一匹の子蛇だけ。そこに旅の僧侶が通りかかると、何と子蛇が、僧侶の見ている前で人間の赤子に変身! 何かを悟り、哀れに思った僧侶は、赤子に変身した子蛇を抱いて、森の中に消えるのでありました……。

 え〜、ここまでが導入です。本筋は、こっから後。
 今回は、このまま結末まで続けちゃうんで、ネタバレがお嫌な方は、次の段はスルーでヨロシク。

<ここから↓>
 さて、数年後。
 蛇と人間の間に生まれた娘は、可愛く成長したものの、何と姿は人間なれど、髪の毛が無数の蛇というメドゥーサみたいな姿。養い親の僧侶に「おじいちゃん、この頭をフツーにしてよ〜」と泣くと、僧侶は「大人になったらフツーになるからね」と諭す日々。
 そんなある日、蛇少女は蛇の生えた頭を頭巾で隠し、河に遊びに行きます。するとそこには、三人の人間の子供が。一人は、例の町の金持ちのところに産まれた跡取り息子。残る二人は、魔女の助けで分家に産まれた娘と、その兄。
 同い年の子供を見た蛇少女は「遊ぼうよ」と声を掛けるが、性格の悪い分家の娘は「アンタみたいな汚い子とは遊ばないわ!」と、むべなく拒絶。優しい本家の息子が、蛇少女を庇おうとしたとき、分家の娘が「何よ、この汚い頭巾は!」と、蛇少女の頭の布をむしり取ってしまう。
 髪の毛の代わりに現れた、無数のウジャウジャ動く蛇を見て、子供たちはパニック! 可哀想な蛇少女は、森の中に帰ってしまいました。
 そして、十数年後。
 美しい娘に成長した蛇少女は、これまたハンサムに成長した本家の息子が、滝壺に落ちてしまったのを救います。ハンサム青年に惹かれた蛇娘は、約束どおり育ての親の僧侶から「頭の蛇を髪の毛に変える指輪」を貰い、本家の息子も、命の恩人である美しい黒髪の娘に惹かれます。
 やがて二人は愛し合うようになり、本家の息子は僧侶に頼み、蛇娘を自分の家に連れて帰ります。死んだと思っていた息子が帰ってきて、本家の主は大喜びですが、面白くないのは、いずれは本家に嫁入りするつもりだった分家の娘と、その親兄弟たち。
 分家の連中は、この余所者の娘をいびって追い出そうとするけど、上手くいかない。仕方なく、また魔女に助けを求めにいくが、指輪を通じて僧侶が蛇娘を助けてくれるので、これまた失敗。結婚相手をとられそうでヒスを起こす分家の娘と、本家の財産を狙う腹黒い母親のイライラは募るばかり。
 そんな時魔女が、娘が蛇の化身だと看破する。「娘の処女を奪えば、蛇の姿に戻る!」それを聞いた分家の母は、息子に「アンタ、あの娘をレイプしちゃいなさい!」と命令。ノリノリで蛇娘に襲いかかった分家の息子ですが、そのとき指輪が消えて、娘の髪の毛は蛇に変身! 「ひょえ〜っ!」と逃げ出した分家の息子を、小さな蛇がカプリ! 哀れ分家の息子は、頓死してしまいます。
 一方、本家の息子は、自分が態度をハッキリさせないのもいけないんだと、分家の娘に「君と結婚するつもりはない!」と名言して、改めて蛇娘に愛を告白。蛇娘も喜んで、彼を寝室に迎え入れます。
 こうして結ばれた二人でしたが、しかし朝になると、娘の手に醜いウロコが!
「言いつけ破って婚前交渉しちゃったから、あたし蛇に変身しちゃう、助けて、おじいちゃ〜ん!」と、蛇娘は泣いて森に戻ります。「おじいちゃんがきっと何とかしてやるから」と、僧侶が祈祷を始めたところに、そうはさせじと、分家の母娘が魔女を連れてやってくる。
 掌から怪光線を発射して、僧侶を攻撃する魔女! 僧侶も負けじと、光線を撃って対抗! 熾烈な戦いの後、僧侶は、何とか魔女を倒すことはできたけものの、自分ももう虫の息。あわれ、蛇娘が蛇に変わってしまうのを止めることができる者は、もういないのか?
 すると、そこに一条の光が迸り、現れたのは蛇娘の父親である、キラキラ服のハンサムな蛇男! 蛇男と僧侶は力を合わせて、娘に向けて救済光線を発射!
 こうして、蛇娘が人間の娘となったところで、蛇娘を連れ戻しにきた本家の息子と再会、愛し合う二人はしっかり抱き合い、その傍らで、悪い分家の嫁は蛇にカプリとやられて頓死しました、ってことで、めでたしめでたし。
<ここまで↑>

 とゆー具合で、モノガタリとしては、いかにも民話的な自由さが横溢していて、かなり楽しかったです。
 映画としては、まあ、チープっちゃあチープです。もちろん、ホラー的な怖さは皆無だし、かといって文芸的な滋味があるかといえば、これまたナッシング。チープさの方も、度を超してヘンテコって程でもないかなぁ。でも、クライマックスに超能力合戦が始まったときは、けっこうビックリした(笑)。
 でも、一番ビックラこいたのは、蛇娘の頭の特殊メイク。ちゃんと蛇がウネウネと動き回っていて、しかもリアルなもんだから、「やけに良くできたCGだなぁ」とか思ってたら、前述のWikipediaに「CGではなく、生きた蛇を接着したキャップをかぶっている」と書いてあって、もうヒョエ〜であります(笑)。そりゃ、リアルなわけだ……。
 個人的には、全体のユル〜いムードはけっこう好きだし、物珍しさも手伝って、なかなか新鮮な気持ちで見られました。
 ロマンティックなシーンで流れる、カンボジア演歌といった味わいの、何ともノンビリしたいなたい音楽(タイのルークトゥンみたいな感じ)は好きだし、脇の役者さんたちの、フツーの映画的な演技とは完全に違う、セリフがない間もひっきりなしに「フゥ〜ン」とか「ンフゥ〜ン」とかいった、溜め息のような鼻にかかった声を上げて身をくねらせる芝居も、何だか「ああ、カンボジアの民衆芝居って、こんなカンジなのかなぁ」なんて感じで面白かったし。
 あと、ウン十年振りの映画制作ということで、いかにも「カンボジアを宣伝せんかな&海外に売らんかな!」ってな感じで、アンコール・ワットがドッバ〜ンと出てくるのも楽しかったなぁ。
 タイトルバックからしてアンコール・ワットなんですけど、劇中でも、しっかり本家の息子が蛇娘とアンコール・ワットでデートするシーンってのがあって、しかもその際、本家の息子が彼女に遺跡について説明するという設定で、まるで観光ガイドみたいな内容をペラペラ喋ったりするもんだから、何だか映画の中に、いきなりカンボジア政府観光局制作のスポットCMが入ったみたいだった(笑)。

 で、私のお目当てだったWinai Kraibutr君はというと、もちろんハンサムに成長した本家の息子の役。
 そして、蛇娘に助けられてしばらく一緒に暮らすシークエンス中の、河で全裸で水浴びをしているところを蛇娘に見られて、あわてて手で前を隠すとゆーシーンで、
「ケツ見せ、キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」
だったので、もう大満足(笑)。
 しかしまあ君も、ワニと結婚したり蛇と結婚したり幽霊と結婚したり、大変だねぇ(笑)。

つれづれ

 タコシェの中山さんからフランス土産で、毎年発売されているフランスのラグビー選手のヌード・カレンダー、“Dieux Du Stade”の2010年版を戴きました。このブログでも以前に、SMっぽかった2008年版をここで紹介していますが、今回でもう10周年だそうな。
 2010年版のカメラマンは、トニー・デュラン(Tony Duran)という人。コマーシャル・アート全般にイマイチ興味を失ってから久しい私には、ちょっと聞き覚えのない名前だけど、ファッション・フォトグラファーとしては有名なのかも。今度、現役のアート・ディレクターやってる友人に聞いてみよう(笑)。
 写真の方は、極めて口当たりの良いピンナップ系。あまり、これといった特徴は感じられないけど、逆にクセやアクもないので、カレンダーとして壁に掛けておくには、丁度いい内容かも。ひたすら、美しい筋肉を身に纏ったスポーツ選手の、セクシーでキレイなメールヌード写真のオンパレード、といったカンジです。
 ソロやらデュオやらトリオやら、凝ったポーズやら変わったシチュエーションやらもありますが、個人的に最も目を惹かれたのは、ここいらへんの「シンプルなメールヌード+ラグビーボールだけ」というシリーズ。男の裸ってのは、何もせずただそこに在るだけで、それだけで充分美しいもんであります。
 ああ、それと今回は、四つ折りのポスターもオマケで付いてました。ただでさえデカいカレンダーなので、ポスターを拡げるとかなりの迫力。
 日本での入手先は、残念ながらちょっと判らず。
 現在発売中の雑誌『映画秘宝』12月号の、大西祥平さんの連載コーナーで、拙著『髭と肉体』を紹介していただきました。ありがとうございま〜す。
 同誌に載っている大西さんのもう一つの連載「評伝・小池一夫伝説 Returns」も、毎回毎回読むのが楽しみなんですけど、え〜、私まさに、『実験人形ダミー・オスカー』って、絵やシーンは良く覚えているけど、んじゃいったいどーゆー話だったのかが判らない……ってなパターンです(笑)。とゆーわけで、来月の後編が楽しみ!

映画秘宝 2009年 12月号 [雑誌] 映画秘宝 2009年 12月号 [雑誌]
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2009-10-21

 そう言えば、この『ダミー・オスカー』が連載されていた頃の『GORO』に、確か西村寿行の『去りなんいざ狂人の国を』が連載されていたんじゃなかったっけか。オンナノコのヌード写真やフツーのエッチ記事はそっちのけで、この小説でコーフンしまくった記憶があって、しかもそれが西村寿行との初邂逅だったような気が。
 寿行センセなくしては今の田亀源五郎はいない、ってなくらい、私にとっては、セクシュアルな意味でトラウマ級の作家さんなので、この『去りなん…』も、ものごっつうオカズにさせていただきました。
 特に後半の乱痴気パーティーのシーンでの、「マフィアのボスを全裸にして、肛門にローソクを立てて人間燭台にして辱める」とか、「捕らえた刑事二人(だっけか?)に、相互ホモセックスを強要する」シーンなんか、未だに思い出すだけでムラムラくる(笑)。

去りなんいざ狂人の国を (角川文庫)
価格:¥ 652(税込)
発売日:1981-01

 デアゴスティーニの『三代怪獣 地球最大の決戦』購入。
 例によって、隣の相棒の「この人は、往年の大スターだよ」とか「この人は、東映時代劇の悪役ばっか演ってたんだよ」とか「この人は、国策映画で銃後の母を良く演っていたんだよ」とかいったオーディオ・コメンタリー付きで鑑賞(笑)。
 ガキの頃は、とにかく特撮と怪獣プロレスに夢中だったけど、改めて見ると、テレビのチャンネルを変えるために、夏木陽介の身体を跨ぐ(ってか覆い被さる)星由里子……とかゆー、些細な日常リアル演出が良いな〜、なんて感じたりして。
 二号続けて買っちゃったけど、次回の『海底軍艦』は、既にDVDを購入済みなのでスルー。
 いつものようにタバコをカートンで買ったら、こんな箱で渡されてビックリ(笑)。

『W(ワンダースリー)3』手塚治虫文庫全集版

 本屋に行ったら、手塚治虫文庫全集の第一回配本が並んでいたので、『W(ワンダースリー)3』(以下『W3』)全二巻を購入。

W3(1) (手塚治虫文庫全集 BT 15) W3(2) (手塚治虫文庫全集 BT 16)

 最大のお目当ては、2巻に収録されている「少年マガジン版」の復刻。
 馴染みのない方に簡単に説明しますと、『W3』は最初は「週刊少年マガジン」に連載されていたものの、とあるトラブルによって連載が中断、仕切直しを経て「週刊少年サンデー」で再連載されたという経緯があり(詳しくはWikipediaの「W3事件」でも見てください)、これまで単行本等で読むことができたのは、「少年サンデー版」の方。
 で、今回の文庫では、1巻と2巻の中途まで従来の「少年サンデー版」ベースの全編を収録し、2巻の後半に「少年マガジン版」の雑誌掲載分を復刻、という形になったもんですから、ウホウホ喜んで買ってきたわけで。

 まあ、未収録分を読むというためだけなら、2巻だけを買っても良かったんですけど、私の持っている『W3』の単行本(秋田書店サンデーコミック版)は、何てったって自分が小学生の頃(笑)に買ったものですし、実家に置いてあって手元にはないから、1巻も一緒に買いました。あともう一つ、あんまり大きな声では言えない個人的事情もあるんですが……それは後述(笑)。
 というわけで、「少年マガジン版」を全部読むのはこれが初めて(第一話の冒頭だけ何かで見た記憶あり)なんですが……
 ナルホドねぇ、これまで自分が読んでいた最終版の『W3』では、主人公・真一(および小川村を巡るアレコレ)と、主人公の兄・光一(および秘密組織フェニックスを巡るアレコレ)の間に、どこか微妙に埋まりきらないような齟齬を感じていたんですが(とはいえ、そういった齟齬……具体的に言うと、前近代的な日本の農村風景と、モダンな国際スパイ映画的な世界と、銀河スケールのSFテイストが、ひとかたまりになったストーリー……も、私にとっての『W3』の魅力の一つなんですけど)、当初の「少年マガジン版」では、こういった絡みかたをしていたんですか。これならきちんと繋がるなぁ。納得。

 作劇法の差異も興味深くて、モノガタリ全体の輪郭を最初から露わにしている最終版に対して、「少年マガジン版」は、謎の提示を冒頭に置き、関係の読み取れない複数の事象を並行して進行させ、やがてモノガタリ全体の大きな輪郭が見えてくる……という作りになっていて、これはかなり惹き込まれる。以前どなたかが(確か、みなもと太郎氏だったと思うけど)、「仕切直し後(つまり最終版)の『W3』を読んで、「少年マガジン版」との違いにガッカリした」といったようなことを、書かれているのを読んだ記憶がありますが、なるほど、その気持ちも判ります。
 ただ、作劇が魅力的とはいえ、同時に、光一青年とフェニックスの関わりとかは、今となっては荒唐無稽に過ぎる感もあるので、そこいらへんのディテールを割愛してモノガタリの枠外に置いてしまった最終版の方が、やはり「正解」なのかな、って気はします。それに、真一少年のキャラクターも、「少年マガジン版」のあか抜けたカッコイイ少年よりも、やっぱ最終版の、『無法松の一生』か『けんかえれじい』かってな、不器用で無骨(少年の形容には相応しくない言葉ではありますが)な少年の方が、私にとっては魅力的。

 しかし、改めて読んでみると、小川村のアレコレとか、エンディングのムードとか、ガキの頃に読んだときよりも、大人になった今の方が、ノスタルジーとかいろいろ入り交じって、なんか、しみますね。
 さて……と、前述した「私が1巻も買った大声では言えない理由」ですが……ま、判る方にはお判りですよね(笑)。毎度毎度こんなネタで申し訳ないんですけど、幼心にもアレ的にムズムズしたという意味でも、この『W3』には思い入れがありまして。
 この文庫全集版で言うと、210〜211ページ、285〜288ページあたりがソレなんで、お手持ちの方はご確認あそばせ。二つあわせて見ると、思っくそご納得いただけると思います(笑)。
 しかしまあ、久しぶり(20年ぶりくらい?)に再読したんですけど、我ながらホント、三つ子の魂百までとゆーか、雀百まで踊り忘れずとゆーか、自分の「変わってなさ」に呆れてしまう(笑)。

最近のBGM

Cantus Buranos 2 “Cantus Buranos II” Corvus Corax

 前にここで紹介した、何故かヘビメタ好きにウケている(らしい)、ドイツの古楽演奏グループCorvus Coraxの、昨年発売されたアルバム。カール・オルフが楽曲化したことで有名な中世詩歌集『カルミナ・ブラーナ』を基に、オルフとは異なった新たなオリジナル楽曲として作曲演奏するプロジェクトの、これが二枚目らしいです。
 メンバーによる古楽器の演奏だけではなく、大規模なオーケストラとクワイヤを導入。というわけで、荘厳さが格段にアップ。同時に、大仰さも大々的にアップ(笑)。
 感触としては、楽器構成やヴォーカルなんかはクラシック寄りなんですけど、曲のノリは相変わらずロック的なので、オーケストラ曲なのに、ヘドバンしたくなってきます(笑)。
 ヴォイチェフ・キラールのオッカナイ系楽曲好き、エピック映画のバトルシーンみたいな派手目な映画音楽好き、荘厳でゴシックな雰囲気が好き、大仰なプログレが好き……なんて方々にはピッタリかと。

El Che Vive! “El Che Vive!” various artists

 チェ・ゲバラへのトリビュート曲を集めたオムニバス盤。カルロス・プエブラ(Carlos Puebla)、ヴィクトル・ハラ(Victor Jara)、アタワルパ・ユパンキ(Atahualpa Yupanqui)、マリア・ファラントゥーリ(Maria Farandouri)なんかの歌を18曲収録。19トラックめには、演説するゲバラの肉声も。
 キューバ、チリ、アルゼンチン、ウルグアイといった、ラテン・アメリカ諸国のミュージシャンが主ですが、ギリシャやフランスやロシアといった国のものも数曲あり。
 個人的には、マカロニ・ウェスタンの主題歌みたいなPatricio Manns(パトリシオ・マンス?)、切々としたユパンキ、フォルクローレっぽいAngel Parra(アンヘル・パラ?)といった曲が気に入りました。逆に苦手だったのは、ミュージカルの舞台みたいなMiguel Angel Filippini(ミゲル・アンヘル・フィリピーニ?)の二曲。
 ハードカバーのデジパック仕様で、本体と一体化したブックレットは、ゲバラのミニ写真集的な趣もあり。ただ、歌詞の英訳が付いていないのは残念。このテの歌は、やっぱり詩を理解しないで聴いても、あまり意味がないからねぇ……。

cd_il-ladro-di-bagdad “Il Ladro di Bagdad” Carlo Rustichelli

 DIGIT MOVIESから出ている、イタリア製ソード&サンダル映画の復刻サントラ第13弾、スティーヴ・リーヴス主演の『バグダッドの盗賊』。
 映画の方は、色彩感覚がカラフルでポップで、ファンタジックで愛らしくて、内容もそこそこ楽しめるとゆー、軽〜い娯楽作。音楽の方も似た感じで、軽〜くイージーリスニング的には楽しめます。
 ただ、映画が「そこそこ」止まりなように、音楽も、やっぱ「そこそこ」。プラスαの魅力や、特徴には欠けるかな。とはいえ、映画の題材が題材なので、音楽の方にもエキゾチカ風味があるのは、個人的には嬉しいところです。
 CDは、いつものようにピクチャーディスク仕様で、ブックレットにもスチル写真がアレコレと。リーヴスの脱ぎ場も責め場もロクにない映画だったハズなのに、裏ジャケとかディスクの下とかいった目立つ場所に、それぞれセミヌードやら首を絞められてる格闘シーンとかが載ってるのは、マニア向けのサービスかしらん(笑)。

最近の責め場

 備忘録を兼ねて、最近見たDVDの中から、責め場があったヤツだけ(笑)をピックアップ。
 映画そのものの感想は、今回は超簡易版で(笑)。

ヒラリー・スワンク IN レッド・ダスト [DVD] 『ヒラリー・スワンク IN レッド・ダスト』

 真面目で社会派で感動的で、しかも考えさせられるという、フツーに良い映画。
 アパルトヘイト下の南アフリカで、主人公の黒人政治犯とその若い友人が、半裸で殴る蹴る&麻袋被せられて水責めの拷問に。フラッシュバックなのでカットは短いですが、残酷度は高し。

アイバンホー [DVD] 『アイバンホー』

 サー・ウォルター・スコット原作、BBC制作の、真面目な中世騎士もの。いささか地味ではありますが、このテのコスチューム・プレイが好きだったら、充分に楽しめる内容。
 しょっぱなからいきなり、髭マッチョ主人公の半裸フロッギング・シーンでスタート。二枚組DVDだったから、再生するディスクを間違えたかと思った(笑)。

地獄で眠れ [DVD] 『地獄で眠れ』

 チャールズ・ブロンソン主演の、モノガタリのディテールが何もない(笑)B級アクション映画。
 これまたしょっぱなっからいきなり、鬼畜医師による拷問の公開デモンストレーションでスタート。細身の髭男が全裸でバーに吊され、血を吐いて死ぬまで電気拷問。このシーン、ちらっとですけど「見え」ます(笑)。

キング・オブ・バイオレンス [DVD] 『キング・オブ・バイオレンス 』

 バイオレンスの連鎖を描いた、シニカルなサスペンス映画。ヘンな話なんだけど、けっこう面白かった(笑)。
 拉致監禁された主人公の青年(なかなかいい身体)が、白ブリーフ一枚で椅子に縛り付けられ、頭にウレタンマットを巻かれ、顔面が変形するまでゴルフクラブでブッ叩かれ続けます。監禁シーンは長く、その間ずっと汚れ下着一枚で虫ケラ扱い。

イラク-狼の谷- [DVD] 『イラク-狼の谷-』

 トルコ人のヒーローが、アメリカ相手に活躍するアクション映画。善悪が紋切り型ではあるけれど、娯楽映画としては手堅い作り。
 アブグレイブ刑務所の囚人虐待を再現。強制脱衣(全裸)や、放水責め、人間ピラミッドなど。被虐者の中には太目白ヒゲ熊オヤジ(これまたちらっと「見え」ます)も。

サーズデイ [DVD] 『サーズデイ』

 足を洗ったワルが、かつての仲間に巻き込まれて、スッタモンダの一日を過ごす、ブラックユーモア満載のクライム映画。
 主人公(『パニッシャー』や『ミスト』のトーマス・ジェーン)が、エロ女に椅子に縛られて逆レイプ(ただし着衣)。その後、髭面の快楽殺人鬼(けっこういい身体)に、電ノコで切り刻まれそうになりますが、こちらは未遂。

レストストップ デッドアヘッド [DVD] 『レストストップ デッドアヘッド 』

 アメリカの田舎で、ドライブ中のカップルが殺人鬼に出くわし、追いつめられたヒロインが逃げまくるとゆー、新味も何もないホラー映画。ヘンに超常っぽい要素も入っているんだけど、新味というより悪あがきとしか(笑)。
 殺人鬼に拉致された青年が、全裸で台上に固定され、カッターで肌を切られたり、ニッパーで舌を切り取られたりという、『ホステル』系の猟奇拷問あり。

レディダルタニアン 新・三銃士<ノーカット完全版> [DVD]” /></a></td>
<td valign=『レディダルタニアン 新・三銃士』

 ダルタニアンと三銃士の子供たちが活躍するとゆー、デュマの二次創作みたいな話。悪役までいちいち、オリジナル版に対応させるようなキャラで揃えていたり、老いたダルタニアン役が、リチャード・レスター版と同じマイケル・ヨークだったりするので、ますます二次創作臭がプンプンと(笑)。でも、罪のない娯楽作としては、気楽に楽しめました。
 捕らえられた若い銃士(なかなかいい身体)が、上半身裸でダンジョンのトーチャー・ラックに。拷問そのものではなく事後シーンのみですが、雰囲気は佳良。

地球外生命体捕獲 [DVD] 『地球外生命体捕獲』

 ヘンな映画(笑)! かつて宇宙人にアブダクションされて、生体実験をされ人生を狂わされた男たちが、逆襲して宇宙人をとっ捕まえて復讐しようとするが……なんてB級臭プンプンの話を、ヘンにもったいぶって描いております。そのもったいぶった部分と、宇宙人の着ぐるみに代表されるミモフタモナサの、アンバランスさがスゴくって、これを真面目に作っているとしたら、かなり「天然系」だと思うぞ(笑)。
 責め場ってのとはちょっと違いますが、ムサい系髭男が、宇宙人に腸を引きずり出されて綱引き状態という、珍シーン(笑)が。あと、髭の巨漢が身体を壁に釘で打ち付けられ、これまた腸を引きずり出されてる(でもまだ生きている)なんてシーンもあるけど、肝心の、アブダクションされて人体実験されてるシーンは皆無。

レックス・バーカー(Lex Barker)版ターザン映画のDVD

dvd_tarzan-lex-barker
 レックス・バーカー主演のターザン映画のDVD(アメリカ盤)が届いたので、ご紹介。
 ラインナップは、以下の5本。
『ターザン 魔法の泉 Tarzan’s Magic Fountain』(1949)
『ターザンと女奴隷 Tarzan and the Slave Girl』(1950)
『ターザンと密林の女王 Tarzan’s Peril』(1951)
『ターザンの憤激 Tarzan’s Savage Fury』(1952)
『ターザンと巨象の襲撃 Tarzan and the She-Devil』(1955)

 今年の3月に米ワーナー・ブラザースが始めた、ワーナー・アーカイブ・コレクションという、オンデマンド・サービスによるDVDです。
 オンデマンドDVDなので、ジャケットはプリンタ出力による簡素なもの。ディスクはDVD-Rで、メニュー画面もいたってシンプル。字幕や音声の切り替え等はなし、チャプターも10分刻みに機械的に入っているだけ。
 ただし、画質は(おそらく)ビデオソフト化時にレストアされたマスターを使っているので、制作年代を考慮しても充分に美麗です。多少のゴミや傷が見られるだけで、ハイライトのトビやシャドウのツブレは皆無、ディテールの再現性も上々。良くあるパブリック・ドメインの廉価DVDと比較すると、雲泥の差と言っても良く、ここらへんは流石に正規盤ならでは。
 ちょっと悔しいのが、米ワーナーのサイトから直接購入すれば、5本パックで買うと半額になる割引サービスがあるのに、日本からの注文は受け付けてくれない(ダウンロード購入なら、直接購入も可能みたいだけど、Macには対応していないみたい)ってトコ。仕方なく、米アマゾンで購入しましたが、そうすると割引サービスはなし。
 まあ、それでも買えるだけマシかな。

 というわけで、とりあえず『ターザン 魔法の泉』を鑑賞。
 秘境に存在する若返りの泉を狙う悪人と、その企みを防ぐターザンのストーリーに、アクション(ターザンの活躍)やスリル(ジェーンのピンチ)や笑い(コミック・リリーフとしてのチータ)が、満遍なく散りばめられる……という、ターザン映画のテンプレート通りの内容ですが、手堅く楽しませてくれました。
 ただ、スペクタクル性には、ちと欠けるかな。猛獣とターザンの取っ組み合いとか、象の大群の大行進とか、秘境にある遺跡のスケール感とか、そういったのもターザン映画のお約束なんですけど、そこいらへんはイマイチ食い足りない感もアリ。良くも悪くも、こぢんまりと纏まった感じはします。
 先代のジョニー・ワイズミューラーからバトンタッチした、10代目ターザン役者のレックス・バーカーは、ルックスはハンサムで、肉体もご立派。
 特に、ボディラインのしなやかな美しさという点では、先代ワイズミューラーや、この後のゴードン・スコットよりも上かも。アスリート系の肉体美好きなら、文句なしの眼福でしょう。何と言っても、徹頭徹尾腰布一丁で、シャツを着るシーンなんて一瞬たりともゴザイマセンので(笑)。
 ジェーン役のブレンダ・ジョイスは……う〜ん、残念ながら、あまり魅力は感じられない。さして美人でもないし、モーリン・オサリヴァンと比べると、かなり落ちるかなぁ。
 チンパンジーのチータは、コミカルなシーンではその芸達者ぶりを存分に見せてくれ、しかも決めるところではちゃんと大活躍。なかなかの名演です。

 さて、ターザン映画というと、ターザンがとっ捕まってふん縛られる……なんてのもお約束のシーンなんですが、そっちもちゃんと(笑)入ってます。
 今回ターザンは、結果として秘境に余所者を招き入れてしまったので、反ターザン派の住人たちは、彼が二度と秘境に来られなくするために、その目を潰してしまおうと企む。
 で、ターザンは、洞窟の岩場に磔に縛られ、目を焼き潰すための二叉の矛状の道具が炎で灼かれ……ってな展開になるんですけど、まあ責め場としてはアッサリめなので、これは残る4本に期待かな(笑)。
tarzan-magic-fountain_scene

“Der Sohn des Scheichs”

dvd_sohn-des-scheichs
“Der Sohn des Scheichs” (1962) Mario Costa

 ゴードン・スコット主演、アラブを舞台にしたアクション・アドベンチャー映画の、ドイツ盤DVD。伊語原題”Il figlio dello sceicco”、英題”Kerim, Son of the Sheik”。
 イタリア語音声、字幕なしで鑑賞したので、細かな部分は良く判らないんですが、IMDbの解説によると、1860年代の中東で、カリフの座を狙う悪者オマールの陰謀と、オマールに妹を殺された青年カリムが、義賊となりオマールの陰謀に立ち向かう……という内容。

 ゴードン・スコットは、もちろん主人公カリム役。悪のヒロイン役に、毎度お馴染みのモイラ・オルフェイ。あと、スペシャル・ゲスト的な扱いで、ゴードン・ミッチェルもちらっと登場します。
 出ている面子から見ると、イタリア製ソード&サンダル映画(及びその周辺)の中でも、かなり安手な部類に入る感じですけど、この映画の場合は、どうやら全編エジプトロケを敢行しているようで、画面には、このクラスの映画とは思えない、スケール感と厚みがあります。
 まず、モブの人数が多い! ほんのちょっとしたシーンでも、近景から遠景に至るまで、その他大勢の人々がフレームインして蠢いている。
 おそらく、現地の人がエキストラをやっているんでしょうけど、何せ中東が舞台で、しかも制作が60年代初頭ともなると、皆さん普段から民族衣装なわけです。つまり、エキストラ用の衣装を用意する必要がなく、着の身着のままでOK。だから、これだけ大量のモブが調達できたのでは。
 人だけじゃなく、動物も同様。馬やらラクダやらロバやら山羊やら、まあとにかく出るわ出るわ。馬に関しては、軍の協力もあったのかも知れません。騎馬軍団の数も、多い多い。

 セットも、おそらくほとんど使っておらず、クライマックスの砦のシーンはセットだと思いますが、それ以外は、実在のモスクとか宮殿とか遺跡とかで撮っているんだと思います。市場や広場のシーンは、開発以前のカイロ旧市街(オールド・カイロ)っぽいし、オアシスや村落のシーンも、たぶん実在のもの。
 室内シーンも、かなり現地のものをそのまま使っているっぽいです。インテリアから小道具に至るまで、とてもゴードン・スコットやモイラ・オルフェイが出ているクラスの映画とは思えないゴージャスさ。
 また、観客が期待するような、観光映画的な側面も、しっかりぬかりなく抑えており、遠景にギザの三大ピラミッドが見えていたり、更には、サッカラの階段ピラミッドの前を、大量のアラブ騎馬軍団が駆け抜ける……なんて、実に豪華な画面も見せてくれます。
 スペクタクル映画にはつきものの、エキゾチックなダンスシーンも、この映画では3回も出てきます。うち二回は女性のベリーダンスで、残念ながら音楽は映画用の劇伴に差し替えられているんですけど、映像にはしっかり、ウードやカーヌーンやダルブッカといった、アラブの伝統楽器を演奏している姿が映っています。
 残る1回が、男性のダンスなんですが、これがタンヌーラというエジプトの民族舞踊でした。スーフィーの旋回舞踊のエンターテイメント版といった趣で、旋回しながらスカートのような円盤状の布を拡げ、それを身体から抜き取って頭上で廻すという踊りです。以前、エジプト舞踊の専門家の友人に、ビデオを見せて貰ったことがあり、見るのはこれで二回目。かなり印象に残っていた踊りながら、今まで再会の機会がなかったので、これは嬉しかった。加えてありがたいことに、このシーンの音楽は、ちゃんと同時録音(おそらく)されたものを使用。

 こういう具合で、セットや小道具にお金を使わずに済んだのか、メイン・キャラの衣装とか、馬具とか小道具の類とかも、このクラスの映画にしては、実に上質。前述した砦とか、ダンジョンのセットなんかも佳良。
 屋外に出たら出たで、前述した壮麗な建物はあるわ、ナツメヤシが林立するオアシスはあるわ、水平構図を存分に生かした砂漠のパノラマはあるわ。しかもそこを大量の人馬が駆け回るわけで、どのシーンをとっても、画面の重厚感がバツグン!
 よく見ると、オアシスの村が襲撃されるシーンなんて、映画用に設置したと思しきテントが燃えているだけで、あとは回りで人や動物が駆け回っているだけなんですけどね。でも、村の全景自体に説得力があるのと(実在のものだとしたら当然です)、前述したように、モブや動物の物量がタップリなので、ちゃんと一大スペクタクルに見えるわけです。
 いやいやホント、画面を見ているだけでも楽しい映画でした。

 マッスル映画としては、ゴードン・スコットはアラブのシークの息子役なので、当然ごとく着衣なんですけど、それでもしっかり、他はみんな長袖なのに、一人だけフレンチスリーブで太い腕がむき出し。しかも、これまた一人だけ襟ぐりが深く、胸板見せもバッチリという、好サービス具合が嬉しい。
 また、後半、スコット君はとっ捕まって、ダンジョンに入れられて拷問されるんですけど、その時にちゃんと上半身裸になってくれます。で、無粋な(……かどうかは知りませんが)映画だと、ピンチから脱出して逆襲に転じる際、大概また服を着ちゃうもんだから、見ているこっちとしては、「いいよ、服なんか着せなくって!」なんてブーたれたくなったりするんですが、この映画では、脱出しても上半身裸のまんま。
 そしてそのまま、クライマックスの大合戦のときも、悪玉とのタイマン勝負のときも、ヒロインとのハッピーエンドのときも、エンドマークが出るまで、ず〜っと上半身裸。
 いや〜、ファン心理やマニア心理を、良く判っていらっしゃる(笑)。

 そんなこんなで、個人的にはかなりポイント高い映画でした。
 言葉が判らないので、あまり正確なところは言えませんけど、演出のテンポも良さげで、スパスパ楽しく見られる痛快娯楽作といった感じです。
 DVDはドイツ盤なので、当然PAL。リージョンコードは0。音声はドイツ語とイタリア語。字幕なし。
 画面はノートリミングのシネスコで、スクィーズ収録。画質は、ちょっと粒状感があったり、若干の傷やゴミがあったりはしますが、退色は見られず、映画のジャンルと制作年代を考えれば、充分高画質と言えるでしょう。

 では、最後に責め場情報。この映画で、責め場は二ヶ所。

 まず、映画前半。オアシス住まいのスコット君一行が、街にやってくると、広場で公開フロッギングが行われているのを目撃します。
dvd_sohn-des-scheichs_s1
 尺はあまり長くなく、被虐者もさほど印象に残るタイプではないんですが、基本的に公開処刑というのは、それがパブリックな場で行われているというのがキモ。
 で、この映画の場合、前述したように風景のスケール感やモブの物量感がタップリなので、そのぶん公開処刑の趣も引き立ってます。被虐者が豆粒大の引きのある構図から、だんだんとアップに寄っていく見せ方など、シーンとしてはかなり魅力的。

 二つ目の責め場は、お待ちかねのスコット君の拷問。これは、ダンジョンでのフロッギングで、責め自体はいたってシンプル。
dvd_sohn-des-scheichs_s2
 とはいえ、尺がかなり長い上に、アップあり、引きあり、バックあり、フロントあり、ギャラリーあり、ヤメテヤメテと泣き叫ぶ恋人あり……と、ネットリじっくりタップリ見せてくれるので、実にヨロシイ。
 また鞭痕が、安手の映画にありがちな、いかにもペンキなすりました、ってなタイプではなく、ちゃんと皮膚が破れているようなメイクなのも良いですな。
 で、こうしてヒーローがひとしきり鞭打たれたあと、今度はヒロインが、ラックに縛られて引き延ばし責めにあうんですけど、当然のことながら、ヒーローはそれを止めることができないので、怒りに身をよじりながら、何とか縛めから逃れようとする。
 このシーンが、「筋肉美見せ」のシーンになっていまして、ゴードン・スコットは、筋量自体はさほどないので、あまりこういうシーンには向いていないんですけど、この映画では、背筋中心のせいか、なかなか良い絵、良い筋肉美を見せてくれます。ライティングによる陰影の濃さも手伝って、筋肉の塊を蠢かせながら、ミミズ腫れの浮くテカった肌をよじる姿は、ちょいとバロック絵画的な美しさもあって、かなり色っぽい。

 というわけで、責め場も満足の一本でした(笑)。

つれづれ

 締め切りが重なっていた仕事が、先週末に全て無事終了しました。
 月産枚数的としては、別にキツくもなんともなく、逆に楽なくらいの分量だったんですが、Aの締め切りの二日後がBの締め切り……ってな塩梅だったのと、合間にマンガ以外の用件も入っていたせいで、頭の切り替えとかペース配分が、ちょっと難しかった感じ。
 おかげで、実作業以上に「終わった〜!」感が強い。よく考えると、仕事量としては、大したことないんだけど(笑)。

 で、その締め切り明けと前後して、”Gay Pride Sale! Top 10 Deals of the Week”という件名のメールが来ました。
 パッと見、よくあるエロ系の迷惑メールみたいですが、実はそうではなく、アメリカの大手旅行会社ORBITZのメルマガです。
 中身を見ると、「トロントのゲイ・フレンドリーなホテル、30%OFF。トロント映画祭をプラス・アルファでエンジョイしましょう!」とか、「トラベル・オークションを利用すれば、国際便が40%以上OFFになります。収益はLGBTチャリティに寄付されます」とか、「フォート・ローダーデール(何でも『アメリカのベニス』なんですって)とプエルト・バジャルタ(メキシコのリゾート地だそうな)でゲイ・リゾート。5泊以上で100ドルOFF、2泊でも10%OFF!」とか、「スタイリッシュでラグジュアリーでカルチャーでアドベンチャーなゲイ・ツアー、50ドルOFF!」とかいった惹句と一緒に、キャンペーン商品へのリンクが並んでおります。
 で、これを見ていたら、前にも何度か書いたような、「ゲイの存在が日常化した結果、目に見えるオーバーグラウンドな形としてのゲイ・マーケットが確立し、それが一般企業にとっても、収益およびパブリック・イメージの両方において、プラスになると判断されている状況」の、格好のサンプルだなぁ、なんて思い、ちょっと紹介してみました。
 日本でも、JTBとかHISから、こーゆーキャンペーン・メールが来たら、楽しいのにね。
 周囲を見ると、クラブ・イベントで東京や大阪や北海道や博多なんかを頻繁に行き来していたり、定期的に沖縄に行ったりしているゲイがけっこういるので、ビジネスの可能性としては、決してないわけではなさそう。ただ、そういった「ゲイ向け商品」を堂々と買える層が、果たしてどれだけ存在するのか……というのが、毎度ながらネックになるだろうけど。
 あ、でも大手旅行会社という括りを外せば、日本でもこことかここみたいな、ゲイ向けの旅行業そのものは存在します。

dvd_underworld3
 映画は、DVDで『アンダーワールド ビギンズ』を鑑賞。
 吸血鬼と狼男の抗争を描いた『アンダーワールド』シリーズの、れっきとした正統の3作目……なんだけど、ジャケが何だか、レンタル屋に大量に並んでいるバッタモンみたい(笑)。
 1作目は、アイデアや世界設定の背景描写や凝った美術なんかが良くて、けっこうお気に入りでした。対して2作目は、そういった特徴があまり見られず、良くある大味なアクション・アドベンチャーといった感じで、イマイチ好きになれなかったんですけど、この3作目は、内容的には時間を遡り、1作目のプリクエル。
 つまり、1作目で私が魅力を感じていた部分を、クローズアップして膨らませた内容なので、かなり満足しました。ただ、「美人でカッコいいオネエチャンがスタイリッシュに戦うアクション映画」としてのファンにとっては、映画の設定が中世ヨーロッパなのでガン・アクションはないし、ストーリーの主眼が狼男側にあるので、ヒロインがちょいサブ的な存在になっているから、イマイチかも知れません。
 で、これって、いわばホラー風味のダーク・ファンタジーなわけですが、ストーリーとしては「奴隷の反乱」と「種族を越えた禁断の恋」なので、実は吸血鬼と狼男という設定を使わないでも、充分に成り立つ内容ではあります。じっさい、DVD収録のメイキングでも、監督が「『スパルタカス』+『ロミオとジュリエット』」とか言ってましたし。
 というわけで、設定の必然性という意味では、この映画単品で考えると苦しいんですけど、まあ、シリーズものなので、そこいらへんも気にはなりません。

 話そのものは良くできていて、シリーズを見ている人間には、結末がどうなるかは既に判っているんですけど、それを「どう持って行くか?」という点で、最後まで興味を削がない筋運びは、なかなか佳良です。スケール感はさほどありませんが、それでも、こぢんまりした範囲内で必要充分なものだけを描くという、全体的にタイトな構成が小気味よく、エピック・アドベンチャーとしては手堅い出来映え。
 美術は、これはもう大健闘。それほど大予算ではないみたいですが、それでここまでしっかり見せてくれるとは。美しさと説得力の両方を兼ね備えた、文句なしの出来映え。で、メイキング見ていたら、美術監督の顔に見覚えが……『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの人でしたか、ナルホド(笑)。
 訳者さんも、いずれも佳良。シリーズ通して、ちゃんと同じ役を同じ人が演じているのは、やっぱりいいですね。シリーズを見てきた人間にとっては、「あ、あいつがこんなところに!」ってなサービスもある。メイン・キャラの内面描写が掘り下げられて、キャラクター像に深みが出ているのもヨロシイ。
 メイン・キャラの新顔、新ヒロインのロナ・ミトゥラは、前にTV版『スパルタカス』のときに好印象でしたが、今回も同様の感想。ただ、役の上で「前2作のヒロイン(を演じていたケイト・ベッキンセール)に似ている」という設定で、確かに雰囲気は似ているんだけど、個人的にはケイト・ベッキンセールよりも、Gacktに似てるな〜、と思いました(笑)。

 さて、嬉しいことにこの映画、やましい部分のお楽しみ(笑)も、ちゃんとありました。
 まず、映画の設定で、この時代、狼男は奴隷にされてるんですが、狼に変身できないように「内側に銀の鋲が突き出た首輪をされた、髭筋肉長髪濃度濃いめの薄汚い野郎ども」なんですな。で、それが貴族的な吸血鬼にこき使われている。
 ……はい、個人的なフェチアイテムと設定系のSM好き心を、何個もまとめてクリア(笑)。
 で、責め場もあります。主人公の鞭打ち。それも2回。
 1回目は、ウィッピング・ポストに両手を拡げて縛られ、上半身裸の背中を、鉤付きの長鞭でフロッギング。もちろん、背中はズタズタに裂けちゃいます。簡単には死なない狼男という設定を上手く使った、ナイス責め場(笑)。
 2回目は、床に跪かされ、両腕を鎖に繋がれて立ち上がれない状態で、やはり背中をフロッギング。ここではシャツを着てるんですが、鞭打たれてちゃんと破けるのでご安心(笑)あれ。
 まあ、主人公の身体自体は、マッチョと呼ぶには細いんですけど、でもちゃんと撮影用に鍛えてはいるので、ナチュラルな感じの筋肉美はあります。とにかく筋肉量が欲しい御用向きには、1作目にも出ていたサブキャラの黒人さんがスゴい身体なので、そちらをオススメしませう(笑)。
 あとは、狼男なんで、変身が解けて人間の姿に戻ったときには、服は破けてスッポンポンになっているわけで、男のフルヌードが何度も出てきますし(ズボンや下着だけ破け残る……なんて、無粋なこともゴザイマセン)、奴隷なんで、鎖に繋がれてたり牢に入れられてたりするし、人間の姿のまま、けっこうエグめに惨殺されていったりもしますんで、ソッチ系目当てでも、けっこうオススメできる内容でした(笑)。
『アンダーワールド ビギンズ』(amazon.co.jp)

“Archetype: The Art of Timothy Bradstreet”

book_timothy_bradstreet
 最近買った画集、その3。
 やはりアメコミのカバー画や、映画のポスター等のイラストレーションを描いている、ティモシー・ブラッドストリートの画集。どうやら第二画集らしいです。
 この人は、先日のジョー・ジャスコや先々日のボブ・ラーキンとは異なり、もっと若い世代で、絵の雰囲気もぐっと今様です。因みに、ラーキンが1949年生まれ、ジャスコが59年生まれなのに対して、このブラッドストリートは67年生まれ。……うわ、私より年下じゃん(笑)。
 収録作品は、アメコミ「ヘルブレイザー」(これの映画化が『コンスタンティン』)や「パニッシャー」のカバー画(私がこの人の絵を意識したのも、ここいらへんから)、良く判らないけどゲームか何かのヴィジュアル、映画『ブレイド2』(ギレルモ・デル・トロ監督)や『パニッシャー』(トーマス・ジェーン版)のビジュアル、エディトリアル用らしき『ノスフェラトゥ』(ヴェルナー・ヘルツォーク版)、『13日の金曜日』のジェイソン、『悪魔のいけにえ』のレザーフェイス、等々が掲載されています。
 それ以外にも、デジタル彩色作品に関しては、彩色済みのものとオリジナルのモノクロ線画が両方載っていたり、作画資料用の写真、サムネイルやラフスケッチ、コミックスからの数ページなんかも載ってます。
book_timothy_bradstreet_sam
 とにかく、画面をカッコヨク見せることに長けている人で、明暗構成の妙技と構図の緊張感はバツグン。ポーズの切り取り方とかは、さほどエッジなことはやっていない(というか、逆にシンプルなものが多い)んですが、それを画面構成だけで、問答無用のカッコヨサに仕上げるセンスは、本当にスゴイ。
 基本的に、コントラストの効いた白黒のペン画に、淡彩で彩色していくパターンで、彩色者は別の人(主にグラント・ゴレアシュという人のよう)の場合もあるんですが、油絵(これがまた、めちゃくちゃフォトリアル)やペンシル・ドローイングなんかも、ちょっとあり。
 ただ、私の趣味から言うと、モノクロのペン画や、それに水彩やカラーインクで淡彩を施したものは、文句なしに好きなんですが、デジタル彩色で、しかもかなりコッテリと色を乗せているものに関しては、質感が余りに写真に近すぎて、「これだったら写真を加工したものでいいんじゃないかなぁ……」という感じを受けてしまい、絵としての面白みには、ちょっと欠けるような気はします。
 とはいえ、全体に通じるダークなテイストとは、やっぱ「カッコイイなあ」と思いますけど。

 画集としては、先日の“The Art of Joe Jusko”と同じ版元なので、造本や大きさ、ページ数なども、ほぼ一緒。大判のハードカバーで、頑丈な造りの好画集です。
 テキストは、マット・スターンの前書き、ジム・ステランコの序文、充実したバイオグラフィー(ここにフランク・フラゼッタやバーニー・ライトソンのペン画が載っていて、ハイコントラストなペン画のルーツが判る感じでした)、の他、ページのあちこちに、ギレルモ・デル・トロ、トーマス・ジェーン、ゲイル・アン・ハード、バーニー・ライトソン、ゲイリー・ジャンニ、等々、映画界やイラスト業界の著名人のコメントなんかが載ってます。
“Archetype: The Art of Timothy Bradstreet”(amazon.co.jp)
 これは何故か、日本のアマゾンにもちゃんと在庫があって、しかも割引中。ジョー・ジャスコの画集と同じ版元なのに、どういうわけだろう、この違いは。
 因みに、これと同じ本で値段が倍近くするやつがありますが(これ)、これは「Sgd Ltd版」という表記があるので、おそらくサイン入りの限定版ではないかと。

“The Art of Joe Jusko”

book_joe_jusko
 最近買った画集、その2。
紹昨日介したボブ・ラーキン同様、アメコミのカバー画などを描いてきた、ジョー・ジャスコの画集。
 経歴を見ると、ちょっと変わった人で、マーヴェルやエピック・マガジンなどでイラストレーションを描いていたかと思うと、その後ポリス・アカデミーに入学して、NYPDの警察官になったりしています。数年後、アートへの情熱が戻ったとかで、警察官からアーティストに復帰はしたようですけど。
 またまた、表紙はご覧のようなセクシーねーちゃん(&シム・シメールみたいなホワイト・タイガー)ですが、中身は、半分くらいは裸のマッチョ絵、それも、ボブ・ラーキン以上に暑苦し〜い野郎絵……ってなパターンです(笑)。

 収録作品は、やはりボブ・ラーキン同様にアメコミ版コナン”The Savage Sword of Conan”のカバー・イラストレーションや、様々なアメコミ・ヒーローの他、エドガー・ライス・バローズのターザン・シリーズのドイツ語版表紙絵(私が初めてこの人の絵を意識したのは、これでした)、同じくバローズの火星シリーズのイラストレーション、セクシーねーちゃん系だとヴァンピレラにシーナにララ・クロフト、はたまたWWFのプロレス関係のイラストレーションなんてのもあります。
 また、下絵やラフスケッチもあれば、古いものではアマチュア時代の未発表作まで掲載されているので、このアーティストの全画業を俯瞰できるような内容になっています。
 巻末には、簡単なHOW TO DRAWページまで付いていて、これは絵描きにとっては興味深く見られるはず。

 画風は、これまたボブ・ラーキン同様、コテコテのアメリカン・リアリズム。
 リアリズム的な上手さという点ではラーキンには及びませんが、細密画的な細部の描き込みとか、後述する筋肉描写への独特なこだわりなどによって、パルプ系のリアル・イラストレーションには余り見られない「アク」があるので、それが独特な個性になっているという特徴があります。原色を多用した、時として毒々しいまでの色彩感覚も、その「アク」を強めている感じ。
 さて、その筋肉描写ですが、サンプルをご覧いただければ一目瞭然のように、あからさまにボディビルダーのそれを指向しています。筋肉の張りや血管の浮きから、作品によってはポーズから肌ツヤにいたるまで、コンテストに出ているのボディービルダーか、ボディービル雑誌に掲載されているようなトレーニング風景の写真みたい(左下の作品なんかその典型)。
book_joe_jusko_sample
 まあ、マッチョを描く人なら、多かれ少なかれボディービルは参考にするでしょうけど、ここまでボディービルボディービルしている人は、ファンタジー・アート系ではちょっと珍しいかも。かなりフェティッシュというか、マニアックな香りすらします。
 個人的な感覚で言えば、例えばターザンがここまでボディービルダーなのは、ちょっとどうかという気もするんですが、それでも、この徹底したこだわりと描き込み具合には、問答無用の強さと迫力は感じます。ボディービル系のマッスル・マニアの人だったら、なおさらタマラナイ魅力を感じられるかも。

 版形はA4強の大判。ハードカバーの立派な造本で、ページ数も330ページ近くとヴォリュームたっぷり。もちろん、全ページフルカラー。
 テキストも、詳細なバイオグラフィとか作品解説とか、ふんだんに入っています。造本は頑丈だし、印刷も高品質なので、画集としてはわりと理想的な作りかと。その分、お値段もそれなりですが。
“The Art of Joe Jusko”(amazon.co.jp)
 これまた、何故か日本のアマゾンだとマーケット・プレイスしか出ていませんが、アメリカのアマゾンには在庫があるので、送料さえ気にしなければ、ボブ・ラーキンの画集と一緒に注文するってのもアリかも。