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「闘将スパルタカス」「ヘラクレス 魔界の死闘」サントラ

「闘将スパルタカス (Il figlio di Spartacus)」サントラ
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 セルジオ・コルブッチ監督、スティーヴ・リーヴス主演の「闘将スパルタカス」のサントラCD。映画の内容については、前にここで紹介しました。
 音楽はピエロ・ピッチオーニ。復刻サントラで有名なDIGITMOVIESから出ている、ソード&サンダル映画サントラ集 “The Italian Peplum Original Soundtrack Anthology” シリーズ、第四弾。これで、このシリーズのリーヴス主演映画のサントラは二枚目。うふふ、この調子でもっと出してくれぃ(笑)。
 リフレインしながらじわじわと盛り上がっていくストリングスに、勇壮に吹き鳴らされるホーンが重なり、ティンパニがダダダダ〜ッと加わって盛り上がっていくテーマ曲は、スペクタクル系の壮大さと、西洋チャンバラ的軽快さが上手い具合にブレンドされていて、なかなかいい感じ。いかにもヒーロー映画といった趣が、気分を高めてくれます。
 スローテンポな曲や、宴会シーンの音楽などで顔を出す、民族楽器を使ったいかにも西洋史劇的なエキゾ風楽曲も、かなり魅力的です。反面、ウットリ系のスウィート成分や、ロマンティック成分は控えめ。
 ピクチャー・ディスクで、CD盤面には上半身裸のリーヴス様がデ〜ンと。8ページあるブックレットはフルカラーですが、おそらくほとんどはDVDからのキャプチャ画像っぽい。その他は、人着された当時の宣材スチル一点、公開当時のアメリカやイタリアのポスター画像、スペイン盤DVDのジャケなんかが載ってます。
「闘将スパルタカス」サントラ(amazon.co.jp)
 この “The Italian Peplum Original Soundtrack Anthology” シリーズ、前にここで第一弾の「ヘラクレス/ヘラクレスの逆襲」を紹介しましたが、第二弾でジュリアーノ・ジェンマ主演の「タイタンの逆襲 (Arrivano i titani)」、第三弾でジュゼッペ・ヴァリ主演の "Roma contro Roma (War of the zombies)" が既に発売されています。でも、私は映画を未見なのでスルー。
「ヘラクレス 魔界の死闘 (Ercole al centro della terra)」サントラ
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 マリオ・バーヴァ監督、レジ・パーク主演の「ヘラクレス 魔界の死闘」のサントラ。映画については、前にちょっとここで触れました。
 音楽はアルマンド・トロヴァヨーリ。以前、渋谷系とかが流行ったときに持て囃されましたが、このサントラはそーゆーヒップ系じゃないです。これもDIGITMOVIESからの復刻なんですが、”The Italian Peplum Original Soundtrack Anthology” シリーズではなく、バーヴァ監督映画のサントラ・シリーズの第五弾として発売されています。
 映画が「ソード&サンダル映画 meets ホラー映画」という変わり種なので、音の方もまさにそんな感じ。基本はホラー系で、不安感を煽る怪しい旋律、不協和音、パーカッション群の乱打、ストリングスのトレモロなどで、じわじわと不気味感を煽ってくるんですが、たまにホーンによるスペクタクル系の壮大&勇壮なモチーフや、木管やハープによるエレガントでロマンティックなモチーフが顔を出したりして、でもまたすぐにホラー系に戻る……ってな調子で、何とも不思議な感じ。
 幾度も顔を出す、低音のピアノやティンパニによるリフに、怪しい電子音やストリングスが重なり、ホーンが高らかに吹き鳴らされるメイン・モチーフは、不気味かっこよくて、けっこうクセになります。
 情緒的だったりエモーショナルだったりする要素は希薄ですが、現代音楽的な面白さがあり、雰囲気的にはジェリー・ゴールドスミスの「猿の惑星」のスコアとかに近い感じ。
 12ページのブックレットは、各国版ポスター、スチル写真などがたっぷり。う〜ん、やっぱりレジ・パークは、筋量たっぷりのいい身体してるなぁ(笑)。盤面もカラーのピクチャー・ディスク使用。
「ヘラクレス 魔界の死闘」サントラ(amazon.co.jp)

最近よく聴いているCD

 ここのところずっと「ノスタルジックなモチーフのストリングス曲を聴きたい気分」が続行中。で、そーなると映画のサントラってのがなかなか便利で、そんな中から比較的近年のものを、ちょいと書き出してみます。
Oliver_twist_cd『オリバー・ツイスト』レイチェル・ポートマン
 ロマン・ポランスキー監督の2005年版。
 正直言って映画そのものは、可もなく不可もなくといった感じで、絵的にはキレイだし、見ている間はそこそこ面白かったにも関わらず、見終わった後は不思議と印象が薄い。で、一番記憶に残ったのが、ベン・キングズレーがベン・キングズレーだとぜんぜん判らなかった化けっぷり(笑)と、劇判で頻出する「♪き〜てきいっせい、しんばしを〜」みたいなメロディーのメイン・モチーフ。
 改めてCDで聴いてみると、メイン・モチーフが「鉄道唱歌」を連想させるのは出だしだけで、全体を通して聴くと、それほど似てもいなかった(笑)。とはいえ、昔の唱歌や童謡に通じるような、親しみやすく覚えやすいメロディーなことは確かで、どこかノスタルジックな香りが漂う、かなり好みの曲。
 で、このモチーフがメジャーになったりマイナーになったりして、あちこちで変奏されていきます。例えば、基調がメジャーの一曲目 “Streets Of London” は、明るい希望や拡がる風景などをイメージさせるのに対して、マイナーの二曲目 “The Road To The Workhouse” は、哀愁や艱難辛苦の予感を孕んでいる。その表情の変わり方が実に自然で、懐の深いメロディーだなぁと感心。
 フォーク/トラッド味はないですが、ノスタルジックな童謡風という点で、聴きたかった雰囲気にマッチしていて、お気に入り。
『オリバー・ツイスト』(サントラ/日本盤)
『オリバー・ツイスト』(サントラ/輸入盤)
 日本盤と輸入盤ではジャケットが違います。あたしゃ、輸入盤の方が好みだったので、そっちを購入。
Ned_kelly_cd『ケリー・ザ・ギャング』クラウス・バデルト
 グレゴール・ジョーダン監督の2003年作。
 ヒース・レジャー主演、オーランド・ブルーム共演にも関わらず、日本では劇場未公開。ただ、DVDは発売されていて、私もそれで鑑賞。オーストラリアの開拓時代、被差別民だったアイルランド系流刑囚の息子ネッド・ケリーとその兄弟たちが、周囲からの差別と偏見によって追い込まれていき、否応なく無法者となっていく内容の映画です。悲劇的な話ではありますが、面白いし見応えもあります。
 でもまぁ、私はけっこうヒース・レジャーが好きなので、その贔屓目もありますが(笑)。声がいいんだよね〜、この人。加えてこの映画では、後半ヒゲモジャだし(笑)。ヒース・レジャーかジェイク・ギレンホールか、どっちか選べと言われたら、あたしゃ問答無用でヒース派……って、別にここで『ブロークバック・マウンテン』を持ち出す必要もないし、誰もテメーなんかにゃ選ばれたかねーよって感じでしょうが(笑)。
 雄大で感傷的なメロディーを奏でるストリングスに、ワールド・ミュージック系の女声コーラス……とくると、最近の史劇映画の劇判のお約束で、新味はさほどないですが、映画の内容がアイルランド系移民の話なので、ケルティック・トラッド風味が多いのが嬉しいところ。むせび泣くようなティン・ホイッスルや爪弾かれるハープの音色は、やはりどこかノスタルジックで心の琴線を擽られます。
 バーナード・ファニングという人が歌っている二つの挿入歌、ネッド・ケリーへのラメントのようなフォーク調の “Shelter For My Soul” と、囚人移民を歌ったトラッド曲 “Moreton Bay” も、どちらも佳良。特に、後者はお気に入り。
『ケリー・ザ・ギャング』(サントラ/輸入盤)
『ケリー・ザ・ギャング』(DVD)
American_outlaws_cd『アメリカン・アウトロー』トレヴァー・ラビン
 レス・メイフィールド監督、コリン・ファレル主演の2001年作。
 南北戦争後、負け組となってしまった南軍兵士にして南部の農夫ジェシー・ジェームズとその仲間が、北部の圧政によって追い込まれ、無法者になっていく映画……と、構造的には前述の『ケリー・ザ・ギャング』と似ているんですが、重厚な悲劇だった『ケリー・ザ・ギャング』とは異なり、こちらは徹底してユーモア風味の軽〜い痛快アクション作。めっぽう楽しく、後味もハッピー。これはこれで悪くない。
 うちの相棒は、この映画のコリン・ファレルが「珍しく情けなくない」と喜んでおりましたが、あたしゃ情けないコリン・ファレルが可愛くて好きなので、そーゆー意味ではちょいと物足りない(笑)。こんなかっこいい役より、もっとヘナチョコな役のときの方が好き(笑)。つい先日も『イノセント・ラブ』ってのを見て、山だしのコリン・ファレルが都会のオネーサンに筆おろしして貰い、童貞喪失して泣き出しちゃう姿が、もーこなくそかわいくって、かいぐりかいぐりしてやりたくなった(笑)。
 音楽の方は、史劇調の重厚さと、アクション映画風の威勢の良さに、更にカントリー調の明るさと泣きが、上手いことブレンドされている感じ。ただ、ロック調のエレキギターが顔を出したりするあたりは、好みが分かれるかも知れません。クイーンの『フラッシュ・ゴードン』とまではいかないまでも、TOTOの『砂の惑星』くらいの感じです。
 話は逸れますが、あたしゃイエスのせいで、トレヴァー・ラビンとトレヴァー・ホーンがいっつもコンガラガッちゃいます(笑)。今回もサントラのトラヴァー・ラビンという名前を見て「あ、バグルス→イエスの人か」とか思ったんですが、調べてみたらそれはトレヴァー・ホーンの方だった(笑)。
 で、このサントラでは、前述したような要素がブレンドされた “Perfect Outlaws” って曲が一番のお気に入り。
『アメリカン・アウトロー』(サントラ/輸入盤)
『アメリカン・アウトロー』(DVD)

お正月に良く聴いたCDあれこれ

Godowski『ジャワ組曲』レオポルド・ゴドフスキー
 ゴドフスキーってのは、ピアノの超絶技巧練習曲とかで有名な人らしいんですが、寡聞にしてそっちのことは良く知りません。検索してみると、何だかクラシックの中では、ちょっとキワモノっぽい扱いのようではありますが、何となくスゴそうな人ではあります。で、これはそんなゴドフスキーさんがインドネシア旅行に行った際の印象を、1920年代にピアノ組曲として作曲したものらしいです。
 聴く前は、ガムランとかをピアノで再現するようなヤツかしらんとか想像してたんですが(ホラ、何てったって超絶技巧だし)、いざ聴いてみるとフツーにキレイで聴きやすい、エキゾチックなピアノ小曲集でした。一曲目の「ガムラン」からして、いかにも西欧文化から見た東洋って感じのフレーズが頻出して、エキゾチカ好きにはかなりタマランものがあります。
 民族音楽的なアプローチを期待すると、わりと雰囲気だけという感じなので裏切られるとは思いますが(ピアノ版ガムランとかだったら、ジョン・ケージの「バッカナーレ」とかの方がオススメ)、覚えやすくキャッチーでエキゾチックなメロディーは、充分に美しくシンプルな力強さがあります。良く聴くと装飾音とかが複雑なんですが、フツーに聴いているぶんには実に流麗で、そんなヤヤコシサは微塵も感じさせないってのも、個人的には好感度大。
 そんなこんなで、自分のルーツとは直接縁がない観光音楽的な民俗楽派みたいな……って、よーワカラン説明ですが(笑)、そんな味わいがあるので、エキゾチカ好きや、お堅いことは気にしない国民楽派や民族楽派好きにオススメ。インドネシア人女性ピアニスト、エスター・ブディアルジョの演奏も、パキッと立った音の粒が気持ちいし、表現力もありながら過度に情緒に流れることもなく、個人的に好感度大。
“ジャワ組曲” ゴドフスキー (amazon.co.jp)
Still『交響曲第1番 アフロ=アメリカン/交響詩 アフリカ、他』ウィリアム・グラント・スティル
 スティルという人は、アメリカのクラシック畑において、黒人の作曲家や指揮者としてパイオニア的な存在の人らしいです。生没年は1895〜1978年ですが、自らのルーツであるアフロ=アメリカン文化の要素を、ロマン派的なクラシック音楽に組み込んだような、いわば遅れてきた民族楽派ってな感じでしょうか。
 全体の印象としては、楽曲はあくまで平明で美しく、それがシンプルな力強さになってエモーションを揺すぶられます。特に、冒頭に収録されている「イン・メモリアム〜民主主義のために亡くなった有色人種の兵士たちへ」なんて、黒人霊歌的な哀切さと軍楽的な力強さとクラシック的な雄大さや繊細さが合体していて、聴いていて思わず泣きそうになったほど。これ、すっげーオススメ。
 メインの「交響曲第1番 アフロ=アメリカン」も、ブルーズっぽいキャッチーな哀愁メロディーの第1楽章、それがよりメロウになる第2楽章、クラシックだけどミュージカルのレビューもそこのけの陽気でダンサブルな第3楽章、前述の「イン・メモリアム」にも通じる哀切な雄大さで始まりパッショネイトでドラマチックに幕を降ろす第4楽章まで、楽しさも感動もテンコモリ。これまた激しくオススメ。
 そういうわけで、ロマン派や民族楽派好きとか、ガーシュウィン好きとかならオススメ。あと、映画音楽好きにもオススメなので、クラシックは聴かないけど映画音楽は好きで、最近だとジェームス・ホーナーとかハンス・ジマーとかが好きだという方も、だまされたと思って一度トライしてみては?
“交響曲第1番 アフロ=アメリカン” スティル (amazon.co.jp)
Yellowriver『ピアノ協奏曲 黄河、他』殷承宗、他
 これは有名ですよね。文化大革命のときに西洋音楽が禁止され、中国のクラシック音楽家たち総動員で制作された、政治的意図が明確な中華国民音楽。
 ガキの頃、NHKとかで中国のオーケストラの来日演奏の放送なんかがあると、よくこの曲が演奏されていたのを覚えています。クラシック的には完全にキワモノ扱いで、じっさい私が買ったCDの帯(NAXOS盤)の紹介も、「テンションの高いオーケストラによる導入に続き、モーレツな勢いで炸裂するピアノ・ソロによる炎の大アルペジオ、さらには絵に描いたような『いかにも中国風』の旋律の堂々と登場(中略)強烈・濃厚な中華ロマンは、そのあまりのわかりやすさゆえに聴くものをして赤面させるほど」ってな具合で、完全にギャグ扱い(笑)。だから、前述のテレビ放送を見た私が「この曲、好き」とか言うと、真っ当なクラシック好きなウチの父なんか、イヤ〜な顔をしたもんです(笑)。
 でも、この「ピアノ協奏曲 黄河」って、そういう「判りやすさ」が最大の魅力だと思います。映画音楽でもエキゾチカでも何でも好きな人なら、クラシック的にはキワモノでも、割とフツーに聴ける楽しい曲だと思います。もう、中国製スペクタクル映画を見ている気分になれます。
 加えてこのCDは、同時収録で中国のピアノ曲がいっぱい入っていまして、これがまた何とも愛らしい佳品揃い。例えば「月を追う色とりどりの雲」って曲は、高峰三枝子の「南の花嫁さん」の原曲である中国の民謡をクラシック風にアレンジしたもので、お馴染みの親しみやすく美しいメロディが、ヒラヒラと舞う蝶のごとく美しいアルペジオに飾られながら奏でられ、聴いていてウットリしちゃいます。同じく民謡をアレンジした「愉しいロソ」も、ピコピコ動き回る音の粒が、何だか子ネズミでも走り回っているようで、楽しいのなんのって。他にもモンゴル民謡をアレンジした小品集とか、どれもこれも心の琴線を擽るような、エキゾ懐かしいメロディの宝庫です。オリジナルものでも、「バレエ組曲 人魚」の一曲目のタイトルが「朝鮮にんじん」だったりすると、もうそれだけで何だか嬉しくなっちゃう(笑)。
 ってな具合で、この同時収録のピアノ小品だけでも一聴の価値あり。ゴドフスキーの「ジャワ組曲」同様にエキゾ好にはもちろん、服部良一や中華懐メロ好きにもオススメです。
“ピアノ協奏曲 黄河、他” 殷承宗、他 (amazon.co.jp)
Addiofratellocrudele『さらば美しき人』エンニオ・モリコーネ
 前にここでDVDを紹介した、ジュゼッペ・パトローニ・グリッフィ監督、シャーロット・ランプリング主演映画のサントラのリイシュー盤CDです。
 DVDの紹介時にも書きましたが、音楽は哀感を帯びた古楽風の美メロ。映画と併せるといささか饒舌に過ぎる感があったけれど、逆に単体の音楽としてはそれが強みでもあります。改めて音楽だけ聴いていると、やはりこの哀愁メロディーは良いなぁ。ハープシコードや木管で奏でられる美しい旋律、そこに控えめに寄り添って情感を盛り上げる美麗なストリングス、ときおり顔を出すスキャット(モリコーネだからエッダかな?)、ひたすらメロウで美しい。
 メロディーはキャッチーで全体の雰囲気が古楽風という点では、ニーノ・ロータの『ロミオとジュリエット』にも通じるものがありますね。あっちの方がよりスウィートですけど、全体を通して一種のポップ感や歌謡感があるあたりは似ています。ゴスなミサ風の曲まで、そこはかとないポップ感が漂っているのも、まあご愛敬(笑)。
 前にここで紹介した『ヘラクレス/ヘラクレスの逆襲』と同じDIGITMOVIESからの復刻なので、ブックレットには各国版のポスター(日本のもありました)やロビーカード、スチル写真等が掲載。プロモーション用スチルは、やっぱヌード・シーンが多いのね。ランプリングの乳首もオリヴァー・トビアスの美尻もバッチリ載ってます(笑)。
 DIGITMOVIESのサイトを見ると、昨年暮れの発売にもかかわらず、既に在庫が稀少のようなので、欲しい方はお早めにどうぞ。
“さらば美しき人” モリコーネ (amazon.co.jp)
『さらば美しき人』DVD (amazon.co.jp)

『トリスタンとイゾルデ』

『トリスタンとイゾルデ』(2006)ケヴィン・レイノルズ
“Tristan + Isolde” (2006) Kevin Reynolds
 ワーグナーの楽劇で有名な、中世伝承文学の映画化。ロミオとジュリエットの原型的な悲恋物語ですが、構造的には、アーサー王伝説におけるラーンスロットとグィネヴィアに近いのかな。
 リドリー・スコットがプロデュースとのことで、内容の硬派さや絵的な見応えに、ちょっと期待していたんですが、それらはどちらも見応えありでした。
 絵的な面に関しては、構図の美しさが一見の価値あり。物語の前半、アイルランド王妃の葬送のシーンで、雄大ながらもいかにも荒涼とした風景の中、ちっぽけに蠢く人間たちという、素晴らしいスケール感の対比には思わず瞠目。
 同様に、入り江に浮かぶ船団のシーンなど、ドラマの主役である「人」や「モノ」を極力小さく、しかもセンターを外して配置して、あくまでも「風景」という世界の中の一部として見せる構図の数々が、実に見事で素晴らしい。同じ監督の『ロビン・フッド』のときには、こういった感覚に感心した記憶はないので、これは撮影のアルトゥール・ラインハルトという人のセンスなんだろうか。
 他にも、戦死者を船に乗せて火葬で送るシーンとか、婚礼の場に向かうイゾルデを乗せた船のシーンとか、絵的に「こう見せたい」というのがはっきり伺われる画面が多々あり、映画の「絵を楽しむ」という面では、かなり満足度は大の作品でした。
 ただ、全体的に彩度を極端に落とした画面設計は、重苦しい悲劇の予感としても、寒々とした感覚の惹起という点でも、それなりに面白い効果はあるものの、全てがそれで一本調子なので、ちょいと途中で飽きがくる感もあり。これは、もうちょっと内容の変化に応じてのメリハリが欲しかった。一律に彩度を落としているだけで、低い彩度の中での色彩設計までは気が回っていない感じ。
 内容的には、神話伝説的な要素は極力排除して、リアリズム志向で歴史物的に再構成した、という感じでしょうか。
 ただ、奇妙なことに『トリスタンとイゾルデ』と謳っているわりには、肝心要の恋愛要素がひどくおざなりで、それより各国間の政治的な駆け引きや戦闘シーンといった部分に重きが置かれている。規模は小さいけど迫力はタップリな、えらく気合いの入った戦闘シーンに比べて、主人公二人の恋模様の描写の、何とも気が抜けていーかげんなことよ。正直「……これ、別にトリスタンとイゾルデじゃなくってもいいじゃん」とか、思ってしまいました(笑)。
 演出も、風景や情景や戦闘といった「絵」を見せることに注力するのみで、人物の内面を描くという点がおそろしく不足している。登場人物たちの行動原理は、神話伝説的なシンプルで力強いものではなく、より近代よりの人間的なものであるにも関わらず、そういった内面描写が不足しているのが、何ともちぐはぐで落ち着きが悪い。よって、愛する者への裏切りや、裏切ったものへの赦しとかいった、心情的な部分でのドラマも、頭では理解できるんだけど感情には訴えてこないので、見ていてエモーションが揺さぶられることもない。
 特に、主役二人の内面描写の乏しさは致命的で、しかも外見上の魅力も乏しく、ラブシーン関係もおよそ褒められた出来ではないせいもあって(ラブシーンで「美しい」とか「ロマンチック」と感じさせるような絵が微塵もないってのは、恋愛が鍵となるドラマでは、ちょっとどうかと思うぞ)、悲恋の二人に感情移入するとか同情するとかではなく、逆に「……うっとおしい連中!」とまで思ってしまった(笑)。
 これはドラマの構成にも問題があって、こういった運命的な悲恋ものの場合、恋人たちの意志とは関係なく、にっちもさっちもいかない状況に追い込まれていくからこそ、結果として訪れる悲劇に重みが増すのだが、この映画の場合、主人公たちが「自分たちの意志で選択できたはず」の状況が多すぎる。よって、彼らから受ける印象も、「過酷な運命を辿らざるをえなかった悲劇の恋人たち」よりも、「身勝手に周囲を振り回すバカップル」に近いのだ。
 以下、ちょっとネタバレを含みますので、お嫌な方は次の段は飛ばしてね。
 こうなると、前述したリアリズム志向の再構成という点とも関係するのだが、原典で二人を宿命の恋に走らせる「媚薬」の存在を、映画では完全に排除していまったのが裏目にでてしまう。このことによって、恋人たちの結びつきは、あくまでも二人の意志に異存することになるからである。
 ならばせめてこのカップルに、若気の至り的な同情をさそうような、初々しい魅力があれば救われるのだが、前述したようにそういった要素もない。
 そんな二人の愛について、最後にもっともらしく「二人の愛は国を滅ぼすことはなかった」なんて語られても、つい「そりゃ、結果として『滅ぼすには至らなかった』だけであって、別に『二人の愛が国を救った』わけでもないんだから、他の人からしてみりゃ、やっぱ迷惑なバカップルだったじゃん」とかツッコミたくなるし、そんな愛が至上のものとは到底思えない、ってのが正直な印象。
 ただ、愛の偉大さが、二人の恋愛ではなく、それによって裏切られたにも関わらず、最終的に赦すことができた、マーク王の愛について語られているのだとしたら、それなら納得ですけど。このマーク王、ホントいい人だわ(笑)。
 役者陣は、トリスタン役のジェームズ・フランコとイゾルデ役のソフィア・マイルズは、タイトル・ロールであるにも関わらず、前述したように残念ながら魅力がゼロ。特にソフィア・マイルズの魅力のなさは痛く、この人『アンダーワールド』のときは、脇役だったけど、今回よりもずっとキレイに撮られてたし、魅力もあったから、何だか気の毒な気がします。
 ロミオとジュリエットの伝統に倣って、こーゆー内容の話の場合は、ヒロインは初々しい溌剌とした魅力を最重要視した人選の方が良かった気はします。かつてジュリエットを演じた、スーザン・シェントールやオリビア・ハッセーのように、見ているだけでこっちも幸せになって、おもわず応援したくなるようなヒロインだったら、この内容でもバカップルにはならずに持ちこたえられるから。
 ともあれ、主演二人に関しては、全体的な魅力不足と内面描写の乏しさゆえに、演技力云々とは関係なく、全く感情移入できなかったのが辛かった。
 マーク王役のルーファス・シーウェルは、役柄的にも演技的にも、最も魅力的で見応えもありました。ただ、ちょっと外見が若々しすぎる気も。あと、この人は目の色のせいなんでしょうか、どうしても非人間的で感情が乏しそうだったり、歪んだ内面を持っていそうな印象を受けるので、今回は役柄としては、基本的にあまり合っていないという気も。逆に、『ダークシティ』の主役や、テレビ映画『トロイ・ザ・ウォーズ』のアガメムノン役とか、『レジェンド・オブ・ゾロ』の悪役とかは、けっこうハマってて好きだったんですけどね。
 その他の脇役については、更に内面描写が不足してキャラも立っていないので、外見以外には余り印象に残らず。アイルランド王役の、デヴィッド・パトリック・オハラって人は、ちょっとタイプでした(笑)。でもまあ、私の場合、こーゆー出で立ちでこーゆー髭面だったら、どんな男でもプラス30点増しくらいにはなるんですけどね(笑)。
 そんなこんなで、ちょいとバランスは悪いけれども、基本的には地味で真面目に作った歴史映画という味わいなので、西洋史劇が好きな方だったら、お楽しみどころもタップリです。
 前述した構図等の画面の見応えに加え、セットや美術やコスチューム等も、歴史的な重厚さを感じさせる出来映えで、かなり上質。それ系が好きな方だったら、そういう満足度は高いでしょう。
 アクション系も、前述の迫力のある戦闘シーン以外にも、姫を勝ち取る競技大会のシーンが、全体をまるでボクシングの試合のように見せたり、石の札で対戦相手を決めていくとか、細かなディテールがいろいろ凝っていて面白いので、古代戦闘好きの方に加えて、ファンタジー等の設定マニアの方にもオススメかも。
 逆に、古典ロマンスを期待しちゃうと、ちょっと裏切られちゃうかもしれません。『トリスタン・イズー物語』好きやワーグナー好きの人は、別物と割り切って見た方が吉。特に、ワーグナーの楽劇は好きだけど、史劇には興味がないというクラッシック好きの方は、この映画にはワグネリズム的な要素は皆無なので要注意。
 あ、あと、アン・ダッドリーによるスコアも、個人的にはけっこう気に入りました。派手にエピック風に盛り上げるのではなく、情感を押さえて静かに流れつつ、ところどころでトラッド風(そういえば、楽曲提供のクレジットには、アフロ・ケルト・サウンド・システムの名前もありました)や古楽風の要素も入ったりして、なかなかいい感じでした。
『トリスタンとイゾルデ/オリジナル・サウンドトラック』 (amazon.co.jp)

FLASHとかアニメーションとか

 FLASHてのは、私にとって「興味はあるんだけど触りそびれている」アプリケーションだったんですが、ひょんなことから「体験版は30日間無制限で使用可」だと知って、これ幸いとダウンロードして使ってみることにしました。
 アニメーション好きな人間の例に漏れず、私も趣味のアニメーションを作ってみたいな〜、なんて想いはありまして。で、動画を一枚一枚描くのは、技術的にも時間的にもハードルが高いけれど、切り絵みたいな手法ならば、比較的短期間で作れるかも知れない。
 また、ウェブ上で見られる各種のFLASHアニメーションには楽しませていただいているし、テレビでやっていた『アークェとガッチンポー』もけっこう好きだったし、そんなこんなでFLASHは、一度いじってみたいアプリケーションだったわけです。
 というわけで、何か一本作ってみたいと考えていたところ、ちょうどその頃、趣味で作った音楽で、自分で聞いていて「何だかコブタがキーキー騒いでるみたいだ」と思った曲があったんで、よし、これにコブタのアニメーションを付けてみようと思い付いた。
 で、出来上がったのがコレ。
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 上のブタさんをクリックすると、別ウィンドウが開いてアニメーションがスタートします。
 ま、内容はブタが走り回ったり飛んだりするだけですけど、画面構成のシンプルさとテンポの良さにはこだわったつもり。自分では、ちょっとオスカー・フィッシンガーの影響があるかもと思ってます(どこが!)。
 MTV風にしたかったので、曲との同期を優先しましたから、CPUのパワーによってはコマ落ちする部分もあるかも知れませんが、そこはご容赦を。因みに私の環境だと、1.42GHzのMac miniでは問題なかったんですが、350MHzのPower Macだと部分的にコマ落ちしちゃいました。
 因みに曲の方は、ハイテンションでミニマル・ミュージック風味のテクノです。

『ヘラクレス/ヘラクレスの逆襲』オリジナル・サウンドトラック

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“Le Fatiche di Ercole / Ercole e la Reggina di Lidia (O.S.T.)” by Enzo Masetti
 マカロニ・ウェスタンやジャーロ映画のサントラ復刻でお馴染みのDigitmoviesから、スティーヴ・リーヴスの『ヘラクレス/ヘラクレスの逆襲』のサントラが、二枚組CDで発売。いや〜、まさかまさかの復刻なので、実に嬉しい。
 音楽はエンツォ・マゼッティ。この二本以外は良く知らない人なので、ちょっと調べてみたところ、イタリア映画音楽の先駆者として尊敬されている人物、とのことで、何と生年は1893年、19世紀生まれの方でした。『ヘラクレスの逆襲』が最後の仕事で、2年後の1961年には既に亡くなっている。う〜ん、これだけキャリアの古い方だと、馴染みがなくても当たり前かも。
『ヘラクレス』も『ヘラクレスの逆襲』も、スペクタクル映画とはいえ、ハリウッド製の本格史劇とは異なり、どこか軽い楽しさや陽性な明るさがあるのが魅力的な作品ですが(キリスト教絡みではないので、辛気くささや説教くささも皆無だしね)、劇判の方も同様で、重厚さや大仰さよりは、親しみやすいポップな楽しさや、ロマンティックさが印象に残ります。
 特にロマンティックさの方は、流麗なストリングスや美しいコーラスの効果も相まって、ラウンジ系のムード・ミュージックにも似た、実にデリシャス・ゴージャスな味わい。中でも二作通じての「愛のテーマ」とでも言えそうな”Con te per l’eternita”(というタイトルだと、今回初めて知りました)は、なかなかの名曲。
 CDの作りは、復刻盤として丁寧に作られています。
 オーケストラ・スコアが収録されたオリジナル・マスターを基に、映画の時系列に併せて再構成されたものらしく、モノラルながら音質的には問題なし。もちろん過去には未発表だった音源も多々あり、珍しいところでは、ミックス違いやデモ音源なども、ボーナス・トラックとして収録。
 一つ残念だったのは、『逆襲』のイオレの歌(演じていたのはシルヴァ・コシナですが、歌は吹き替えで、実際に歌っているのはのMarisa Del Frateという人だそうな)が、権利の関係か収録されていなかったこと。ライナーを読むと、過去にこの二作のサントラ盤は、ナレーションやダイアローグ付きのバージョンとか、Marisa Del Frateの歌が収録されたバージョンが、アナログで出ていたらしいので、どうせならそれも併せて復刻できていれば、もうパーフェクトだったんですけどね。
 あ、でも『ヘラクレス』のアルゴ船の乗組員たちが歌う船乗りの歌が、ちゃんと入ってたのは嬉しかったなぁ。この歌、映画で見るとちょっと唐突でビックリしちゃうんですけど、個人的にはけっこう好きなもので(笑)。
 音以外のジャケット等に関しては、パッケージ自体は何の変哲もない二枚組用のジュエルケースですが、12ページあるブックレットは、なかなか佳良。
 もちろんサイズはCDサイズと小さいんですが、両映画の各国版ポスターやロビーカードの画像が、フルカラーで掲載されています。CDの盤面も、これらの図柄を使ったピクチャー・ディスク仕様で、なかなか美しい。
 白黒のスチル写真も何点か掲載されており、プロモーション用のスチルもあるんですが、多くは舞台裏の楽屋写真なのが、何だか楽しくてヨロシイ。ヘラクレスの扮装のまま、カチンコ持ってふざけているリーヴスとか、撮影担当だったマリオ・バーヴァと談笑しているリーヴスとか、スクリーン上の凛々しさとは異なるくだけた笑顔が実にカワイイ。無防備に大股開きで椅子に座ってるもんだから、パンチラどころかパンモロだし(笑)。
 さて、気になるのがこのCD、”The Italian Peplum Original Soundtracks Anthology Vol.1″ と銘打たれているんですな。で、この「イタリア製ピラピラ映画」って、おそらくはソード&サンダルと同義だと思うんで、するってーと、今後の発売も楽しみに。
 何が出るのかな〜、ワクワク(笑)。
『ヘラクレス』『ヘラクレスの逆襲』サントラCD輸入盤(amazon.co.jp)

GarageBand Jam Pack World Musicとか

 前にここで「もう絶対に買っちゃうもんね」と書いたGarageBand Jam Pack World Music、だいぶ使い慣れてきたんで、使用感のレポなんぞを書いてみませう。
 まず、収録音源のリスト。

Bass〜ラテン・ベイビー・ベース/ギタロン/バラライカ
Choir〜南アフリカのクワイア/南アフリカのクワイア(ヴォイス・エフェクト)
Guitar〜月琴/ウクレレ/ブズーキ/中世のリュート/フラメンコ・ギター/ウード/サズ
Mallet〜カリンバ/アフリカン・マリンバ/ガムラン/チベットのシンギング・ボウル
Piano & Keyboard〜アフロ・キューバン・アップライト・ピアノ/ポルカ・アコーディオン/タンゴ・アコーディオン
Strings〜ハンマー・ダルシマー/ケルティック・ハープ/二胡/古箏/シタール/フィドル/琴/サントゥール
Woodwinds〜ティン・ホイッスル/笛子/洞簫/バグパイプ/バンスリ/シャナイ/尺八/中世のリコーダー/ネイティブ・アメリカン・フルート/パンフルート
Drum〜アフリカン・キット/アジアン・キット/ヨーロピアン・フォーク・キット/インディアン&ミドル・イースタン・キット/ラテン・キット

 ……とまあ、これだけの音源がマルチサンプルで収録(つまり、好きなように演奏できるってことね)されていて、加えてループも3000以上入っていて、それで\10,800というのは、いつものことながらコストパフォーマンスは良いのでは。
 それぞれの音源は、ベロシティの強弱やモジレーションで奏法が変化するものが多いです。
 自分がよく使う楽器を例にとると、バンスリはモジュレーションでビブラートの有無、スライドアップ、フラッター・タンギングといった奏法が制御でき、シャナイはモジュレーションで音の長短、ベロシティで音の揺れやトリルなどが変化する……といった感じ。ここいらへん、上手く使うとけっこう生っぽい「味」になるので、ソフト同梱のPDFマニュアルは目を通しておいた方がいいでしょう。
 ドラム・キットはそれぞれパーカッションもセットなので、例えばアフリカン・キットにはジェンベやトーキング・ドラム、インディアン&ミドル・イースタン・キットにはタブラやドゥンベック(ダルブッカ)などが、キーの違いや奏法のバリエーションも含めて、キーにマッピングされています。
 音色はさほど押しが強くなく、存在感はいささか控えめではありますが、逆に極端に浮くこともないので、アンサンブルとしては使いやすいです。ただ、強烈なリードとして欲しい場合は、ちょっと物足りない場合も。
 また、Jam Packシリーズは一様にそうですが、本来の楽器の出せる音域を越えて、低音から高音までくまなく音が入っています。楽器本来の音域を意識して使わないと、音が不自然になってしまう場合もありますが、それを逆手にとって、現実にはありえない楽器として使うのも面白いかも。例えば、ウードをうんと高音にしてみたら、エキゾチックなギターともハープともつかない音になって面白かった。
 楽器によっては、キーの高低で音色そのものが異なってマッピングされているものもあります。例えば、南アフリカのクワイアでは、高域は女声、低域は男声に振り分けられていますし、ガムランでは高域はガンサ、低域はレヨンゴングになっています。
 というわけで、全体的には「安価・使える・いじれる」と、三拍子揃った好印象。
 ループも、リアル音源に加えてソフト音源も多く、後者はピアノロールや楽譜表示を見れば、どういう楽器がどのような使われ方をして「それっぽさ」を出しているのか、目で確認することができるので、なかなか楽しいし参考にもなる。もちろん、違う楽器に演奏させることも可能。
 まあ、それでもぜいたくを言い出せばきりがないもので、例えばフィドルの音は、ちょいと擦弦感というかギコギコ感に乏しいのが物足りないし、ガムランもこれだと必要最低限でしかなく、例えばゴン・クビャールとドゥグンとグンデル・ワヤンとかの違いは出せない。
 楽器の種類も、これだけあってもまだまだ欲しいものはあるのが人の性で、例えば笛ものだと、アラブのナイやアルメニアのドゥドゥクやインドネシアのスリン、弦ものだとアラブのカーヌーンやミャンマーのサウンなんかが欲しい。アンクルンやジョゲッ・ブンブンやジェゴグやパッタラーといった、竹素材のマレットものも、何か一つ欲しかった。あと、日本の笙かタイのケーンも。
 まあ、そんな無い物ねだりはともかく、GarageBandやLogicのユーザーで、ワールド・ミュージック系のインストゥルメンツのコレクションを何か一つというんだったら、充分元を取れておつりもくる内容ですから、最初の購入物としてオススメです。
 で、せっかくなので、自分の手による使用例も一つ。
“Steppe” (MP3 file / 4.4MB)
 この曲で、Jam Pack World Music収録の音源のうち、パーカションのアフリカン・キット、アフリカン・マリンバ、ウード、チベットのシンギング・ボウル、カリンバ、ケルティック・ハープ、ティン・ホイッスル(登場順)を使っています。
 お暇とご興味がおありの方、よろしかったらお聴きください。

“Melpomen” by Conrad Steinmann

melpomen
 先日の『ポンペイの輝き』展にて、ミュージアム・ショップで購入。古代ギリシャの復元音楽です。いちおう展覧会の関連商品っぽい陳列の中にあったんですが、ポンペイでもローマでもなくてギリシャもの(笑)。
 古代ギリシャの復元音楽というと、このCDと同じハルモニア・ムンディ・レーベルから出ている、グレゴリオ・パニアグア(Gregorio Paniagua)の『古代ギリシャの音楽(Musique de la Grece Antique)』という名高い名盤があります。私も、古楽や民族音楽を聴き始めた頃に出会い、ドップリはまって愛聴していました。amazon.co.jpを見ると、日本盤は既に廃盤みたいですが、輸入盤だと今は900円そこそこで買えるんですな、あの名盤が。ビックリ(笑)。
 さてこの”Melpomen”、内容はというと、4人編成の小規模のアンサンブルで、アウロイという縦笛、バルビトスという竪琴、パーカッション類などの古代の復元楽器によるシンプルな演奏にのせて、アナクレオンやサッフォーといった古代ギリシャの詩人の詩を、澄んだ穏やかなソプラノで詠唱のように歌うというものです。一曲当たり1〜3分程度で、全21曲。
 歌も演奏も、たっぷりと間合いをとった隙間のあるもので、全体的な印象は極めて優雅。メロディーは概して憂いを帯びたような、少しもの悲しさが漂うものが多く、縦笛がペンタトニックのフレーズを素早く奏でる様などは、どこか邦楽にも通じる味わいがあります。パゾリーニが『王女メディア』で劇判に邦楽を使っており、それがミョーにはまっていたということがありましたが、ちょいとそれを思い出しました。
 古代ギリシャの音楽は現存しているものが極めて少ないらしく、前述のパニアグアのアルバムは、復元と同時に多くを新たに作曲したものでしたが、今回のコンラッド・ステインマンも同様らしく、リコンストラクションとコンポーズが共にクレジットされています。パニアグアのアルバムは、イントロからしてハッタリが効いており、全体的にもかなりムード演出が過剰になされていて、それがまたかっこよかったりしたんですが、このステインマンのアルバムは、それと比べるとだいぶ大人しめ。作家性や芸術性よりも、学究性が優先されているような、そんな印象。ケレン味はあまりありません。
 とはいえ、この大人しさも、これはこれでまた良きかな。古代というには、少し質感が滑らかすぎて荒い力強さには欠けますが、前述したように極めて優雅で美しいので、流しながらボーッと聴いていると、個人的にはかなり和めます。エキゾチックな味もあるので、例えば後期のDead Can Danceとか好きな人とかにもオススメできそう。
 40ページ近いブックレットが付いた、紙のアウターケース入り。解説は、仏語・英語・独語併記。歌詞は更にギリシャ語も併記されています。
[amazonjs asin=”B000BTE4LG” locale=”JP” title=”古代ギリシャの音楽 Import (MELPOMEN: ANCIENT GREEK MUSIC)”]
[amazonjs asin=”B00004TVG7″ locale=”JP” title=”Musique de la Grece Antique”]

PoserとかVueとかGarageBandとかLogic Expressとか新しいJamPackとか

 前にここで書いた趣味の3DCGムービー制作、ようやくact 3が完成。これで、トータル6分45秒……って、短っ(笑)。
 今回はちょいエロ入ってきたんで、こっちにはリンク貼りませんが、近々本家サイトにアップしますんで、18歳以上で興味のある方は覗いてみてください。
 で、今回のムービーで今までと違うのは、BGMであります。前回まではGarageBandを使っておりましたが、今回はLogic Expressを使用。
 何が一番違うかというと、Logic ExpressだとQuickTimeムービーを読み込めるので、映像と音のシンクロが容易になったこと。
 iMovieで映像の編集が終わったら、低解像度のQuickTimeムービーで書き出し、それをLogic Expressで読み込む。すると、Logic Expressにムービーのトラックが出来る。ムービー・トラックとオーディオ・トラックはリンクしているので、ムービーのカーソルを音を入れたいタイミングのフレームに動かして、そのまま任意のオーディオ・トラックにリージョンを作り、ロケーターの位置にノートを打ち込めば良いわけです。
 で、これがかなり楽。
 前にBGMをGarageBandで作っていた時は、iMovieで映像のアバウトなタイミングを、ストップウォッチや電卓で調べておき、それを元にGarageBandでアバウトな長さのBGMを、モチーフごとのブツ切り状態で作る。そうやって素材が揃ったら、iTunes経由でiMovieにインポートして、二つあるオーディオトラックに交互に配置して、タイミング修正とかフェードアウトやトリムをしていく……って手順だったわけです。
 しかし、いかんせんGarageBand上ではアバウトな作業しかできず、いざiMovie上で映像と合わせてみると、ちょっと早すぎたり遅すぎたりといった不満が出て、再度GarageBandに戻ってBPM変えたりして調整……ってな作業の繰り返しで、これがけっこう面倒くさかった。
 これがLogic Expressを使うようになってからは、BGM制作はムービーとシンクロさせながら作って一発で完了、それをバウンスしたものを、やはりiTunes経由でiMovieに取り込み、そのままオーディオトラックにペッタリ貼り付ければ、もう完了です。微調整の必要や、再度Logic Expressに戻る必要は、いっさいなし。
 という具合で、今回は映像と音のシンクロも、前2回に比べると、ずっとバッチリ合わせられました。しかも、ずっと簡単に。
 Logic Express様々であります。
 ……ってなことを書こうと思ってたんですよ。
 でもね、つい昨日だったか、新しく出たiLife ’06に入っている、新しいGarageBand 3の詳細を見たら、うわ、今度のGarageBandには「iMovieプロジェクトのためのスコア機能」ってのが付いてるじゃん(笑)。ってことは、GarageBand 3なら、前述のような映像にシンクロした音を作ることが、Logic Express同様にラクチンみたい。なんでぇ(笑)。
 ただ、GarageBand 3に新たに加わった機能は、このiMovie絡みやPodcastやiChat絡みのものばかりで、音楽制作的には、あまり変化はなさそう。エフェクター周りに手が入っているようだけど、テンポチェンジとかはないみたいだし。
 あと、拡張ループ&音源のJamPackシリーズから、最初に出ていたJamPack 1が消えて、新たに一つ加わっているところを見ると、別売だったJamPack 1が最初からバンドルされているのかも知れませんね。
 ンで、私的にはGarageBandのバージョンアップよりも、ずっと嬉しいニュースが、この新しく出たJamPack 5 World Musicってヤツ! 「うひょ〜、待ってました!」ってカンジ!
 実は民族楽器系では、best serviceのEthno World 3というヤツを買ったんですけど、マルチ・インストゥルメントを扱えないGarageBandで使うには重くてねぇ。もっぱらLogic Express専用でしか使っていなかった。
 あと、AMGのExpansionPack for GarageBand & Logic 7ってヤツ。これに、バグパイプやユーリアンパイプやマンドリンやフィドルが入っていて、これはGarageBandでも軽いので良く使っているけど。
 というわけで、このJamPack 5 World Music、まだApple Storeでも「6週間後発送」という状態だけど、うふふ、もう絶対に買っちゃうもんね(笑)。サントゥールとバラライカとティン・ホイッスルが楽しみ。
 でも、12GBだって……。JamPackシリーズの音源やループを、外付けHDで使う方法がイマイチ不明なので、とりあえず内蔵HDのお掃除をして、空きを作らんといかんなぁ……。

GarageBandとかLogic Expressとか趣味の音楽サイトとか自主制作盤とか

 前にここで「GarageBandにハマってしまい、今度はLogicにアップグレードしたくなってきた」な〜んて書いたんですが、ははは、実はその後けっこうすぐにガマンしきれなくなり、Logicの廉価版Logic Express 7を買ってしまいました(笑)。
 で、心配だったCPUパワーの方なんですが、いやぁ全く問題なし。Mac mini 1.42GHz+メモリ1GBで、サクサク動いとります。つーか、かえってGarageBandの方が重いくらい。
 いや、重いというと、ちょっと語弊があるかな。操作感に差があるというわけではないので。
 ただ、GarageBandでソフトウェア音源トラックをどんどん増やしていくと、そのうち「もうこれ以上は増やせないわよっ!」なんてメッセージが出て怒られちゃうんですが、そんなファイルをLogic Expressで開いたら、読み込みもトラック追加も全く無問題だったりするんですな。
 まあ、Logic Expressでも、重たいエフェクトとかをばんばんかけちゃうと、処理的にトラブルも出てくるんでしょうが、私の場合は、ビットクラッシャーだのディストーションだのアンプシミュレーターだのといった、歪ませ系エフェクトはあんまり使わないせいか、今んところ特にトラブルはないです。
 ただまあ、これは趣味の問題なんだけど、Logic Expressの黒っぽい作業画面って、なんだか本格的っぽくて、GarageBandのキャンディポップなGUIに比べると、ちょっと「楽しさ」に欠ける(笑)。
 でも、Logic Expressにして、BPMや拍子を曲の途中で変えられるようになったし(GrageBandではできなかった)、トランスポーズだのベロシティの調整だの編集機能は豊富だし(豊富すぎてなかなか全体を把握できないくらい)、もちろんデフォルトのエフェクターは豊富だし、そのかけ方もトラックの途中で自在に変えられるし(GrageBandではこれもできなかったんだよなぁ)、音源も増えたし(しかもGarageBandのそれもそのまま使えるし)、何よりミックス作業が細かいところまでいじれて楽しいし……ってな具合で、基本的には大満足です。
 そんなこんなで最近は、GarageBandで曲を6〜8割方作って、それをそのままLogic Expressに読み込んで、音色の調整だのトラックの追加だのといった細かな作業をして、Logic Express上でミックスダウン……ってなやり方がデフォルトになりました。
 ……で、気がついたら出来上がった曲が、述べ4時間以上溜まっていまして。
 その……ついつい血迷って、それ専用の音楽サイトまで立ち上げてしまいましたとさ(笑)。
 更には、自主制作盤まで作っちゃって、イェ〜イ、インディーズ・デビュー(笑)。
 試聴ファイルから自主制作盤の販売まで、あれこれ取りそろえておりますんで、「こいつ、どんな音楽やってんだ」と興味のおありになる方は、どうぞ遊びに来てやってくださいまし。
 あ、本業のネタとはまったく関係なしなんで、エロだの変態だのはございませんで、えらい健全(笑)。しかも自分の中のドロドロは、仕事でけっこう出きってしまっているらしく、音楽の方は、何つーかその……えらい「メルヒェンな人(笑)」になっちゃってます(メンヘルじゃないわよ)。
 特に自主制作盤の方は、いろいろ作った曲の中から、ある程度共通するニュアンスのものを選んだんで、かなりソフトな感触に。ひょっとしたら「癒し系」かも(笑)。
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