Jamie Principle “The Midnite Hour”
何だか急にハウスが聞きたくなって、十年ほど前に良く聞いていたCDを引っ張り出して参りました。
ジャケで一目惚れしたゲイ・シンガー。シンプルでドライなバックトラックに絡むファルセット・ヴォイス、鐘の音で始まる1曲目から鐘の音で終わる10曲目まで、徹頭徹尾クールな哀感がカッコイイ。
当時は比較的キャッチーな”Please Don’t Go Away”や”The Midnite Hour”が好きだったけど、改めて聞き直してみたら、もうちょい渋めの”Private Joy”や”You’re All I’ve Waited 4″がエラくカッコ良く聞こえました。因みに”Sexuality”という曲も大好きで、私が自分の文章で「セクシャリティ」ではなく「セクシュアリティ」という表記にこだわるのも、この曲の影響であります。
で、これ聞いていたらコレ(↓)も聞きたくなりまして……
Lil’ Louis & The World “Journey With The Lonely”
ハウスはもっぱらシングル買いが多くて、アルバム単位で愛聴したのはそうそうないんですが、もし人から「ハウスのアルバムのベスト1は?」と聞かれたとしたら、マイベストは間違いなくこの一枚。
SEと会話から始まる一曲目”Club Loney”は「このビートに乗って永遠に揺れていたい」って思うくらい好きだし、ミニマル音楽的な快感の”Newdancebeat”、メロウ&ムーディーな”Do U Luv Me”、ひんやりクールなジャズ風味の”Thief”、極上のリゾート・ミュージックのような”Shore”、どれもこれもたまらなく好き。
そしてとどめはアルバムラストの”Jazzmen”。シンプルなリフレインに、やがてひっそりとトランペットが寄り添い、ベースがそれに答え、やがてグイグイと盛り上がっていく後半は、もうアッチ側に引っ張られそう。久々に聞き直しても、やはり変わらぬ永遠の名盤でした。
で、お次はコレ(↓)を聞きたくなり……
Yoyo Honey “Voodoo Soul”
これはハウスじゃなくてグラウンド・ビート(……だと思うんだけど、正直こーゆー用語ってあんまり自信ないんで、間違っていたらゴメンチャイ)。
とにかく1曲目”Voodoo Soul”が大好き。暗く重厚なストリングスに重くうねるビート、クールでドライな女声ヴォーカル、ドラマチックだけど暑苦しくはない展開……誤解を恐れずに言うと、ちょっとMassive Attackにも似たカッコ良さです。”Groove On”や”Yo Yo”や”Circle On You”のゆったりしたうねりも大好き。全体的には重めだけど、鬱系ではなくて、内省的でメロウな重さとでも言うか。とにかく気持ち良いアルバムです。
で、次に聞きたくなったのがコレ(↓)。
Ephraim Lewis “Skin”
これになると、既にダンス・ミュージックですらないような気もしますが、本当に大好きだった一枚なのでご勘弁を。特に、表題曲の”Skin”は、いつかこの曲のイメージでマンガを描いてみたいなどと思っていたほどでして。
きっかけは、音楽雑誌で「マーヴィン・ゲイ meets ブライアン・イーノ」と紹介されていて興味を持ったんですが、1曲目”Skin”のイントロの、たゆとうような幻想的なバックトラックと、柔らかく繊細なヴォーカルで、早くもノックダウン。次の”It Can’t Be Forever”、メロウで切ない”Drowning In Your Eyes”、サビのファルセットへの移行を聞いただけで泣きそうになる”World Between Us”、どの曲もどの曲も素晴らしいものばかり。どう素晴らしいのかというと、空間的な広がりを感じさせつつ、それでいて内省的でもあり、甘美でもあり、しかし痛みもあり……すんません、何だか抽象的なことしか言えないや。音楽の印象を言語化するのって、難しいですね。
とにかくアルバム全体で、柔らかく包み込みながらインナースペースへの旅に誘ってくれるようで、改めて聞いてもやっぱり良くて、いつまでも大切に取っておきたいアルバム。
ですから、それからしばらく経って、音楽雑誌で「今は亡きイーフレイム・ルイスが云々」という文章を読んだときは、本当に驚いて、あんまり驚いたのでジーメンの編集後記で「詳細をご存じの方は教えて!」と呼びかけてしまったくらいでした。そして、親切な方からお手紙をいただき、この彼がこのアルバム一枚残したきり、次のアルバムの制作中に若くして急逝(確か階段から転落死だったと思う)したことを知ることができました。本当に惜しい、そして悲しい……。
そんないきさつもありまして、なおさら思い入れが深い……ということで、最後の一枚(↓)。
Ephraim Lewis “Skin” (Maxi Single)
”Skin”のシングル盤です。表題曲のミックス違いを含む三種と、”World Between Us”の別ミックス一種を収録。
で、このリミックスがまた良くて。”Skin – Shiny Black Boots Mix”は、オリジナルにエッジなギターが加わりビートも効いたヘビー・ヴァージョン。”Skin – Undaya Mix”は逆に、ドラムレスでビートが後退し、シンセの比重が増したよりアンビエントなヴァージョン。そして極めつけは、”World Between Us – Monasterial Mix”。バックトラックは微かな音響のみで、ほとんどア・カペラ寸前にまで削ぎ落としたヴァージョン。これは本当に、恐ろしいほど静かで美しい。
どこかで運良くこのシングルを見かけたら、迷わず購入をオススメします。
で、Lil’ Louis & The World “Journey With The Lonely”とYoyo Honey “Voodoo Soul”とEphraim Lewis “Skin”は、今でもamazon.co.jpで購入可能のようで、しかも試聴もできますんで、もし興味のある方は、ぜひお試しくださいませ。
さて、クールで内省的なヤツばかり連続して聞いていたら、逆にアッパーでアゲアゲなヤツも聞きたくなってきました。久々にシングル盤も引っ張り出してみようかな。
あと、今回これらのアルバムを引っ張り出してみて驚いたんですが、これら全部、リリースが1992年でした。う〜ん、スゴい年だったんだなぁ。ビックリです。
「音楽」カテゴリーアーカイブ
『ベルヴィル・ランデブー』
『ベルヴィル・ランデブー』(2002)シルヴァン・ショメ
Les Triplettes De Belleville (2002) Sylvain Chomet
フランス、ベルギー、カナダ合作の長編アニメーション。
孫(っても、いい歳だけど)をさらわれたおばあちゃんが、大都会ベルヴィルへ行き、往年のジャズ・コーラス・グループ「ベルヴィルの三つ子姉妹」(が歳を取った老婆三人)と一緒に孫を奪還する……という物語ですが、人情モノというわけではなく(まあ、そういう要素もなくはないですが)、基調はナンセンスとブラックユーモア。
冒頭、スウィンギーでゴキゲンなテーマ曲に乗せて、フライシャー兄弟を思わせる白黒でグネグネ蠢くアニメーションが。その段階から既に、次々と繰り出されるヴィジュアルによる小ネタが、もう楽しいのなんのって。リムジンから降りる太った(なんてハンパなもんじゃないが)ご婦人の尻にはご主人が挟まってるし、ジョゼフィン・ベーカーは猿と化した観客に腰のバナナをむしり取られるし、フレッド・アステア(かな?)は自分のタップシューズに噛みつかれるし……(笑)。
本編に入っても、まず、トンでもなくカリカチュアライズされた、ブッ飛んだキャラクターデザインに大ウケ。もう、ユーモアとグロの紙一重すれすれ……っつーか、客観的に見りゃ立派なグロ。丸まっこい孫が成長したときの姿とか、あたしゃもう見ただけで吹き出しちまいましたよ。
でもって、その孫をおばあちゃんがマッサージするんですが、このマッサージがまた……(笑)。あと、風船にマッチ棒が生えたみたいな犬とか、ツール・ド・フランスに参戦中の選手の表情とか、四角いマフィアとか、トンデモナイ形の船とか、カエルのアイスキャンディーとか、もういちいち可笑しい可笑しい。
セリフらしきセリフは殆どなく、とにかく見せる、見せる、見せる! いや〜、こーゆーのってアニメーションの根元的な魅力の一つだよなぁ。それでいて、いささかの弛緩を見せることもなく、1時間20分の長編を一気に描ききる。
この圧倒的な表現力、まったくもって大したものです。
画面は美麗。
どちらかというと保守的な色彩設計ですが、同じく最近公開されたフランス産アニメーションと比較しても、『キリクと魔女』のような華麗さや、あるいは『コルト・マルテーズ 皇帝(ツァー)の財宝を狙え!』のようなケレン味とはまた違う、いかにもヨーロッパ的な(って、何のことやら)渋い魅力。オーソドックスながらも、彩度を抑えた中間調の配色が実に美しい。背景美術も素晴らしく、どのフレームを切り取っても立派に一枚の絵画となりうるような、アニメーションというメディアの贅沢さを満喫できます。ああ、絵っていいなぁ……。
メカニック描写は3DCGが多いけれど、画面に自然に溶け込んでいて違和感はほぼない。ただ、クライマックスのカーチェイスなんかを見ていると、やはり「正確さによる不自由さ」という限界も感じてしまったのは正直なところ。あと、海とクジラに関しては、個人的にはペケ。あれならクジラは出さない方がいい。
あと音楽ですが、これはもうサイコー! 映画館から出て、即刻サントラを購入しました。
ロマ風のギターもカッコいいテーマソングはもちろんのこと、カンツォーネ風、スパイ映画のサントラ風、サーフ・ミュージック風、はたまた新聞紙と冷蔵庫と掃除機と自転車のスポークで奏でられる(まあ、実際の楽器は何が使われているのか判りませんが)アヴァン・ポップ/トイ・ポップ風……と、ミクスチャー具合もお見事。
このサントラ盤、独立したアルバムとして聞いても充分オッケーなハイ・クオリティ作品なので、アヴァン系、ラウンジ系、レコメン系なんてキーワードに引っかかる方にもオススメ。特に、ジョセフ・ラカイユ(Joseph Racaille)や Tot ou Tard レーベルの音楽がお好きでしたら、ぜひどうぞ!
……ただし、CCCDってのはムカつくけどね。
最近買ったCDあれこれ
John Foxx + Harold Budd “Translucence + Drift Music”
アンビエント系コンテンポラリーの大御所Harold Buddが、初期のUltravoxのリーダーだったJohn Foxとタッグを組んだ二枚組アルバム。
Harold Buddは、いつも残響タップリのピアノが物寂しげにポロンポロン鳴り響くとゆー、良く言えば一貫した、意地悪に言えばどれもこれも同じの、キョーフの金太郎飴アーティスト。正直私も、”Lovely Thunder”や”White Arcades”あたりでいい加減に飽きちゃって、以降はあまりちゃんとは聴いていなかったんですが、久々に聞いたこのアルバムは、まあ「相変わらず」ではあるものの、「でもいいじゃん!」って感じでした。
二枚のうち”Translucence”パートは、ピアノ+残響でメロディを生かしつつも、音に隙間をタップリ残している、比較的シンプルな構成。叙情的でもあり、7曲目の”Here And Now”なんか、ちょい泣ける感じもあり。もう一枚の”Drift Music”パートは、感傷や情緒を刺激するメロディ要素は後退し、空間に隙間なく柔らかな電子音響が満ちているような、よりエアリーで拡がりのある感じ。どちらもそれぞれ気持ち良いですが、今の私の気分だと後者の方がより好みかな。
過去の作品と比較しても、まあソロの”The Pavilion of Dreams”や、Brian Enoと組んだ”The Plateaux of Mirror”あたりは別格としても、同じくEnoと組んだ”The Pearl”や、Cocteau Twinsと組んだ”The Moon & The Melodies”、ソロ作だと”The Serpent (in Quick Silver) / Abandoned Cities”あたりの良作と比べても、まったく遜色ないです。
しかし、実は私、John Foxxのソロって”The Garden”くらいしか聞いたことなかったんで、いつの間にこんな「ど・アンビエント」な人になったのかと、ちょっとビックリでした。どうやら”Cathedral Oceans, Vol. 1-2″というソロも本作と似た傾向らしいんで、今度トライしてみようかな。
Harold Budd “La Bella Vista”
で、こっちは同じHarold Buddから、いつもの残響を取ったらどうなるかという実験作……かどうかは判りませんが、要するに音を加工していないソロ・ピアノ集といった趣です。まあシンプルにして美麗な小品揃いだし、「おや、これがあのHarold Buddかい」という面白さもありますが、ぶっちゃけそれ以上でも以下でもないなぁ。でも、静かでキレイなピアノ・ソロが聞きたくて、しかし情緒を刺激されるのは鬱陶しい……なんて気分のときには重宝するかも。
Focus “Moving Waves”
これは中高生の頃に良く聞いていたオランダ産のプログレで、久々に聞きたくなったら廉価盤があったので買ってきました。
このアルバム、良くも悪くも1曲目の”Hocus Pocus”の印象がキョーレツでして、他の曲の印象が薄れちゃっていたんですが、久々に聞いてみると、メロトロンとアコギで「アランフェス」ばりの叙情を聞かせる2曲目”Le Clochard”とか、ほとんどまんまドビュッシーみたいな4曲目”Moving Waves”とか、なかなかの佳曲。アナログ当時にB面1面を占めていた大曲”Eruption”は、23分強という長尺の割りには、なんだかちっとも記憶に残らない曲だったんですが、これは改めて聴き直してみても、まあ所々面白い要素はあるものの、全体としてはやはり散漫でイマイチ。
因みに「キョーレツな印象」な1曲目”Hocus Pocus”がどんな曲かと言いますと、イントロでエレキギターがギャンギャギャギャンと鳴り響き、そこにズンドコリズムが加わって、更にヨーデルが「ヒャリララヒャリラララッパッパ〜」が高らかに響くとゆー、何だかカッコいいんだか悪いんだかワカンナイ曲(笑)。これに似た曲って、ちょっと他に思い付かないなぁ。大好きだ(笑)。
そうそう、4曲目の”Focus 2″ですが、昔は別のアルバムに入っていた”Focus 3″が好きだったけど、今になって改めて聞くと、この”2″の方が好きかも。でもチョッピリ、何だか泣き節タップリのフュージョンみたいだな〜なんてことも思いましたが。
で、同じく昔好きだったフュージョンも聞きたくなり、Chick Koreaの”The Mad Hatter”とかCalderaの”Dreamer”とかのCDがないかな〜と探したんですが……どちらも玉砕。うむむむ。でも、Chick Koreaの”The Leprechaun”と”My Spanish Heart”、Calderaの1st(これは聞いたことないけど)はあったんで、とりあえずそっちを注文。
スパービューティーミカリン+K with キューティーモンすたーズ『O・SU・SO・WA・KE〜プルプルンのキュッのボン!』
叶美香のマキシ・シングル。正確には友人への誕生日プレゼントとして買ったんですが、何だか昔の歌謡曲ちっくで気に入っちゃいまして。で、気がつくと無意識に鼻歌で歌ってたりするんで、人前でやらかさないように気を付けなきゃ(笑)。
でも、こーゆーのは『マツケンサンバ2』同様に、やっぱDVD付きで出して欲しかったなぁ。
Steeleye Span “Below The Salt” & “Please To See The King”
さて、昨日から芋蔓式に続きまして、スティーライ・スパン(Steeleye Span)の初期作というのを探し、件の”Gaudete”が収録されている4thアルバム”Below The Salt”と、ジャケが気に入った2ndアルバム”Please To See The King”を買ってみました。
“Below The Salt” Steeleye Span
輸入盤CD
まず”Below The Salt”ですが、これは実に好みにドンピシャな内容でした。
全曲トラッドで、エレクトリック・ギターやエレクトリック・ベースは使われているものの、ドラムレスのせいか、ベスト盤に入っていた”All Around My Hat”といった曲ほどロック/ポップスっぽくもない。
“Gaudete”同様の無伴奏コーラス曲の”Rosebud In June”は、やはり文句なしに美しいし、いかにも牧歌的でのどけき雰囲気を感じさせてくれる”Spotted Cow”や”John Barleycorn”といった曲も良いし、”Sheep-Crook And Black Dog”や”King Henry”といった、ちょっと重めで構成や展開に凝った曲も聴き応えがあるし、アルバムのラストを締めくくる”Saucy Saylor”後半のインスト部分なんか、もう文句なしに美麗。他にも捨て曲なしなので、広くオススメできる好盤だと思います。
“Please To See The Kings” Steeleye Span
輸入盤CD
お次の”Please To See The King”ですが、誤解を恐れずに言うと、これ、かなり「変」で「面白い」です。
いや、内容的には極めて正統派のトラッドだと思うんですよ。”Below The Salt”のようにアレンジに凝ることもなく、もうストイックなまでにシンプルな伴奏に乗せて、マディ・プライヤー(Maddy Prior)嬢の美声を筆頭に、男声ソロ、コーラスなどが、淡々と切々とバラッドを歌い上げる。方法論的にはおそらくアカデミックな古楽に近い、ものすごいオーソドックスなものだと思います。
では、何が奇妙さを感じさせるかというと、エレクトリック楽器を用いた伴奏なんです。いや、エレクトリック・トラッドなんてジャンルがあるくらいですから、伴奏にエレクトリック楽器を使うこと自体は、別に珍しくはない。でも、そーゆーのって概して「ロック/ポップス的な視点でトラッド曲を再構築したもの」であるのに対して、このアルバムは、あくまでも「あくまでもトラッド的なスタンスで楽器だけを置き換えたもの」なので、それが結果として奇妙さを醸し出している。
どう奇妙なのかってぇと、ブン、ブン、ボン、ボンと低音を刻むエレクトリック・ベースに、エレクトリック・ギターやキコキコ泣くフィドルが被さり、それが色気のある展開も見せずに、淡々とリフレインしていくのを聴いていると、何だか次第にサイケデリックな酩酊感のようなものに捉えられていき、もうどの曲がどうだとか、何だかどうでも良くなってくるんですよ。で、何だかサイケデリック・フォークを聴いているような気がしたり、ミニマル・ミュージックのような気がしてきたり、はたまたシタールによるラーガなんか連想したり……という奇妙さ。トラッドものを聴いていて、テリー・ライリーを思い出したなんて、こんなこと初めてです(笑)。
でもまあ、最初はそんな感じでビックリしたものの、改めて落ち着いて聴き直してみると、これはあくまでも、渋くてちょっと暗めのトラッド・アルバム。前述したサイケ感やトランス感といったものは、意図せずに「そこはかとな〜く漂っちゃった」ものでしょうから、あらかじめソッチ系を期待して聴いちゃうと、裏切られると思いますが。
とまあ、あんまり広くオススメできる感じじゃありませんが、変わったもの好き、あるいはサイケ好きの方は、宜しかったお試しあれ。因みに私自身は、かな〜り気に入っちゃいました(笑)。
しかし、こうして聴いてみると、やっぱりマディ・プライヤーの声は魅力的だな〜と、改めて思ったんで、最近のソロ・アルバムの”Arthur The King”や”Gold Frankinsence & Myrrh”を、また聴き直したくなったりして……。
こうして私の芋蔓はズルズル続くわけであります(笑)。
The St Philips Boy’s Choir “Angel Voices 2”
“Angel Vioces 2” The St Philips Boy’s Choir
輸入盤CD
先日、ヒュー・ハドソン監督の『グレイストーク』のDVDが発売されまして、私この映画大好きなもんで、早速買ってきて観たわけです。んで、やっぱいいよな〜なんて思いつつ、そうしたら同監督の『炎のランナー』も観たくなりまして、ちょいと調べたら廉価盤DVDが出てたんで、またまた買ってきて観たわけです。
で、この『炎のランナー』の中に、ブレイクの詩にパリーが曲を付けた「イェルサレム “Jerusalem”」を歌うシーンがありまして(そんなシーンがあったこと、すっかり忘れてました)、それ観てたら、今度はEL&Pの「聖地エルサレム」(同曲のプログレ風カバー……とでも申しましょうか、実を言うと私、この曲を最初に知ったのは、このEL&Pのバージョンでした)を無性に聴きたくなりまして。でもアナログ盤、それもLIVEの『レディース&ジェントルマン』しか持ってなくて、まあいい機会だからCDを買い直すかと、同曲のスタジオ録音を収録したアルバム『恐怖の頭脳改革』を買ってきたんですよ。
こうしてホクホクしながら、お目当ての「聖地エルサレム」を聴いたんですが、そこでふと、考えてみりゃ私、まだこの曲の「正調」のバージョンをちゃんと聴いたことがないな〜、と気付いた。で、そうなってみると無性に聴いてみたくなりまして、幾つか物色した結果、”The Last Night Of The Proms Collection” BBC Concert Orchestraってのと、この”Angel Vioces 2″ The St Philips Boy’s Choir”の二枚を買ってみたわけです。
ここまでが前振り。芋蔓式に長くてすいません(笑)。
なぜこの”Angel Voices 2″を買ってみたかというと、「イェルサレム」の少年合唱団バージョンを聴いてみたかったのと、他の収録曲に好きな曲、それもかな〜り好きな曲が幾つか含まれていたから。
例えば、フォーレの『レクイエム』から”Pie Jesu”(この『レクイエム』は、私の好きなクラシックのベストテンの一つ。ガキの頃に父親が良く聴いていて耳に馴染みがあるせいもあるんでしょうが、特にアンドレ・クリュイタンス指揮/パリ音楽院管弦楽団のヤツがお気に入り。”Pie Jesu”はヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレスが歌っております)、またリチャード・アダムス原作の英国製の劇場用長編アニメーション『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』の主題歌だった”Bright Eyes”(オリジナルはアート・ガーファンクルが、日本公開版では井上陽水が歌ってました)、それと中世ラテン語の聖歌”Gaudete”(これに関しては後述)。この三つが入っているだけでも、私的にはもう「買い」です。
で、アルバム自体は「天使の声」という謳い文句を裏切らない美しいボーイ・ソプラノを、独唱合唱取り混ぜて、タップリ聴かせてくれます。伴奏は(おそらく)シンセサイザーですが、音の雰囲気はあくまでもナチュラル、アレンジはオーソドックスなクラシック風で、曲によって若干のニューエイジ風味やポップ風味をプラス。まあ、正直なところ私の好みから言うと、ちょいと甘ったるくて苦手な部分もなきにしもあらずですが、それでも演奏自体が控えめで、主役の声を押しのけて目立ったり前面に出たりしないところは好感度大。
収録曲は、前述したものの他に、”All Things Bright And Beautiful”や”Amazing Grace”などの賛美歌やトラッド曲、エンヤの”Evening Falls”、カントルーヴの『オーヴェルーニュの歌』から”Bailero”など、硬軟取り混ぜてイロイロ。メジャーな曲が多いようで、タイトルに見覚えが無くても、曲を聴いたら「ああ、これか!」ってのもけっこうありました。
それ系でちょっと嬉しかったのは、”I Vow To Thee My Country (World In Union)”って曲。曲名には全く馴染みはなかったけど、聴いてみたらホルストの『惑星』の「木星」に歌詞をつけたものでした。つまり平原綾香の「ジュピター」みたいなもんですな……って、ちょっと違うか(笑)。どうやらこっちは、ラグビーのワールドカップ公式ソング(の歌詞)らしいですが、とりあえず原曲が大好きなので嬉しい収穫。でも、考えてみりゃ私、この曲も「イェルサレム」同様に、最初に聴いたのは冨田勲のバージョンだったりするなぁ(笑)。あと、ちょっと面白かったのが、「イェルサレム」目当てで一緒に買った”The Last Night Of The Proms Collection” BBC Concert Orchestraの方にも、聴いてみたら同じ”I Vow To Thee My Country”が入っていてビックリ(笑)。
で、一番のお目当てだったその「イェルサレム」ですが、この雄大で荘厳な曲を少年合唱団で聴くのも、独特の清らかさのようなものがあり、また良きかな。改めて惚れ直しました。加えて、その次の曲が前述のホルストなもんですから、またまた雄大&荘厳つながりで、ここんトコの流れはちょいと感動モン。
まあ、とにかくアルバム全体、ひたすらキレイな曲のオンパレードですし、アレンジも含めて程々にキャッチーで聴きやすく、選曲も含めてなかなか楽しめました。まあ、私の好みから言うと、もうちょっとストイックだったり重かったりする方が好みなんですけど、ポップス感覚やヒーリング/ニューエイジ系の声楽として考えるのなら、文句なしの出来映えでは。実際このグループ、最近では「リベラ」と名前を変えて、私は未聴ですが、そっち系では人気を博しているらしいですし。
さて、このアルバムのラストを締めくくるのが、前述した”Gaudete”なんですが、私がこの曲を初めて知ったのは、イギリスのエレクトリック・トラッド・グループ、スティーライ・スパンのヴァージョンでした。学生時代にトラッド・マニアの友人(私をトラッドの泥沼に引きずり込んだ張本人です)に、ペンタングルとかジョン・レンボーン・グループ(どちらも英国のトラッド系グループです)なんかと一緒に聴かされて、もうすぐにレコ屋に突進したくらい好きになっちゃいまして。
で、この”Angel Voices 2″の”Gaudete”を聴いていたら、無性にまたスティーライ・スパンのヤツを聴きたくてたまらなくなり、早速ベスト盤を引っ張り出してきたわけです。ここで、ふと気が付いた。私、このスティーライ・スパンをベスト盤でしか聴いていない。っつーのも、このベスト盤を買って、お目当てだった”Gaudete”は無伴奏ア・カペラのコーラス曲なんですが、他の曲にはドラムありエレキギターありの、いわゆるトラッドをロック風にアレンジしたものばかりだったんで、あんまり自分の好みじゃなかったんですな。だからアルバム単位で聴いてみようと思わなかった。
でも、今回ふと思い付いてネットで検索してみたら、このスティーライ・スパン、メジャーになった中期以降はロック調になったけれど、初期はもっとストイックなトラッドを演っていた、とあるじゃありませんか。そうなると俄然興味がわいてくる。こりゃ、ぜひ初期のアルバムってヤツを聴いてみなきゃ。
とゆーわけで、今度はスティーライ・スパンの初期作を買いに……ってことで、またまた芋蔓式に「続く」(笑)。
ロード・オブ・ザ・リング・コンサート
映画のサントラを、作曲者ハワード・ショア自らが交響組曲に編曲し、その生演奏+バックスクリーンにアラン・リーやジョン・ハウによる映画の美術スケッチを上映するというコンサート。
会場は東京国際フォーラムAホールで、私は2日目の31日に行ってきました。
以下、個人的な感想をいくつか。
演奏に関しては、アンサンブルの厚みはたっぷりあり、アップテンポでぐいぐい聞かせるところなどは、楽曲の良さも手伝ってなかなかの迫力だったが、正確さやタイトさには若干欠ける印象。ただし、第一ヴァイオリン(女性)が兼任していたフィドル(かな?)や、フルート(アイリッシュ・フルートだったのかな?)などのソロは、なかなか良かったと思う。
またコーラス全般は、発音の悪さはさっ引いても、音程や声量など、全体的にかなり不満が残る出来。ソロの歌唱に関しても、『旅の仲間』のガンダルフへのラメント(映画サントラではエリザベス・フレイザーが歌っていた)を歌った女性と、”In Dreams”を歌ったボーイ・ソプラノは、共に決して上出来とは言えないだろう。特に後者は、ある意味『旅の仲間』一番の聞かせどころでもあるがゆえに、ああいった高音になるといかにも苦しげになるような歌唱では、どうしても興を削がれてしまう。
一方、後半の『二つの塔』『王の帰還』になると、歌唱のソロ・パートをシセル(ノルウェーの歌手。リルハンメル・オリンピックの公式テーマ曲や、映画『タイタニック』のサントラへの参加などで知られる)一人でほぼ全てこなすので、これはさすがに堂々たる歌いっぷり。私は上記以外できちんと聴いた彼女の歌は、まだシセル・シルシェブー名義だった頃のアルバム『心のままに』くらいだが、透明な美声を生かして伸びやかでクセのない歌唱をする歌手という印象だった。しかしこのコンサートでは、オリジナルではボーイ・ソプラノのベン・デル・マエストロ、元モンスーンでインド系英国人のシーラ・チャンドラ、ちょっとビョークに似た味わいのあるエミリアナ・トリーニ、元ユーリズミックスでホワイト・ソウルの名手アニー・レノックスといった、それぞれ声のタイプも歌い方も全く異なる歌い手たちによる曲を、シセル一人で巧みに歌唱法を使い分けながら歌いこなしており、それも決して単なるエピゴーネンにはならずに、聴き所によっては元歌を越える魅力も引き出しているあたり、改めてその実力に感心してしまった。特に”Gollum’s Song”と”Into The West”の二曲は、共にシングル盤を発売して欲しいほどの聴き応え。これだけ良いものを聴かされると、前半の『旅の仲間』でもシセルがソリストだったら……と、改めて残念に思えてしまう。
バックスクリーンの映像に関しては、無彩色で紙白が多くコントラストも少ない鉛筆デッサンは、そもそもスクリーン映写には不向きだし、加えて、楽器演奏者がいるために舞台を暗くはできず、結果としてどうしても映像が白っちゃけてしまうし、思いの外スクリーンのサイズが小さいこともあって、残念ながらさほど効果はなかったように感じた。
楽曲そのものは、映画やサントラでお馴染みのものをほとんどいじらずに、物語りの時系列そのままにダイジェストしてつなげていったという印象。よって、物語を説明するための交響組曲としてはしごくまっとうであり、それを聴くことによって映画で描かれた『指輪物語』の世界を追体験できるという意味でも、ファンならば十分以上に楽しめる内容だったように思う。こうやって映画のサントラの「いいとこどり」したものを生オケで聴くというのは、そうそうない機会であろうから、そういう点でも嬉しいファンサービスだったと思う。
ただ、主題の変奏や展開を楽しむといった独立した「音楽そのもの」の魅力には、正直なところ若干欠ける印象だ。同様に映画のサントラを演奏会用の楽曲に書き直したものでも、マイケル・ナイマンの『ピアノ協奏曲』や伊福部昭の『交響頌偈(じゅげ)・釈迦』といった、元となる映画を離れた独立した楽曲としても聴き応えのあるものと比較してしまうと、この作品はあくまでもサントラという枠をはみ出すことがないので、どうしても独立した楽曲としては弱い印象がある。
ただこれは良し悪しではなく、単純に作品の目指しているベクトルそのものが違うということだろう。実際、私自身も楽曲を聴きながら、幾度となく映画のシーンを思い出しては涙腺がゆるんだし、時には映画の追体験という要素を越える感動もあった。例えば、映画で使われていたときから既に音楽の力を存分に見せつけてくれていたパート、『二つの塔』のアイゼンガルドの洪水や、『王の帰還』のゴンドールの烽火のシーンの楽曲などは、生のオーケストラの迫力で聴いて、改めて高揚感に溢れた素晴らしいチューンだと思った。
まあ総合的には、細かな不満は幾つかあるものの、それでも素晴らしい部分も負けず劣らず沢山あったし、『王の帰還』のアラゴルンの歌を男声バリトンで聴けたのが嬉しかったとか(あ、いや、別にヴィゴ・モーテンセンの歌に不満があるわけじゃないですが)、『二つの塔』のエントのモチーフなんかはサントラで聴いてたときよりも印象深かったとか、『旅の仲間』の”The Ring Goes South”はSEEバージョンを元にしてるな〜なんてサントラとの比較ができたとか、”May It Be”は意地でも入れないんかい! なんて勘ぐったりとか(笑)、細かなお楽しみもテンコモリだったので、やはり聴きに行って良かったです。あと、「この映画と一緒に過ごしたこの三年間は、ホントに楽しかったな〜」なんて、妙にしみじみしちゃったり(笑)。
最後に一つ。
プログラムを買う気満々で、それを入れる用に大きめのカバンまで持っていったのに、あっという間に売り切れで買えなかった。
……し、しどい。もうちょっと部数用意しといてくれっ!!
Craig Armstrong “Piano Works”
『ピアノ・ワークス』クレイグ・アームストロング
“Piano Works” Craig Armstrong
輸入盤CD
マッシヴ・アタック、ビョークなどとのコラボレーションや、映画『ロミオ+ジュリエット』『ムーランルージュ』などのサントラで知られるコンポーザーの三枚目のソロ・アルバム。
1st “Space Between Us”、2nd ” As If To Nothing”では、メランコリックかつ重厚なストリングスや、エリザベス・フレイザーやボノをゲストに迎えた歌モノが印象的だったけど、今回の3rdはメランコリックな味わいはそのままに、全曲ピアノ・ソロを主体に微かに音飾が加わったインストゥルメンタルという、よりシンプルな内容なので、以前のちょっと勿体ぶったような大仰さ(そんなトコロも魅力だったんだけど)は、だいぶ薄れた感じ。
が、これはこれで実に美しいし、アンビエント的に聴きやすくもあるので、これからの季節、秋の夜長にはなかなか重宝しそうです。収録曲がもっぱら自作曲のセルフカバーなので、従来のバージョンと聴き比べる楽しみもあるし。
叙情的でキレイなピアノ・ソロが好きな方、例えばジョージ・ウィンストンやウィム・メルテンやアルトゥーロ・スタルテリなどのピアノ・アルバムが好きな方、オススメですぞ。
『慕情』サントラ
『慕情/オリジナル・サウンド・トラック』アルフレッド・ニューマン
“Love Is A Many Splendored Thing (OST)” Alfred Newman
輸入盤CD
主題歌は既にスタンダード・ナンバーになっている『慕情』ですが、レコ屋のPOPに「実は過去レコードになったことがなく、今回が初」とあって、ビックリです。ホント?
まあ、有名な主題歌はもちろん良いのですが(それでも当時は、プッチーニの『ある晴れた日に』の盗作じゃないかなんて話も出たと聞いたことがありますが)、何といっても香港を舞台にした映画ですんで、いかにもらしげなエキゾ風味が全編に漂っていて、加えてちょっとラウンジなムードもあったりして、マーティン・デニーとかレス・バクスターとかが大好きな私としては、思わずニヤニヤ頬がゆるみっぱなしです。4トラック目の”The Moon Festival”とか、9トラック目の”Chung King”とか、17トラック目の”The Fortune Teller”なんて、まんまエキゾチカ。かと思えば、ロマンチックなチューンは流麗なストリングスで、これまたこのうえなく甘美に盛り上げてくれて、いやぁ、満足、満足。聴いてると、ちょっと悲恋がしたくなります。(ウソ)
ただ一つ難点が。値段が高い。確か3500円くらいした。
…まあ、2000枚プレスの限定盤じゃあ、しかたないか。