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最近お気に入りの音楽

 ここんところ教会音楽、特に東方教会のヤツを聴きたいモードに入っておりまして、それ系を集中して購入中。
 というわけで、新規購入したCDの中から、お気に入りを幾つかご紹介。
cd_Chant-de-L'Eglise-de-Rom
“Chant de L’Eglise de Rome” Marcel Peres & Ensemble Organum
 古代ローマの復元聖歌。
 ギリシャ正教のビザンチン聖歌と、グレゴリオ聖歌の中間みたいな感触。プロの歌手によるもので、洗練された技術とゴツゴツした力強い表現を共に併せ持つ、この手の音楽としては理想的なパフォーマンス内容。

cd_Le-Chant-des-Templiers
“Le Chant des Templiers” Marcel Peres & Ensemble Organum
 上のアルバムと同じグループによる、今度はテンプル騎士団によって歌われていた聖歌を復元したもの。
 古代ローマのアルバム同様、力強い声の響きにゾクゾクします。
 映画『キングダム・オブ・ヘブン』やTVドラマ『アイヴァンホー』を見てから、テンプル騎士団は何となく印象が悪くなっていたけど、このCDでそれがちょっと好転した(笑)。

cd_Christmas-in-the-Holy-La
“Christmas in the Holy Land: Ancient Christian Liturgies”
 ローマ・カソリック、ギリシャ正教、エチオピア正教、アルメニア正教、コプト正教、シリア正教などの、クリスマス聖歌を集めたオムニバス。
 ローマ・カソリックとギリシャ正教のパフォーマンス内容は、正直それほど高いとは思えないけれど、東方諸教会の聖歌の数々をまとめて聴ける面白さ(エチオピアやコプトやシリアなんか、何も知らずに耳にしたら、キリスト教の聖歌とは気付かないかもしれないくらいエキゾチック)と、鐘の音に始まり鐘の音に終わるアルバムとしての構成の良さもあって、かなり楽しめる好盤。
 入門盤としては、この中で最適だと思います。

cd_Sacred-Treasures
“Sacred Treasures: Choral Masterworks from Russia”
 ロシア正教のオムニバス。
 これまた、鐘で始まり鐘で終わる構成。伝統的なものから、チャイコフスキーやラフマニノフなどによるものなどまで、満遍なく収録。「癒し系」的なコンセプトのアルバムなので、一曲一曲の尺が短いのが物足りないけど、敬虔で粛々とした美しさは文句なし。
 シリーズ化されたらしく何枚か出ていますが、この無印と”III”と”V”がロシア正教もの。

cd_Rachmaninov--Vespers
“Rachmaninov: Vespers” Alexander Sveshnikov + USSR State Academic Choir
 上のアルバムを聴いて興味を持った、ラフマニノフの『晩祷』。
 ネットで調べたら、このソビエト国立アカデミー・ロシア合唱団による65年盤というのが評判が良かったので購入。

cd_Vassilis-Tsabropoulos-ak
“Akroasis” Vassilis Tsabropoulos
 ジャズ/クラシック系のギリシャ人ピアニスト(らしい)Vassilis Tsabropoulosによる、ビザンチン聖歌を元にしたピアノ・ソロ・アルバム。
 インストゥルメンタルのピアノ・ソロなので、持続低音やメリスマがないせいか、メロディはともかくとして、それ以外ではさほどビザンチン聖歌という感じはしませんでしたが、そんなことを抜きにしても、とにかくストイックで美しい。伝統曲のアレンジ版よりも、オリジナル曲の方がエキゾチックだったりするのが、ちょっと面白かった。
 あと、聴きながら、「前に買って気に入っていた、同じECMの、グルジェフの音楽をピアノとチェロで演ってるヤツと、雰囲気が似ているな〜」なんて思ったんですが、確認したら同じアーティストだった。大ボケ(笑)。

 因みに、今回新たに購入したものではなく、既に持っていたものの中から東方教会系のCDの愛聴盤を選ぶと、以下の如く。どうも、全部廃盤っぽいけど……。

ギリシャ・ビザンツ教会の聖歌 ギリシャ・ビザンツ教会の聖歌
価格:¥ 2,500(税込)
発売日:2001-12-29
Grèce: Les grandes époques du chant sacré byzantin Grèce: Les grandes époques du chant sacré byzantin
価格:¥ 1,838(税込)
発売日:1994-07-05
コプト教会の礼拝 コプト教会の礼拝
価格:¥ 2,500(税込)
発売日:2001-12-29
サカルトベロの奇蹟のポリフォニー / 東西の陸橋カフカズの合唱 サカルトベロの奇蹟のポリフォニー / 東西の陸橋カフカズの合唱
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2000-07-05
Oath at Khidistavi: Heroic Songs & Hymns From Oath at Khidistavi: Heroic Songs & Hymns From
価格:¥ 1,838(税込)
発売日:1998-01-20
Music of Armenia, Vol. 1: Sacred Choral Music Music of Armenia, Vol. 1: Sacred Choral Music
価格:¥ 1,736(税込)
発売日:1995-10-03

つれづれ

higetonikutai_proof
 いよいよ今週末発売になる、新しいマンガ単行本『髭と肉体』ですが、ぼちぼちネットショップとかで、予約可能になっているようです。
 当然のことながら、だいぶ前に無事全て校了済みなので、あとは本が届くのを待つばかり。
 詳しい内容紹介(を兼ねた宣伝)とかは、それから改めてアップしますが、せっかくなので今回は予告を兼ねて、校正紙の画像なんぞを初公開。こんな感じの校正紙の山に、編集さんと協力してそれぞれ赤を入れて、マズい部分を直していくわけであります。
 以前、アクリル絵の具とかで描いたカラーイラストを、原画やポジでアナログ入稿していた頃は、色校正の段階で色調が極端に転んだ(赤味とか黄味とかが、色調がヘンに強く出たり偏ったりすること)りして、「アカ版洗う(マゼンタ版を文字通り「洗って」網点を小さくする=赤味を抑えるということ)」とか、「シアン盛る(印刷時にシアンインクを多めに盛る=青味を強めるということ)」なんていう、今から思うとビックリするくらいアナログな指示入れて戻したりして、それでも直らなくて出来上がりに泣いたりしましたが、デジタル入稿にしてからは、そうそうビックリするような色調の転びとかはなくなったので、それはホントにありがたい。
 というわけで、今回の単行本のカラーも、とってもキレイに出していただきました。

 さて、単行本作業も終わり、雑誌用の原稿もアップしたところで、新規のクライアント(一般系)さんと、近所の茶店で初顔合わせ&打ち合わせしてきました。
 一般系の編集さんとお会いするときは、自分が日頃あまり馴染みのない業界事情とか、大物マンガ家先生の逸話なんかをお聞きできるのが楽しみなんですが、今回もまた、昔から好きだった大物先生の話を聞けて、喜びつつも逸話の破天荒さに目が点。
 どんなお仕事かは、時期が来たときに、また改めてお知らせします。

 その帰り道、本屋に寄って何冊か購入。
 帰宅後、さてどれから読もうかと楽しみに袋を開いたら、買ったのはほとんど資料用のものばかりで、趣味的な本は雑誌『芸術新潮』1冊だけだったことに改めて気付き、ちょいガックリ。
 その『芸術新潮』で、現在パリで「ターザン展」をやっていると知り、うが〜、見に行きたいと地団駄。
 アテネで新装オープンしたという、新アクロポリス博物館にも行きたいなぁ。しかし、パルテノンの破風彫刻、い〜かげんギリシャに返せよな、大英博物館。
 因みに、同じくアテネの国立考古学博物館にある、アルテミシオンのポセイドン像は、私のフェイバリット彫塑作品の一つなので、アテネに行ったとき(これまで3回行ってます)には、かならず「会って」きます(笑)。
 来週から始まるという、「和田三造展」の広告も載っていて、これも行きたいんだけど、う〜ん、姫路市立美術館かぁ……遠いなぁ。因みに和田三造ってのは、ホモならみんな教科書で目が釘付けになったはず(笑)の、あの『南風』の作者です。まあ、『南風』だけ見るんだったら、いつもは上野の国立近代美術館にあるから、東京在住の私には気軽に行けるわけで、そう考えると、姫路が遠いとかヌカしてるのは、ただのゼイタクってもんですね。
 そういえば、昔、晩三吉先生と御一緒して上野に美術展を見に行ったとき、同美術館のミュージアム・ショップで、晩先生がこの『南風』のポストカードを何枚も購入なさっていましたっけ。「そっち系の知り合いに手紙を出すときに使うから、いつも一定枚数ストックしている」んだそうで、それを伺って、「ああ、そーゆーのも粋でいいなぁ」、なんて思ったことを覚えています。

 アート&海外絡みでは、いつものパリのギャラリーから、今度やる企画展用に出品して欲しいとの打診あり。ちょうど条件に合う作品も見つかりそうなので、前向きに検討すると返事。

 もう一件、イギリスから、こっちは出版物用に作品提供の依頼あり。協力すること自体はやぶさかではないんだけど、条件的に合うものがあるかどうか、ちょい微妙なところなので、摺り合わせが必要な感じ。

 海外ネタで、もう一つ。
 前に一度お会いしたことがある、シンガポールのカメラマン、ワイ・テイク氏から、「今年のミスター・シンガポール・ボディビル大会で、85kg級のチャンピオンになったよ」と、YouTubeのアドレス付きでメールがきたので、せっかくだからご紹介。

 こういうバキバキの彼も、もちろんカッコイイんだけど、何てったってご本人がチョーいい男(←もちろん右側の人ですよ)なので、私としては、ご本人が「ちょっとたるんだ」と嫌がるオフのときの方が、やっぱりステキに見えるなぁ(笑)。
with-wai
 まあ、そもそも私は、コンテスト時のパンパンに膨らんだボディビルダーの身体は、ちょっと趣味から外れる部分もありまして。彼と会ったときも、彼が「何でもっと血管を描かないんだ」と聞くから、「ボディビルダーの血管って、何だかキャベツみたいで、あんまりセクシーじゃないから」と答えたら、はたかれそうになりました(笑)。

dvd_VAMOS-A-MATAR-COMPANERO
 映画は、DVDで『ガンマン大連合』を鑑賞。
 ひゃ〜、チョー面白かった! 燃えるわ、泣けるわ、考えさせられるわ。
 マカロニ・ウェスタンには疎い私は、セルジオ・コルブッチの映画って、ソード&サンダルの『逆襲!大平原』と『闘将スパルタカス』くらいしか見たことなくて、この映画も、フランコ・ネロとトーマス・ミリアンが見られりゃ、それでいいか、ってな軽い気持ちだったんですが……しまったなぁ、こんな面白いヤツ見ちゃうと、ハマってしまいそうだ(笑)。とりあえず、『続・荒野の用心棒』と『殺しが静かにやってくる』にトライかなぁ。
 で、前にブログでも「脱ぎっぷりも責められっぷりもいい」と書いたトーマス・ミリアンですが、やっぱこの映画でも「脱いで責められる」のね(笑)。
 あと、主題歌がチョーかっこよかったので、観賞後は即座にサントラ盤を注文。その主題歌が聴けるイタリア版予告編が、YouTubeにあったので、それも下に貼っときましょう。

 この「♪ヴァモサマタ〜、ヴァモサマタ〜、コンパニェ〜ロ〜!」ってフレーズ(「殺っちまおうぜ、同志!」って意味だそうな)、サイコーです。
 いいかげん長くなったので、最近聴いている他のCDに関しては、また後日まとめて。

ダニエル・レンツ(Daniel Lentz)

 前回、ダニエル・レンツを引き合いに出したので、ついでにレンツのアルバムの中から、お気に入りのものをご紹介。
cd_daniel-lentz-missa
“Missa Umbrarum”
 アンビエント好きにオススメしたい一枚。
 1曲目”O-KE-WA”は、低くゆったりと刻まれる微かなドラムや、繊細な音響効果に乗せて、12声のコーラスが、テキストを詠唱のように歌いあげる、ちょっと東洋的な雰囲気のある曲。とても瞑想的で心地よい。
 2曲目”Missa Umbrarum”(影のミサ)は、「キリエ・エレイソン」といったミサの典礼文を、音節ごとに分断・解体・再構成しながら歌う8声と、ワイングラスを使った様々な音響(鐘のようだったり、鈴のようだったり、ヒスノイズのようだったり、言われなければワイングラスだとは判らないような、不思議な音)と、それらの互いの干渉による118の音響効果(作曲者はSonic Shadows〜音の影と呼んでいる)からなる大曲。繊細で複雑な響きを持ち、なおかつ極めて美しい音楽。必聴。
 3曲目”Postludium”は、グラスハープによる幽玄なドローンの合間に、コーラスが浮かんでは消え浮かんでは消えする、これまた瞑想的な雰囲気を持つ曲。
 4曲目”Lascaux”は、まるでシタールのようなグラスハープのドローンの合間に、”Missa Umbrarum”でも聴かれた鐘のようなワイングラスの音響効果が絡む、アンビエントとして聴いても極上の逸品。
 このアルバムは、とにかくひたすら静謐で美しいので、ブライアン・イーノやハロルド・バッドが好きだったら、絶対に聴いて損はなし。

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“b.e.comings”
 表題曲”b.e.comings”は、様々な楽器による単音とテキストの断片が、マルチトラックのデジタル・レコーダーで、目まぐるしく複雑に組み合わされていく作品。
 他の4曲、”Song(s) of the Sirens”、”Midnight White”、”Slow Motion Mirror”、”Butterfly Blood”は、音節で分断されたテキストが、テープ・ディレイによって次第に再構成されていき、最終的にテキストの原型に戻って完成するという作品。
 前者には、ミニマル的な陶酔感や高揚感があり、後者には、美しく幽玄な雰囲気があります。それと同時に、どちらも分解されたテキストが、次第に組み合わさって文学的な詩として完成していくという、プロセスの面白さも味わえる。
 このCDでは、まず最初の5トラックで、最終的に完成形されたサイクル部分のみを聴かせ、残りの5トラックで、それらの曲を改めて、最初のサイクルから完成するまで、完全に収録する……という、ちょっと変な構成になっています。曲をシステマティックに「理解」するためなんでしょうけど、正直、個人的には余計なお世話という感じがします。
 でも、そういったロジカルな要素を抜きにしても、純粋に音楽として美しいというのが、レンツの音楽の良いところ。

cd_daniel-lentz-leopard
“On the Leopard Altar”
 ミニマル・ミュージック好き、テクノ好き、エレクトロニカ好きにオススメしたい一枚。
 1曲目”Is It Love”は、シンセサイザーのスピーディーなアルペジオと、細かく分断されたコーラスが、複雑に絡み合いながら、幻惑的に展開していきます。目眩くような中にポップ感もあるのがいい。80年代のニューウェーブを好きな方なんかにもオススメ。
 2曲目”Lascaux”は、前述のアルバム”Missa Umbrarum”に収録されている曲と同じ。極上アンビエント。
 3曲目”On The Leopard Alter”は、ピアノの演奏やシンセサイザーの音響をバックに、ヴォーカルが牧歌的なメロディーを穏やかに歌うという、かなりフォーク〜ポップス風の感触の曲。ちょっと、ヴァージニア・アストレイ、ケイト・セント・ジョン、ヒューゴ・ラルゴなんかを思い出しました。
 4曲目”Wolf Is Dead…”は、”Is It Love”と同様の構成。
 5曲目”Requiem”は、キラキラしたシンセサイザーのアルペジオに、低い鐘のような音響と低音域のコーラスがゆったりと寄り添う、内省的な雰囲気が漂う小品。
 全体的に聴きやすいアルバムです。
 オマケ。
 1986年、バンクーバー万博用に制作されたという、映像作品”Luminare”。音楽がダニエル・レンツ。前述のアルバム”On The Leopard Altar”に収録の”Is It Love”です。

ジョン・マクガイア(John McGuire)

 最近知ってお気に入りになった、アメリカのミニマル・ミュージック(米Wikipediaによれば、ポスト・ミニマル世代に属するらしい)の作曲家による、お気に入りのアルバム二つ(まだそれだけしか見つけられない)をご紹介。

cd_john-mcguire-pulsemusic3
“Pulse Music III / Vanishing Points / A Cappella” John McGuire
 電子音のミニマル・ミュージック。
 とにかく、1曲目の”Pulse Music III”が気持ちいい! キラキラした電子音が光の粒のように空間を飛び交い、反復とズレを繰り返しながら、綾織りのように楽曲を埋め尽くしていく。
 現代音楽好きのみならず、テクノやエレクトロニカ好き、古いところだとクラウト・ロック好きにも、ぜひオススメしたい逸品。
 2曲目の”Vanishing Point”は、同じ電子音ながら”Pulse Music III”とはうって変わって、音の間合いをたっぷりとった導入から始まり、その隙間をアルペジオがスピードを変えながら埋めていく。ちょっと、ダニエル・レンツを思い出させる雰囲気で、これまたかなりキモチイイ。
 3曲目”A Cappella”は、サンプリングされループする人声に、ソプラノのヴォカリーズが寄り添う、これまたちょっとダニエル・レンツっぽい美曲。レンツの”Missa Umbrarum”がお好きな方、せひお試しあれ。
 CDは、アマゾンだとプレミア付いてるのか、スゴい値段になっちゃってるので、リンク先は私も利用したMeditationsのサイト。試聴もできる親切設計です。

cd_john-mcguire-instruments
“Works for Instruments” John McGuire
 上のアルバムがすっかり気に入ったので、他にはないかと探して見つけた、二枚組CD。今度は、アコースティックの管弦楽曲集です。
 1枚目の1曲目、28分近い”Cadence Music”は、スティーヴ・ライヒの直系といった感じの、陶酔的で楽曲としても美しい、21の楽器による堂々たる管弦楽曲。演奏もアンサンブル・モデルンなので、極めて高品質。ちょい、バロック的な典雅さも感じられるあたりは、マイケル・ナイマンに似た感触も。
 2曲目”Exchanges”は、弦楽四重奏とソプラノのヴォカリーズによる16分半の曲で、さながら、先の”Vanishing Point”や”A Cappella”の人力版といった趣。目まぐるしくテンポを変えながら、掛け合いのように繰り返される演奏が、かなり聴き応えあり。
 2枚目の1曲目”Decay”は、8つの金管楽器のための楽曲で、不協和音を多用した、ちょっと不穏な感じがする曲。
 2曲目の”Frieze”は、4台のピアノのための曲。曲調は前の”Decay”と似た感じで、さながら人力サンプリング・ループといった味わいも。この二曲は実験性が前に出ている感じ。
 3曲目の”Music for Horns, Pianos and Cymbals”は、いや〜、これは素晴らしい! 先の”Exchanges”同様に、シンプルなフレーズが、掛け合いのように絡み合いながら展開していくんですが、その酩酊感と高揚感が実に美しく、かつドラマチック。かなり感動しました!
 そんなこんなで、こちらもまた、ミニマル・ミュージック好きだったら聴いて損はない内容です。上のリンク先はMeditationsの商品ページですが、日本のアマゾンでも入手可能。

CDのスリム化、続き

 スリムケースのメーカー別2社の比較は、こちらの記事、CDケースの簡単な分解法については、こちらの記事もどうぞ。

 昨日書いた、CDのスリムケース化の話ですけど、どれくらい嵩が減るのか、あれだと判りにくかったですね。
 というわけで、写真をアップ。
slim_height
 左も右も、どちらもCD10枚分。スリムケース(写真はMEDIA PASSを使用)に入れ替えると、これだけ山が低くなります。

 因みに、MEDIA PASSの50枚入りを買うと、こんな(↓)パッケージに入っているので、
slim_mediapass_box
中身が空になったら、こんな感じ(↑)で収納ボックスとしても使えます。
 これ、けっこう便利なので、コクヨさん、この外箱だけ別売してくれないかしらん。

 CDの収納ボックスは、いろいろなものが市販されているので、私もどれがベストか、色々と試してみました。
slim_100yen
 これ(↑)は、100円ショップで売っていた、ダンボール製のやつ。
 安価だし、見た目もスッキリしていて良いんだけど、外箱の厚みのせいもあり、ボックスの大きさがCDより15ミリほど高くなってしまい、既に持っていたCD用の収納ラックには入りませんでした。

 というわけで、最終的にはこれ(↓)をチョイス。
slim_elecom
 エレコムの不織布CD/DVDケース用ボックス
 これだと、横倒しにすればCD専用ラックにもピッタリ収まるし、お値段もリーズナブルで、一個あたりの収納枚数を考えると、100円ショップのものと大差ありません。

 そんな感じです。
 現時点で、400枚ほど入れ替え作業を終えましたが、まだまだ先は遠い……(笑)。

CDのスリム化と発掘(笑)品

 前にもちらっと書きましたが、我が家の床にはいたるところに、本やCDやDVDの山が、蟻塚のように林立しております。
 最近、それがあまりにも頻繁に雪崩を起こすようになりました。
 先日の地震のときはもとより、蟻塚の脇を通り抜けようとして、ちょいと服の裾が触れて崩れたり、ひどいときには、ぐっすり寝ている最中、何の拍子にか雪崩が起きて、音で目が覚めたら、床に全く足の踏み場がなくなっていたり。
 で、あまりにもあんまりなので、せめてちょっとだけでも片づけようと思い、先週のお盆休みから、まずCDを整理することにしました。

 具体的にどうするかというと、まず蟻塚を取り壊し、内容物を音楽のジャンル別に分類して、一時的にダンボール箱の中に詰め込みます。
 次にCDラックにスペースを作らなければいけないんですが、現状は既に満員状態。というわけで、ラックのCDをスリムケースに移し替えて(こうすると幅が約3分の1になる)隙間をこさえてから、開いたスペースに蟻塚のCDを、やはりスリムケースに移し替えて収めていきます。
 とりあえず、もう10年前くらいだったか、ロック&ポップス系はスリム化していたので、それ用のラックのみ、けっこう余裕がありました。というわけで、蟻塚から発掘したロック&ポップス系のCDを、スリム化して棚にしまうと同時に、今回は他のジャンルのCDも、まずは現代音楽と民族音楽から、スリム化していくことにしました。

 さて、いざ蟻塚の解体作業に取りかかったら、底の方から「あ〜、そういやこれ買ったっけ、すっかり忘れてた」とか、「ん? これ、どんな音楽だっけ? 覚えてないぞ」とか、ひどいのになると「げ、まだ開封してないじゃん!」ってなヤツまで(笑)、出てきました。

 というわけで今回は、その発掘品(笑)を、幾つか並べてみませう。
cd_willy-deville-miracle
“Miracle” Willy DeVille
 アメリカのルーツ音楽とパンクのミクスチャー。ボーナス・トラックに、映画『クルージング』の挿入歌を収録。

cd_rachels-selenography
“Selenography” Rachel’s
 ヴィオラ、チェロ、ギター、ドラム、パーカッションなどによるポスト・ロック。音はかなりクラシック寄りで、叙情的で美麗、静謐にしてドラマチック。

cd_instrumental-quarter-no-
“No More Secrets” Instrumental Quarter
 ギター、ベース、ドラム、チェロによるポスト・ロック。ちょいと情緒に流れすぎのきらいはあるものの、牧歌的で和めます。

cd_henry-cowell-piano-music
“Piano Music” Henry Cowell
 アメリカの現代音楽。作曲者自身による演奏。トーンクラスターの発明者で、ピアノの内部奏法など、手法は前衛的なのに、曲自体は意外なほどにロマンティック。

cd_dino-saluzzi-rosamunde-q
“Kultrum” Dino Saluzzi & Rosamunde Quartett
 バンドネオンと弦楽四重奏によるタンゴ。バンドネオンの泣きを、弦楽四重奏が渋く抑える感じ。

cd_une-anche-passe-nigriz
“Nigriz” Une Anche Passe
 トラディショナルな地中海音楽を、フランスのグループが木管、金管、パーカッションなどで演奏。哀愁たっぷりで、木管の柔らかさも心地よい。

slim_sample
 因みにスリムケースは、以前はフラッシュ・ディスク・ランチのCDソフトケース(左)を使っていたんですが、今回はコクヨのMEDIA PASS(右)も試してみました。

 ケース自体の見てくれは、フラッシュ・ディスク・ランチの方がスッキリしてきれいなんですが、CDの出し入れに関しては、
アナログ盤風(不織布袋をケースに入れる方式)のフラッシュ・ディスク・ランチより、
slim_flash
CDのジュエルケース風(不織布袋がケースと一体化している)のMEDIA PASSの方が、やりやすいです。
slim_media

 CDケースを簡単に分解するHOW TOも、こちらにアップしておきました。慣れれば10秒程度で分解できます。

 で、入れ替えたあとは、こんな感じでゴミの山が……。
slim_gomi
 う〜ん、環境に優しくない(笑)。

ハイダマキ Hydamaky

cd_haydamaky-kobzar
 ここんところ、ハイダマキ(Haydamaky)というウクライナのバンドにハマって、ヘビー・ローテーション中です。
「ロック+スカ+ウクライナの伝統音楽」というのがベースのバンドなんですが、その勢いの良さとか、現代と伝統のミクスチャー感が良くて、ちょっとポーグス(The Pogues〜ケルト音楽+パンク)とか、レ・ネグレス・ヴェルト(Les Negresses Vertes〜ジプシー音楽+ロック)とか、キーラ(Kila〜ケルト音楽+その他いろいろ)なんかを連想しました。

 曲調はけっこう幅広くて、陽気なスカあり、ドラマチックなロック調あり、泣き節のスローバラードあり、プログレばりのシアトリカルな曲ありで、政治的なメッセージ色の濃い曲もあるんですが、いずれも骨太で、民族色もタップリ。
 このテのミクスチャー音楽が好きな人だったら、かなりオススメです。
 で、ちょっとYouTubeを見たら、けっこう動画がいっぱいあったんで、幾つか見繕って貼ってみませう。

バルカン・ブラスやジプシー・ブラスのスカ版みたいな”Yidu Tramwayem”

ドラマチックなロック調の”Meni Zdaetsia”(チェルノブイリ汚染を歌った曲なので、ちょっだけですが、刺激的な映像も含まれます)

コサック版ジンタみたいなノスタルジー感と泣き節がタマラナイ”Leleki”

 で、これらは全て、日本盤も出ている「コブザール Kobzar」というアルバムの収録曲で、我が家で現在ヘビー・ローテーション中なのも、このCD。
 YouTubeやMySpaceで、このアルバム以外からの曲を聴くと、それらもおしなべて好みなので、もっと欲しいんだけど、残念ながら未だ入手できず。とりあえず、一つ前のアルバム「ウクライナ・コーリング Ukraine Calling」だけ、入荷予約しておきました。

 さて、ついでに最初に例えを出した、ポーグスとレ・ネグレス・ヴェルトとキーラの動画も、YouTubeにあったので貼ってみませう。

ポーグス〜アルバム「堕ちた天使」収録曲、”If I Should Fall from Grace with God”。

レ・ネグレス・ヴェルト〜アルバム「Mlah」収録曲、”Zobi La Mouche”。これは廃盤みたいですね。

キーラ〜アルバム「ルナパーク」収録曲、”Glanfaidh Mé”。日本盤の特典DVDに、YouTubeのヤツを含むライブ映像が収録されています。

最近聴いているCD

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“Magnificat; Victoria” Wojciech Kilar
 現代ポーランドの作曲家、ヴォイチェフ・キラールの、声楽付き管弦楽曲二曲をカップリング。
 メインを占めるのは七部からなる大曲「マニフィカ〜独唱と合唱とオーケストラのための」(2006)。同作曲者の似た構成の楽曲「ミサ・プロ・パーチェ(平和のためのミサ)」(1999)と比較すると、トラジックな重厚さが控えめになって、清浄感や祝祭的な高揚感が前面に出ている印象。
 第一曲からして、まるで「さあさあ、始まり始まり〜」と言わんばかりの金管のファンファーレに続き、低弦の反復がクレッシェンドしていき、ティンパニが打ち鳴らされて、リタルダンドした後、満を持して合唱の登場……という明快さ。
 かと思えば、ストリングスにソプラノの独唱をフィーチャーした二曲目や、グレゴリオ聖歌風のモノフォニーから始まり、次第に声部が増え、やがて再びストリングスとソプラノの独唱が加わる三曲目は、まんま癒し系のオムニバスCDに入ってても違和感なさそうな美曲。
 他にも、オーケストラによる力強い反復に、バスの独唱が朗々と響く四曲目、金管のスタッカートとティンパニによるカッコイイ導入、緩急を効かせた混声合唱による高揚感が印象的な五曲目、民族風の旋律の反復をバックに、ソプラノとテノールとバスの掛け合いを聴かせる六曲目、バロック風な旋律を、いかにもな金管のファンファーレから、不協和音を伴う現代風のストリングス、古楽風の声楽……などなど、次々と展開していき、シンプルで力強い高揚感を経て、敬虔な清浄感で幕を引く終曲……と、キラールを聴く面白みを堪能しました。
 カップリング曲「ヴィクトリア〜混声合唱とオーケストラのための」(1983)は、NAXOSから出ている『合唱曲と管弦楽曲集』にも収録されています。4分足らずの小品ながら、ハッタリの効きまくったイントロ、問答無用でグイグイ盛り上げる展開、期待を裏切らない大仰な終わり方……と、これまたタマリマセンな一曲。
“Kilar: Magnificat; Victoria”(amazon.co.jp)

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“Epics: The History of the World According to Hollywood” Omnibus
 今昔のハリウッド史劇映画の音楽あれこれを、たっぷり56曲収録した、4枚組オムニバスCD。ただしサントラではなく、プラハ市交響楽団の演奏によるもの。
 もちろん、古くはミクロス・ローザの『ベン・ハー』やエルマー・バーンスタインの『十戒」、アレックス・ノースの『クレオパトラ』やモーリス・ジャールの『アラビアのロレンス』、最近のではヴァンゲリスの『アレキサンダー』やハンス・ジマーの『グラディエーター』やジェームズ・ホーナーの『ブレイブハート』なんて、有名どころも入ってるんですけど、個人的には、マノス・ハジダキスの『スパルタ総攻撃』とか、フランツ・ワックスマンの『隊長ブーリバ』とかいった、好きなんだけどサントラを持っていないのが入っているのが嬉しかった。
 というわけで、ちょっと長くなりますけど、興味のある方へのご参考までに、全収録曲のリストを。
 因みにCDでは、映画の舞台となっている年代順に、曲が収録されているという構成になっているので、以下のリストもその並びで。カナ表記は、allcinema onlineに準拠。
 前述の曲数よりリストの数が少ないのは、同じ映画から複数曲が収録されているものがあるため。
紀元前1万年(ハラルド・クローサー)
十戒(エルマー・バーンスタイン)
アレキサンダー(ヴァンゲリス)
ソドムとゴモラ(ミクロス・ローザ)
スパルタ総攻撃(マノス・ハジダキス)
トロイ(ジェームズ・ホーナー)
クォ・ヴァディス(ミクロス・ローザ)
聖衣(アルフレッド・ニューマン)
ディミトリアスと闘士(フランツ・ワックスマン)
クレオパトラ(アレックス・ノース)
アンソニーとクレオパトラ(ジョン・スコット)
グラディエーター(ハンス・ジマー)
マサダ(ジェリー・ゴールドスミス)
スパルタカス(アレックス・ノース)
ローマ帝国の滅亡(ディミトリ・ティオムキン)
偉大な生涯の物語(アルフレッド・ニューマン)
ナザレのイエス(モーリス・ジャール)
ベン・ハー(ミクロス・ローザ)
銀の盃(フランツ・ワックスマン)
パッション(ジョン・デブニー)
大将軍(ジェローム・モロス)
エル・シド(ミクロス・ローザ)
バイキング(マリオ・ナシンベーネ)
グレート・ウォリアーズ 欲望の剣(ベイジル・ポールドゥリス)
最後の谷(ジョン・バリー)
炎と剣(フランツ・ワックスマン)
隊長ブーリバ(フランツ・ワックスマン)
シー・ホーク(エリック・ウォルフガング・コーンゴールド)
真紅の盗賊(リチャード・アディンセル)……これ、IMDbやallcinema onlineだと、音楽はウィリアム・オルウィンになってるんだけど?
パイレーツ・オブ・カリビアン(クラウス・バデルト)
海賊ブラッド(エリック・ウォルフガング・コーンゴールド)
冬のライオン(ジョン・バリー)
ヘンリー五世(パトリック・ドイル)……ケネス・ブラナー版
ヘンリー五世(ウィリアム・ウォルトン)……ローレンス・オリヴィエ版
クイン・メリー 愛と悲しみの生涯(ジョン・バリー)
エクスカリバー(カール・オルフ)……これ、ちょっと反則(笑)。
女王エリザベス(エリック・ウォルフガング・コーンゴールド)
トゥルーナイト(ジェリー・ゴールドスミス)
ロビン・フッドの冒険(エリック・ウォルフガング・コーンゴールド)
ブレイブハート(ジェームズ・ホーナー)
戦艦バウンティ(ブロニスラウ・ケイパー)
1492・コロンブス(ヴァンゲリス)
征服への道(アルフレッド・ニューマン)
ミッション(エンリオ・モリコーネ)
アラモ(ディミトリ・ティオムキン)……ジョン・ウェイン版
進め龍騎兵(マックス・スタイナー)
アラビアのロレンス(モーリス・ジャール)
ズール戦争(ジョン・バリー)
ラスト・サムライ(ハンス・ジマー)
栄光への脱出(アーネスト・ゴールド)
“Epics: The History of the World According to Hollywood” (amazon.co.jp)

“Madad” Mohamed Mounir

 一昨日からエジプトつながりで、私が大好きなエジプトのポップスのミュージック・ビデオを、YouTubeで見つけたのでご紹介。
 エジプトのベテラン歌手モハメッド・ムニールが、9.11の翌年、2002年に発表した、”Earth…Peace”というアルバムの一曲目で、世界平和を訴えるメッセージ・ソング(反戦歌でもあるので、プロテスト・ソングといった方がいいのかな?)です。
 モハメッド・ムニールは、1954年生まれのヌビア系エジプト人歌手。オフィシャル・サイトはこちら
 80年代末にワールド・ミュージック・ブームに乗って『オー・ババ』という日本盤が発売されたことがあるので、ご記憶の方もおられるかも。他の日本での紹介例は、日本公開されDVDも出ていた(現在は廃盤)ユーセフ・シャヒーン監督のエジプト映画『炎のアンダルシア』くらいなのかな。これに俳優として出演しており、劇中で歌も披露していました。
 正直、私もそんなにたくさん彼の歌を聴いているわけではないんですが、今様のエジプトのポップスと、ヌビア音楽の要素が混じり、更にエレクトロニクスとかも積極に取り入れた(確か、ドイツのエレクトロニクス系ワールド・ミュージックの、ディシデンテンとも繋がりがあったんじゃなかったっけか)、楽しくてダンサブルなポップ・ミュージックを演る人……というイメージでした。
 そんなわけでしたから、件のアルバム”Earth…Peace”を、たまに利用しているアラブ音楽の通販サイトで見つけて、この一曲目”Madad”を試聴したとき、えらくビックリしました。
 私の抱いていたイメージとは全く違う、ゆったりとした雄大な曲調。もちろん、ムニールの声は素晴らしいんですが、それに加えて、凝ったアレンジと感動的な展開。もうイッパツで魅せられてしまい、即CDを注文しました。
 届いてみると歌詞の英訳がついていて(YouTube映像にも、小さくて読みづらいけど、英語字幕が付いています)、それでメッセージ・ソング(宗教歌でもあります)だというのが判ったんですが、読みながら聞いていたら、また泣けちゃってねぇ……。
 というわけで、よく「埋もれた名曲」だの「誰も知らない泣ける曲」だのという言葉を聞きますが、私にとってこの”Madad”は、まさにそんな曲。
 映像版を見たのは、私もYouTubeが初めてなんですが、皆様にもお楽しみいただければ、と。

 アルバム”Earth…Peace”は、amazon.co.jpでは廃盤らしくプレミア値が付いちゃってますが、HMVオフィス・サンビーニャから購入可能のようです。

最近良く聴いているCD

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“Świadectwo” Vangelis & Robert Janson
 ポーランド映画のサントラ。前ローマ法王ヨハネ・パウロ2世の生涯を、その腹心であった枢機卿の目を通して描いたドキュメンタリー映画らしいです。
 音楽はヴァンゲリスとロベルト・ヤンソン(ポーランド語の発音が判らないので、表記はテキトーです)の二名がクレジットされていますが、合作しているわけではなく、ヴァンゲリスが3曲、ヤンソンが10曲を、それぞれ提供しています。
 私のお目当てはヴァンゲリスでしたが、3曲とも、メロディアスでロマンティックで荘厳で雄大という、いかにもヴァンゲリスらしい内容。
 新味はないですけど、題材が題材なだけに、メイン・テーマらしき”Sanctus”なんか、いかにも宗教的な法悦を誘発しそうで、その高揚感はかなりのもの。2曲目の”In Aeternitatem”は、荘厳なムードの中に複雑な和声が陰影を与えており、二分足らずの短さなのに聴き応えはバッチリ。3曲目の”Humanum Est”は、ちょっとトラジックな感じ。
 ヤンソンの方は、私は寡聞にして何も知らないんですが、優美でちょっと感傷的なオーケストラ曲。スウィートなピアノや暖かな木管や穏やかなクワイヤによる、美麗なリード・メロディーが良く立っていて、なかなかキャッチーな作風です。ただ、個人的な趣味から言うと、ちょいとムードミュージックやニューエイジ音楽的な「甘さ」や「泣き」が目立ちすぎているので、もう少し渋みが欲しい感じもアリ。
 でも、9曲目の”Triumf”なんか、そういった特徴が実に効果的にハマっていて、実に感動的な一曲だし、メイン・モチーフのピアノのフレーズなんかも、好きな人にはタマラナイ感じではないかと思うので、ジョージ・ウィンストンや久石譲のファンだったらオススメです。
 Amazonとかでは取り扱いがないみたいけれど、サントラ専門店の老舗「すみや」さんで購入可能です。
“Świadectwo” Vangelis & Robert Janson (すみや楽天市場店)

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“Partes Extra Partes” Wim Mertens
 ベルギーの作曲家ウィム・メルテンが、自曲を自身でオーケストレーションしたものを、フレミッシュ・ラジオ・オーケストラが演奏(ピアノ演奏は作曲者本人)しているアルバム。
 80年代、クレプスキュール・レーベルで出会って以来、長年追いかけているお気に入りの作曲家の一人ですが、これまでは多くても室内楽規模のアンサンブルだった彼の作品を、こうしてフル・オーケストラで聴けるとは、何だか感慨深いものがあります。
 全11曲のうち、新曲がどの程度入ってのかは、ちょっと判りませんが(何しろ、前にもちょっと書いたことがあるけれど、とにかく出すアルバムの数が膨大なので、とてもじゃないけど私もコンプしてるわけじゃないんで……)、昔からのファンとしては、”Birds For The Mind”(『建築家の腹』)、”Multiple 12″(『フェルゲッセン』)、”Struggle For Pleasure”、”Close Cover”(『ストラグル・フォー・プレジャー』『建築家の腹』両方に収録)といった、往年の名曲がオーケストラ版で聴けるのが、とにかく嬉しい。
 最近作からも、”Often A Bird”(『Jardin Clos』)、”Yes, I Never Did”、”To Ovey”(『To Fill In The Blank』あ〜、これ持ってねェや……)、なんかが、オーケストラ用に編曲されて入ってます。
 全体的には、選曲演奏共に、彼の持ち味の一つである、憂いのある叙情性が前面に出ている感じ。もう一つの持ち味である、ミニマル的なタイト感は、あまりなし。
 というわけで、新星堂のオーマガトキ・レーベルや、ビクターから出ていたクレプスキュールの日本盤、ピーター・グリーナウェイの映画『建築家の腹』のサントラなんかで、彼の音楽が好きだった……てな人には、文句なしにオススメできる内容です。
 因みに、試聴はここでできます。
“Partes Extra Partes” Wim Mertens (amazon.co.jp)

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“Jules Verne’s Master Of The World” + “Goliath And The Barbarians” Les Baxter
 1961年の映画『空飛ぶ戦闘艦』(未見)のサントラ。作曲はレス・バクスター。
 私は、レス・バクスターが大好きなので、とにかくその名前さえあれば、何でもかんでも買っちゃうんですが、実はこのサントラ盤、2 in 1の二枚組でして、そのカップリング作が、なななな何と去年ここで「できればそっちの方も復刻して欲しいな〜」と書いた、『鉄腕ゴライアス 蛮族の恐怖』のアメリカ公開版サントラなのだ!
 で、早速『ゴライアス』の方から聴いてみた。おぉ、メインタイトル「ゴライアスのマーチ」には聞き覚えがあるぞ。これ、何か他のソード&サンダル映画でも、使われていなかったか? 愛のテーマ「ランダ」は、バクスターお得意のエキゾな香りが漂う、ムーディーでロマンティックな美曲。
 その他、いかにもエピックらしきムードの数々で責めてくるんですが、う〜ん、ちょい重厚さに欠けるかな、というのが正直なところ。ハッタリ不足というか。バクスターの音楽の「軽やかさ」や「キャッチーさ」が、ちょい裏目に出ているような。
 エキゾ味とか主題の変奏とか、独立した音楽としては、面白いし聴き応えもあるんですけど、モンドやムードミュージック的な「楽しさ」には欠けるので、劇伴としてもイージーリスニングとしても、虻蜂取らずになってしまっている感あり。
 一方の『空飛ぶ戦闘艦』の方は、にぎにぎしくも楽しいモダニズムが横溢しているので、イージーリスニング的に聴いていても、優美なワルツ、コメディ調にエキゾをまぶした楽しさ、スピーディーで軽やかな展開、ラウンジ調のピアノ……等々、実にヨロシイ。バクスターのオリジナル・アルバムと比較しても、全く遜色のない出来映えかと。
 というわけで、ラウンジ系好きには大いにオススメしたいところなんですが、私は、前述のすみやで購入したんですけど、残念ながら既に売り切れになってます。調べてみたところ、プレス数1000枚の限定版で、メーカーでも発売後数時間で完売してしまったんだそうな。

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“Collected” 10cc
 ポップ・グループ10ccの三枚組ベスト盤。三枚目には、ゴドレイ&クレーム(10ccから脱退したメンバー二人による、音楽や映像のマルチメディア・ユニット)などの作品も収録。
 え〜、10ccというと、ガキの頃に結構好きでして(ご多分に漏れず、名曲「アイム・ノット・イン・ラブ」でトリコになったクチ)、CDになってからも、『オリジナル・サウンドトラック』『びっくり電話』『愛ゆえに』の三枚は買い直しているし、このベスト盤も買ってます。
 それが何で、また別のベスト盤を買ったかというと、女優ファラ・フォーセットの訃報を聞いたせいでして。
 この逝去を知って最初に思ったのが、「あ〜、そういや彼女主演の映画『サンバーン』の主題歌、大好きだったんだよな〜」ということでした。実は、映画自体は未見なんですけど、主題歌だけ、昔ラジオで放送されたのをエアチェックしてまして(そのときに10CCの曲だというアナウンスがあった)、そのカセットテープを何度も聴いてたんです。
 でも、映画を見ていないもんだから、サントラ盤は買わずにいたら、けっきょく入手しそびれてしまい、欲しくなったときには、もう後の祭り。後に、CDになってないかな〜、と、何度か探したものの、結局発見できず。
 で、訃報を聞いて、ふとそんなことを思い出して、ダメモトでまた探してみたら……な、何と、去年発売された、この3枚組ベストに、グラハム・グールドマン名義で『サンバーン』の主題歌が収録されているという情報が! もう、喜びに躍り上がって即注文した……って次第です。
 というわけで、届いてから早速再生。
 大学を卒業して実家を出た際、カセットテープは皆処分してしまったし、CDを探し始めてからも、同じくらい経過しているので、20年越しの念願叶っての再会というわけで……うう、もう感涙。
 というわけで、もし私同様に『サンバーン』の主題歌を探しているという人がいらした場合、「これに入ってますよ〜!」という情報提供ということで(笑)。
“Collected” 10cc (amazon.co.jp)