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『戦場からの脱出』

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『戦場からの脱出』(2006) ヴェルナー・ヘルツォーク
“Rescue Dawn” (2006) Werner Herzog

 ヘルツォーク監督作品でクリスチャン・ベイル主演なのに、劇場公開なしのDVDスルーとは悲しいご時世。まあ、DVDで出ただけ良しとしますか。
 B級映画みたいな邦題と一緒に、パッケージにはデカデカと「戦争アクション!!」なんて書いてあります。
 確かに、ストーリーだけ抜き書きすると、ヴェトナム戦争で撃墜された飛行機のパイロットが、拷問されたり捕虜収容所に入れられたりして、とっても辛い目に遭いつつ、何とかそこを脱出するけど、今度は過酷なジャングルを生き抜かなければならず……という具合で、確かにB級アクション映画っぽいんですけどね。
 とはいえ、やっぱりヘルツォーク。
 いくら『コブラ・ヴェルデ』以降、何となくフツーっぽくなった感があるとはいえ、間違ってもコレは「戦争アクション映画」ではない。「戦争映画」ですらないかも。
 というのも、この映画における戦争や国家、政治や思想、敵や戦いといった要素は、単なる状況以上の意味はなく、映画のテーマとは全く関係ないのだ。では、テーマは何かというと、やはりヘルツォーク十八番の、大自然と拮抗しうる力を持つ、人間の狂気なわけです。

 そういうわけで、ヘルツォーク好きなら、見所はイッパイ。
 まず、冒頭のスローモーションによる空爆シーンからして、一気に魅了される。『アギーレ 神の怒り』の登山とか、『緑のアリの夢見るところ』の竜巻同様、「うぉ〜、ヘルツォークの映画だ〜っ!」って感じで、もうそれだけで嬉しくなっちゃう(笑)。
 本編に入っても、美麗で荘厳な自然描写(粛然とした前半も良いけど、やはり後半の圧迫感が、もうヘルツォークならでは)、徹底したリアリズム(捕虜たちの痩せっぷりとか、もうハンパねぇです)、緊張感と詩情の対比(蝶と犬の使い方が良かったなぁ)、等々、やっぱり素晴らしい。
 音楽はクラウス・バデルトなんですが、往年のヘルツォーク組で今は亡きフローリアン・フリッケ(ポポル・ヴー)の曲が、1曲使われていたのも嬉しかったなぁ。
 バデルトのスコアも悪くはないんだけど、例えばラスト・シーンで、余りにも単純な「実話を元にした感動作!」みたいな、いかにも風のテンションを盛り上げるスコアを付けちゃっているあたりは、正直ちょい疑問を感じました。主人公のセリフと暗転後のテロップによって、この映画で描かれているのは、「常軌を逸した生命力を持った人間の凄さ(或いは、異様さ)」だということが明示されるんですけど、この音楽だと「アメリカ万歳!」か「英雄の帰還!」みたいに、テーマをミスリードしてるみたい。

 まあ、この部分の音楽に限らず、全体として瑕瑾がないかというと、残念ながらそうではない印象はあります。
 主人公は、『アギーレ』や『フィッツカラルド』、あるいは『カスパー・ハウザーの謎』の主人公同様に、一般の規範や価値観から完全に逸脱した、常軌を逸した存在なんですが、それが充分に表現されていたかというと、いささか疑問が残る。
 主役のクリスチャン・ベイルは、文句なしに上手いし、役になりきった体当たり演技もあって、狂気と裏腹のエクストリームさもあるんですが、いかんせん、肝心の「生命力」があまり感じられない。キャラクターとしての「強さ」が、いまいち足りていないというか。
 また、前述したように、ストーリーを抜き出すと、シンプルな娯楽作の筋立てに近すぎること(まあ、実話なんだから仕方がないけど)も、結果として、映画の本質を曖昧にしてしまっているような気がします。
 そういう感じで、かつてのヘルツォーク作品を知っていると、共通する要素が多い分、どうしても比較もしてしまって、ちょっと「弱い」感じがしてしまう。『神に選ばれし無敵の男』のときは、逆に共通項が少ない分、問答無用で「傑作!」と思えたんですけど。

 でも、一本の映画として見れば、充分以上に見応えのある佳品なので、ヘルツォークのファンも、そうでない人も、ご覧になる価値は充分以上にあるかと。
『戦場からの脱出』(amazon.co.jp)
 最後に、いつものアレ系(笑)の追補。

 POWの映画なので、いちおう拷問シーン(縛られて牛に引きずられたり、逆さ吊りにされて顔に蟻塚を括り付けられたり)もありますが、リアリティや無惨さはともかくとしても、エロティックな興趣はゼロですので、ソッチ系好きの方は、あまり期待なさらないよう。
 ヴェトナム戦争POWモノの責め場が目当てだったら、『ランボー』シリーズ(スタローンがあんまり好きじゃないので、実は良く知らない)とか、チャック・ノリスの『地獄のヒーロー』シリーズとか(『3』の責め場はお気に入り)、あるいはもっとB級の『炎の戦士ストライカー』だの
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『ストライク・コマンドー』だの
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『怒りのコマンドー』だの、
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もうちょい映画的にマトモなところでは『ハノイ・ヒルトン』とか
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『極秘指令/グリーンベレーを消せ!』とかを、
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ご覧になった方がヨロシイかと(笑)。

“Der Sohn des Scheichs”

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“Der Sohn des Scheichs” (1962) Mario Costa

 ゴードン・スコット主演、アラブを舞台にしたアクション・アドベンチャー映画の、ドイツ盤DVD。伊語原題”Il figlio dello sceicco”、英題”Kerim, Son of the Sheik”。
 イタリア語音声、字幕なしで鑑賞したので、細かな部分は良く判らないんですが、IMDbの解説によると、1860年代の中東で、カリフの座を狙う悪者オマールの陰謀と、オマールに妹を殺された青年カリムが、義賊となりオマールの陰謀に立ち向かう……という内容。

 ゴードン・スコットは、もちろん主人公カリム役。悪のヒロイン役に、毎度お馴染みのモイラ・オルフェイ。あと、スペシャル・ゲスト的な扱いで、ゴードン・ミッチェルもちらっと登場します。
 出ている面子から見ると、イタリア製ソード&サンダル映画(及びその周辺)の中でも、かなり安手な部類に入る感じですけど、この映画の場合は、どうやら全編エジプトロケを敢行しているようで、画面には、このクラスの映画とは思えない、スケール感と厚みがあります。
 まず、モブの人数が多い! ほんのちょっとしたシーンでも、近景から遠景に至るまで、その他大勢の人々がフレームインして蠢いている。
 おそらく、現地の人がエキストラをやっているんでしょうけど、何せ中東が舞台で、しかも制作が60年代初頭ともなると、皆さん普段から民族衣装なわけです。つまり、エキストラ用の衣装を用意する必要がなく、着の身着のままでOK。だから、これだけ大量のモブが調達できたのでは。
 人だけじゃなく、動物も同様。馬やらラクダやらロバやら山羊やら、まあとにかく出るわ出るわ。馬に関しては、軍の協力もあったのかも知れません。騎馬軍団の数も、多い多い。

 セットも、おそらくほとんど使っておらず、クライマックスの砦のシーンはセットだと思いますが、それ以外は、実在のモスクとか宮殿とか遺跡とかで撮っているんだと思います。市場や広場のシーンは、開発以前のカイロ旧市街(オールド・カイロ)っぽいし、オアシスや村落のシーンも、たぶん実在のもの。
 室内シーンも、かなり現地のものをそのまま使っているっぽいです。インテリアから小道具に至るまで、とてもゴードン・スコットやモイラ・オルフェイが出ているクラスの映画とは思えないゴージャスさ。
 また、観客が期待するような、観光映画的な側面も、しっかりぬかりなく抑えており、遠景にギザの三大ピラミッドが見えていたり、更には、サッカラの階段ピラミッドの前を、大量のアラブ騎馬軍団が駆け抜ける……なんて、実に豪華な画面も見せてくれます。
 スペクタクル映画にはつきものの、エキゾチックなダンスシーンも、この映画では3回も出てきます。うち二回は女性のベリーダンスで、残念ながら音楽は映画用の劇伴に差し替えられているんですけど、映像にはしっかり、ウードやカーヌーンやダルブッカといった、アラブの伝統楽器を演奏している姿が映っています。
 残る1回が、男性のダンスなんですが、これがタンヌーラというエジプトの民族舞踊でした。スーフィーの旋回舞踊のエンターテイメント版といった趣で、旋回しながらスカートのような円盤状の布を拡げ、それを身体から抜き取って頭上で廻すという踊りです。以前、エジプト舞踊の専門家の友人に、ビデオを見せて貰ったことがあり、見るのはこれで二回目。かなり印象に残っていた踊りながら、今まで再会の機会がなかったので、これは嬉しかった。加えてありがたいことに、このシーンの音楽は、ちゃんと同時録音(おそらく)されたものを使用。

 こういう具合で、セットや小道具にお金を使わずに済んだのか、メイン・キャラの衣装とか、馬具とか小道具の類とかも、このクラスの映画にしては、実に上質。前述した砦とか、ダンジョンのセットなんかも佳良。
 屋外に出たら出たで、前述した壮麗な建物はあるわ、ナツメヤシが林立するオアシスはあるわ、水平構図を存分に生かした砂漠のパノラマはあるわ。しかもそこを大量の人馬が駆け回るわけで、どのシーンをとっても、画面の重厚感がバツグン!
 よく見ると、オアシスの村が襲撃されるシーンなんて、映画用に設置したと思しきテントが燃えているだけで、あとは回りで人や動物が駆け回っているだけなんですけどね。でも、村の全景自体に説得力があるのと(実在のものだとしたら当然です)、前述したように、モブや動物の物量がタップリなので、ちゃんと一大スペクタクルに見えるわけです。
 いやいやホント、画面を見ているだけでも楽しい映画でした。

 マッスル映画としては、ゴードン・スコットはアラブのシークの息子役なので、当然ごとく着衣なんですけど、それでもしっかり、他はみんな長袖なのに、一人だけフレンチスリーブで太い腕がむき出し。しかも、これまた一人だけ襟ぐりが深く、胸板見せもバッチリという、好サービス具合が嬉しい。
 また、後半、スコット君はとっ捕まって、ダンジョンに入れられて拷問されるんですけど、その時にちゃんと上半身裸になってくれます。で、無粋な(……かどうかは知りませんが)映画だと、ピンチから脱出して逆襲に転じる際、大概また服を着ちゃうもんだから、見ているこっちとしては、「いいよ、服なんか着せなくって!」なんてブーたれたくなったりするんですが、この映画では、脱出しても上半身裸のまんま。
 そしてそのまま、クライマックスの大合戦のときも、悪玉とのタイマン勝負のときも、ヒロインとのハッピーエンドのときも、エンドマークが出るまで、ず〜っと上半身裸。
 いや〜、ファン心理やマニア心理を、良く判っていらっしゃる(笑)。

 そんなこんなで、個人的にはかなりポイント高い映画でした。
 言葉が判らないので、あまり正確なところは言えませんけど、演出のテンポも良さげで、スパスパ楽しく見られる痛快娯楽作といった感じです。
 DVDはドイツ盤なので、当然PAL。リージョンコードは0。音声はドイツ語とイタリア語。字幕なし。
 画面はノートリミングのシネスコで、スクィーズ収録。画質は、ちょっと粒状感があったり、若干の傷やゴミがあったりはしますが、退色は見られず、映画のジャンルと制作年代を考えれば、充分高画質と言えるでしょう。

 では、最後に責め場情報。この映画で、責め場は二ヶ所。

 まず、映画前半。オアシス住まいのスコット君一行が、街にやってくると、広場で公開フロッギングが行われているのを目撃します。
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 尺はあまり長くなく、被虐者もさほど印象に残るタイプではないんですが、基本的に公開処刑というのは、それがパブリックな場で行われているというのがキモ。
 で、この映画の場合、前述したように風景のスケール感やモブの物量感がタップリなので、そのぶん公開処刑の趣も引き立ってます。被虐者が豆粒大の引きのある構図から、だんだんとアップに寄っていく見せ方など、シーンとしてはかなり魅力的。

 二つ目の責め場は、お待ちかねのスコット君の拷問。これは、ダンジョンでのフロッギングで、責め自体はいたってシンプル。
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 とはいえ、尺がかなり長い上に、アップあり、引きあり、バックあり、フロントあり、ギャラリーあり、ヤメテヤメテと泣き叫ぶ恋人あり……と、ネットリじっくりタップリ見せてくれるので、実にヨロシイ。
 また鞭痕が、安手の映画にありがちな、いかにもペンキなすりました、ってなタイプではなく、ちゃんと皮膚が破れているようなメイクなのも良いですな。
 で、こうしてヒーローがひとしきり鞭打たれたあと、今度はヒロインが、ラックに縛られて引き延ばし責めにあうんですけど、当然のことながら、ヒーローはそれを止めることができないので、怒りに身をよじりながら、何とか縛めから逃れようとする。
 このシーンが、「筋肉美見せ」のシーンになっていまして、ゴードン・スコットは、筋量自体はさほどないので、あまりこういうシーンには向いていないんですけど、この映画では、背筋中心のせいか、なかなか良い絵、良い筋肉美を見せてくれます。ライティングによる陰影の濃さも手伝って、筋肉の塊を蠢かせながら、ミミズ腫れの浮くテカった肌をよじる姿は、ちょいとバロック絵画的な美しさもあって、かなり色っぽい。

 というわけで、責め場も満足の一本でした(笑)。

つれづれ

 締め切りが重なっていた仕事が、先週末に全て無事終了しました。
 月産枚数的としては、別にキツくもなんともなく、逆に楽なくらいの分量だったんですが、Aの締め切りの二日後がBの締め切り……ってな塩梅だったのと、合間にマンガ以外の用件も入っていたせいで、頭の切り替えとかペース配分が、ちょっと難しかった感じ。
 おかげで、実作業以上に「終わった〜!」感が強い。よく考えると、仕事量としては、大したことないんだけど(笑)。

 で、その締め切り明けと前後して、”Gay Pride Sale! Top 10 Deals of the Week”という件名のメールが来ました。
 パッと見、よくあるエロ系の迷惑メールみたいですが、実はそうではなく、アメリカの大手旅行会社ORBITZのメルマガです。
 中身を見ると、「トロントのゲイ・フレンドリーなホテル、30%OFF。トロント映画祭をプラス・アルファでエンジョイしましょう!」とか、「トラベル・オークションを利用すれば、国際便が40%以上OFFになります。収益はLGBTチャリティに寄付されます」とか、「フォート・ローダーデール(何でも『アメリカのベニス』なんですって)とプエルト・バジャルタ(メキシコのリゾート地だそうな)でゲイ・リゾート。5泊以上で100ドルOFF、2泊でも10%OFF!」とか、「スタイリッシュでラグジュアリーでカルチャーでアドベンチャーなゲイ・ツアー、50ドルOFF!」とかいった惹句と一緒に、キャンペーン商品へのリンクが並んでおります。
 で、これを見ていたら、前にも何度か書いたような、「ゲイの存在が日常化した結果、目に見えるオーバーグラウンドな形としてのゲイ・マーケットが確立し、それが一般企業にとっても、収益およびパブリック・イメージの両方において、プラスになると判断されている状況」の、格好のサンプルだなぁ、なんて思い、ちょっと紹介してみました。
 日本でも、JTBとかHISから、こーゆーキャンペーン・メールが来たら、楽しいのにね。
 周囲を見ると、クラブ・イベントで東京や大阪や北海道や博多なんかを頻繁に行き来していたり、定期的に沖縄に行ったりしているゲイがけっこういるので、ビジネスの可能性としては、決してないわけではなさそう。ただ、そういった「ゲイ向け商品」を堂々と買える層が、果たしてどれだけ存在するのか……というのが、毎度ながらネックになるだろうけど。
 あ、でも大手旅行会社という括りを外せば、日本でもこことかここみたいな、ゲイ向けの旅行業そのものは存在します。

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 映画は、DVDで『アンダーワールド ビギンズ』を鑑賞。
 吸血鬼と狼男の抗争を描いた『アンダーワールド』シリーズの、れっきとした正統の3作目……なんだけど、ジャケが何だか、レンタル屋に大量に並んでいるバッタモンみたい(笑)。
 1作目は、アイデアや世界設定の背景描写や凝った美術なんかが良くて、けっこうお気に入りでした。対して2作目は、そういった特徴があまり見られず、良くある大味なアクション・アドベンチャーといった感じで、イマイチ好きになれなかったんですけど、この3作目は、内容的には時間を遡り、1作目のプリクエル。
 つまり、1作目で私が魅力を感じていた部分を、クローズアップして膨らませた内容なので、かなり満足しました。ただ、「美人でカッコいいオネエチャンがスタイリッシュに戦うアクション映画」としてのファンにとっては、映画の設定が中世ヨーロッパなのでガン・アクションはないし、ストーリーの主眼が狼男側にあるので、ヒロインがちょいサブ的な存在になっているから、イマイチかも知れません。
 で、これって、いわばホラー風味のダーク・ファンタジーなわけですが、ストーリーとしては「奴隷の反乱」と「種族を越えた禁断の恋」なので、実は吸血鬼と狼男という設定を使わないでも、充分に成り立つ内容ではあります。じっさい、DVD収録のメイキングでも、監督が「『スパルタカス』+『ロミオとジュリエット』」とか言ってましたし。
 というわけで、設定の必然性という意味では、この映画単品で考えると苦しいんですけど、まあ、シリーズものなので、そこいらへんも気にはなりません。

 話そのものは良くできていて、シリーズを見ている人間には、結末がどうなるかは既に判っているんですけど、それを「どう持って行くか?」という点で、最後まで興味を削がない筋運びは、なかなか佳良です。スケール感はさほどありませんが、それでも、こぢんまりした範囲内で必要充分なものだけを描くという、全体的にタイトな構成が小気味よく、エピック・アドベンチャーとしては手堅い出来映え。
 美術は、これはもう大健闘。それほど大予算ではないみたいですが、それでここまでしっかり見せてくれるとは。美しさと説得力の両方を兼ね備えた、文句なしの出来映え。で、メイキング見ていたら、美術監督の顔に見覚えが……『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの人でしたか、ナルホド(笑)。
 訳者さんも、いずれも佳良。シリーズ通して、ちゃんと同じ役を同じ人が演じているのは、やっぱりいいですね。シリーズを見てきた人間にとっては、「あ、あいつがこんなところに!」ってなサービスもある。メイン・キャラの内面描写が掘り下げられて、キャラクター像に深みが出ているのもヨロシイ。
 メイン・キャラの新顔、新ヒロインのロナ・ミトゥラは、前にTV版『スパルタカス』のときに好印象でしたが、今回も同様の感想。ただ、役の上で「前2作のヒロイン(を演じていたケイト・ベッキンセール)に似ている」という設定で、確かに雰囲気は似ているんだけど、個人的にはケイト・ベッキンセールよりも、Gacktに似てるな〜、と思いました(笑)。

 さて、嬉しいことにこの映画、やましい部分のお楽しみ(笑)も、ちゃんとありました。
 まず、映画の設定で、この時代、狼男は奴隷にされてるんですが、狼に変身できないように「内側に銀の鋲が突き出た首輪をされた、髭筋肉長髪濃度濃いめの薄汚い野郎ども」なんですな。で、それが貴族的な吸血鬼にこき使われている。
 ……はい、個人的なフェチアイテムと設定系のSM好き心を、何個もまとめてクリア(笑)。
 で、責め場もあります。主人公の鞭打ち。それも2回。
 1回目は、ウィッピング・ポストに両手を拡げて縛られ、上半身裸の背中を、鉤付きの長鞭でフロッギング。もちろん、背中はズタズタに裂けちゃいます。簡単には死なない狼男という設定を上手く使った、ナイス責め場(笑)。
 2回目は、床に跪かされ、両腕を鎖に繋がれて立ち上がれない状態で、やはり背中をフロッギング。ここではシャツを着てるんですが、鞭打たれてちゃんと破けるのでご安心(笑)あれ。
 まあ、主人公の身体自体は、マッチョと呼ぶには細いんですけど、でもちゃんと撮影用に鍛えてはいるので、ナチュラルな感じの筋肉美はあります。とにかく筋肉量が欲しい御用向きには、1作目にも出ていたサブキャラの黒人さんがスゴい身体なので、そちらをオススメしませう(笑)。
 あとは、狼男なんで、変身が解けて人間の姿に戻ったときには、服は破けてスッポンポンになっているわけで、男のフルヌードが何度も出てきますし(ズボンや下着だけ破け残る……なんて、無粋なこともゴザイマセン)、奴隷なんで、鎖に繋がれてたり牢に入れられてたりするし、人間の姿のまま、けっこうエグめに惨殺されていったりもしますんで、ソッチ系目当てでも、けっこうオススメできる内容でした(笑)。
『アンダーワールド ビギンズ』(amazon.co.jp)

最近聴いているCD

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“Magnificat; Victoria” Wojciech Kilar
 現代ポーランドの作曲家、ヴォイチェフ・キラールの、声楽付き管弦楽曲二曲をカップリング。
 メインを占めるのは七部からなる大曲「マニフィカ〜独唱と合唱とオーケストラのための」(2006)。同作曲者の似た構成の楽曲「ミサ・プロ・パーチェ(平和のためのミサ)」(1999)と比較すると、トラジックな重厚さが控えめになって、清浄感や祝祭的な高揚感が前面に出ている印象。
 第一曲からして、まるで「さあさあ、始まり始まり〜」と言わんばかりの金管のファンファーレに続き、低弦の反復がクレッシェンドしていき、ティンパニが打ち鳴らされて、リタルダンドした後、満を持して合唱の登場……という明快さ。
 かと思えば、ストリングスにソプラノの独唱をフィーチャーした二曲目や、グレゴリオ聖歌風のモノフォニーから始まり、次第に声部が増え、やがて再びストリングスとソプラノの独唱が加わる三曲目は、まんま癒し系のオムニバスCDに入ってても違和感なさそうな美曲。
 他にも、オーケストラによる力強い反復に、バスの独唱が朗々と響く四曲目、金管のスタッカートとティンパニによるカッコイイ導入、緩急を効かせた混声合唱による高揚感が印象的な五曲目、民族風の旋律の反復をバックに、ソプラノとテノールとバスの掛け合いを聴かせる六曲目、バロック風な旋律を、いかにもな金管のファンファーレから、不協和音を伴う現代風のストリングス、古楽風の声楽……などなど、次々と展開していき、シンプルで力強い高揚感を経て、敬虔な清浄感で幕を引く終曲……と、キラールを聴く面白みを堪能しました。
 カップリング曲「ヴィクトリア〜混声合唱とオーケストラのための」(1983)は、NAXOSから出ている『合唱曲と管弦楽曲集』にも収録されています。4分足らずの小品ながら、ハッタリの効きまくったイントロ、問答無用でグイグイ盛り上げる展開、期待を裏切らない大仰な終わり方……と、これまたタマリマセンな一曲。
“Kilar: Magnificat; Victoria”(amazon.co.jp)

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“Epics: The History of the World According to Hollywood” Omnibus
 今昔のハリウッド史劇映画の音楽あれこれを、たっぷり56曲収録した、4枚組オムニバスCD。ただしサントラではなく、プラハ市交響楽団の演奏によるもの。
 もちろん、古くはミクロス・ローザの『ベン・ハー』やエルマー・バーンスタインの『十戒」、アレックス・ノースの『クレオパトラ』やモーリス・ジャールの『アラビアのロレンス』、最近のではヴァンゲリスの『アレキサンダー』やハンス・ジマーの『グラディエーター』やジェームズ・ホーナーの『ブレイブハート』なんて、有名どころも入ってるんですけど、個人的には、マノス・ハジダキスの『スパルタ総攻撃』とか、フランツ・ワックスマンの『隊長ブーリバ』とかいった、好きなんだけどサントラを持っていないのが入っているのが嬉しかった。
 というわけで、ちょっと長くなりますけど、興味のある方へのご参考までに、全収録曲のリストを。
 因みにCDでは、映画の舞台となっている年代順に、曲が収録されているという構成になっているので、以下のリストもその並びで。カナ表記は、allcinema onlineに準拠。
 前述の曲数よりリストの数が少ないのは、同じ映画から複数曲が収録されているものがあるため。
紀元前1万年(ハラルド・クローサー)
十戒(エルマー・バーンスタイン)
アレキサンダー(ヴァンゲリス)
ソドムとゴモラ(ミクロス・ローザ)
スパルタ総攻撃(マノス・ハジダキス)
トロイ(ジェームズ・ホーナー)
クォ・ヴァディス(ミクロス・ローザ)
聖衣(アルフレッド・ニューマン)
ディミトリアスと闘士(フランツ・ワックスマン)
クレオパトラ(アレックス・ノース)
アンソニーとクレオパトラ(ジョン・スコット)
グラディエーター(ハンス・ジマー)
マサダ(ジェリー・ゴールドスミス)
スパルタカス(アレックス・ノース)
ローマ帝国の滅亡(ディミトリ・ティオムキン)
偉大な生涯の物語(アルフレッド・ニューマン)
ナザレのイエス(モーリス・ジャール)
ベン・ハー(ミクロス・ローザ)
銀の盃(フランツ・ワックスマン)
パッション(ジョン・デブニー)
大将軍(ジェローム・モロス)
エル・シド(ミクロス・ローザ)
バイキング(マリオ・ナシンベーネ)
グレート・ウォリアーズ 欲望の剣(ベイジル・ポールドゥリス)
最後の谷(ジョン・バリー)
炎と剣(フランツ・ワックスマン)
隊長ブーリバ(フランツ・ワックスマン)
シー・ホーク(エリック・ウォルフガング・コーンゴールド)
真紅の盗賊(リチャード・アディンセル)……これ、IMDbやallcinema onlineだと、音楽はウィリアム・オルウィンになってるんだけど?
パイレーツ・オブ・カリビアン(クラウス・バデルト)
海賊ブラッド(エリック・ウォルフガング・コーンゴールド)
冬のライオン(ジョン・バリー)
ヘンリー五世(パトリック・ドイル)……ケネス・ブラナー版
ヘンリー五世(ウィリアム・ウォルトン)……ローレンス・オリヴィエ版
クイン・メリー 愛と悲しみの生涯(ジョン・バリー)
エクスカリバー(カール・オルフ)……これ、ちょっと反則(笑)。
女王エリザベス(エリック・ウォルフガング・コーンゴールド)
トゥルーナイト(ジェリー・ゴールドスミス)
ロビン・フッドの冒険(エリック・ウォルフガング・コーンゴールド)
ブレイブハート(ジェームズ・ホーナー)
戦艦バウンティ(ブロニスラウ・ケイパー)
1492・コロンブス(ヴァンゲリス)
征服への道(アルフレッド・ニューマン)
ミッション(エンリオ・モリコーネ)
アラモ(ディミトリ・ティオムキン)……ジョン・ウェイン版
進め龍騎兵(マックス・スタイナー)
アラビアのロレンス(モーリス・ジャール)
ズール戦争(ジョン・バリー)
ラスト・サムライ(ハンス・ジマー)
栄光への脱出(アーネスト・ゴールド)
“Epics: The History of the World According to Hollywood” (amazon.co.jp)

ちょっと気になる『MW』の話

 手塚治虫原作の映画『MW』が現在公開中だそうな。
 映画そのものについては、プロットから同性愛の部分が完全にカットされたと知った段階で、興味ナシになってしまったので、映画そのものは未見です。ですからこの文章は、映画の内容を論じたものではありません。
 ただ、主人公二人が同性愛の関係にあるかという設定が、なぜ映画では排除されたのかという、その理由について、ちょっと気になる記事を読んだものだから、自分の考えを書いておこうと思った次第。

 その記事とは、こちら。
 週刊シネママガジン/玉木宏の同性愛描写、事務所はOKしていた 
 これによると、

 松橋プロデューサーは(中略)、出資者側から「ホモの部分を出すんだったら金は出せないよ」と言われてやむなく同性愛の描写ができなくなったことを明かした。
 実は玉木宏も山田孝之も、事務所側は同性愛の描写をOKしていた。岩本監督も撮影中は玉木と山田にホモを演じるように毎日のように話していたという。

 ……という事情があったんだそうな。
 う〜ん、作り手(プロデューサーや監督)も演じ手(俳優や所属事務所)も、原作と同じく、同性愛を映画の主要なモチーフとして取り上げたい気持ちがあったのに、出資者がそれを阻害した……ってのは、こりゃかなり根深い問題のような気がする。
 それに加えて、ここにはもっと深刻な問題も潜んでいる。これについては、後ほど詳述します。

 まず、なぜ「ホモの部分を出すんだったら金は出せない」という発想が出てくるのか。
 金にならない、という理由は考えにくい。日本でゲイ・マーケットを期待するのは、以前この記事の後半部分で論じたように、残念ながらあまり現実的ではないが、しかに日本にはゲイ・マーケットより遥かに大きい、やおいとかボーイズラブとかいった、流行り言葉で言えば「腐女子」マーケットがあるのだ。
 じっさい、現在のようにBLというものがオーバーグラウンドな存在ではなかった時代でも、『魔界転生』の沢田研二と真田広之のキスシーンは、マイナスイメージどころか、逆に宣伝になっていたように記憶しているし、『戦場のメリークリスマス』も、またしかり。まあ、いくら腐女子というものは「火のないところに煙を立てる」のが好きなのであって、あからさまに「狙った」ものは逆に萎える(らしい)とはいえ、それでも当代人気の二枚目スターが同性愛のシーンを演じるのだったら、見てみたいという人は多いだろう。
 では、逆に「ホモが出てくる映画は見たくない」層というのが、問題視されるほど多いのか、ということを考えると、これはそもそも「マンガ作品の映画化」なので、取りざたすること自体がナンセンスだ。当然ターゲットとされるであろう、原作マンガのファンが、「同性愛描写があるから見に行かない」なんてワケはないのである。
 そんなことを考えていると、どうしてもこれは、同性愛を扱った映画に出資することが、スポンサーとなる企業にとってマイナスイメージになる、と考えているのではないか、と疑りたくなる。だとすれば、これは立派なホモフォビアである。

 そう仮定すると、ここには問題点が二つある。
 まず一つは、ホモフォビアの存在そのものである。これ自体が、充分にゲイに対して差別的ではあるのだが、まあ、心の中でそう思っているだけで、表出しないでいるのなら実害はない。私が自分で望むと望まざると関わらずゲイであるように、世の中には、とにかくナンダカワカラナイけどゲイが苦手って人がいたって、別に不思議はないかもな、とも思うし。
 ただ、その「表出」というのが、第二の問題点であり、これが前述した「もっと深刻な問題」。
 というのも、残念ながら日本社会においては、ホモフォビアの存在そのものもさることながら、それが表出するのを止めるというストッパーも、ほとんど機能していないように思われるからだ。
 いささか小さな例ではあるけど、例えば松沢呉一さんの記事で知った札幌ラヂオ放送のWikipediaというヤツ。相手を貶めるつもりで「同性愛」という用語を使い(つまりホモフォビアの存在が見られる)、それをパブリックな場で平然と発信する(つまりホモフォビアの表明に全く躊躇がない)、という、二つの姿勢が同時に見られます。
 ホモフォビアを表明することに躊躇いがない、ということから、もうちょっと視点を拡げて、ゲイに対する無知や不見識、あるいは、意識的にせよ無意識的にせよ差別的な言動に対して、そもそもの発言者も、それを伝播するメディアにも、全くストッパーが働いていない例として挙げたいのが、ジャーナリストの北丸雄二氏が「バディ」誌上に書いた記事。
 内容は、日本のテレビドラマで男同士のキスシーンだか何だかを演じた俳優の、記者会見での言動とマスコミのとりあげ方について批判したものでしたが、日本の社会では、こういったことが一般常識レベルでは全く機能していないという、実に判りやすい好例でした。確か、ネット上でも同趣旨の記事を読むことができたような気がしたので、ちょっと探してみたんですが、残念ながら見つけられませんでした。リンク貼りたかったんだけどな。

 つまり、何が言いたいかというと、ホモフォビアの存在も問題だが、それを平然と公言してしまう、ということが、社会通念的にまかりとおってしまう、というのは、もっと大問題なのではないか、ということです。
 自分のホモフォビアやゲイ差別的な姿勢を、宗教組織内や思想団体といったクローズドな場ではなく、パブリックな場で平気で表明するということは、まるで「自分は人種差別思想の持ち主だ!」と胸を張って言っているのに等しい、大いに恥ずべき行為だということが、日本社会の共通認識としては全く機能していない。
 で、ようやく話を戻しますけれど、つまり「ホモの部分を出すんだったら金は出せないよ」という発言は、ホモフォビアの所産ではないかと疑われると同時に、それが問題視されずに平然とまかり通っているのなら、その状況自体が更に大問題だ、ということです。
 本来ならば、そんなことをすれば、それこそ企業のパブリック・イメージを損なうのが、社会のあるべき姿だというのに、現状ではそうはなっていない。それどころか、報道もそれを問題発言として取り上げていない。
 つまり乱暴に言うと、このことからは、日本の社会では、「個人(や企業)がホモフォビアを持つ(表明する)こと」を、「社会も容認している(問題視しない)」という、二重のゲイ差別が伺われるわけです。病巣としては、かなり根深いと言わざるをえない。

 記事では、この出資者というのが何処の誰なのか、具体的には書かれていませんが、これははっきりと公表すべきでしょう。それくらい、問題視すべき発言だと思います。出資者なんだからデカい会社のエラい人なんでしょ? だったら、発言にはそれなりの責任を負ってしかるべきでしょう。
 少なくとも私は、そんなスタンスの会社とか、そんな発言を平気でする人を重役として重用するような会社には、ビタ一文、自分の金は落としたくはないからね。
 政治家の失言とかだけじゃなくて、こういう問題も叩けよな、マスコミ……と思うけど、その肝心なマスコミ自体が、前述したように「無知で差別的であることを恥じないどころか隠そうともしない」状況、更に言えば「何が問題であるかすら気付いていない」状態なわけですから、また堂々巡りになっちゃう。

 まあ、そんな状況下でも

「日頃たまってるうっぷんをこの場を借りて晴らさせてもらうと、出資者には同性愛の描写はありませんよといいながらも、暗喩するように描いているんです。体をタオルで拭いてあげる2人の関係がゲイじゃなくて何なんでしょうか」

 ……と、精一杯の抵抗を見せたらしいプロデューサー氏には、まあその人なりの想いがあるんだろうけれど、しかし、『セルロイド・クローゼット』に出てきた映画の時代じゃあるまいし、21世紀にもなって、今さら「同性愛」を「暗喩」で描いた映画なんて……ねぇ。
 それどころか、《明示されていた同性愛を暗喩に変えて描く》という行為自体が、実はゲイに対して差別的なことなのだ、という自覚は、果たしてあるのだろうか、という疑問が持ち上がってくる。いくら「本当は隠したくなかった」んだとしても、同性愛を「意図的に隠して」描いている以上、それは結果として、前近代的の差別的な同性愛の扱い方と、何ら変わりはないのだから。
 まあ、私も作家の端くれだから、クライアントの意向は大きいというのは判るし、愚痴りたくなる気持ちも判るけど、だったら「同性愛というプロットが排除されたのは、出資者の意向だった」と言った後、「描けなかったけど暗喩云々」と言い訳めいたことを言うのではなく、ただまっすぐに胸を張って「でも、この映画の主人公は、原作マンガと同様に、同性愛関係にあるんです」と言えばいいのに。
 ついでに、主演俳優の方々も一緒に、「僕たちの演じた役はゲイです」と言ってくだされば、もっとヨロシイ。それがスポンサーを怒らせちゃうんなら、そこであらためて議論するなり戦うなりすればいい。
 それが、同性愛者に対して誠実である、ということだと思いますよ。

 まあ、こういった問題の病巣の根深さを、メジャーなレベルで明らかにした、という功績はありますけれどね。
 しかし同時に、発言者も報道者も、多かれ少なかれ同じ病根を共有している、ということまで見えてしまったのが残念でした。
 とりあえず、Gay Life Japanさんの記事など、幾つか物議はかもしているようなので、これをきっかけに、社会全体レベルで少しでも前進してくれるといいんですが……。

 あ〜あ、せっかく昨日、エジプト展のことを書いたから、それつながりで、今日は大好きなエジプトの歌をYouTubeで見つけたので、それを紹介しようと思ってたのに……。
 ま、それは明日にします。久々に長い論考を書いて、疲れちゃった(笑)。

最近DVDで見たTV映画あれこれ

 備忘録を兼ねて、最近見たB級作品のDVDの中で、色々と難はあれども、でも決して嫌いじゃないな〜、ってなヤツを幾つか。

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『ブレイブ・レジェンド 伝説の勇士ベオウルフ』(2007)ニック・ライオン
"Grendel" (2007) Nick Lyon

 見終わって相棒が一言。
「ホモを騙してやろうと思って、こんなジャケにしたんだね」
 とゆーわけで、こんなステキな肉体美は、映画の中では全く拝めません。主人公は確かにこの顔ですけど、衣装は最初から最後までフル装備、ヌードのヌの字も出てきませんでした(笑)。
 まあ、それは横に置いて、内容は叙事詩『ベーオウルフ』のグレンデル退治モノ。ジャケからはB級の臭いがプンプン漂ってきますが、確かにCGはショボショボで、スケール感も皆無。
 でも、ストーリのポイントが、シンプルな英雄譚に絞られているので、肩の凝らないヒロイック・ファンタジーとしては、そこそこ楽しめます。逆に、今どきこーゆーストレートな英雄譚を作ろうとするあたりが、却って新鮮だった。セリフまわしが、いかにもエピック風なそれだったりするのも楽しいし。
 前述のシャツすら脱がないベオウルフも、お顔はレイフ・ファインズから知性を抜いてジェイソン・ステイサムを振りかけた……みたいな、何とも地味で華のないタイプなんですが、それなりに無骨な魅力はあって、なかなか良きかな。フロースガール王は、ベン・クロス。あたしゃ別に、ファンでも何でもありませんが、何故かこのブログに出てくる頻度高し(笑)。
『ブレイブ・レジェンド 伝説の勇士ベオウルフ』(amazon.co.jp)

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『ゴーストハンター』(2007)マット・コッド
"Lost Colony" (2007) Matt Codd

 宣伝文句はアクション・スペクタクルみたいだけど、実際は地味系の怪異譚モノ。
 十六世紀、イギリスから新大陸アメリカに渡り、ロアノーク島に植民した開拓団177名が、忽然と姿を消してしまった……という、有名な実話(だそうです)を元にした内容。
 ネタの美味しさのわりには調理が下手で、見ながら「そこはもっとこうしろよ〜!」と言いたくなる部分が頻出だったんですが、時代物っぽい雰囲気は、低予算ながらそこそこ出ている感じ。もうちょいマトモな脚本と監督だったら、けっこう佳品になりそうなのに、勿体ないなぁ。
 まあ、こういう奇譚の類ってのは、真相が判らないから魅力的だったりゾクゾクするわけで、種明かしみたいなことをされても、却って魔法が解けて魅力半減、みたいになっちゃうので、いたしかたない部分はあるかも。正直、真相の解釈部分はイマイチだったけど、怪異譚の無情さに微かな救いをプラスした、ストーリーの方向性自体は好みです。
 主人公は、ちょいコリン・ファレル系のヘナチョコ顔で、けっこうタイプ(笑)。コスチュームもヒゲも、よく似合っています。ヒロインは、ヒラリー・スワンク似のブス(失礼)。
 いちおうホラーなので(ちっとも怖くないけど)、残酷系では、生きながらバケモノに手足をもぎ取られたりするシーンはあり。あと、全て着衣ではあるものの、主人公のボンデージと、悪役三人の首枷晒し刑のシーンもあり。
『ゴーストハンター』(amazon.co.jp)

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『ファイティング・アルティメイタム』(2005)ジェシー・ジョンソン
"Pit Fighter" (2005) Jesse V. Johnson

 これはTV映画じゃなくて、DVDスルーの劇場映画みたい。舞台はメキシコ。地下格闘場で闘犬のように闘っている、記憶喪失のアメリカ人ファイターの話です。
 主人公の正体と、フラッシュパックする記憶という謎を軸に、格闘場を主催しているマフィアとのいざこざ、主人公とコーチの間のバディ・ムービー的な関係などを絡め、更に、人種や経済的格差という要素や、宗教的なモチーフなども合わさって、けっこう重層的な面白さがあります。ただ、ラストに向けて、ちょっとさばききれていないのが残念。
 ファイト・シーンも、かなりの迫力。特に斬新という感じではないものの、アクションやバイオレンスの見せ方には、監督のこだわりが感じられる。ただ、これまたラストの銃撃戦がイマイチだったのが残念。
 あと、この監督(脚本も兼任)、ひょっとしたらマカロニ・ウェスタン好きなんじゃないだろうか。話に無理が生じている部分も、これがもしメキシコ革命時代を背景にしていたら、もっとしっくりくる感じだし、前述したバディものっぽい感じとか、破滅の美学を感じさせるエンディングとか、どうもマカロニ・ウェスタンっぽい香り(あんまり詳しくないですけど)があるような。
 主人公役のドミニク・ヴァンデンバーグというお方は、IMDbに”Free Style ‘Full Combat’ champion”とあるので、どうやら総合格闘技系の人らしいんですが、いかにもそんな身体つきの立派な筋肉。脱ぎっぷりも良く、ファイト・シーンを含め上半身裸のシーン多し。顔は、ちょいテレンス・スタンプっぽくて、さほど好みじゃないんですが、マッチョ+ヒゲ+スキンヘッド+タトゥーという合わせ技と、役柄が好みのキャラだったので、好感度がぐぐっとアップ。他の役者も、ヒゲ、強面、マッチョ、刺青……のオンパレードなので、これまたポイント・アップ(笑)。
 そんなこんなで、半裸のマッチョの血まみれ格闘好きなら、けっこう楽しめると思いますよ。
『ファイティング・アルティメイタム』(amazon.co.jp)

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『ドラゴン・スレイヤー 炎の竜と氷の竜』(2008)ピトフ
"Fire & Ice" (2008) Pitof

 同じ監督の『ヴィドック』が好きなので(あと『キャットウーマン』も、実はけっこう好き)ちょっと期待してたんですが、う〜ん、残念ながら「そこそこ」止まり。
 ストーリーは、ありがちな中世風ファンタジーです。炎の竜に襲われる王国を救うため、お転婆なお姫様が伝説の竜退治の勇者を探し、その息子と出会い……ってな内容。
「竜には竜を!」ってことで、炎の竜に対して氷の竜を目覚めさせ、二匹の竜を闘わせる……ってのが、まあオリジナル要素ではあるんですが、それと並行して語られる、王国を狙っている隣国との確執のエピソードが、オリジナリティもなければ面白いわけでもなく、しかも竜のエピソードと乖離しちゃっているのが痛い。
 ただ、SFXは前述の『ブレイブ・レジェンド 伝説の勇士ベオウルフ』なんかと比べると、ずっとちゃんとしているし、スケール感、セット、衣装なども、一定レベルはクリアしているので、全体の雰囲気は決して悪くない。
 そんな感じで、ウェルメイドなファンタジー映画としては、まあそこそこ楽しめる感じ。怪獣映画っぽい楽しさもあるし。
 ヒーロー役のトム・ウィズダムは、『300』でスパルタの青年兵士を演じていた人らしいですが、そう言われなきゃ判りませんでした(笑)。他には、ジョン・リス=デイヴィスやアーノルド・ヴォスルーなんかも出てます。
『ドラゴン・スレイヤー 炎の竜と氷の竜』(amazon.co.jp)

『アポカリプス 黙示録』

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『アポカリプス 黙示録』(2002)ラファエル・メルテス
“San Giovanni – L’apocalisse” (2002) Raffaele Mertes

 DVDのジャケはパニック映画みたいなノリになってますが、実際は地味でマジメな聖書モノ。
 新約聖書の「ヨハネの黙示録」絡みのTV映画なんですが、それをまんま映像化しているというわけでもなく、いちおうメインのストーリーは、別にあります。
 一世紀のローマ帝国、迫害を受けるキリスト教徒を支えていたのは、十二使徒の最後の生き残り、ヨハネからの手紙だった。ローマ側はキリスト教徒の精神的支柱を断つために、キリスト教徒側は救いを求めて、手紙の発信元であるパトモス島の監獄に、それぞれ使者と間者を差し向ける……ってのが、おおまかな流れです。
 で、その合間に、ヨハネが幻視する黙示録の光景や、ローマ人青年とキリスト教徒の娘の恋愛なんかが、描かれていく。

 映画オリジナルのドラマ部分に関しては、キャラクターさばきは上々だし、心理ベースのドラマを上手く使ったり、タイムリミットを使ったイベントで、クライマックスに向けて盛り上げたり……と、作劇的な工夫があって、けっこう面白いです。
 ただ、基本的に「キリスト教のPR映画」もしくは「信徒用の教育映画」なので、どうしても、非キリスト教徒には退屈な部分もあり。
 また、黙示録の視覚化という点では、これは期待しない方が吉。イメージ自体が、可もなく不可もなしといった感じの凡庸さだし、VFXも安っぽい。これだったら、ケン・ラッセルの『アルタード・ステーツ』(黙示録風の幻覚シーンがあります)の方が、ずっと上出来。
 史劇として見ると、話自体がいささか地味に過ぎるものの、セットや衣装、役者さんなどは、そこそこ佳良なので、それなりの雰囲気は味わえます。

 というわけで、まあ特にオススメという程でもないんですが、個人的には、けっこう「ツボ」な要素がありまして、まあ、特定趣味層限定なら、オススメできるかな、と。
 ……はい、もうお判りですね(笑)。

 まずこの映画、ほとんどパトモス島の監獄(っつーか、強制労働キャンプ)の中だけで、話が進むんですな。
 つまり、薄汚れた半裸の男どものが、汗まみれヒゲぼうぼうで、鎖に繋がれてウロウロして、虐待されているシーンが、延々と続く(笑)。
 で、ご期待(誰のだよ)通り、責め場もちゃんとあります。
 フロッギングと
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 ケイニング。
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 特に、後者の被虐者はこーゆー感じでツボのタイプなので、かな〜り得した気分(笑)。
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 あと、ヨハネが幻視するキリストの笞刑や磔なんかもあるし、
ま、私と同じ趣味をお持ちの方だったら、お楽しみ要素もイロイロあるのではないかと(笑)。
『アポカリプス 黙示録』(amazon.co.jp)

“1612”

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“1612” (2007) Vladimir Khotinenko
 前にここここで触れた、ロシア製大作史劇。制作はニキータ・ミハルコフ。
 先日アメリカ盤DVDが出たので、購入して英語字幕付きで鑑賞。これでようやく、どういった話だったのかが判りました(笑)。
 とはいえ、それでも私の英語力では、まだかなり難かしくて……例えば、映画のイントロからして、こんな感じです。
 1604年、逃亡修道士グレゴリー・オトレピエフは、イヴァン雷帝の遺児ドミトリー1世を僭称し、ポーランド王ジグムント3世の後ろ盾を得て、ロシア皇帝(ツァーリ)ボリス・ゴドゥノフに反旗を翻す。
 この、偽ドミトリーは、ロシア正教ではなくカトリックを奉じていた。そしてローマから、偽ドミトリーを支援し、同時にロシアへの布教を狙って、ポーランド人神父アントニオが遣わされる。
 翌1605年、ボリス・ゴドゥノフが急逝し、その妻と息子は、ポーランド軍によって惨殺される。
 偽ドミトリーはモスクワに入城し、ロシアを支配下に収めるが、暴政によって人々の反感を買い、わずか一年にしてツァーリの座を追われてしまう。人々は、偽ドミトリーの遺体を焼き、骨を砕き、大砲に詰めて西の空(ポーランド)に発射する。
 こうして、ロシアが混迷を極める中、1610年、新たなツァーリとして、ポーランドの王子で、やはりカトリックのヴワディスワフが即位する。
 しかし、この新ツァーリはロシアへは赴かず、戴冠式も玉座が空のまま執り行われる。見物人の一人が、この空虚な戴冠式と、非ロシア正教徒をツァーリとして戴くことに異を唱えるが、すぐに警備のポーランド兵に捕らえられてしまう。
 祝いの鐘が打ち鳴らされ、祝砲が打ち鳴らされる中、異を唱えた男は舌を切り落とされ、ロシアの人々の上には、空の玉座とポーランド軍が君臨する……。
 ……といった背景説明が、約10分のアヴァンタイトルで一気に説明されるもんだから……いや、字幕のスピードが、速いこと速いこと(笑)。一回見ただけじゃ、30%くらいしか理解できませんでした(笑)。
 でも、いざ本編が始まると、モノガタリの中心には、少年時代にポーランド軍に家族を殺された主人公が、鎖に繋がれた農奴の身でありながらも、知恵と度胸と運命の偶然によって、やがては歴史の転換に重要な役割をもたらす人物になる……といった骨が一本通っているので、これは単純に娯楽作的に面白いです。
 キャラクターも、ハンサムで頭のいい主人公を筆頭に、その親友であり、コメディ・リリーフ的な役割も担うコサック青年、ボリス・ゴドゥノフ一族の唯一の生き残りでありながら、今は政治的道具としてポーランド軍と行動を共にしているクセニヤ皇女、そのクセニヤを支配し、同時に主人公の家族の仇でもある、ポーランド軍のコサック首長、主人公に運命の転換をもたらすスペイン人傭兵……と、魅力的な面々が揃っています。
 ただ、モノガタリの構成要素は、かなり複雑です。
 まず、イントロ部分に象徴されるように、ストーリーを構成するグループの数が多く、かつ、それぞれの立ち位置が複雑なんですな。描かれるテーマも、自由、戦争、民族、宗教、愛、etc……と、多岐に渡るし、世界観も、正義や悪といった単純なものではない。
 こういった、多彩な要素が渾然一体となって、骨太の大河ドラマになっているという印象なので、近作で言うと『キングダム・オブ・ヘブン』に近い感じ。恋愛の描き方が「オトナ」なのも、それっぽいし、そういえば主人公の顔も、ちょっとオーランド・ブルームに似てるかも。
 ただ、『キングダム・オブ・ヘブン』が、シリアスな歴史劇に徹していたのに対して、この”1612″は、そういった要素もありつつ、もっと軽い痛快娯楽系の要素もあり、更には、ちょっとファンタジーが入った伝奇系の要素もあったりします。
 これだけ盛り沢山だと、大いに見応えがある反面、いささか盛り込みすぎのきらいはあって、尺は2時間半近くあるけど、それでもまだ足りない。3時間は欲しかったかなぁ。
 でも、退屈するどころか「もっと見たい!」と思ったんだから、やっぱすごく面白かったわけで。
 前述したように、キャラクターに魅力があるし、役者さんたちもいい。モノガタリも、フィクション的な明快なカタルシスと、リアリズム的な冷徹さが、いい塩梅で共存している。
 見せ場も、前に紹介したときに書いたように、とにかく、スペクタクル的に最大の見所のナヴァロク(……でいいのかな? 英語でNavalok、露語でНаволок)攻城戦(前回これを「モスクワ」と書いちゃってるあたり、自分がいかに内容を理解できていなかったかが偲ばれます)は、物量、展開、迫力、モノガタリ的な高揚感と、ホントここだけでも見る価値あり。
 美術や衣装も100点満点、映像表現的にも、美麗な詩情あり、手加減なしの残酷ありで、そのどちらもがハイ・クオリティ。
 というわけで、個人的には大満足。
 劇場公開は、もう諦めてますから、何とか日本盤DVDだけでも出して欲しいもんです。
 でも、先日の“Stara Basn”(THE レジェンド 伝説の勇者)に続いて、これまた待望していた、ジェラルド・バトラーの“Attila”(覇王伝アッティラ)や、はたまた、前にここで紹介した“Pathfinder”(レジェンド・オブ・ウォーリア 反逆の勇者)も、日本盤DVDが出る(どれもウムムな邦題ばっかだけど……)ようなので、この”1612″も、望みがゼロってわけじゃないですよね、きっと。
“1612” (amazon.com)

ちょっと宣伝、映画『バサラ人間』公開中です

 いつもお世話になっている、ポット出版(拙著『禁断作品集』『君よ知るや南の獄』『日本のゲイ・エロティック・アート』等の版元さんです)の沢辺さんから、映画『バサラ人間』のご案内をいただきました。
 いや〜、主演の団時朗さん、お年は召されたけど、カッコイイわぁ。あたしゃ『帰ってきたウルトラマン』をリアルタイムで見てた世代だけど、今の方がずっとタイプです(笑)。
 とはいえ、私は映画を見ていないので(一ヶ月前から、仕事で外出もままならないカンヅメ状態で、更にそれがまだ、あと一週間は続くのだ……やれやれ)、以下はいただいたメールからの引用です。

ポットが社運をかけて製作した映画「バサラ人間」の公開が始まっています。
4月17日金までです。
今回は、沢辺を助けると思って、ぜひ見に来てください。
ポット出版ではこの映画にあわせて、
「映画「バサラ人間」」と「山田広野の活弁半生劇場 活弁映画監督のつくりかた」の二冊を発行しました。
現在、渋谷・ユーロスペースにてレイトショー公開しています。
(21:10〜、1時間17分+活弁映画8分)
「ぴあ映画満足度ランキング」でも10位に入っています。
http://www.pia.co.jp/cinema/ranking.html
映画は、
孤高のイラストレーター・長尾みのる原作、
『イラストーリー バサラ人間』(1969年刊)を、
活弁映画監督・山田広野が初のトーキー映画にしたものです。
69年ころのヒッピー/フーテン、学生運動などを背景に、新宿を舞台にした、サイケデリックでレトロフューチャーな映画です。
30歳代の山田監督が、69年ころに引きつけられて作ったものです。
主演は、団時朗(『帰ってきたウルトラマン』主演・郷秀樹役)
仲村みう(2006年ミスヤングマガジン)
他には野上正義/根岸季衣/螢雪次朗/演劇実験室◎万有引力/デリシャスウィートス/飯島洋一といった渋い役者さんたちが脇を固めています。
音楽は、寺山修司の天井桟敷から活躍している、J・A・シーザー。
毎晩、山田広野監督の活弁映画も2本(約8分)同時上映します。
ポット出版でも特別鑑賞券(1,400円)の郵送販売(郵便振替用紙を同封いたします)しています。
どうぞお気軽にご注文下さい。
◎映画「バサラ人間」
http://basaraningen.com/
◎ユーロスペース
http://www.eurospace.co.jp/
◎チケット販売について
http://www.pot.co.jp/news/basara_ticket.html
◎「バサラ人間」公開記念対談シリーズVol.1●山田広野×飯島洋一
http://www.pot.co.jp/news/basarataidan1.html

マニア向け500円DVD、二本立て

[amazonjs asin=”B007PLSIC4″ locale=”JP” title=”空軍大作戦 CCP-191 DVD”]
本屋やディスカウントショップで良く見かける500円DVDで、『空軍大作戦』を購入。プロパガンダ・アニメーションだというから、何となく面白そうだと思ったんだけど、再生してみたら、ディズニーの『空軍力の勝利 (Victory Through Air Power)』でした。
 オリジナルはカラー作品ですが、このDVDはモノクロ版。とはいえ、おそらく制作の時点で、カラーとモノクロ両方の上映を前提にしているんでしょうね。明度設計がしっかりしているので、モノクロ映画として見ても、特に違和感はありませんでした。ただ、YouTubeにあるカラー版の予告編を見ると、やはり色が付くと、画面の力がまたいっそう増しているのが判りますし、アメリカではカラー版DVDも出ているみたいです。
 内容はともかくとして、表現面だけに絞って言えば、飛行機の歴史をカートゥーン調で判りやすく、かつ楽しく説明してくれる前半部分、第二次世界大戦(つまり制作当時)の世界情勢や軍事戦略を、三次元的なデザイン表現で見せる中盤、戦争に勝利するための方針提案を、まるで「空想化学兵器大図解」といった味わいで見せる後半、そしてクライマックス、日章旗が化けた大ダコ(つまり日本) VS 白頭鷲(つまりアメリカ)の「怪獣大決戦」と、大いに面白く見応えあり。
 内容的には、所詮プロパガンダ映画なので、それ相応の不快さがあります。こういった思想の上に、無差別爆撃や原爆の使用が正当化されたのかと思うと、それはそれで興味深いことではありますけれどね。
 ただ、ドラマ仕立てではなく、ドキュメンタリー的&データ的な見せ方の作品なので、プロパガンダにしては、まだ客観性がある方かもしれません。戦意昂揚を煽る要素はあっても、情緒面を刺激して戦争を正当化したり、正義や悪といった概念があまり目立たっていないのが救いでした。
[amazonjs asin=”B0013APBNM” locale=”JP” title=”地下拷問室 3PEOH22DVD”]
 このテのワンコインDVDといえば、以前雑誌の編集後記とかで紹介したことのある、個人的にけっこう好きな映画『地下拷問室』が、いつのまにか500円DVDで出ていました。
 映画の内容は、女が男を地下室に監禁して、パンツ一丁の裸で椅子に縛り付け、延々拷問するってだけの話です。
 ものすごく低予算……ってか、ほとんど自主制作映画という感じなので、過度の期待は禁物ですけど、トイレに行かせてもらえない男が、パンツ越しに失禁しちゃうシーンとか、ケツにむりやりディルドを突っ込まれて、強姦被害者の気持ちを体験させられるシーンとか、目隠しをされてスプーンで口に入れられたものを当てるゲーム(SM好きなら御期待どおりのモノを、いろいろ喰わされる)とか、個人的にはけっこうそそられるシーンがあるんですよね(笑)。
 後半は、猟奇風味が増していくんですけど、そちらもアイデア的には、なかなか面白いもの多し。ただ、前述したような低予算モノなので、見せ物としてのスゴさは期待しちゃダメ。そーゆーダイレクトな過激さをお望みなら、素直に『SAW』シリーズとかをご覧になった方がヨロシイかと。
 男責め的な見所以外では、全編に漂うイカニモ実験映画風のアングラ臭とか、観念的な展開とか、ほんのチョイ役でパム・ホッグが出てるとか、好きな人だったら、そこそこツボを刺激される要素もあり。
 この紹介文を読んで、惹かれるモノがある方だったら、500円だし、けっこうお得だと思いますよ。なんせ、前に私がコレ買ったときには、4935円もしたんだから(笑)。