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Samson & Delilah (Opera Spanga)

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“Samson and Delilah” (2007) Corina Van Eijk
 オランダのオペラ・カンパニー、オペラ・スパンガによる、サン=サーンスの『サムソンとデリラ』のオペラ映画。
 アメリカのファンから、「このフィルム、アメ〜ズィングな熊男責めがあるし、貴殿にはぜったいにオススメ!」みたいなメールを貰いまして(Thank you, Cecil!)、興味を持って探してみたところ、オランダ盤(おそらく)DVDを見つけたので買ってみました。
 因みに、サムソンとデリラの話は私の好物の一つ(っつーか、ぶっちゃけ性的な原風景の一つ)なので、DVDも、1949年制作のセシル・B・デミル版はもとより、84年のTV版や、96年のニコラス・ローグ版など、見つけるたびに、ついつい買っちゃってます(笑)。

 さて、私はオペラは疎いので、このオペラ・スパンガがどんなカンパニーなのか、まったく判らない。検索してみても、日本語の情報は何も見つからず。ただ、サイトは見つかりまして、それによると、監督のコリーナ・ファン・エイクという女性は、このカンパニーの芸術監督らしいです。
 サン=サーンスのオペラの方も、これまで聴いたことがなく今回が初体験。そもそも、サン=サーンス自体、『動物の謝肉祭』くらいしか聴いたことがない……と、見る前は思ってたんですけど、いざ映画を見てみたら、アリア「あなたの声に心は開く」だけは、聞き覚えがあった。でも、おそらく私の場合、この曲との最初の出会いは、正統派のオペラじゃなくて、クラウス・ノミだと思うけど(笑)。

 映画の内容は、モノガタリはそのままに、舞台を現代の戦場に置き換えたものになっています。
 まず、戦場とおぼしき砂漠で、捕虜らしきゲリラ風の男たちが処刑されていく。それを見守る仲間たちは、嘆きながら祈り、合唱する。
 そして、サムソン登場。やはりゲリラ兵風の出で立ちで、パッと見、キューバ革命時のカストロみたいな感じ。仲間たちを「立ち上がれ」と鼓舞します。
 そこにやってきたのは、ダゴンの神官ならぬ、洒落たスーツを着て、ガードマンと美女を引き連れた、いわゆる資本主義風の金持ち男。見物にでも来たのか、見張りの兵士に袖の下を握らせ、美女の尻に跨ったりと、享楽的な態度を示す。
 ここでゲリラ軍が、サムソンに率いられて蜂起。敵の兵士たちは殺され、美女は犯され、金持ち男も殺される。それを司令部でモニターしていた、ダゴンの祭司長と部下の兵士たちは、こりゃあかん、すわ退却と、パソコンのデータを消去して逃げ去る。
 勝ったゲリラ軍は、長老を囲んでお祝いをしますが、敵軍はそこに、着飾らせた女兵士たちを送り込む。女たちを率いるのは、美女デリラ。
 むさい男所帯に現れた、露出度の高い服を着た女たちに、ゲリラ軍はメロメロに。サムソンも、デリラから目を離すことができず、それを諫めていた長老までもが、オンナノコに股間をまさぐられてアハ〜ン状態。
 ……とまあ、こんな感じで進んでいきます。

 というわけでこの映画は、古典を古典の世界観のまま再現するのではなく、古典を現代的な視点で解釈し、解体/再構成することによって、そこから新たな意義を掘り起こそうとするタイプの作品。
 方法論としては、さほど目新しいものではありません。また、このテのアプローチがされた作品って、モノによっては「舞台を現代に置き換えただけじゃん。……で、それがどうしたの?」で終わってしまうことも、ままある。
 しかしこの映画の場合は、映画作品としての出来は別にしても、アプローチの是非に関して言えば、これはかなり成功している、と、個人的には感じました。どこがどう成功しているかというと、これはちょっと長くなるし、内容もヤヤコシクなってしまうので、後ほどまとめて書くことにします。

 では、ヤヤコシイコトは別にして、映像作品としての出来はというと、まずまずといったところ。
 映像表現は、ケン・ラッセルとかデレク・ジャーマンとか、あるいはジュリー・テイモアとかいった、ちょっと古いタイプの前衛風。80年代に『アリア』というオムニバス映画がありましたが、あれが好きな方だったら、本作も充分に楽しめるはず。ただ、飛び抜けた個性とか先鋭性には乏しいので、そこいらへんはちょっと物足りない。個人的には、好きなタイプの作風なんですけどね。美術も、低予算なりに頑張っていて、雰囲気を出すことには成功している。
 尺が100分と、オペラ映画にしては短めなのも、私としては見やすくて良かった。ただ、オペラ好きにはマイナス・ポイントかも。
 ビデオ撮りらしく、ハイライトに飛びがあったり、エッジにカラーノイズがあるのは、ちょっと残念。

 表現のスタイルではなく内容の方は、これはかなりアグレッシブで面白い。
 まず、しょっぱなの囚人の処刑シーンからしてスゴい。
 直接表現ではないので、注意して見ていないと判りにくいんですけど、この囚人は性器を切除されてから、仲間の前に引き出されて、息絶えるまで放置されるんです。しかも、切り取られた性器は床のバケツに捨てられ、それを犬がむさぼり食うという凶悪さ。
 前述の有名なアリア「あなたの声に心は開く」もスゴい。
 英語字幕で説明しますと、このシーンでデリラは “Open your heart to my tenderness, come and worship drunkness”(私の語学力では上手く訳せませんが、「優しさに心を開いて、こちらに来て、杯を交わしましょう」って感じなのかな?)と歌いながら、車のボンネットに座って脚を開く。サムソンはうっとりした顔で、その前に跪く。そして、デリラが “Open my tenderness”(私の柔らかいトコを開いて!)、”Drink up”(飲み干して!)と歌うのに合わせて、サムソンがクンニリングスするんです。コンサバなクラシック好きが見たら、憤死しそう(笑)。
 こんな具合に、その露悪的とも言える挑戦的な内容は、大いに見応えあり。

 役者の方は、皆さんオペラ歌手です。口パクではなく、ご本人が演じ、ご本人が歌っている。
 サムソン役のCharles Alvez da Cruz(読みは、シャルル・アルヴェス・ダ・クルス……でいいのかな?)は、高音域になるといささか線の細さを感じさせる部分もなきにしもあらずですが、全体的には必要充分以上に魅力的な歌声でした。
 ルックスの方も、まあ、すンご〜く濃い顔なんですが、ハッキリ言ってタイプ(笑)。チャームポイントのヒゲを、途中で剃っちゃったりもするんですが(まあ、美女とデートするとなると、ヒゲも剃って身だしなみも整えて……ってのは、ノンケさん的には当たり前なんでしょうけど、ムサいの&ヨゴレてるの好きの私に言わせりゃ、「勿体ない!」って感じ)、ヒゲなしでも充分いい男。
 しかも、後述しますがヌードもあれば責め場もある。デリラとの濡れ場では、逞しい臀球丸出しでコトに勤しんでくれるし、お待ちかねの責め場(内容は後述)では、チ○コも丸出しで大熱演。
 というわけで、歴代のサムソン役者の中でも、個人的には一等賞(笑)。因みに二番目が、ニコラス・ローグ版のエリック・タール。有名なデミル版のヴィクター・マチュアは、どっちかつーと嫌いな顔(笑)。
 デリラ役のKlara Uleman(クララ・ウレマン?)は、お世辞にも傾城の美女とは言い難いお顔ですし、トウもたっておられるんですが、まあオペラ歌手にそーゆーことを求めるのが、そもそも筋違いなわけで。
 声がメゾ・ソプラノのせいもあってか、最初は必要以上にオバサンに見えちゃって閉口したんですけど、表現力はスゴい。ダゴンの祭司長との掛け合いや、前述のサムソンとの掛け合いなど、かなりの迫力で圧倒されます。そうなってくると、ちゃんと魔性の美女に見えてくるから面白い。

 では、責め場の解説。
 サムソンとデリラというと、怪力を失って捕らえられたサムソンが、両眼を潰され石臼を挽かされるというのが、責め場的な見所ですが、この映画では、内容がちょっと違う。
 捕らえられて盲目になるのは同じなんですが、檻の中に入れられたサムソンは、石臼ではなくエアロバイクを漕がされて、発電をさせられます。で、我が身を嘆きながら脚が止まったりすると、檻の外から看守にどやされる。そうやって自転車を漕ぎ続けるサムソンを、敵の兵士たちがタバコふかしながらニヤニヤ見物。やがてサムソンが、自転車から降りて神に祈りだすと、今度はそこにホースで放水責め。
 で、この一連のシーンで、サムソンは文字通り、一糸も纏わぬ素っ裸。う〜ん、こりゃエロい(笑)。エロさでいったら、過去見たサムソンとデリラの中でも、これがダントツ!
 一番のサムソン役者が演じる、一番の責め場。これだけで、もう私の偏愛映画の殿堂入りは確定です(笑)。

 YouTubeに予告編があったので、下に貼っておきます。
 上記の責め場も、ちょびっとだけど見られますよ(笑)。

 DVDは、ヨーロッパ盤なのでPAL方式。リージョン・コードは、私が購入したイギリスのアマゾンの表記によると、リージョン2。ただ、ディスク・パッケージには何も書かれていないので、ひょっとしたらフリーかも。
 16:9のスクィーズ収録。音声は、フランス語。字幕は、英語、ドイツ語、スペイン語、ポーランド語、ドイツ語、フランス語から選択可能。オマケは、メイキングと予告編、それとキャストやスタッフのプロフィール。

 では、以下は「ヤヤコシクなるから後述する」といった諸々について。

 この映画を教えてくれた人の説明によると、「プロットはアラブ対イスラエルに置き換えられている」とのことでした。ところが、実際に全編を通して見てみると、必ずしもそういうわけではなかった。
 確かに、歌詞に「イスラエル」という言葉が頻出しますし、伝承の舞台がパレスチナであるせいもあって、パッと見は、中東戦争なんかを連想します。
 しかし、前述のようにヘブライ人(ユダヤ人)側のスタイルは、キューバ革命のゲリラみたいな感じですし、ペリシテ人側も、砂漠迷彩のヘルメットや軍装などを見ると、アラブどころかその反対に、イラク戦争時のアメリカ軍っぽい。
 かと思うと、ゲリラ軍の年長者たちが、頭から布をかぶって長老になったときなんかは、いかにも昔のスペクタクル映画に出てくるヘブライ人のスタイルを連想させます。同様に、クライマックスのダゴン神殿は、内装がモスク風だったりミナレットがあったりもします。
 つまり、この映画で描かれている「戦争」とは、元々の「ヘブライ対ペリシテ」(あるいは「ヤーウェ対ダゴン」)でもなく、かといって現代の「イスラエル対アラブ」や「アメリカ対アラブ」(あるいは「ヤーウェ対アッラー」)でもないわけです。
 では、何なのかというと、これは、そういったもの全般に対するアレゴリーなんですな。単純な置き換えではなく、古今東西における宗教や思想をベースにした対立や、戦争全般に対する寓意。
 前述したような現実的なモチーフの数々は、そこから現実への連想を引き起こすことによって、その寓意が、過去も現代も変わらぬ恒久的なものなのだと、より効果的に印象づける役割を果たしている。
 この手法は、なかなか面白かった。

 もう一つ興味深いのは、この映画の宗教に対する視線。
 前述したように、サムソンとデリラの時代におけるヘブライ人とペリシテ人の対立とは、平たく言えば信仰の違いによる宗教戦争なんですが、実のところ現代における戦争も、何かと宗教によってその正当性、すなわちそれが「正義の戦争である」と主張される。
 よく知られたところでは、イスラム世界におけるジハード(聖戦)という思想や、第二次世界大戦時の日本での神道の使われ方なんかがそう。キリスト教文化圏でも、有名な賛美歌「見よ、十字架の旗高し」(生ぬるく訳されていますが、原題は “Onward,Christian Soldiers”、つまり「進め、クリスチャン兵士」。歌詞の内容も、イエスの十字架を掲げて、戦争に進軍せよ……というもの)が、同様に戦争における宗教的な正義を謳っており、じっさいに第二次世界大戦中に、ハリウッドのプロパガンダ映画で使われている。
 よって、このサムソンとデリラという話を、伝承のままに描くと、そこにはどうしても宗教的正義という視点が存在してしまうんですが、この映画はそれを批判的に描いている。冷笑的と言ってもいいかも知れない。
 それを端的に表しているのが、映画のタイトルバックです。
 タイトルバックでは、線画によるイラストで、カナブンのような虫の群れが、土中から這い出してくる様子が描かれる。そこに、誰かによってページをめくられている本が現れ、その上を虫が這い回る。読書の邪魔をされ、手は虫を払いのけ、ついには指先で押し潰してしまう。
 で、この「本」が曲者。
 出てくる本は三種類。まず、飾り枠と花文字と挿絵の入った本。次に、飾り枠と文字だけの本。最後に、巻物状のもの。つまりこれらは、キリスト教の聖書(もしくは祈祷書)、イスラムのコーラン、ユダヤ教のトーラー(律法)なわけです。
 このイラストは、映画の最後に再び登場します。
 サムソンがダゴン神殿を破壊し(といっても、この映画では電気をショートさせるんですけど)、悲鳴を上げるデリラのクロースアップの後、三冊の本の上に突っ伏し、頭から血を流して死んでいる、三人の宗教的指導者の絵が現れる。
 現実に振りかざしてきた宗教的正義というものが、それぞれの宗教にとって「邪魔なものを追い払い殺傷する」行為でしかなく、サムソンとデリラでは、ユダヤ教が正義でダゴン信仰が悪とされているが、どっちもどっち、みんな同じだよ、と、痛烈に皮肉っているわけです。
 これ以外にも、宗教(および宗教的指導者)に対する冷笑的な視線は、ダゴン軍が司令部を引き払うシーンや、ヘブライ人の長老が女たちに誘惑されるシーン、クライマックスのダゴン神殿のシーンなどで、他にも幾つか見られます。そして、これらのシーンで、現実の宗教に近い具体的なモチーフが引用されているのは、おそらく、前述したような連想効果を狙った、意図的なものでしょう。
 こういったアグレッシブさには、かなりグッときました。

最近お気に入りのCD

Cd_tcherepnin_pc1「チェレプニン:ピアノ協奏曲第1番, 第3番/祝祭音楽/交響的行進曲」アレクサンドル・チェレプニン
 チェレプニンという作曲家については、チェレプニン賞という名前や、伊福部昭や早坂文雄のお師匠さんだということくらいしか知らなかったんですが、CD屋の試聴機で本盤を聴いてみたところ、一曲目の「ピアノ協奏曲第1番」の冒頭だけで、もう虜になっちゃいました。
 民俗楽派を思わせるエキゾチックで力強い、ストリングスによる導入部が、もうムチャクチャかっこ良くてツボを押されまくり。そしてピアノが華麗に登場し、曲は時にゆったり、時にグイグイとドラマチックに展開していきます。ちょっとリムスキー=コルサコフみたいだな〜、なんて感じもあり、メロディも良く、久々の大当たり。
「第三番」の方は、もう少しコンテンポラリー寄りで渋め。「祝祭音楽」は、その二つの中間といった味わい。「交響的行進曲」は、再び明快でダイナミックでかっこ良い。
 とゆーわけですっかり気に入ったので、これから他の作品も聴いてみることにします。
「ピアノ協奏曲1番、他」アレクサンドル・チェレプニン (amazon.co.jp)

Cd_thomson_plow_that_broke「大草原を耕す鋤/河」ヴァージル・トムソン
 これは全く知らなかったんですが、アメリカ近代の作曲家で、この二つはそれぞれ1930年代に制作されたドキュメンタリー映画用に書かれたスコアだそうな。確かにアメリカの農村風景を連想させるような、壮大でありながら、どこかフォークロリックな素朴さも感じさせるオーケストラ曲。
 二曲とも、フォスターを思わせるような優しいメロディーや、民謡や賛美歌から引用された懐かしげな主題が、優美に、ユーモラスに展開していく様は、何とも楽しくて愛らしい。近代アメリカらしく、ブルーズの要素なんかも入っていて、そこだけ聴くとムード歌謡みたいな味わいもあったり(笑)。
 たまに、恣意的に使用されている現代風の和声が、かえってメロディーの素朴な美しさの邪魔になっていたりもしますが、全般的には、これまたかなり好みの曲調でした。
 因みに米ウィキペディアによると、このトムソン氏、ゲイだったらしいです。
「大平原を耕す鋤/河」ヴァージル・トムソン (amazon.co.jp)

Cd_asian_roots_takedake「エイジアン・ルーツ」竹竹 with ネプチューン
 アメリカ人尺八奏者のジョン・海山・ネプチューンが、竹のマリンバ、竹のパーカションなど、竹製の楽器だけのアンサンブルを率いて演奏しているアルバム。ジャズ&ワールド・ミュージック風味のニューエイジって感じ。楽器は違いますが、雰囲気的にはフェビアン・レザ・パネみたいな感じもある。
 柔らかくて、どこか懐かしい感じのする竹製楽器の奏でる音は、それだけでも魅力的。純邦楽やインドネシア音楽がジャズ風にまったり混じり合っていく様は、なんとも自然で穏やか。自然すぎて、ミクスチャー音楽的なスリリングさには欠けるなぁ、なんて贅沢を言いたくなるくらい(笑)。とにかく気持ちの良い音楽。
 夏の夕暮れに、まったり楽しむにはうってつけでした。ホクホク(笑)。
「エイジアン・ルーツ」竹竹 with ネプチューン (amazon.co.jp)

Cd_il_terrore_dei_barbari「鉄腕ゴライアス 蛮族の恐怖(サントラ)」カルロ・イノセンツィ
 これまでも何度か紹介してきた、DIGIT MOVIESから出ているイタリアン・ペプラム映画・アンソロジー・シリーズ第九弾は、あの「鉄腕ゴライアス」が登場。う〜ん、このBlogでこの映画を取り上げるのは、これでもう何回目だろう(笑)。
 この映画、アメリカ公開時には音楽をレス・バクスターのものに差し替えられていて、おそらく私がヴィデオやDVDで親しんでいたのもそっちだと思うんですけど、今回のCDは、差し替え前のカルロ・イノセンツィによるものを発掘、復刻したもの。
 とはいえ、この映画の音楽で一番印象に残るテーマ曲は、私が覚えているものとメロディーも同じで、唯一違うのは、映画で入っていた男声コーラスの有無くらい。全体的には、正統派史劇映画の劇伴といった感じで、なかなか堂々とした味わい。戦闘シーンはブラスと打楽器でダイナミックに、ヒロイン関係は流れるようなストリングスでロマンティックかつエキゾチックに聴かせてくれます。
 ただまあ、レス・バクスターが大好きな私としては、できればそっちの方も復刻して欲しいな〜、というのは正直なところ。
 インナー・スリーブには、例によって各国版のポスターやロビーカート、スチル写真などの画像が載ってます。個人的には、ポスターだとこれが好きだなぁ、やっぱ(笑)。
「鉄腕ゴライアス 蛮族の恐怖(O.S.T.)」カルロ・イノセンツィ (amazon.co.jp)

愛しのヒゲモジャ城卓矢

 前にこの記事でもちょっと書いたんですが、アタクシ城卓矢の歌と顔が両方好きであります。
 で、久々にふと動く城卓矢が見たくなって、とはいえもちろんDVDとかは出ていないので(いませんよね?)、YouTubeでちょいと検索してみたら、ヒゲ面の城卓矢の映像があったもんだから、キョーキランブしちゃいました(笑)。
 い、色っぽい〜! 2コーラスめのサビで見せる、泥臭いアクションのカッコヨサとか、も〜タマリマセンわぁ。
 ってなわけで、その映像を貼っつけてみます。

 う〜ん、こーゆーの見てると、昔の『さぶ』誌をイメージさせるような、レトロで泥くさ〜い男のマンガ、描いてみたくなるなぁ……。
 ほれぼれ(笑)。
 あ、城卓矢の顔を知らない若人の方々は、終わった後に下に出てくる、赤いバックのバージョンも見てね。フツーは城卓矢っつ〜たら、たぶんこっちのイメージだと思うから(笑)。
 う〜ん、ヒゲがなくても、やっぱり好みのいい男。
 再度、ほれぼれ(笑)。

HOUSEとバイオニック・ジェミーとゴールドパピヨン

 児雷也画伯のブログで、大林映画の最高峰『HOUSE』のサントラがCDになっていたことを知り、急いで購入。すると、それを見た熊が「自分も買う」と言うので、一緒に新宿のディスクユニオンへ。
 渋谷から新宿へ行くのに、初めて副都心線に乗ってみた。JR新宿駅の混雑を通らずに、ダイレクトに新宿三丁目に出られるので、実に快適。これから新宿に行くときは、これを使おう。
 ディスクユニオンで、テレビ『バイオニック・ジェミー』のサントラを見つけたので、大喜びで購入。しかし、後から良く見たら、『バイオニック・ジェミー』の中の「ゴールドマン暗殺指令」の第一話と第三話のBGM集という、えらいニッチなシロモノだった(笑)。しかも、テーマ曲は収録されておらず、テーマ曲の没バージョンが収録されているというマニアックさ(笑)。
 とはいえ、テーマ曲だけだったら、別のコンピレ盤に収録されているのを持っているし、音楽そのものもラロ・シフリンとバート・バカラックとレーナード・ローゼンマンが混じったみたいでカッコイイし、聞き覚えがある曲もあるし、満足のいく一枚でした。作曲者のジョー・ハーネルのサイト(既に故人のようですが)で、少し試聴できるので、興味のある方はどうぞ。
 でも、どうして『バイオニック・ジェミー』のDVDは出ないんだろう? 出たら即買いなのに……。
 因みに、私の「恥ずかしい過去」の中に、「マルベル堂の通販でリンジー・ワグナーのブロマイドを買ったことがある」というエピソードがあるくらい、バイオニック・ジェミーは好き(笑)。「♪わたしのからだを〜かけぬ〜ける〜ばいお〜にっくの〜」とかゆーヘンな日本語版主題歌だって、ちょっとだったら歌えるぞ(笑)。
 同じくディスクユニオンで、ジュスト・ジャカンの映画『ゴールドパピヨン』の「ディレクターズカット版」なる輸入DVDも発見。個人輸入で取り寄せようか、ちょっと悩んだ後、ついでなので購入することに。
 ところが帰って鑑賞してみたら、尺は日本盤DVDと同じで、特にどこも増えているシーンはなくて、ちょいとガッカリ。どうやらアメリカ公開版はかなりカットされたものだったらしく、それと比べてのディレクターズ・カット版だったみたい。因みに日本公開時にもカットされていたシーンはあって、LDでも同様だったんだけど、それは日本盤DVDで既に復活済みだったので、あまり内容的なありがたみはなし。
 ただ、日本盤には仏語音声しか収録されていなくて、LDで親しんでいた英語音声が聞けなかったのが残念だったんだけど、この米盤は英仏二カ国語収録なのは嬉しかった。特に、ウィラード役のブレント・ハフの声は、やっぱ吹き替えられた仏語じゃなくて、ご本人の喋る英語がヨロシイ。
 いや、好きなんですよ、このときのブレント・ハフ。セクシーだし、カワイイし、カッコイイし。でも、この映画以外だと、B級ベトナム戦争映画の『ストライク・コマンドー2』とか、B級ファンタジー映画の『ストーム・クエスト』とか、けっこうしょーもない映画でしか見たことがない(笑)。あ、でも『ストライク…』の方は、劇中で『レイダース/失われた聖櫃<アーク>』のアクション・シーンを完全コピーしていたり、上半身裸での電気拷問シーンがあったりで、嫌いじゃないけど(笑)。改めて調べてみたら、現在まで途切れずに出演作があるし、監督業にも進出していたりと、お元気なご様子。
 特典は、ジャカン監督のオーディオ・コメンタリーとインタビュー、トーニー・キテインのグエンドリン写真ギャラリー、キンゼイ博士が語るジョン・ウィリー(音声のみ)、米国版と国際版の予告編とか(国際版の方は、予告編というかプロモーション・フィルムっぽかった)……と、なかなか本格的。
 というわけで、期待していた未公開シーンはなかったものの、この映画をこよなく偏愛する私としては、満足のいくお買い物でした。
 そうそう、この米盤DVDを出しているメーカーですが、「セヴェリン」っつー、いかにもマニア御用達の会社名でした(笑)。
 というわけで、何だか個人的な偏愛モノが三つ重なった、そんな一日でした。

夏向き変わり種クラシック

 梅雨のわりには好天続きで、湿気と雨が苦手な私にしてみれば、本来ならば好調子……のはずが、忌々しいことに風邪なんぞをひいてしまって、ちょっと寝込んでしまいました。
 とはいえ、幸い急ぎの締め切りとかがなかったので、二日ほど食事をおかゆさんにして、タバコも吸わずに大人しく寝ていたら、熱も引いて咳もおさまりました。
 さて、先日久々にレコ屋のクラシック売り場に行って、いろいろ物色してきたんですが、その中から、夏向けの変わり種をご紹介しましょう。
Schubert_steel_orchestra“Franz Schubert / Renegades Steel Orchestra”
 スティールパン(スティールドラム)って楽器、ご存じですか? トリニダード・トバゴ生まれの、ドラム缶から作られた打楽器で、いかにもカリビア〜ンなムードを醸し出してくれる、コロコロキラキラした涼やかな音色が魅力です。
 そのスティールパンのアンサンブルで、シューベルトの楽曲を演奏しているのが、このアルバム。「軍隊行進曲」から始まって、「セレナーデ」、「死と乙女」、「未完成」、「アヴェ・マリア」……といった具合に、誰でも一度は耳にしたことがあろうお馴染みのメロディーが、20人編成のスティールパンの演奏で、コロコロキラキラと爽やかに奏でられます。
 そうそう、音楽の授業でお馴染みの「魔王」も入ってます。知らないって? ほら、あの「♪風〜の夜に〜、馬〜を駆り〜、駆け〜り〜ゆ〜くもの〜あ〜り〜」ってヤツ、「♪おと〜さん、おと〜さん」ってヤツですよ。音楽鑑賞の授業で聴いたことあるでしょ? あの曲も、スティールパンの音色になると、何とも爽やかな雰囲気になっちゃうので、何だか聴いていて頬がゆるんできます(笑)。
 まあ、クソマジメなクラシック好きな方にはどうかと思いますが、ラウンジとかエキゾチカがオッケーな方には、これはかなりオススメ。何てったって楽しいし、何よりキレイだし、そして演奏のクオリティも高いです。
 限定盤のせいか、アマゾンでは見あたらなかったんですけど、タワレコのサイトにありました。こちら
 で、これを聴いていたら、だいぶ前に買ったヤツなんだけど思い出したアルバムがあったので、ついでにそちらも紹介しませう。
Parsifal_goes_la_habana“Parsifal Goes La Habana / Ben Lierhouse Project”
 これは「パルジファル、ハバナへ行く」というタイトルからも察しがつくように、ワーグナーの楽曲をキューバ音楽のアレンジで演ったものです。
 編成はオーケストラを従えたラテン・ジャズ・バンドといった感じ。ムーディなピアノ、ラテン・リズムを刻むパーカッション、優美なストリングス等々が絡み合った、実にゴージャスな味わいで、コンセプト的にはキワモノっぽい感じなのに、実際の音にはそういった雰囲気は皆無なのがスゴイ。
 ただし、前出のスティールパンのアルバムが、楽曲の構成自体はクラシック準拠なのに対して、こちらはモチーフにクラシックの曲を使って、それをラテン・ジャズ調に変奏しているという感じ。曲によっては、どこがワーグナーなのかヨーワカランといったモノもあります。
 とはいえ、例えばあの「タンホイザー序曲」が、原曲のドラマチックさはそのままに、そこにラウンジ的な軽妙さが加味されて、何とも自然にラテン・ジャズへと変身しているのを聴くと、かなりビックリ&カンドーいたします。「パルジファル」が、ジャズィなリズムとアーシィなコーラスを得て、ミュージカルの感動のフィナーレみたいになってたりするのも、また楽し。
 こっちはアマゾンにありました。こちら

『マラソンの戦い』『大城砦』『怪傑白魔』他のサントラCD

 以前にも何度か紹介したことのある、Digitmoviesの復刻サントラシリーズから、スティーヴ・リーヴス主演映画のサントラ盤CDが幾つかリリースされたので、まとめてご紹介。
Cd_battaglia_maratona“La Battaglia di Maratona (O.S.T.)” by Roberto Nicolosi
 The Italian Peplum Soundtrack Anthologyシリーズ第七弾、『マラソンの戦い』のサントラ。音楽はロベルト・ニコロージ。
 タイトル・バックで流れる、あの優美なテーマ曲が入っているだけでも「買い!」でありますが、他にも、キャッチーでメロディーが良く立った曲が多く、映画を離れて単独した音楽として聴いても、なかなか粒ぞろいの好盤です。
 ロマンティックな雰囲気の曲は、流麗なストリングスや木管で、しっとりと、時にコケティッシュな表情も交えて、実にウットリと聴かせてくれます。舞踏のシーンで流れていた、フィンガー・シンバルや縦笛や竪琴を使った、ちょいと異教的なムードの曲も、幻想の古代ギリシャといった雰囲気が良く出ている佳曲。
 戦闘シーンの曲では、吹き鳴らされる金管や、ストリングスのスタッカートで責めてきますが、いささかお行儀が良すぎるというか、悪くはないんだけど、エピック的なスケール感や高揚感には、ちと欠ける感あり。
『マラソンの戦い』サントラCD
Cd_guerra_di_troia“La Guerra di Troia / La Leggenda di Einea (O.S.T.)” by Giovanni Fusco
 The Italian Peplum Soundtrack Anthologyシリーズ第六弾、『大城砦』と、その続編”La Leggenda di Einea” (a.k.a. “The Avenger”, “War of the Trojans”)をカップリングした二枚組。音楽はジョヴァンニ・フスコ。一般的には、ミケランジェロ・アントニオーニ監督とのコンビで知られている作曲家らしいです。
『大城砦』の方は、最初のファンファーレは印象に残るんだけれど、全体的にはちょっと地味な感じです。とはいえ、戦闘シーンなどでかかる、低音のストリングスのスタッカートや、鳴り物で素早くリズムを刻みながら、そこに高らかに金管がかぶる曲なんかは、スピード感があってなかなかカッコいいです。不協和音を多用しているせいか、古代っぽいザラっとしたニュアンスが多いのも佳良。
 もい一枚の”La Leggenda di Einea”は、映画自体の出来がアレなわりには、音楽の方は大健闘。ひっそりとした打楽器をバックに、哀感を帯びたメロディーを木管が密やかに奏でているところに、不意に異教的な金管のファンファーレが登場するテーマ曲なんか、かなり好きなテイスト。
 全体的には、地味といえば地味なんですが、渋いながらもじっくり聴かせてくれる曲が多い。低音のストリングスをメインに、エモーションを抑えながらじわじわじわじわ展開して、そこにパッと金管が切り込むという曲調が多し。和声のせいか、ちょいとストラビンスキーみたいな感じもあります。ああ、あとレナード・ローゼンマンっぽい感じもするなぁ。この映画に関しては、私は映画よりサントラの方が好き(笑)。
『大城砦/La Leggenda di Einea』サントラCD
Cd_agi_murad“Agi Murad il Diavolo Bianco / Ester e il Re / Gli Invasori” by Roberto Nicolosi & Angelo F. Lavagnino
 これはItarian Peplumシリーズではなく、Mario Bava Original Soundtracks Anthologyシリーズの第六弾。リーヴス主演のリッカルド・フレーダ監督作『怪傑白魔』(マリオ・バーヴァは撮影監督)に、『ペルシャ大王』(未見)と『バイキングの復讐』(このあいだ米盤DVDを買ったんだけど、まだ見てまへん……)をカップリングした二枚組。音楽は『マラソンの戦い』と同じく、ロベルト・ニコロージ。『ペルシャ大王』のみ、『ポンペイ最後の日』のアンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニーノが、一緒にクレジットされています。
『怪傑白魔』は、映画が近世ロシアを舞台にした痛快冒険アクション作品なので、音楽も同様に、時に勇ましく時に軽快に、でも基本は明るく楽しく……ってな塩梅。キャッチーなメロディーで弾むような曲調が多いんですけど、明朗さが前面に出ているせいか、ちょいと長閑な印象もあり。
 ちょいとビックリしちゃうのは、民族音楽を模したと思しき一曲がありまして、コサック・ダンスなのか、テンポの速いバラライカ(?)にドンチャン打楽器がかぶる曲調なんですが、これが何だかやけにガチャガチャしていて、民族音楽っつーよりは、アヴァン・ポップかトイ・ポップみたいに聞こえる(笑)。かなり「ヘン」な曲です(笑)。
『ペルシャ大王』の方は、ファンファーレとティンパニによる雄大なテーマ曲、木管とストリングスによるエキゾでロマンティックなスロー・ナンバー……と、さながらこのテの映画の劇伴の見本市。『マラソンの戦い』同様、ロマンティックな雰囲気は、かなり聴かせてくれます。あと、イマ・スマックみたいな女声スキャット入りのエキゾチカ・ナンバーが入っていたのが、私的に収穫。
『バイキングの復讐』は、もうちょいエピック寄りな感じですが、あんまり印象に残らず、それよりやっぱり、たまに入るロマンティックな曲の方に耳を奪われる。ロベルト・ニコロージさんは、ロマンティックで優美な曲では、実に良いお仕事をなさるなぁ。ピアノとストリングスによる、ひたすらスウィートな「愛のテーマ」は、これがバイキングの映画だと思うと、ちょっと「ん?」って感じもするんですが、それを別にすれば、とってもキレイなムード・ミュージック。
『怪傑白魔/ペルシャ大王/バイキングの復讐』サントラCD

『ペルセポリス』

『ペルセポリス』(2007)マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー
“Persepolis” (2007) Marjane Satrapi, Vincent Paronnaud

 フランス在住のイラン人女性が描いた自伝マンガを、自らが監督してアニメーション映画にした作品。
 いや、お見事!
 ユーモアを交えたモノガタリの語り口の面白さ、映像表現としての美しさや力強さ、作品の持つ普遍性や社会的な意義、と、三拍子揃った充実した見応えの作品でした。

 モノガタリの内容は、少女から成人した女性に至る一人の人間のいわば個人史なのだが、それを語る視点が、情緒に偏ることなく客観的なものなので、個人を通じて世界のドラマを見るという、多層性を持ったものとなっている。結果としてこの映画は、子供たちの世界を見るというジュブナイル的な楽しみ方もできるし、或いは、ガール・ポップ的なキャラクター・アニメーションや、女性映画や、時代背景や政治状況を知るといった具合に、様々な視点での鑑賞が可能になっている。
 表現面も素晴らしく、例えばメインのスタイルは、いささか素っ気なくぶっきらぼうなデザインのキャラクター(因みに一緒に見た熊は「LUMINEのルミ姉みたい」と言っていたし、私はちょっと「ナニワ金融道みたい」だと思った)が、フラットな画面の中で動き回り、悲喜こもごものドラマをユーモア混じりに演じるという、いわば「ちびまる子ちゃん」的なものなの。何の変哲もないカートゥーン的なスタイルだが、モノガタリの持つ重さや暗さを緩和する効果があるし、これによってリアリズム的なエモーションが抑制されていることよって、前述したような、情緒に偏らない客観的な視点といった印象にも繋がっている。
 また、この基本スタイルを軸に、語られるエピソードに併せて、様々なスタイルが自在に使われるのだが、そのどれもが見応えがある。例えば、昔語りが始まると、それに併せてフォーク・アートがそのまま動き出したかのようなスタイルに代わり、或いはシルエットを大胆に使って社会不安や戦争を表出したり、ギャグ的なメタモルフォーゼが出てきたり……といった具合に、各々が表現したいものに対して、最も効果的な見せ方、演出がなされるのだ。しかも、そのどれもが美しい。実写ではない、アニメーションという媒体ならではの醍醐味が、ふんだんに味わえる。
 そんなこんなで、ものすごく見応えがあり、観賞後は満足感でおなか一杯。

 以下、ちょっと個人的にあれこれ面白かった要素。

 時代背景について。
 自分はこれまで、イランにおけるイスラム革命というのは、国王の専政政治に対してイスラム保守派が起こしたものだとばかり思っていたんだけれど、そんな単純なものではなかったんですね。
 パーレビ(パフラヴィー)王朝自体が、二十世紀に入ってから軍事クーデターによって生まれたものであったことや、パーレビ時代に弾圧されていたコミュニストたちが、反政府勢力として革命に関わりつつも、革命後のイスラム体制下で、再び投獄・処刑されていたことなど、この映画で初めて知りました。
 勉強になりました。

 ゴジラについて。
 みんなが映画館でゴジラ映画を見るシーンがありましたが、私自身も1990年にイランを旅行したとき、イスファハンの映画館で『ゴジラ対ビオランテ』を上映していたのを思い出して、懐かしい気持ちになりました。泊まっていたムサッファルカーネ(イランの安宿)で同室だったイラン人たちが、私が日本人だと知ると、「ビオランテを見たか?」と聞いてきましたっけ(笑)。
 余談ですが、イランを旅する前から、かの地で『おしん』が人気だったとかいうのは聞いていたんですが、じっさいイスファハンのバザールで、ひらがなで「おしん」と書かれている真っ赤なバッグを見たときには、かなりビックリしました(笑)。あと、シラーズだったかケルマーンだったか、宿のフロントのオヤジが、夕方になるとテレビで見る『一休さん』のアニメを楽しみにしていたり、テヘランでズボンを買いに入ったブティックの名前が「TOKYO」だったり、イランにはいろいろ愉快な思い出があります(笑)。

 ジャスミンについて。
 自分がブラジャーをしていないことを残念に思ったのは、生まれて初めてです。う〜、真似してみたかったのに……(笑)。
 なんのことかって? それは映画を見てのお楽しみ(笑)。

 サントラについて。
 映画の主人公はロックやパンクに傾倒しているけれど、サウンドトラックの方はあまりそういった要素はなく、どちらかというと室内楽風味の瀟洒なアヴァン・ポップといった風情がメイン。親しみやすくてかわいいメロディーを、ユーモアを効かせた品のいいアレンジで楽しませてくれます。
 監督の言によると、ワールド・ミュージック風味は省いているとのことですが、私が聴くと、確かに伝統音楽的な要素はないものの、メロディーに懐メロ系のオリエント歌謡風情だったりして、けっこうエキゾ風味に感じられます。
「ペルセポリス」サントラ (amazon.co.jp)
 試聴ができる輸入盤のページにリンクを貼ってみました。
 私の一番のお気に入りは、オリエント歌謡 meets トイポップといった風情の21曲目”Teheran”。かわいくて優美な1曲目 “Persepolis theme”、フランス近代を思わせる3曲目” Tout ce qui est a vous m’appartient”なんかも、かなり好き。全体的に佳品揃いで、アヴァン・ポップ好きなら、サントラの枠を越えてもかなり楽しめる一枚です。
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Colton Ford発Joe Gage行き

 ひょんなことで目にした、コルトン・フォードというシンガーの、”That’s Me”という曲のプロモーションビデオが、余りにもマッチョでエロかったので、YouTubeにあったビデオを貼り付けてみます。何か、もう映像のエロさが強すぎて、逆に、どんな曲だったか音印象が残らないくらいです(笑)。

 さて、実はこのお方、元ゲイポルノスターらしい。ならば、このエロさも納得ですな。私は出演作を見たことがないんですけど、ちょっと調べたら、GayVN Awards(VNはvideo newsの略で、まあアメリカのゲイAV大賞みたいなものです)で2003年度のGay Performer of the Yearを獲得したりしています。
 現在では音楽活動と並行して、here!制作のゲイドラマ”The Lair”なんかにも出演しているらしいですね。彼の経歴を追ったドキュメンタリー映画”Naked Fame”(「裸の名声」ってとこでしょうか)なんてのもあるみたいで、これはちょっと面白そうなので見てみたい。
 しかしまあ、このPVを見てると、80年代にMan2Manの”Male Stripper”なんかにドキドキしてたことを思うと、隔世の感があります。で、こっちもYouTubeにあったので、貼り付けてみる。

 ど〜です、ババァの元クラバーには懐かしいでしょう(笑)。
 当時は、Man2Manはこの一曲しか知らなかったんですが(12インチシングルを持ってた)、数年前にCDで欲しくなってベスト盤を購入したら、他の曲もぜ〜んぶ同じ曲にしか聞こえなかったという、キョーフの金太郎飴アーティストだった(笑)。
 さて、ゲイポルノとクラブミュージックという繋がりで、もう一つ思い出した曲があって、探してみたらそれもYouTubeにあったので、貼ってみます。Man Parrishの”Heatstroke”という曲。ちょいとイントロが長いですけど。

 今回、改めて調べて初めて気付いたんですけど、前出のMan2Manをプロデュースしてたのって、このMan Parrishだったのね。知らなかった。
 で、この曲の何がどうゲイポルノなのかと言うと、実はこれ、元々はアメリカの伝説的なゲイポルノ映画監督、ジョー・ゲージが撮った”Heatstroke”というゲイポルノ映画のテーマ曲だったんですな。それが後にオーバーグラウンドでもヒットした。個人的には、映画で使われていた女声コーラスとかが入っていないバージョンの方が、音は多少チープでもストイックなアングラ臭があって好み。
 ジョー・ゲージの映画は何本かDVDを入手してるんですが、個人的に特に名作だと思っている、この”Heatstroke”のDVDは、未だ発見出来ず。あと、同様に名作の”Closed Set”(1980年版)のDVDも見つからず。また、入手出来た”Kansas City Trucking Co.”三部作のDVDも、ビデオ版と比べるとシーンがカットされた短縮版だったりするので、これまた残念な限りです。
 で、このジョー・ゲージ監督ですが、80年代中頃にゲイポルノからは退き、ティム・キンケイド名義で『虐殺バッドガールズ・地獄の女刑務所』だの『アンドロイド・バスターズ/残虐メカ帝国の逆襲』だの『ミュータント・ハント』だの『エネミー・テリトリー』だのといったB級映画を撮っていた。(とはいえ私自身は、この時代の監督作品で見たことがあるのは、エンツォ・G・カステラッリと共同監督している、ルー・フェリグノ主演の”Sinbad of the Seven Seas”だけなんですけど)
 やがて2000年代に入ると、ティム・キンケイド監督は再びゲイポルノを、ジョー・ゲージ名義で撮るようになる。何本か見ましたが、70年代中頃から80年代前半にかけて作品に見られた、あの圧倒的なパワーと比較してしまうと、残念ながらお年を召されてしまったなぁ、という感じでした。
 そんな作品の中に、これは未見なんですが、2002年の”Closed Set: The New Crew”というのがありまして、ここで最初に出てきたコルトン・フォードが、メインスターでクレジットされてる。むむむ、こうなると、見てみたいという欲求が、ムクムクと頭をもたげてくるなぁ(笑)。
……という具合に、PVのエロさに興味を持って調べ始めたら、自然に話題が一周して繋がっちゃった。自分でもちょっとビックリです(笑)。

古代ローマ遺跡の写真など

 単行本『ウィルトゥース』発売記念……ってなわけでもないですが、古代ローマつながりで、春にカルタゴに行ったときに撮った、ローマ遺跡(とフェニキア遺跡)の写真を、スライドショー仕立てにしたムービーをアップいたしませう。遺跡とか旅とか歴史とかに興味のある方、よろしかったらご覧くださいませ。

 例によって、ビデオ編集と音楽も手作りでゴザイマス(笑)。
 古代ローマ帝国の遺跡というと、本家本元のローマには、もうかれこれ20年以上前に一度行ったきりなんですが、初めての海外旅行だったせいもあって、コロッセオのスケールには圧倒されたし、フォロ・ロマーノを散策したのがすごく楽しかったことは、今でも良く覚えています。
 イタリア本国以外では、トルコで見たベルガマ(ペルガモン)の円形劇場が、山の斜面に作られていて、急勾配の上に反対側には何にもないもんだから、今にも転がり落ちてしまいそうで超怖かったのと、同じくトルコのエフェス(エフェソス)のやはり円形劇場が、もう余りの巨大さにカメラのフレームにもぜんぜん収まらなかったことなんかが印象深いです。
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 そのとき撮った写真。左がペルガモン、右がエフェソスです。
 あと、ヨルダンのジェラッシュに行ったときは、とにかくどこもかしこも柱だらけで、何だか建物を建てるために柱を立てたんじゃなくって、まるで柱を立てるために建物を建てたみたい……なんて思ったっけ(笑)。
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 左がジェラッシュの列柱通り、右が大神殿(……だったかな?)
 カルタゴのように、ローマに滅ぼされた遺跡や、あるいはローマの支配下にあった遺跡というと、これはやはりシリアのパルミラとヨルダンのペトラが最高だったなぁ。ただ、パルミラでは、砂漠のド真ん中だというのに雨に降られてビックリしました(笑)。
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 これは、二枚ともパルミラ。右の写真、雨で路面が濡れています。
 ペトラは、何と言ってもエル・カズネが有名なので、お目当てはもちろんそれでしたけど、いざ行ってみたら、その奥にまだまだ山ほど遺跡があり、山の上に上るとエル・カズネよりもずっと巨大なエド・ディルなんてものもあるし、山頂から周囲の山々を見回すと、砂漠のあちこちの岩壁に、風化して半ばとろけたような岩窟遺跡が点在してるわで、そのスケールに大興奮しましたっけ。
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 左から、有名なエル・カズネ、その奥の遺跡群、エド・ディル、山頂から見た遺跡群。
 あと、ここいらへんをウロウロしていたときは、私は貧乏気ままなバックパッカーだったもんですから、遺跡とかでボケ〜ッとしていると、現地の人たちに声を掛けられて、ひととき仲良くなったりもするんですな。で、パルミラに行ったときも、そんな感じで、地元のトラック野郎の集団に声を掛けられて、お昼ご飯(アラビアパンと何かの実の漬け物だった)をごちそうしてもらいました。
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 これがそのシリアのトラック野郎どもなんですが、確か「お前の仕事は何だ」と聞かれて、「画家だ」とテキトーに応えたら、「俺の顔を描け」「俺も描け」ってな具合で、こいつら全員の似顔絵を描かさる羽目になってしまった。で、アラブ人って似たような顔つきだから、描きわけが難しくってねぇ(笑)。
 しかし、こうして改めて写真を見ると、自分の若さと細さの方がビックリですな(笑)。誰だこりゃって感じ(笑)。まぁ、まだ20代だったし、体重に関しても、このときは長期の貧乏旅行のおかげで、日ごと自己最低体重を更新してましたから。
 因みに、一番右の写真で私が頭にかぶり物をしているのは、これはこの中の一人が、自分の頭のやつを解いて、「お前もかぶってみろ」と巻いてくれたんです。

「ソドムとゴモラ」サントラ

「ソドムとゴモラ (Sodoma e Gomorra)」サントラ
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 ロバート・アルドリッチ&セルジオ・レオーネ監督による、米伊合作大スペクタクル映画のサントラCD。
 音楽はミクロス・ローザ。サントラCDは既発のものがありましたが、今回のこれは、ミクロス・ローザ生誕100周年記念と銘打った二枚組。過去のアルバムには未収録だった曲はドバドバあるわ、未発表テイクも入っているわで、前に出ていたCDは持っていたけど、やっぱ買い直しちゃいました。
 っつーのも私、このスコアが大好きでして。大作スペクタクル映画の劇判のお手本のような、壮大、重厚、ロマン、エキゾ、全てがテンコモリの、実に堂々たる音楽。概して私は、史劇のサントラは大好きなんですが、なかでもこの「ソドムとゴモラ」と、同じくミクロス・ローザの「ベン・ハー」、そしてエルマー・バーンスタインの「十戒」が、お気に入り三大巨頭。

 そんなわけだから、もうこの映画のサントラ買うのは何度目かな。最初に買ったのは、まだガキの頃。「ベン・ハー」のシングル盤で、そのB面が「ソドムとゴモラ」の序曲で、A面よりB面の方を良く聴いていました。それから、確か高校生くらいのときだったと思うけど、「すみや」というレコード屋さんが、LPでサントラを復刻発売してくれまして、もういそいそと買いに行ったもんです。ちなみに同じ復刻シリーズで、「サテリコン」のサントラも発売されて、これも大喜びで買った(笑)。で、五〜十年前くらいに、輸入盤で前述のCDを見つけて購入、そして今回の二枚組。
 因みに、ありがたいことに、前述の「ベン・ハー」のサントラも、二枚組CDが出ていて、それを持っている。が、残念なことに「十戒」は、一枚もののCDしか持ってない。昔、アナログ盤で出た二枚組LPを持っているんだけど、一枚もののCDには未収録の曲とかがあるんだよなぁ。一枚もののCDも既に廃盤らしく、amazonのマーケット・プレイスでトンデモナイ値段が付いているくらいなんだから、二枚組のヤツを復刻して欲しいもんです。
 そんなこんなで、今回出た「ソドムとゴモラ」二枚組、まぁ、聞き覚えのない曲が出てくるわ出てくるわ。DIGITMOVIESのサイトを見ると、早くも在庫稀少とのことなので、欲しい方はお早めに。

 あとついでに、映画のDVDも出てくれりゃいいんですけどね。「ベン・ハー」とか「十戒」とかはコレクター盤が発売されているし、「聖衣」や「ディミトリアスと闘士」や「キング・オブ・キングス」や「偉大な生涯の物語」や「天地創造」とかも正規盤で出ているし、「サムソンとデリラ」や「クオ・ヴァディス」はパブリック・ドメイン盤で出てるんだけど、「ソドムとゴモラ」はないんだよな〜。ドイツ盤を見つけたんで、とりあえず買ったけど、やっぱ字幕付きが欲しい。
 ま、映画としてはさほど評価は高くない作品ではありますが、セットやモブのスケール感や、回転する車に縛り付けられての火あぶりのシーンだけでも、私としては満足の映画です(笑)。美人もいっぱい出てくるしね。

 そういや、ちょっと前にテレビ映画らしき「ソドムとゴモラ」ってDVDが出たんですが、リチャード・ハリスが主演のヤツ。これ、見たら原題が “Abraham” で、よーするにアブラハムの伝記映画みたいなもんで、ロトやらソドムとゴモラの滅亡なんてのは、ほんの脇筋、ちょっとしか出てこないっつー、サギ邦題系でした(笑)。
 でもまあ、ソドムとゴモラのエピソードや、スペクタクルを期待して見ると「何じゃこりゃ」ではありますが、サギ邦題だとわきまえて見る分には、聖書やら歴史やらに興味がある人だったら、地味ながらもそれなりに面白く見られる内容でした。同じテレビものでも、紅海が割れるシーンの余りのショボさに腰砕けになった、ベン・キングズレー主演の「十戒」よりゃ、よっぽどマトモかな(笑)。
「ソドムとゴモラ(Sodoma e Gomorra)」(amazon.co.jp)