FLASHてのは、私にとって「興味はあるんだけど触りそびれている」アプリケーションだったんですが、ひょんなことから「体験版は30日間無制限で使用可」だと知って、これ幸いとダウンロードして使ってみることにしました。
アニメーション好きな人間の例に漏れず、私も趣味のアニメーションを作ってみたいな〜、なんて想いはありまして。で、動画を一枚一枚描くのは、技術的にも時間的にもハードルが高いけれど、切り絵みたいな手法ならば、比較的短期間で作れるかも知れない。
また、ウェブ上で見られる各種のFLASHアニメーションには楽しませていただいているし、テレビでやっていた『アークェとガッチンポー』もけっこう好きだったし、そんなこんなでFLASHは、一度いじってみたいアプリケーションだったわけです。
というわけで、何か一本作ってみたいと考えていたところ、ちょうどその頃、趣味で作った音楽で、自分で聞いていて「何だかコブタがキーキー騒いでるみたいだ」と思った曲があったんで、よし、これにコブタのアニメーションを付けてみようと思い付いた。
で、出来上がったのがコレ。
上のブタさんをクリックすると、別ウィンドウが開いてアニメーションがスタートします。
ま、内容はブタが走り回ったり飛んだりするだけですけど、画面構成のシンプルさとテンポの良さにはこだわったつもり。自分では、ちょっとオスカー・フィッシンガーの影響があるかもと思ってます(どこが!)。
MTV風にしたかったので、曲との同期を優先しましたから、CPUのパワーによってはコマ落ちする部分もあるかも知れませんが、そこはご容赦を。因みに私の環境だと、1.42GHzのMac miniでは問題なかったんですが、350MHzのPower Macだと部分的にコマ落ちしちゃいました。
因みに曲の方は、ハイテンションでミニマル・ミュージック風味のテクノです。
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PoserとかCarrara 5とか
久々にCarraraをバージョンアップしてみました。Carrara Studio 2からCarrara 5へ。
私の場合Carraraは、スプライン・モデラーかPoserのレンダラー用途がメインでして、今まで使っていたCarrara Studio 2では、データのインポートはWavefront OBJファイル経由でした。
しかし、マテリアル設定をCarrara上でやり直さなければいけないのと、にも関わらず透明マップ関係が、設定をどういじっても不要なシャドウが出てしまったりエッジにフリンジのようなものが出てしまったりと、どうしても上手くいかないので、絵を描く際のシミュレーション以外の用途では、あまり使っていませんでした。
後にCarraraのバージョンが上がり、加えてTransPoserという、Poserデータをそのままインポートできるプラグインも発売されました。これにはかなり食指が動いたんですが、OSのバージョンとCPUパワーの兼ね合いで、今度はCarraraそのもののバージョンアップを断念。で、今日に至ります。
今回は、幸いにしてOSもマシンも新しいから(……っても、OSはPantherだし、ハードもMac mini 1.42GHz+メモリ1GBですから、既に古いスペックですけど)、新しいCarraraも問題なく動きそうなので、思い切ってバージョンアップ。
Carrara 5はネイティブでもPoserデータのインポートは出来るらしいですが、ダイナミック・クロスを使うには、やはりTransPoserプラグインが必要。Carraraは廉価の機能限定版にして、TransPoserはバージョンアップを待って別購入、という手も考えたんですが、プラグイン関係のバージョンアップやリリース情報がどこにもなかったので、ここは思い切って最初からTransPoserがバンドルされているCarrara 5 Proに。……と思ったら、早々とTransPoserもバージョンアップしやがりました。クソ(笑)。
使用感は、何しろ2バージョンとばしなのでウラシマタロウではありますが、うん、使いやすくなってます。
重さに関しては、環境自体が違うので何とも言えませんが、以前のPower Mac G4 350Mhz + Carrara Studio 2のときは、なにをするにもモッタリモッタリしてストレス溜まりまくりでしたが、今回はサクサク……とまではいかないものの、まあ重い軽いという点では、Vueとさほど変わらぬ操作感。
2と比べると、ブラウザのレイアウトが大幅に変わっていますが、これはかなり機能的で使いやすくなった。オブジェクトの移動・拡大縮小・回転といった操作も、2のときはコツを掴みにくくて失敗もままあったんですが、今回はポインタの場所でカーソルの形が変わってくれるので無問題。ホットポイントをいじるにはCapsLockをオンにするとか、ちょいと馴染みがなく直感的ではないようにも感じますが、まあこれも慣れの問題でしょう。右クリックで出すゴーストメニューとかも同様。
あ、一つバグみたいなものも発見。Carraraではカメラビューとレンダリング画像枠がイコールではないので、最終的なレンダリング画像の構図を決めるには、カメラビューの中に「制作フレーム」という別フレームを表示する必要がある。ところが、これがマニュアル通りに「表示メニュー>制作フレームを表示」としても、何だかメッセージが出てきて、それにOKしてもしなくても、カメラビューに変化はなく制作フレームは表示されない。これは困りモンではありますが、とりあえずショートカットのCommand + Option +Fを試してみたら、今度は無事に表示できたのでホッとひと息。
モデラーに関しては、スプラインはともかく、正直ポリゴン・モデラーの方は、やっぱどうもよーワカラン(笑)。頑張ってマスターすればいいんだろうけど、ついつい面倒くさくて、使い慣れた六角大王を立ち上げちゃう(笑)。
しばらくご無沙汰していた間に、Carraraでは風景関係や植生関係の機能がアップしたらしいので、試しにサンプル・ファイルをレンダリングしてみる。
……うわ、けっこうリアル。
植生関係はともかく、地形や空はかなりいい感じ。空と雲は、マンガの背景用にも使えそう。でも、リアルな風景は、やっぱレンダリングにも時間がかかるのね(笑)。アニメーションに使ったら、大変なことになりそうだ(笑)。
プリセットに月や太陽系の惑星といったオブジェクトやシーンもあったので、そっちもレンダリングしてみる。……うん、使える。特に月が嬉しいなぁ。過去に何度か、天文写真的な月の画像が欲しいと思ったことがあるんだけど、使えるものを探すのにけっこう苦労したので。でもCarraraを使えば、プリセットのシーンをちょちょいといじるだけで、ほらこの通り(笑)。
プリセットにはそれ以外にも、ロゴだの商品写真だの室内風景といった、デザイナーさんにとっての実戦向けなシーンもあり。カンプとかに便利かも。
さて、ようやくお目当てのTransPoserを使ってみると……うわ、すっげー便利!(笑)
マテリアル等、何のプラスアルファの必要もなく、そのままスムーズにインポート。マテリアルの再現性もPoser上のイメージと近いので、BryceやVueでレンダリングするときのような、レンダリングするアプリに合ったマテリアル設定を、あらかじめPoser上でしておくといった手間もいらず。
Poserからはライティングもインポートできるので、「別アプリでレンダリングすると、Poserで見ていたときとフィギュアのイメージが違う」なんてお悩みをお持ちの方にも親切設計です。
インポートにあたって、PoserとCarraraのサイズ換算を指定できるのもグー。つまり、別々のファイルで用意した複数のフィギュアを、Carraraで一つのシーンに読み込みたい、なんてときも、このサイズ換算を合わせておけば、Cararra上で大きさ合わせをする必要は一切ない。BryceやVueだと、これは手動で直感的にやるか、もしくはサイズの大きい別オブジェクトをテンプレートとするといった裏技を使う必要があったので、これも便利。
インポート時に元のPoserのシーンファイルとリンクしておけば、修正をしたくなった場合も、Poserのオリジナル・ファイルに手をいれれば、それが自動的にCarraraのシーンにも反映されるのも便利。(ただ、制限はあって、Poser上で新たにオブジェクトを追加とかしても、それは反映されない)
そんなこんなで、Poserとの連携という点では、正直Vue + Moverを上回ってますな、Carrara + TransPoserは。(Shadeは持ってないんで、よーワカラン)
実は、TransPoserを使わなくても、CarraraにはネイティブでPoserファイルをインポートできる機能がありまして、これだとダイナミック・クロスやダイナミック・ヘアーは使えませんが、そのかわりボーンやモーフの情報をインポートできるので、仮にPoserアプリ自体を持っていなくても、PoserフィギュアをCarrara上で編集・アニメート等することが可能です。
ただ、これでインポートすると、めちゃめちゃ重い(笑)。試しに10秒程度のアニメーション付きデータを、このPoserネイティブインポートで読み込んでみたら……フリーズしやがりました(笑)。アニメーション情報を持ち込まないなら、それほど重くはならないのかなぁ。
あと、この方法だと、例えばPoserのテクスチャがRuntimeの中の複数フォルダに分散している、とかいう場合、テクスチャの場所がどこかとか聞いてくるので、いちいち手動で指定しなきゃならない。これが、思っくそ面倒(笑)。TransPoserでは、こーゆー手間もいっさいなしなので、Poserとの連携を考えている方は、やはりプラグインの使用をオススメしたいかな。
さて、Carraraの魅力と言えば、価格のわりに機能が豊富だということと、レンダリングが早いということ。
これを生かして、Poser + Carraraでアニメーションも作ってみたい、というのが今回の購入動機の一つ。Carraraの炎オブジェクトを使えば、Vueではちょっと難しそうな「火あぶり」とかも簡単にできそうだし(笑)、パーティクルを使えば「放尿」なんてのも作れるかもしれないし(笑)。
でまあ、ぼちぼち作ってみると、うん、やっぱレンダリングは早いですね、Carrara。というわけで、ちょいとムービーのワンフレームを、原寸でご紹介。ヤバい部分はマスキング(笑)。
ピクセル比は、DVのワイド画像。レイトレーシングで、パラメーター設定はだいたいデフォルトですが、オブジェクトの精度を1px、アンチエイリアス品質を中に変更。動画なら、この程度で充分キレイだと判断。で、レンダリング所要時間は、1フレームあたり40秒足らずと、かなりストレスなくサクサクいけちゃいます。
まあ、地形のような大量のポリゴンは使っていないし、大気設定もなしなので、Vueとの単純比較はできません。でも、例えば画面左側のスポットライトで使っている、3Dシャドウ付きのボリュームライト。Vueでこれをやると、いきなり処理が重くなって、レンダリングも桁違いに遅くなってしまう。また、Vueのレンダリングは透明マップがあると、これまた劇的に速度が遅くなる。
しかし、Carraraだとそこまでの変化はなく、この程度のシンプルなボリュームライトだったら、レンダリング速度の変化も殆ど気にならないし、透明マップ関係(このシーンだと、左の男の髪、眼球、ヒゲ、あと隠しちゃったけど陰毛など)も、Vueほど極端に遅くなったりはしない感じ。
今後ムービーを作る際は、室内シーンはCarrara、屋外はVueという使い分けになりそう。
そんなこんなで今回のCarrara 5、かな〜り気に入ったので、今後出番が増えそうであります。
Carrara日本語版公式Webサイト。
『ロッテ・ライニガー作品集 DVDコレクション』
ロッテ・ライニガー作品集 DVDコレクション |
前にここで書いた、発売を知って狂喜乱舞した『ロッテ・ライニガー作品集 DVDコレクション』、到着しました。書籍のような美麗な外箱に入った三枚組で、全部で約490分という満足のボリューム。
一枚目が問答無用の傑作長編『アクメッド王子の冒険』+ドキュメンタリー『アート・オブ・ロッテ・ライニガー』、二枚目が「世界のお伽話集」でグリムやペローの童話を基にした短編、三枚目が「歌劇とその他の作品集」で『カルメン』『パパゲーノ』『ベツレヘムの星』などの短編という構成になっています。
ロッテ・ライニガーは、1920年代から50年代にかけて活躍した、影絵によるアニメーション作家。
アラビアン・ナイトを基調にした『アクメッド王子の冒険』はその代表作で、ディズニーの『白雪姫』に先んじること11年、1926年に制作された世界初の長編アニメーション。今回発売されたものは、1999年に映像修復がなされ、2004年にオリジナル・スコアに基づく音楽が再録音された「完全修復サウンド版」。
これはもう、何度見てもホント素晴らしい。
光の中に浮かび上がる黒く繊細なシルエットが描き出す、夢幻の影絵劇。サイレントなのでダイアローグはなく、影絵なので顔の表情もない。色も染色されたモノクロ・フィルムなので、ワン・シーンにキーカラーが一色存在するのみ。
にも関わらず。レースのように細やかに切り抜かれた美しいシルエットたちが、身振り手振りのパントマイムで演じる芝居の、驚くべき感情表現の豊かさ。フィルムの湛える詩情、夢の恋物語のロマンティックさ、そして仄かに香るエロティシズムは、まさに魔術的。フィルムと同期した音楽も、その魔術の顕現に更に一役買っています。世界初の長編アニメーションとはその誕生の時から、かくもアーティスティックだったのだ。
単品販売もされているし、近所のTSUTAYAにでもレンタルの棚に並べられていたので、まあとにかく騙されたと思って一度ご覧あれ。
短編の方は、まだあちこちつまみ見した程度なんですが、シルエットの描き出す美しさは『アクメッド王子』と変わらず。『カルメン』におけるキャラクターのダイナミズムや、『ガラテア』のユーモアとエロティシズムなどにも感心。カラー作品『ベツレヘムの星』も、黒いシルエットの背景を彩る色とりどりの光が、これまた幼い頃に親しんだセルロイドや万華鏡のようで魅せられます。
特に、影絵ならではのエロティシズムの表現には、興味を惹かれました。『アクメッド王子』の羽衣を奪われたパリバヌー姫や、『ガラテア』の命を吹き込まれた石像など、「ジャングルや街を徘徊する全裸の女性を、男が追いかけ回す」というシーンがあるんですが、これなんかはまさに影絵アニメーションならではの表現ですね。「隠す」必要がないから伸びやかで放埒で陽性で、しかし全てが「隠されている」から秘密めいた翳りのある香りも漂う。実に美しいです。
もう一つ『ガラテア』で、白い大理石像が「真っ黒になって」命を得て動き始めるシーンに、影絵アニメーションならではのロジックの逆転が感じられて面白かった。というのも、キャラクターの色が「暗くなる」のは、普通は「死の暗示」に繋がる表現ですから。それが、影絵の世界では逆になるというのが、当たり前っちゃあ当たり前なんですが、ちょいと新鮮な驚きでした。立体的な明暗や、目鼻や模様と言った表面のディテールのあるものが「動かない=死」であり、全てが塗りつぶされた黒いシルエットが「動く=生命」という世界は、それだけでも何だか魔術的な気がします。
一方、トーキーになってから入ってくるナレーションや台詞は、正直なところ邪魔に感じられてしまった。そんなものを入れなくても、物言わぬシルエットの動きだけで、表現としてはもう必要充分に為され得ているという気持が、私の中にあるからでしょう。だから、ナレーションなどの「説明」が、蛇足に感じられてしまう。ただ、そういった意識もあってか、例えば『シンデレラ(1954年版)』では、セリフを喋るのは意地悪な姉たちだけで、メインのシンデレラと王子様は一言も喋らなかったりするのが面白い(笑)。
余談ですが、この『アクメッド王子』だけではなく、米KINOからDVDが出ているフリッツ・ラングの『メトロポリス』や『ニーベルンゲン』など、オリジナルのスコアが復元されたサイレント・フィルムを幾つか見る機会がありましたが、やはりオリジナル音楽付きは良いですね。一般的なサイレント映画のソフトでありがちな、いかにもありものをテキトーに引っ張ってきました的な、気のないBGM付きで見るのとは月とスッポンです。
そうそう、サイレント映画と言えば、紀伊國屋書店さんが「クリティカル・エディション」と銘打った高クォリティのDVDを、しかもムルナウの『サンライズ』、ドライヤーの『裁かるゝジャンヌ』、パプストの『パンドラの箱』など、垂涎のラインナップで出していまして、毎回購入しては大満足し、引き続き次を楽しみにしているんですが、今度は7月に、何とベンヤミン・クリステンセンの『魔女 (Hexan)』が出るっていうじゃありませんか!
ひゃっほ〜い! もう、夢じゃなかろかと、またもや狂喜乱舞しています(笑)。
スタレーヴィチの他のDVD
先日、ここでラディスラウ(ヴワディスラフ)・スタレーヴィチの新着DVDの紹介をしましたので、ついでに現在所有している他のスタレーヴィチのDVDもご紹介。
“The Cameraman’s Revenge & Other Fantastic Tales / The Amazing Puppet Animation of Ladislaw Starewicz”
アメリカ盤。
昆虫の死骸をコマ撮りして、男女不倫の艶笑劇を演じさせるという珍作ながら、アニメーション史的には有名な”The Cameraman’s Revenge”と、病気の少女を助けるためにヌイグルミの犬が大活躍し、詩情からアクションからユーモアからホラーまで、全てがギッチリ詰まった問答無用のエンターテイメント大傑作”The Mascot”が収録されているので、スタレーヴィチ入門用にはベストかも。
他の収録作は、やはり昆虫を使ったバーレスクといった趣の”The Insects’ Christmas”、内容はメルヒェンなのに、造形面に感じられる、もう押さえても押さえても指の間から滲み出してくるグロ体質が最高な”The Frogs Who Wanted a King”、”Winter Carousel”、実写との絡みが面白い”Voice of the Nightingale”など。
“Le Monde Magique de Ladislas Starewitch”
フランス盤。
前述の”The Mascot (Fetiche Mascotte)”は、こっちにも収録されていますが、他はダブりなし。
他の収録作は、主演のライオンの造形や表情が素晴らしい、ラ・フォンテーヌの『寓話』を下敷きにした老いたライオン王の悲哀を描いた”Le Lion Devenu Vieux”、イソップの『町のネズミと田舎のネズミ』を下敷きにしつつも、何よりかによりめちゃくちゃグロいネズミの人形が繰り広げる、パーティーの乱痴気騒ぎに目が釘付けになってしまう”Le Rat de Ville et le des Champs”、望みが叶う魔法の花を手に入れる少年の話で、魔法の花が咲く真夜中の森に跋扈するステキなバケモノどもが、もういかにもスタレーヴィチの魅力大爆発な”Fleur de Fougere”。
“Le Roman de Renard”
フランス盤。
中世フランスで大流行した、狐のルナールを主人公とした民話『狐物語』を題材にした長編。キツネ、オオカミ、ライオン、ロバ、ネコ、クマ……などなど、動物キャラクターが勢揃いして、擬人化された中世風の衣装を身に纏い、素晴らしいセットの中で生き生きと動き回ります。美術や画面構成の重厚さや美しさは特筆モノで、その完成度の高さゆえに、マックス・エルンストのコラージュのようなシュールレアリズム美術的な幻想美まで漂う逸品。
ボーナスとして、動物たちのスペクタキュラーな船旅を描いた短編”Fetiche en Voyage de Noces”や、人形用のデッサン、スチル写真などを収録。
“Les Contes de L’Horloge Magique de Ladislas Starewitch”
フランスからラディスラウ(ヴワディスラフ)・スタレーヴィチの新しいDVDが届いたんで、ご紹介。
まずスタレーヴィチってのは何者かというと、ロシアの映像作家(後に活動の場をフランスに移す)で、人形をコマ撮りしてアニメートするという手法を、世界で最も初期に行ったうちの一人です。
で、このスタレーヴィチさん、なかなか魅力的な作家さんでして。
造形センスが微妙にズレていて、物語上ではカワイイはずのパペットも、常にそこはかとなくグロテスク。夢いっぱいのはずの楽しい世界のはずなのに、実際はかなり翳りを帯びていて、いつも悪夢スレスレの危うさがある。加えて、パペットの表情の生々しさや、目が生きている様が尋常ではない。おかげで、何だか黒魔術っぽい雰囲気まであったりして。
実はスタンスとしては、けっこうまっとうな方だと思うんですよ。けっこうファンタジックで夢いっぱいの、娯楽性に主眼を置いた作品が多いし、大人が子供に見せたがるような、教条的な側面もある。ただ、おそらく先天的にグロテスク体質なんでしょう。本人が意図しない部分に、体質的なグロテスク趣味が自然に滲み出してくる。そんな作家さんです。
で、そういった微妙なバランスが、私にとっては何とも魅力的でして。ヤン・シュヴァンクマイエルやブラザーズ・クエイみたいに、狙ってやっているわけではないってのが、逆に興味をかき立てられる。だからソフトを見つけると、ホクホクと買い込んでいるわけです。
以上、役に立たない前振りの解説でした(笑)。
“Les Contes de L’Horloge Magique de Ladislas Starewitch”
”La Petite chanteuse des rues” (1924)、”La Petite parade” (1928)、”L’Horloge magique ou La Petite fille qui voulait etre princesse” (1928) の3本の中短編を、オムニバス形式にブリッジで繋いだ、2003年制作の映画。フィルムはレストアされ、オリジナルはサイレントなんでしょうか、新たなBGMとナレーションが追加されています。
最初の”La Petite chanteuse des rues”は、母親を助けるために家を出て、ペットの猿と共に手回しオルガン奏者になる少女の話。基本的にライブ・アクションがメインですが、ペットの猿が大活躍というシーンで、猿がパペット・アニメーションに。デフォルメされていない、あくまでもリアルな猿のパペット・アニメーションが実写と絡むわけで、その自然さや、演技の細かさがすごい。ハリーハウゼンもビックリかも。
次の”La Petite parade”は、アンデルセンの「すずの兵隊」を元ネタにしていますが、話は片足のすずの兵隊を傷痍軍人に見立てるなどして、大幅にアレンジされています。ただ、子供部屋のオモチャたちが生きているかのように動き出す……という構造は同じ。スタレーヴィチなので、フツーのキャラクターもやっぱりどこかグロいんですが、びっくり箱から悪魔が出てくるあたりは、もう本領発揮といった感じ。その後、テーブルの食材等を次々とオンナノコに変えて見せる(牡蠣からマーメイドが出たり、バナナの皮を剥いたらアラブ美女が出てきたり)んですが、そこいらへんはちょっとエロティックな感触も。出てくる人形の数も多く、パーティーあり乱痴気騒ぎあり、オモチャの人形対ネズミの戦闘スペクタクルまである(他にも醜い胡桃割り人形がいたりするので、ちょいとホフマンも混じってますな)という盛り沢山さで、見どころも見応えもタップリ。ラストの悲劇は、ヒロイックかつロマンチックにアレンジされており、これはまたこれで良きかな。
最後の”L’Horloge magique ou La Petite fille qui voulait etre princesse”は、二部構成。
前半は、からくり時計職人のもとで働く少女が見た、からくり時計の人形たちの演じる物語。中世の城を舞台に、王様、お姫様、騎士、占星術師、道化、村人等々が入り乱れて見せる、ドラゴン退治やら謎の仮面の騎士やら、姫君に恋する吟遊詩人やらといった、中世もの好きなら満足すること間違いなしの内容。細部まで凝ったエクステリアやインテリアも素晴らしい。ところが少女は、騎士が危機一髪というところで、つい手を出して時計を壊してしまう。時計師は激怒、少女を怒鳴りつけて騎士の人形を窓から外に捨ててしまう……というところまでが前半。
後半は、叱られた少女が夢の中で、捨てられた人形を探しに外へ……という流れになります。外の世界には、昆虫や虫に模様を描いてあげる妖精がいたり、木や花に顔が付いて動き出したり。少女は「おやゆび姫」みたいに小さくなり、その中で様々な冒険をするんですが、ここいらへんは「不思議の国のアリス」っぽい。実写の少女と、ファンタジックなパペット・アニメーションの絡みが見どころですが、これまたお見事の一言。普通の大きさの人間と、小さくなった少女が絡んだりもするんですが、ここいらへんは特撮映画的な魅力もある。花や松ぼっくりがキャラクターとして動くあたりは、メタモルフォーゼ的な魅力もあります。
という具合に、通して見ると様々な要素が多様に混在しつつ、しかもそれらのレベルが全て半端でなく高い、というあたり、あらためてスタレーヴィチという作家の凄さを思い知らされます。
スタレーヴィチの魅力の一つである、グロテスク味や悪魔的ニュアンスは、今回はどちらかというと控えめではありますが、それでもやはり見て損はない逸品。どっかで日本盤の『スタレーヴィチ作品集』を出して欲しいもんですなぁ。
そうそう、余談ですが、昨年仕事が多忙でどうしても見に行けなくて、断腸の思いで悔し泣きをしたロッテ・ライニガー作品(そりゃ『アクメッド王子』の輸入盤は持ってたけどさ、スクリーンで観たかったんだい、やっぱり!)、今度アメリカ盤DVDを軽く越える充実した内容で、6月だったかにDVDが日本発売されるらしいですな。それを知って、もう大喜びの毎日であります(笑)。
『ユニコ』『シリウスの伝説』『くるみ割り人形』
円盤ゴミブログさんで、廉価版で再発というニュースを知りました。因みに同ブログさんでは、いつも海外アニメやヘンな映画のDVD情報なんかを、参考にさせていただいております。多謝。
で、この時期のサンリオ・アニメって、もうマジで気合い入っていて絵的な見応えがあり、当時せっせか映画館に通ったもんです。アニメ映画関係の記事見たさに、サンリオショップ行って「いちご新聞」(だったか?)も買ったし(笑)。そんな思い入れもあるんで、再発されるDVDの中から、特に思い出深い三本をご紹介。
『ユニコ』(1981) |
手塚治虫の原作は、サンリオが出していた「リリカ」という変わった少女マンガ雑誌に連載されており、毎回フルカラーか二色カラーで、それはそれは美しゅうございました。私が持っていた単行本も、同誌の別冊かなんかのカラーバージョン。講談社の全集版だと、どうなっているんだろう?
アニメの方は、かなり原作に忠実。これといって特別な見どころはないかもしれないけれど、標準的にしっかり作られていて、何より「物足りなさがない」のがいい。個人的に、手塚原作の長編アニメーションの中では、原作の再現性と長編映画としてのまとまりの良さという点で、かなりベストの部類なのではと思っております。
まああそれでも公開当時から、主題歌や挿入歌のイルカの詩や歌声が、ちょっとベタッとして苦手だったとか、 作画の杉野昭夫の個性が強く、見せ方で「…またこのパターンかい」と鼻白んだりとか、引っかかる部分もなくはなかったんですが、それでもラストの戦うユニコの角が折れちゃった時なんか、映画館で大泣きしてしまい、もう、恥ずかしいから「エンドロールが終わるまでに乾いてくれ〜!」と必死に祈ったもんです(笑)。
あと個人的に、この映画の「夜風」のキャラクター・デザインは秀逸だと思います。ケープのように、リボンのようにたなびく、幾本もの黒のストライプが、造形的にも風を擬人化した表現としても、実に美しくて魅力的。ドラァグ・クイーンみたいな顔+オッカナイ声の来宮良子っつー、コンビネーションもステキだし(笑)。
黒猫のチャオは、今になってこじつけると、「猫+少女+メイド服」って感じで、昨今の「萌え」記号の先取りと言えなくもない……って、やっぱこじつけか(笑)。まあ、個人的に少女には興味がないんで、あたしゃダンゼン猫の姿のときの方がカワイくて好き。あと、このチャオが歌う「♪あったっしゃ、く〜ろね〜こ、て〜あし〜は、し〜ろよ〜」って歌、今でもたまに無意識で口ずさんでしまう(笑)。
『シリウスの伝説』(1981) |
前々年の『星のオルフェウス』に続いて、サンリオが日本のディズニー目指して制作した、超大作アニメーション。
これは、フルアニメーションだということや、セルのハンドトレスなんかが話題になってました。劇場の初日プレゼントかなんかでセル画を貰ったんですけど、触ったら確かに線がデコボコしていて「おお!」なんて思ったもんです(笑)。因みに絵柄は、アルゴンと戦うグラウコス様っつー、渋〜い図柄でした(笑)。一般的には「ハズレ」っぽいキャラだけど、グラウコス様はマッチョなんで、個人的にはぜんぜんオッケー。ま、顔は馬だけど(笑)。
見どころとしては、動きのなめらかさはもちろんのこと、背景も動画も、とにかく画面の隅々まで、ひたすた丁寧に作られているのが素晴らしい。アニメーションの画面作りにおいて、無神経さや雑さがないというのは、当たり前のようでいて意外に稀少。それに加えて、色彩設計の華麗さとか、部分的に見られる絵画的な手法(オプチカル処理したと思しき鉛筆画を動かすとか、テクスチャがついたまま動くとか)とか、絵的な見どころはふんだんです。
物語的には、ロミオとジュリエットをベースにした、水の王子と火の王女の悲恋というシンプルなものなので、まあ物足りないっちゃあ物足りない。「リリカの岬」だの「メビウスの丘」だの「クライン草」だのといったネーミングにも、ちょっと萎える(笑)。
ただ、個人的に特筆したいのは、ストーリーではなくて、テーマである「愛の肯定」の方。
当時からよく、サンリオ映画を評して「いつもラストで『愛とは云々』っつーお説教が入るのが興ざめ」という声があり、まあ確かにそうなんですが、この映画のスゴいところって、その肯定する「愛」が実に幅広いんです。
もちろんメインは、水の王子シリウスと火の王女マルタの、種族を越えた禁断の愛ってヤツなんですが、この映画では、他にも三つの報われない愛が描かれている。シリウスに対するチークの愛情(両方とも男)と、マルタに対してピアレが寄せる愛情(両方とも女)と、水の王グラウコスと火の女王テミスの間の愛情(兄と妹)……つまり、ゲイとビアンとインセスト。
で、こーいった諸々も含めて、この映画では「愛することに罪はない!」と、ズバリ断言している。ファミリー向けの映画で、これはある意味アナーキー。とゆーわけで、サンリオ映画の中でも、少なくともこの『シリウスの伝説』の中での「愛とは云々」っつーお説教は、かつてのディズニー映画に見られるような「お姫様が結婚してめでたしめでたし」といった、保守的で画一化していて排他的な「愛」とは次元が違う。この一点だけとっても、個人的にこのアニメーションは高く評価したいわけです。
それ以外では、この映画もサーカスの歌う主題歌『時よゆるやかに』が耳に残ってまして、これまた無意識に歌っちゃうことがある(笑)。
もひとつ、美術の阿部行夫が絵を付けた原作本も素晴らしい出来でした。映画のキャラクターのファンシーさとは異なる、色彩は鮮やかなのに影を帯びた(暗い色の紙に、明るい色のパステルや色鉛筆で、明部を描き起こすという描き方の絵です)、実に魅力的なイラストレーション満載の絵本。ブライアン・フラウドの影響を伺わせる造形などもあり、ファンタジー・イラストレーション好きなら見て損はないです。
『くるみ割り人形』(1979) |
本格的な長編パペット・アニメーション。これまたものすご〜く丁寧かつ良く作られているのに、意外と語られることが少ないのは大いに不満。どうもサンリオの力作アニメーション群って、内容は高クオリティなのに扱いが不遇な気がする。
個人的に、コマ撮りの人形アニメは「これぞワンダー、これこそ魔術!」ってな感じで、基本的に大好物なもんですから、それによる長編ってだけで、もう個人的な偏愛ポイントはクリアです。何と言うかね、「無機物に命を宿す」というのはアニメーションの本質でもあり、特にパペット・アニメーションというのは、そういった魔術的・付喪神的な本質を、最も良く体現しているように感じるのですよ。
で、この『くるみ割り人形』大好きでね〜、ロードショー時に劇場へ、三回くらい見に行ったもんです(笑)。
この作品のキャラクターは、基本的に人形で、それが実に良く動き回り、しかも人形的な愛らしい部分と、これまた人形的な不気味な部分を、両面とも持ちあわせているのが良い。基本的には明るく楽しいファンタジックな世界なんだけど、所々にホフマンの作品の持つ「そこはかとない怖さ」もかいま見られる。冒頭のジャンカリンのホラー味や、人形とネズミの大戦争に見られる残酷性などを、しっかり描ききっているのは、個人的な特に高評価ポイント。やっぱりね、「子供が見たらトラウマもんかも……」ってのも、ファンタジーの醍醐味の一つだから。不必要に健全で、脱臭されて去勢された甘いだけの幻想ほど、退屈で腐臭を放つものはないからねぇ(笑)。
ただまあ、これまた『ユニコ』『シリウス』同様に、萎えポイントがなくはない。途中で出てくる実写のバレエ・シーンは、興ざめではあるものの、それでも踊っているのは天下の森下洋子だし、チャイコフスキーとの繋がりも踏まえて、ギリギリ許容範囲内ってトコではありますが、お菓子の国の実写のピエロや、そこに居並ぶサンリオのキャラクター群になると、もう完全にアウト。見せ場の一つなだけに、この萎えポイントは正直かなり痛い。
あと、これは公開当時は問題なかったんだけど、ヒロインとヒーローの声が杉田かおると志垣太郎ってのが、さいきんのバラエティー番組で現在のご両人を拝見した後だと、ちょいと辛いモノがあるかも(笑)。でも、作品中では全く無問題だし、それ以外にも、物語の要となるキャラクターであり、一人五役くらいをこなしている西村晃が、実に良いんだけどね。
で、この映画も主題歌が耳に残っている。「♪みずがめに〜、は〜な〜い〜っぷぁい〜」とかいう、ちょいと宝塚ちっくな、タチのビアンみたいな女声ボーカルの歌(笑)。CDで欲しいなぁ。
というわけで、以上三本が、個人的に思い入れの深いサンリオ長編アニメーション映画。
これらに関しては、既に旧盤DVDを購入済みなので、今回の再発盤では、劇場で未見なのでスルーしていた『ユニコ 魔法の島へ』と『妖精フローレンス』を購入予定。
これで『シリウス』がワイド版になってたりとか、『ユニコ』にオマケでパイロット・フィルムが付いていたりとか、『くるみ割り』のオマケで同時上映だった『キティとミミィの新しい傘』が付いてたりとかしていたら、再購入もやぶさかではないんですが、どうも内容は旧盤と変わりないみたいですな。
『ベルヴィル・ランデブー』
『ベルヴィル・ランデブー』(2002)シルヴァン・ショメ
Les Triplettes De Belleville (2002) Sylvain Chomet
フランス、ベルギー、カナダ合作の長編アニメーション。
孫(っても、いい歳だけど)をさらわれたおばあちゃんが、大都会ベルヴィルへ行き、往年のジャズ・コーラス・グループ「ベルヴィルの三つ子姉妹」(が歳を取った老婆三人)と一緒に孫を奪還する……という物語ですが、人情モノというわけではなく(まあ、そういう要素もなくはないですが)、基調はナンセンスとブラックユーモア。
冒頭、スウィンギーでゴキゲンなテーマ曲に乗せて、フライシャー兄弟を思わせる白黒でグネグネ蠢くアニメーションが。その段階から既に、次々と繰り出されるヴィジュアルによる小ネタが、もう楽しいのなんのって。リムジンから降りる太った(なんてハンパなもんじゃないが)ご婦人の尻にはご主人が挟まってるし、ジョゼフィン・ベーカーは猿と化した観客に腰のバナナをむしり取られるし、フレッド・アステア(かな?)は自分のタップシューズに噛みつかれるし……(笑)。
本編に入っても、まず、トンでもなくカリカチュアライズされた、ブッ飛んだキャラクターデザインに大ウケ。もう、ユーモアとグロの紙一重すれすれ……っつーか、客観的に見りゃ立派なグロ。丸まっこい孫が成長したときの姿とか、あたしゃもう見ただけで吹き出しちまいましたよ。
でもって、その孫をおばあちゃんがマッサージするんですが、このマッサージがまた……(笑)。あと、風船にマッチ棒が生えたみたいな犬とか、ツール・ド・フランスに参戦中の選手の表情とか、四角いマフィアとか、トンデモナイ形の船とか、カエルのアイスキャンディーとか、もういちいち可笑しい可笑しい。
セリフらしきセリフは殆どなく、とにかく見せる、見せる、見せる! いや〜、こーゆーのってアニメーションの根元的な魅力の一つだよなぁ。それでいて、いささかの弛緩を見せることもなく、1時間20分の長編を一気に描ききる。
この圧倒的な表現力、まったくもって大したものです。
画面は美麗。
どちらかというと保守的な色彩設計ですが、同じく最近公開されたフランス産アニメーションと比較しても、『キリクと魔女』のような華麗さや、あるいは『コルト・マルテーズ 皇帝(ツァー)の財宝を狙え!』のようなケレン味とはまた違う、いかにもヨーロッパ的な(って、何のことやら)渋い魅力。オーソドックスながらも、彩度を抑えた中間調の配色が実に美しい。背景美術も素晴らしく、どのフレームを切り取っても立派に一枚の絵画となりうるような、アニメーションというメディアの贅沢さを満喫できます。ああ、絵っていいなぁ……。
メカニック描写は3DCGが多いけれど、画面に自然に溶け込んでいて違和感はほぼない。ただ、クライマックスのカーチェイスなんかを見ていると、やはり「正確さによる不自由さ」という限界も感じてしまったのは正直なところ。あと、海とクジラに関しては、個人的にはペケ。あれならクジラは出さない方がいい。
あと音楽ですが、これはもうサイコー! 映画館から出て、即刻サントラを購入しました。
ロマ風のギターもカッコいいテーマソングはもちろんのこと、カンツォーネ風、スパイ映画のサントラ風、サーフ・ミュージック風、はたまた新聞紙と冷蔵庫と掃除機と自転車のスポークで奏でられる(まあ、実際の楽器は何が使われているのか判りませんが)アヴァン・ポップ/トイ・ポップ風……と、ミクスチャー具合もお見事。
このサントラ盤、独立したアルバムとして聞いても充分オッケーなハイ・クオリティ作品なので、アヴァン系、ラウンジ系、レコメン系なんてキーワードに引っかかる方にもオススメ。特に、ジョセフ・ラカイユ(Joseph Racaille)や Tot ou Tard レーベルの音楽がお好きでしたら、ぜひどうぞ!
……ただし、CCCDってのはムカつくけどね。
装甲騎兵ボトムズ DVD BOX
TVアニメのDVD BOXは、かさばるし、そうそう見る時間もないから、極力買わないようにしているんだが、でも、これだけは出たら絶対に買う! と手ぐすね引いて待っていた『装甲騎兵ボトムズ』のBOXセットが、来年二月ついに発売!
……と、発売ニュースを聞いた瞬間は大喜びしたんですよ。
でも…でも…!
定価¥105,000って……。
ネットショップの割引き使っても、それでも8万円超えるじゃん……。しかもOVAもセットって、うーん、欲しいのはTV放映分だけなんだが。あくまでもボトムズの「ファン」で、「マニア」とまではいかない私にとっては、特典etc.にもあんまり心が動かないし、やはりこの値段はちょっと痛い。
ど〜しよ〜かなぁ……たぶん涙をのんで見送りだなぁ。
しくしく。
あ、画像はDVD BOXとは関係ありません。前に友だちに貰ったちっちゃいプラモです。高さ7センチくらいなんだけど、ヘッドを外すとちゃんと中にキリコが座ってるの(笑)。
『シュレック2』
『シュレック2』アンドリュー・アダムソン、ケリー・アズベリー、コンラッド・ヴァーノン
“Shrek 2” Andrew Adamson, Kelly Asbury & Conrad Vernon
前作が大好きだったんで、すっごい楽しみにしてました。
「あのキャラたちにまた会える!」ってのはシリーズものの大きな楽しみの一つだけど、これはそれに加えて「長靴をはいた猫」なんつー強力極まりない新キャラが。この猫、キャラ立ちまくりで、もう無敵。スピン・オフで番外編作って欲しいくらい。
内容も、前作同様たっぷり笑わせてもらいました。ただ、個人的には笑えたんだけど、いかんせん笑いの多くがパロディーなので、前作に見られたような汎的なユーモアは後退。毒も薄れ気味で、ブラックな笑いがあまりなかったのも、ちょっと残念。物語的な求心力も、少し弱いかな?
しかし「お伽噺」というものが内包する偽善的な部分にメスを入れつつ、同時にそれを単なる批判やパロディだけには終わらせず、最終的には「お伽噺」の本質と合致したところに落とし込むという、物語としてのアクロバティックさは今回も健在。とかく物事をひっくり返して考えたり、斜に構えて見るクセが抜けない「オカマ心」の持ち主にとっては、前作同様やはり最良の娯楽作でした。
あと、相変わらず画面が美しいなぁ。3DCGなのに、あくまでも「絵が動いている」的な美しさを外さないのは高ポイント。色彩設計が見事です。こーゆー画面作りを見せられると、今度の『ナルニア』がますます楽しみになってくるぞ。
頑張ってくれ、アンドリュー・アダムソン!