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“Chronicle of an Escape”

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“Chronicle of an Escape” (2006) Adrián Caetano
 アルゼンチン映画、原題”Crónica de una fuga”。

 1970年代末、軍事政権下のアルゼンチンで、思想犯の疑いで政府の秘密警察に拉致された、男子大学生たちの辿る運命を描いた実話モノ。

 主人公は、サッカーチームでゴールキーパーをしている、政治運動とは全く無縁の大学生だったが、ある日試合の後いきなり秘密警察に拉致され、目隠しをされて郊外の一軒家へと連れていかれる。
 そこで待ち構えていたのは、容赦のない拷問。主人公は「自白」を迫られるのだが、何のことだか全く判らない。実は、先に摑まっていた男が、拷問に絶えかねて彼の名前を「密告」していたのだった。
 その館には、他にも大勢の学生たちが監禁されていた。ときおり仲間の誰かが、どこかへ連れて行かれるのだが、その行方も運命も判らない。長期に渡る監禁と拷問の恐怖で、学生たちは次第に卑屈に洗脳されていく。
 やがて主人公たち4人は、へと連れていかれ、服を脱がされ全裸のまま、ベッドに手錠で繋がれて屋根裏部屋に閉じ込められる。彼らへの辱めといたぶりは果てることなく続き、ついに生命の危険を感じた4人は、嵐の夜に全裸のまま、館から脱出しようと試みる……。

 というわけで、これが実話だけに、何ともオソロシイ内容ですが、極めて真面目に作られたなかなか良い映画です。
 ドキュメンタリー・タッチを基調にしながら、要所要所でサスペンスフルな演出も挟み、沈黙の恐ろしさや静かな緊張感といった、映画的な見所も多々あり。追い詰められていく人間の心理描写といった、キリキリするような感覚の描出も上手いので、見方によっては、ソリッド・シチュエーション・ホラーみたいなテイストもあり。
 ただ、もう20年以上前になりますが、この映画と同じくアルゼンチン軍事政権下での学生たちの拉致・監禁・拷問・虐殺を描いた映画で、『ナイト・オブ・ペンシルズ』(ビデオ題『ミッドナイト・ミッシング』)というのがありまして、これはホント神も仏もないって感じのトラウマ級の内容だったので、あれに比べると、ちょっと「弱い」感はあります。
 その反面、この”Chronicle of…”の方が、内容に「救い」があるので、見終わって落ち込んだり暗鬱になったりしないで済む、娯楽映画的に楽しみやすいものになっています。でも、時代背景の予備知識なしで、この映画で初めて、こういった歴史上の実話を知る人だと、やっぱりショッキングな内容かも……。
 というわけで、先日紹介した“Playroom”と違って、映画としても佳良なのでフツーにオススメできる感じ。

 さて、では責め場的な見どころについて。
 まず、肉体的な拷問シーンに関しては、これはさわりを見せるだけでハッキリとは描かれなので、そういう意味での見所はさほどなし。拷問内容までしっかり出てくるのは、バスタブに頭を沈める水責めくらい。
 ところが、前述したように心理描写系が巧みなので、そういったメンタルな責めに、なかなか見所が多いんですな。
 例えば、主人公が他の囚人に引き合わされるとき、看守たちは彼らに「Girls!」と呼びかけ、そして主人公のことを「She is…」と紹介する……つまり男扱いされないという辱めとか、目隠しを外されても看守の目を見てはいけなくて、視線は常に床に落としていなければいけないとかいった、日常的なディテールのリアルさが、SM的に見てもなかなか滋味深い。
 そして後半、いよいよ残った4人が全裸で監禁されてからは、そういった「メンタル面での辱め」がピークに達して、ここが大いに見応えあり。
 4人は、髪を短く切られた後、服を脱ぐよう命令され、素っ裸でベッドに仰向けに寝かされ、手錠でバンザイスタイルに繋がれる。そして、その姿を鏡で見せられ、「どうだ、この中に何が見える。自分が自分だと判るか。お前のお袋さんが見たって、これが自分の息子だとは判らねェさ」など、惨めに変わり果てた自分らの姿を嘲笑されて、屈辱に顔を歪ませながら涙する。
 更に囚人の1人は、全身にバケツで汚水を掛けられ、看守から「貴様は性根から腐っているから、これで掃除してやろう」と、床掃除用のモップで全身をゴシゴシと、顔面から股間まで擦られる。
 あるときは、ズボンだけ履いて部屋から出ることを許され、階下の食堂で看守たちがテレビを見ている横で、料理や給仕と奴隷のように使われる。またあるときは、全裸で目隠しをしたまま一列に並ばされ、銃を突きつけられ、「これから貴様らを処刑するが、殺される前に、最期の望みを一つず聞いてやろう」などと嬲られる。
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 そういったあれこれが、前述したような心理描写や緊張感に長けた演出の巧みさもあって、実にしっかりと描かれるので、肉体的な責め場がなくても、充分以上にSM的な興趣が擽られます。しかも、徹底してリアリズム準拠の演出なので、腰をよじらせたりアングルを工夫して局部を隠すなんてこともなく、見えるときは見えるという自然のまま。
 オマケにこの4人は、このまま全裸で脱走するので、映画のクライマックスはずっと、股間丸出しのヒゲ男4人の熱演が続きます。そして逃げ出した先でも、夜の街で人に見られて、怪訝な顔をされてしまったり。

 そんなこんなで、下心メインでも見所多しですし、これまたDVD Fantasiumから日本語で購入可能なので、興味と再生環境のある方は、どうぞお試しあれ。
 米アマゾンの商品ページは、こちら

“Playroom”

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“Playroom (a.k.a. Consequences)” (2006) Stephen Stahl

 アメリカのファンから「きっとコレ好きだよ」と薦められて、米盤DVDを購入してみました。
 ストーリーは、幼馴染みの悪ガキ5人組が、やがて成長してそれぞれ家庭も持った後、フットボールの試合を見に行こうと、久しぶりで5人一緒によその街に繰り出して、ついでに学生気分に戻って馬鹿騒ぎをしていると、別行動したガタイ自慢で女好きの2人が行方不明になってしまい、やがて恐ろしい事件へと発展していく……というもの。

 まあぶっちゃけた話、映画そのものは、はっきり言ってロクでもない出来です。カメラも演出もシロウトくさいし、ストーリー自体にも新味はない。
 映画のジャンルとしては、おそらく、サスペンス風味とホラー風味があるアングラなアート系……ってとこなんでしょうが、どれもこれも大した才気は感じられない。いちおう、行方不明になった2人がどういう目にあっているかということと、その行方を捜す残りの友人たちとその家族といった要素が、2本並行して進んでいくんですが、特に後者に関しては、話にしても演出にしても実にひどい出来映え(笑)。
 と言うと、何だか見るとこナシのクズ映画みたいなんですが、前者の行方不明になった2人に関してのみ、実はかなりヘンタイ指数が高くて、そそられる内容なんですな。このピンポイントだけで、DVD購入した価値があるくらい(笑)。
 というわけで、以下ネタバレ承知で、ヘンタイポイントのみ解説します(笑)。

 まずこの2人、顔も良ければ身体もマッチョと、なかなかの上物。キャラクターとしても、ガタイ自慢で女好きの体育会系バカノンケ(あ、褒め言葉よ、これ)って感じが良く出ている。
 そんな2人が、怪しい女たちに誘われて、一夜の浮気を楽しむんですが、これまた、二組一緒に同じ部屋でバコバコ犯りまくるという具合で、バカノンケ度がタップリ。
 ところが、一夜明けたら、2人ともベッドに手錠で拘束されていた。最初は、女たちの悪ふざけかと思い、ゲラゲラ笑ったりしていた2人ですが、そこに初老の男が現れて風向きが変わる。
 実はこの男は、ヘンタイ映像作家で、2人のノンケは彼の作品の「主演男優」になるのだと告げられる。部屋には他にも、レザーの全頭マスクの犬男がいたり、ロッカーの中にアダルトグッズがビッシリだったりして、ヘンタイムードがタップリ。
 とうぜん怒り狂う2人でしたが、手錠で繋がれているので抵抗もできず、初老の男に胸に跨られて「私にキスしろ」と迫られたり、身体をあちこち撫で回されたり。
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 そんなこんなで、いよいよ撮影がスタート。
 2人は巨体の用心棒たちに連行され、部屋の一角にあった鉄棒状のラックに、うつぶせで脚を大きく開いた状態で、2人並んで拘束されてしまう。背後では、昨夜2人のアバンチュールの相手だった女たちが、股間にペニバンを装着。
 こうして、怒りと恐怖に怒号をあげる2人の肛門を、後ろからペニバンがブッスリ。女たちは、そのままズコバコ腰を使い、アナルレイプされる2人は泣き叫ぶ。
 もちろん、ポルノ映画ではないので、結合部のアップとかはないんですが、このペニバンレイプのシークエンス、あれこれアングルを変えながら、尺もたっぷりとってネチっこく続く。犯される2人の熱演もヨロシク、かなりのド迫力。
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 哀れ肛虐されてしまったノンケ2人は、事後屈辱に打ちひしがれる。
 1人は何とか強がってみせる余裕は残っているものの、もう1人は身も世もなくオンナノコみたいに号泣。
 しかしそれも束の間、容赦なく第2ラウンドがスタート。
 ヘンタイ映像作家が取り出したのは、1本の金属製のディルド。「これは電流が流れる仕掛けになっていてね」と説明しながら、ディルドを金属製のベッドパイプに当てて滑らせると、バチバチと火花が飛び散る。「これを君たちの肛門にねじ込んであげよう。私はこれを『エレクトリック・ファック』と呼んでいる」
 その言葉と共に、まだ強がる余裕を残していた方の男(因みにこっちの方が、もう1人より更にマッチョ)は、用心棒たちに俯せに押さえ込まれて、そのスタンガン状のディルドで肛門を犯されてしまう。
 このシークエンスは短いんですが、汗まみれで絶叫する俳優さんの熱演や、バチバチいう電流の音響効果もあって、バイオレンス的な滋味はかなり高し。
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 そして、いよいよクライマックス。
 もう、かなりラスト近くのネタバレまでいっちゃいますので、それが嫌な方は、以下はお読みになられませんよう。
 結局、行方不明の友人を探していた残りの連中も、実は助けを求めた警察もグルだったりして、あえなく同じ囚われの身になってしまい、しかも全てを仕組んだのは友人グループの1人で、学生時代からいつもからかわれ、それに傷ついていた男の復讐だった……なんてことが明かになるんですが、ま、それはドーデモイイ(笑)。
 友人の1人は射殺され、残った3人は手術室のような部屋へ連れていかれる。
 2人が壁のラックに拘束され、1人は全裸で手術台に縛り付けられたところで、件のいじめられっ子が、積もり積もった恨みつらみを吐いた後、「まず、プライドと生き甲斐を奪うところからスタートだ、コックを切り取れ!」と宣言。
 こうして手術台の彼は、ヘンタイ映像作家に口づけされながら、電ノコで男根を切断されてしまい、それを見ながらいじめられっ子は、ズボンに手を突っ込んでマスをかく……ってな展開になります。切断後、ヘンタイ映像作家が切り取った男根をつまんで、血まみれのそれにキスする……なんてカットも。まあ、作り物なのはバレバレなんですが、血糊の量とかは、スプラッタ映画さながらにドバドバ。
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 この後は「実は昔こーゆーことがありました」とゆー、ドーデモイイ伏線が機能して、結局「主人公は助かりました」的な、これまたドーデモイイ幕引きがあるだけ(笑)。

 とまあ、そんなこんなで映画としてはロクでもない出来ですが、ヘンタイ指数だけはやけに高いので、そこいらへんのツボが合う方だったら、私同様にタップリ愉しめると思います。米アマゾンの商品ページの「この商品を買った人は……」を見ても、DVD買ってるのはゲイばっかみたいだし(笑)。
 因みに、日本語による海外DVDの通販サイト、DVD Fandasiumでも扱っていました。参考までに、商品ページにリンクを貼っておきますので、興味のある方はどうぞ。

表現規制を正当化する思想とゲッベルスの演説

 先月、何度かこのブログにエントリーをアップした「非実在青少年」規制問題ですが、残念ながら、現時点では審議続行で結論が先延ばしになっただけであり、まだ根本的な解決はされていません。
 また東京都のみならず、福岡県ではヤクザ漫画の販売規制が始まり、大阪府では女性向けコミック、ボーイズラブ・コミックも含めた規制に向けての動きが、京都府でも現職知事がマニフェストに同種の要項を盛り込むなど、その内容や場所がどんどん拡大しつつあるようです。
(全体の詳細はまとめサイトなどを参考に)
 そんな中で、先日、フリッツ・ラングの映画『怪人マブゼ博士(マブゼ博士の遺言)』のDVD(紀伊國屋書店)に封入されていた解説書を読んだところ、興味深い文章を見つけました。
 1933年3月28日、ナチスの宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスの「ドイツ映画産業会議」における映画改革についての演説内容です。
 現在の日本で進行中の、表現規制に関する動きと比較すると、特にここで書いた記事の後半部や、同記事の最期で引用している規制推進派の発言と読み比べると、その思想的・レトリック的な類似がいよいよ興味深く思われるので、ここに紹介することにしました。

「映画は自由だが、一定の道徳的・社会的見解を考慮する必要はあり、社会の根本的な考えを認めなければならない。映画の危機の原因は道徳的なものにあり、検閲はそういったものに対立する作品に対してである。映画を画一化したり業界を弾圧する意図はなく、逆に業界団体は映画製作に大きな力を持つだろう」
(「運命の映画『怪人マブゼ博士』/小松弘」から筆者による要約)

 比較対象として、より判りやすくするために、前述した以前の記事で引用した発言も、内容の順番を揃えて要約してみます。

「言論や表現の自由は、それが社会のモラルや品格を損なうものであれば、その権利は必ずしも保障されるものではない。規制によって悪質な出版社にペナルティーを科して消していけば、健全な出版社を生かすことになり、出版業界全体のためにもなる」

 規制の内容自体に対する云々も問題ですが、個人的にはそれよりも、こういった規制の根本に潜むロジックの類似にこそ、これまで何度も述べてきたような、行政が「健全な社会」を要求すること(そのために「不健全なフィクション」を排除すること)と、それを社会が無自覚に受け入れてしまうこと(当時のナチスの支持率は50%近くだったそうな)に対する恐ろしさを感じてしまい、危機感がますます募ります。
 というのも、これらのロジックは「健全」「モラル」「道徳」「品格」といった、実態が極めて曖昧ながらも、それを是とするのが「社会通念として正しい」とされているものを利用したものだからです。それはそのまま、無自覚に受け入れられやすいということにつながってしまう。
 更には、それぞれの主張を個々の「人格」にまで拡大解釈されやすい、という側面もあります。規制派からすると、それに反対する「人物」は「不健全」なのだという情報操作もできるし、規制されたくない派にとっても、自分がモラルに欠けている人間とは思われたくないとか、ポルノ好きだとは公言しにくいとかいった、反対するのに及び腰になっても無理からぬポイントがありす。
 だからこそなおさら、「思考」や「表現」といったフィクション世界の問題と、「人格」や「犯罪」といったリアル世界の問題は、はっきりと分離して考えるべきであり、それを無意識に混同してしまう危険性や、意図的に混同しようとする忌まわしさを、私は改めて強調しておきたい。
 因みに、この映画『怪人マブゼ博士(マブゼ博士の遺言)』は、その完成と同じ年にアドルフ・ヒットラーが首相に就任、つまりナチス政権が誕生して上映禁止となり、監督フリッツ・ラングが故国ドイツを捨てて亡命する、そのきっかけとなった作品でもあります。

フリッツ・ラング コレクション 怪人マブゼ博士(マブゼ博士の遺書) [DVD] フリッツ・ラング コレクション 怪人マブゼ博士(マブゼ博士の遺言) [DVD]
価格:¥ 5,670(税込)
発売日:2007-04-28

 解説書によると、上映禁止の理由は「公的な秩序と安全を脅かす」といった曖昧なものであり、当時上映禁止処分になった映画には、こういった理由が不明のものが少なからずあったらしい(記事中ではジュリアン・デュヴィヴィエ監督の『にんじん』が例として挙げられています)です。
 これもまた、私が前にこの記事の後半で述べたような、「曖昧な基準で恣意的に内容を審査できるルール」の「いかがわしさ」を示す実例と言えましょう。

ゴードン・スコット(Gordon Scott)版ターザン映画のDVD

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 ゴードン・スコット主演のターザン映画のDVD(アメリカ盤)が届いたので、ご紹介。
 ラインナップは、以下の6本。
『ターザンと隠された密林 Tarzan’s Hidden Jungle』(1955)
『ターザンと消えた探検家 Tarzan and the Lost Safari』(1957)
『Tarzan and the Trappers』(1958)
『ターザンの激闘 Tarzan’s Fight for Life』(1958)
『ターザンの決闘 Tarzan’s Greatest Adventure』(1959)
『ターザン大いに怒る Tarzan the Magnificent』(1960)

 前に紹介した、レックス・バーカー版DVDと同様に、今回もワーナー・アーカイブ・コレクションというオンデマンド・サービスによるもの。
 というわけで、やはり、ジャケは簡素なプリンタ出力、ディスクはDVD-R、メニューはシンプル、チャプターは10分刻みの機械的なもののみ、字幕や音声切り替え等はなし。
 ただし、これまたやっぱり、画質は充分以上のクオリティ。オンデマンド・サービスとはいえ、流石に正規盤だけあって、良くあるPDの安価な商品とは雲泥の差。ワイド画面作品は、ちゃんとスクイーズ収録で、退色やディテールのツブレといった劣化は、ほぼ見られず。
 どのくらいちゃんとした画質か、サンプルを原寸解像度のキャプチャ画像でお見せしませう。
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 んでもって、これまた例によって、米ワーナーのサイトからの直接購入は不可能。メーカーから直で買えば、6本パックなら50%offのサービスがあるのに、残念ながらそれは使えず、米アマゾンで割引なしで買うしかなし。
 というわけで、とりあえず二本鑑賞しました。

 まず、『ターザンと消えた探検家 Tarzan and the Lost Safari』から。
 これは何でも、ターザン映画史上初の、ワイドスクリーン&総天然色作品だそうです。というわけで、ゴードン・スコット君はターザン役なので、シャツを着てるシーンなんか一秒たりともなく、徹頭徹尾腰布一丁の半裸でゴザイまして、その滑らかな筋肉や艶やかな肌が、美麗なカラーでたっぷり拝めます。
 いや、これ以前の白黒版と比べると、カラーのターザンは何だかなまめかしいなぁ(笑)。
 ヘラクレスとかを演ると、ちょい筋量が足りない感じがしちゃうスコット君ですが、ワイズミューラーやバーカーと比べると、やっぱ腕とか太いですね。アスリート系とビルダー系の中間で、ビーフケーキって感じ。

 話の方は、いたってシンプル。
 ジャングルに墜落した飛行機の乗客が、蛮族に追われながら脱出するのを、ターザンが助ける……ってな内容なんですが、この脱出行、ビックリするくらいマッタリ模様(笑)。危機また危機でスリルとサスペンスがテンコモリかと思いきや、さしたるビッグ・トラブルもなく、ゾウやらカバやらキリンやらを見物しながら、まるでアフリカ観光旅行ハイキングみたいなノンビリさ加減。
 人間ドラマも、いちおう悪党がいたりとかもするんですが、メインに描かれるのは、そういった極限状態のヒリヒリ系ではなく、パイロットの夫と不仲だったヒロインが、自分たちを助けてくれた逞しい裸の男に心惹かれてしまい……ってな、ヨロメキ不倫劇だったりするし(笑)。

 まあ、現代の目で見てしまうと、何ともノンビリとした映画に見えますが、1950年代だったら、総天然色の大画面で、アフリカの風物とか原住民の踊りなんかを見るだけでも、充分スペクタキュラーで、立派に映画の「売り」になったんでしょうね、きっと。
 前述したように、スコット君のヌードはふんだんに拝めますが、責め場はなし。

 お次は、『ターザンの激闘 Tarzan’s Fight for Life』。
 これは、『消えた探検家』と比べると、ドラマはもうちょっと複雑だし、起伏もあります。
 舞台は、ジャングルにある白人医師の診療所。呪術医療に頼る原住民を、近代医学で救おうとしているんですが、呪術医はそれが面白くない。村の女が重傷を負って、診療所に運び込まれたものの、呪術医は親族が輸血に行くのを禁じ、そのため女はあえなく死んでしまう。また、若い酋長が病気になり、その母親が呪術医よりも診療所を頼ろうとしていることを知り、激怒する。
 一方ターザンは、チータが体温計に悪戯をしたせいで、ジェーンが瀕死の高熱だと思い込んでしまい、ボーイともどもジェーンを診療所に運ぶ。呪術医は、死んでしまった女性の夫に催眠術をかけ、報復としてジェーンを暗殺するよう命令し、更に、自分の威信を取り戻すために、診療所から薬を盗んで若い酋長を治療しようと企むのだが、間違って治療薬ではなく毒薬を盗んでしまう。
 ボーイの機転で、ジェーンは危機一髪で救われるのだが、呪術医は既に毒薬を手に若い酋長の元へ向かっていた。それを止めようと、ターザンは後を追うのだが、呪術師の仕組んだ罠に落ちて捕らえられ、牢獄に入れられライオンの餌にされるか、それとも生きたまま心臓をえぐり取られそうになる……! てな感じで、なかなか楽しめるオハナシです。

 ボーイが作ったカヌーでジェーンを診療所に運ぼうとすると、途中に滝で行く手を阻まれたりとか、滝を迂回して途中にジェーンが独りになると、そこに危険な大蛇が現れるとか、若い酋長の家来が呪術医に捕まって拷問されているのを、ボーイが発見してターザンが救出するとか、スリルとアクションをマメに盛り込みつつ、かつチータ絡みで笑いもバッチリとゆー感じで、いかにもプログラム・ピクチャー的な、オーソドックスな娯楽感がイッパイ。

 んでもって嬉しいことに、責め場もなかなか良くて、こんな感じ。
 ターザンは、滝を昇って疲れたところを、敵に襲われ棍棒で殴られて昏倒。そのまま木枠に縛られてジャングルを運ばれた後、二艘のカヌーの間に磔状態で川下り。ここ、絵面的に、かなりグッときます(笑)。ただ、惜しむらくは、カヌーのシーンで縛られているのは、おそらくスコット君ではなくボディ・ダブルの人。この映画、アフリカのロケシーンでは、どうもスコット君ではなくこの代役さんが、全て演じてるっぽいので。
 村に着いたターザンは、そのまま首枷横木両手縛りで引き回し。ここもまた、グッとくる(笑)。
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 首枷のまま、ライオンのいる檻に入れられた後は、お約束通り、拘束から逃れるための身悶えという名の筋肉ショー。
 直截的な拷問こそないものの、この一連のシークエンスを、けっこう時間もタップリとって見せてくれるので、責め場的な満足度はかなり高し。
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 もう一ヶ所、若い酋長の家来(若い黒人)が捕まって拷問されるシーンもありますが、これは椅子に縛られて焼いた槍の穂先で脅されるのと、殴打されるのをロングで見せる程度。
 マッチョでは、悪役の黒人戦士が、カーク・ダグラス版『スパルタクス』にも出ていたウディ・ストロードという男優さんで、これまたなかなか見事な筋肉を見せてくれます。

日本語字幕付きで見られることを期待してるローマもの、二本

 まずは、これ。

 スパルタカスもののテレビシリーズ、”Spartacus: Blood and Sand”の予告編。
 本国アメリカでも、まだ今年の一月に始まったばかりらしいので、ソフト化とかはまだまだ先でしょうけど、予告編見るだけでも、実にオイシソウな内容(笑)。
 お次は、こちら。

 今年の4月に米英で公開予定の映画、”Centurion”の予告編。
 12世紀の初め、ブリテン島でピクト人に敗れたローマ軍団の生き残り7人が、囚われの将軍を救出するアクション・アドベンチャーっぽい。『ディセント』のニール・マーシャル監督、『300』のマイケル・ファスベンダー主演。
 とゆーわけで、どちらも本国でソフト化されたら、輸入DVD購入もやぶさかではないんですが、やはり日本語字幕付きで見たいところ。
 無事に日本でも公開、もしくはソフト化されますように。南無南無。
【追記】”Centurion”は日本盤DVDが出ました!

センチュリオン [DVD] センチュリオン [DVD]
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発売日:2011-01-28

【追記】そして『スパルタカス』も。
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予約していたものと予約したもの

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 先日書いた、営業終了してしまったすみや渋谷店で予約していた最後の商品が、留守中に届いて再配達をお願いしていたのが、昨日届きました。
 映画『悲しみよこんにちは』のサントラ盤。音楽は、大好きなジョルジュ・オーリック。同じくオーリックが音楽を手掛けた『居酒屋』『恋ひとすじに』とのカップリング盤。
『悲しみよこんにちは』は、ジュリエット・グレコが歌う主題歌(とゆーか劇中歌とゆーか)が、ちゃんと入っていて嬉しい。グレコのアルバムに入っているのも持っているけど、やっぱ映画オリジナル・バージョンでも欲しかったもんで。
 因みにこの曲、フランス語では「ボンジュール・トリステス」ってんですが、シモーヌ深雪さんが、これと橘外男の短編小説を引っかけて「淫獣トリステサ」としてカバーなさっています。最初にライブ(っつーかリサイタルとゆーか)で拝聴したとき、その見事な着想に「上手いっ!」って感嘆したもんです。アルバム『血と薔薇』に収録。
 話をサントラの方に戻すと、『悲しみよこんにちは』は、クラブのシーン等で演奏されるジャズやラテンもいいんですが、やはりメインの回想部分で使われている、オーリックらしい、ちょっとエキゾティックでミステリアスな管弦楽曲の数々にウットリです。『居酒屋』と『恋ひとすじに』の方は、映画そのものを未見なんですが、前者はマリア・シェルの歌も入っています。
 とゆーわけで、お好きな方は是非……とオススメしたいところなんですが、残念ながらアマゾンでもHMVでもこのCDの取り扱いはない模様……と思ったら、タワレコにありました。こちら
 お次は、予約したもの2点、
 まずは、これ。

NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 第1部 DVD BOX NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 第1部 DVD BOX
価格:¥ 19,950(税込)
発売日:2010-03-15

 前にここで書いたように、昨年末に途中から見てハマってしまったドラマ。
 これで、見逃していた前半部を見られるので、楽しみ楽しみ。あと、藤本隆宏の褌ヌードも(笑)。
 二つめは、これ。

戦場でワルツを 完全版 [DVD] 戦場でワルツを 完全版 [DVD]
価格:¥ 3,980(税込)
発売日:2010-05-12

 これまたここで書いたように、昨年末に見てその年の私的ベスト1作品となった映画。
 劇場公開時にはカットされたシーンが、DVDでは復元されているというので(何でも、兵士たちがポルノビデオを見るシーンだとか聞いていますが)、これまた楽しみ。

待ってたよ〜!

 出発前だとゆーのに、下記のニュースを知って狂喜乱舞。

地上最強の美女 バイオニック・ジェミー Season1 DVD-BOX(14話収録) 地上最強の美女 バイオニック・ジェミー Season1 DVD-BOX(14話収録)
価格:¥ 18,690(税込)
発売日:2010-03-06
地上最強の美女 バイオニック・ジェミー Season2 DVD-BOX(22話収録) 地上最強の美女 バイオニック・ジェミー Season2 DVD-BOX(22話収録)
価格:¥ 28,770(税込)
発売日:2010-03-06

 もう、旅行で金使うから、しばらく節制しなきゃ……なんて決意が、紙クズのように吹き飛んでしまった(笑)。
 もちろん、即予約しましたよ。
 ジェミ〜、待ってたよ〜!!!

すみや渋谷店、今月いっぱいで閉店

 映画サントラ専門店の老舗で、実店舗閉店後も楽天市場やYahoo!でネット店舗を展開していた、すみや渋谷店が、今月いっぱいで閉店するそうです。
 今までもこのブログで、アマゾンやHMVでは取り扱いのなかった、珍しいサントラ盤を紹介する際に、何度かリンクを貼らせてもらっていただけに、この閉店は残念な限り。
 すみやさんと言えば、私は個人的に、けっこう長い思い入れがありまして。
 というのも、まず、私の実家は鎌倉なんですが、現在はもうなくなってしまいましたが、昔、小町通りの入り口のところに、このすみやさんの支店がありまして、私にとっては、レコードを買うと言えば、まずこのすみやさんだったんですな。
 だから当然、生まれて初めて自分の小遣いで買ったレコードも、すみや鎌倉店で買ったもの。因みに、初めて買ったシングル盤は、「セクシー・バス・ストップ」(オリエンタル・エクスプレス版のほう)、LPは、カーペンターズの「ふたりの誓い〜カーペンターズ第三集」だったような。
 自分の小遣いで買った以外のクラシックのレコードも(ウチはクラシックだったら、親に頼めば買って貰えたんです)、ジャン・マルティノン&パリ管の「ダフニスとクロエー」とか、エルネスト・アンセルメ&スイス・ロマンドのストラヴィンスキー各種とか、ゲオルグ・ショルティ&ウィーン・フィルの「ニーベルングの指輪」(もちろん抜粋版ですよ)とか、お気に入りだったヤツは、ほとんどここで買って貰ったもの。
 それと、このすみや鎌倉店では、何に数回、輸入盤のセールをしてくれたんですな。
 普段は輸入盤は置かれていなかったんですが、このセールのときには、店の奥のスペースにダンボール箱が幾つも並べられて、そこでカットアウト盤なんかが安価に売られていた。
 私が輸入盤を買い出した頃は、既に興味がプログレに移っていたもので、私がアナログ盤で持っているのは、イエスにしろピンク・フロイドにしろキング・クリムゾンにしろEL&Pにしろ、たいがいはそのとき買ったカットアウト盤だったりする(笑)。
 やがて、興味がプログレからテクノ、ニューウェーブ、現代音楽などに移った頃は、私も大学に入っていたので、レコードの購入はもっぱら、自宅から大学のある八王子(正確には、私の場合は橋本ですが)への通学途中、横浜で下車して相鉄ジョイナス内の新星堂とかを利用するようになりましたが、それでも、まだ高校在学時代に買ったYMOのファーストとセカンドなんかは、やっぱりこのすみや鎌倉店で買ったもの。
 で、すみや渋谷店の方はというと、これはサントラ盤の専門店として、高校ぐらいの頃から、たまに利用していました。
 私、実は高校はあまりマジメに通っていなくて(笑)、朝、学校へ行って出席をとった後、そのまま学校を出て、駅のトイレで私服に着替えて、そのまま電車で東京方面へ行き、名画座のハシゴなんかして映画を3〜4本見たあと、鎌倉に帰っても高校には戻らず、そのまま美大予備校の方に直行……なんてことを、ちょくちょくやっておりまして。
 で、そんなついでに、すみや渋谷店に寄ることもできたので、確か国内盤が出ていなかった「ダーク・クリスタル」や「狼の血族」のサントラなんかは、そのとき買ったように記憶しています。
 まあ、サントラ盤に関しては、私は基本的に、見たことのある映画のものしか買わないので、売り上げという点では、すみや渋谷店さんにはあまり貢献できていなかったとは思います。
 それでも、本にしろCDにしろ購入はもっぱらネットで、というライフスタイルになってからも、マイナーどころのサントラ盤を購入するには、そこそこ利用させていただいていましたし、すみや渋谷店さんのメルマガのおかげで、限定盤を無事に購入することができたなんてことも、少なからずありました。
 そんなこんなで、今回の閉店のお知らせは、個人的に実に残念なんですが、それでも、在庫があるものと2月中に入荷するものに関しては、まだ販売・発送を受け付けておられますし、在庫のクリアランスセールも開催中とのことなので、サントラ好きの皆様、この機会にぜひどうぞ。
すみや渋谷店(楽天市場)

最近の予約モン

ゴシック [DVD] ゴシック [DVD]
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2010-02-24

 キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
 でも、メーカーがアレ系だから、画質がちょっと心配(笑)。
 まあこの際、あんまり贅沢は言わないから、この調子で『恋人たちの曲 悲愴』と『恋する女たち』と『肉体の悪魔』を……と思ってたら……
 

尼僧ヨアンナ [DVD] 尼僧ヨアンナ [DVD]
価格:¥ 5,040(税込)
発売日:2010-04-24

 ……お、惜しいッ!!!!! 『肉体の悪魔』と元ネタは一緒なので、ニアピンだ。
 でも、買います。見たことないんだけど(笑)。
 もひとつ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ繋がりで、

ジュリア [DVD] ジュリア [DVD]
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2010-02-26

 これまた、キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
 確かこの映画が、私にとっての初ヴァネッサ・レッドグレーヴだったと思う。当時、ジェーン・フォンダのファンだったから、喜んで見に行って、ヴァネッサ・レッドグレーヴに夢中になったんだよな。
 余談ですが、私のジェーン・フォンダのファン歴は、『モーニング・アフター』と共に終わりを告げました(笑)。
 とゆーわけで、今月末はヴァネッサ・レッドグレーヴ&ナターシャ・リチャードソン母娘祭り! ……と思ったんだけど、今月末は日本にいないので、母娘祭りは来月までお預けだ。
 それにしても、ナターシャ・リチャードソンは、亡くなるのが早すぎたよ。『上海の伯爵夫人』では、ほんとステキだったのに……。
 そういや『いつか眠りにつく前に』も、まだ見てなかった。
 早く見ねば。

最近見えた映画

 見た映画じゃなくて見えた映画です、お間違えのなきよう。

ウィンタースリーパー [DVD] 『ウィンタースリーパー』 (1997)トム・ティクヴァ
“Winterschläfer” (1997) Tom Tykwer

 一本。
 マルコ役のハイノ・フェルヒという男優さん。肉付きの良いハンク系で、厚い胸板、胸毛もモジャモジャ。
 同居人が帰宅したら、セックスの最中に痴話喧嘩をしていたらしく、女の後を追ってマッパのままブラブラと。

フランチェスコ ~ノーカット完全版~ [DVD] 『フランチェスコ』(1989)リリアーナ・カヴァーニ
“Francesco” (1989) Liliana Cavani

 いっぱい。
 雪原と交接する若かりし頃のミッキー・ローク、水浴びするフランチェスコ会修道士の方々、戦争に負けて捕虜になり全裸に剥かれたアッシジの若人たちなど、様々な殿方のがブラブラと。
 あと、全裸死体の山なんてゆーインパクト大なヴィジュアルもあるので、残酷好きの方にもオススメ。
 以上(笑)。
 マジメな映画感想文を期待された方はゴメンナサイ。
 でも、どっちも見応えのある映画でしたよ。