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フランスの企画展“AMOUR ÉGALITÉ LÉGALITÉ”に参加

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 フランス、パリで開催される企画展“AMOUR ÉGALITÉ LÉGALITÉ: Exposition d’oeuvres d’art pour la liberté d’aimer”に、描きおろし新作1点と旧作数点を出品します。
 企画展タイトルの意味は『愛・平等・合法』で、同性婚合法化を控えたフランスで、最近では反対活動なども活発化している、marriage equality(婚姻の権利の平等)をテーマにした内容となっています。

 参加作家は私の他、私が知己があったり作品を知っている作家では、キャプテンベアー(コスプレの人なのでおそらく写真かと)、アレックス・クレスタ(写真家)、フル・マノ(刺繍でゲイ・アートを制作する作家)、ニコラ・マーラウィ(私が見たことある彼の作品はアブストラクトなペインティング)など。
 他にゴロヴァック(?)、シロンブリア(?)といった名前が挙がっていますが、ちょっと判らず。
 場所は私がいつもパリで個展をしているArtMenParis
 会期は2月5日〜12日。ドア・オープンは14:00〜18:00(要予約)。オープニング・パーティは5日の16:00〜22:00。
 この企画展のFacebookイベントページはこちら

 私自身は、新作を送る&預けてある旧作を展示という形の参加なので、残念ながら現地へは行けませんが、パリおよびフランス在住の方、期間中に訪仏の方など、いらっしゃいましたら是非足をお運びくださいませ。
 出品する新作は、こちらになります。
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“Amour Égalité Légalité” (2013) 〜楮和紙に毛筆と墨、朱墨、金色墨汁、銀色墨汁

“La Mission”

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“La Mission” (2009) Peter Bratt
(米盤Blu-rayで鑑賞→amazon.com

 2009年のアメリカ映画。サンフランシスコのミッション地区に住む男根主義的なチカーノの父親と、高校生でゲイの息子の確執を、音楽たっぷりに描いたヒューマン・ドラマ。
 監督ピーター・ブラット、主演ベンジャミン・ブラット。

 サンフランシスコのミッション地区に住むメキシコ系移民チェは、かつてはアルコール依存症だったが現在は社会復帰し、トロリーバスの運転手をしている。彼は地域で一目置かれる親分的存在で、週末は仲間と一緒に、リストアして飾り立ててたローライダー車を連ねて街を流すのが習慣だった。
 チェの妻は早くに亡くなっていたが、一人息子で今は高校生のジェスがいて、真面目で成績も良い息子のことをチェは誇りに思っていた。しかしジェスは実はゲイで、同年代で富裕層の白人のボーイフレンドと付き合っていた。
 とある週末、チェはいつものように仲間と街を流しに行き、その間ジェスはBFと一緒にカストロ地区のゲイクラブへと踊りに行く。しかし翌朝、ゲイクラブで記念に撮られたジェスのポラロイド写真を、チェが見つけてしまう。
 チェはジェスを殴りつけ、そのまま殴り合いになったところを、隣人でウーマン・シェルターに勤務している黒人女性がようやく取りなす。しかしチェはジェスに「家から出て行け!」と怒鳴り、ジェスはそのまま叔父夫妻の家に身を寄せることになる。
 やがて弟(ジェスの叔父)や黒人女性の説得もあり、チェはジェスを再び家に迎え入れ、息子の同性愛についても何とか理解しようとするのだが、自身が敬虔なカトリックということもあり、どうしてもそれを受け入れることができない。
 そんな中、ジェスと同じ高校に通うチカーノ・ギャングの男子学生が、かつてチェにトロリーバス内でマナーを咎められたことを根にもって、ジェスがゲイであることを学校内で言いふらす。
 ジェスは、友人のサポートもあってそれに絶えるのだが、父親との関係は依然ぎくしゃくしたままで、そこにやがてある事件が起き……といった内容。

 なかなか丁寧に撮られた作品。
 キャラクターの心情を生活感のある細かなエピソードで、1つ1つじっくりと描いて積み重ねていき、それが同時にチカーノ・コミュニティ内の風俗描写ともなり、更にソウル、ファンク、ヒップホップ、メキシコ先住民音楽から、インドの瞑想音楽まで、様々な音楽が劇中でふんだんに流れるというもの。
 ただ、丁寧に撮られている反面、いささか冗長な感はなきにしもあらずで、このモチーフで2時間近くというのは、正直ちょっと長すぎの感はあり。出来事を最初から順番に追っていく撮り方なのだが、ここはもうちょっと構成に工夫して、全体をタイトに引き締めた方が良かったんじゃないかなぁ。
 とはいえ、ストーリーや描かれるエピソード自体が面白いので、見ていて退屈するということは全くなく、またローライダー改造車を巡る文化とか、メキシコ先住民文化を受け継ぐ民間信仰的な宗教描写とか、目新しいものがあれこれ見られるので、全体的にはとても楽しめる出来。

 ゲイ描写に関しては、あくまでもフォーカスは息子がゲイであることを受け入れられない父親の方にあるので、ゲイ文化自体に関してはさほど描写はなし。
 しかし、自分がゲイであることを受け入れてくれない父親との確執や決断、愛するBFとの関係描写、周囲の人々によるサポートといった、息子を軸としたゲイ回りのドラマも、前述したようなディテール描写の豊かさもあって、やはり見ていて面白いし描かれ方も気持ち良い。
 また、単にゲイという要素だけではなく、そこに人種や格差の問題が絡んでくる(つまりワーキングクラスのチカーノであるチェやジェスに対して、ジェスのBFはアッパークラスの白人なので、それが尚更チェを意固地にしてしまう側面がある)のも、ドラマの要素として興味深くて佳良。

 役者陣も、メキシカンなヒゲにスジ筋ボディ&全身刺青というチェを演じるベンジャミン・ブラットと、大きな黒目が印象的なジェスを演じるジェレミー・レイ・バルデスの二人を筆頭に、隣人の黒人女性、チェの弟とその美人妻、ローライダー車の仲間たち、ジェスの友人である太っちょのネイティブ・アメリカン青年など、メインから脇に至るまで実に魅力的な面々が揃っている。
 映像的には、音楽(や歌詞の内容)を上手く使った印象的なシーンが多々あり、ここも大きな見所の1つ。
 エンディングの余韻も心地よい。

 こういう感じで、モチーフに興味のある方だったら、まず見て損はない内容かと。
 男根主義の父親とゲイの息子の確執というテーマに興味がある方にはもちろん、チカーノ文化に興味がある方や音楽好きの方にもオススメの一本。

“Vampires: Brighter in Darkness”

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“Vampires: Brighter in Darkness” (2011) Jason Davitt
(アメリカ盤DVDで鑑賞→amazon.com、イギリス盤もあり→amazon.co.uk

 2011年制作のイギリス製テレフィーチャー。マッチョ系ゲイ・ヴァンパイアもので、いちおうシリーズ化の予定らしく、続編は”Vampires: Lucas Rising”となる模様。
 どんな内容かというと、一言で言えば……すっげー中二病でした(笑)。

 紀元500頃、古代ローマの軍人ルーカスは仲間と共に、永遠の命を求めて東欧の某所を訪れる。そしてそこでヴァンパイアの女王と出会い、首尾良く自分もヴァンパイアになる。
 それから1500年後、イギリスに住むゲイの青年トビー(美味しそうな身体+タトゥーの、犬系カワイコちゃん、ヒゲ付き)は、姉のシャーロットが仕掛けたブラインド・デートに出掛けるが、その相手がヴァンパイアのルーカス(ハンサム&ノーブル系、ちとワイルド、身体良し、ヒゲ付き)だった。
 トビーは自分のためにレストランを丸ごと貸し切りにしたルーカスにちょっと引きつつ、それでも彼に惹かれるが、「ホテルの部屋に来ないか」というお誘いは、今日のところは淑女らしくお断りする(ゲイだったら、ここは直行すると思うけどw)。
 またの再会を約束してルーカスと別れたトビーだったが、自宅の前まできたところに、シュッと目にもとまらぬ早業でルーカスが現れる。どうしてここにいるのとうろたえるトビーに、文字通り目を光らせて「君が好きだ、中に入れてくれ」と迫るルーカス。
 催眠術にかかったように(って実際に術にかかってるわけですが)ルーカスを家に入れてしまうトビー。そこでまた目を光らせてトビーに迫るルーカス。最初は嫌々していたトビーも「俺が欲しいんだろ?」と迫られ、結局「欲しい」と返事。お互いのシャツを激しく剥ぎ合い、ソファーに倒れ込み、荒々しく互いの身体をまさぐるうちに、ルーカスが「シャーッ!」と牙を剥きだして、トビーの首筋にガブリ。哀れ血を吸われて意識朦朧となるトビー。
 そこにドアを激しく叩く音。何とそこには、もう一人のルーカスがいた! どーゆーこと???
 実はトビーの血を吸っていたのは、ルーカスに化けた仲間の吸血鬼アンソニーだったのだ! 玄関で「僕を招きいれてくれ、トビー!」と叫ぶルーカス。朦朧としながら「入っていいよ」と答えるトビー。途端、ルーカスは部屋内に突入、トビーからアンソニーを引きはがす。
 しかし血を吸われたトビーは哀れ虫の息。そんなトビーの命を助けるために、ルーカスは自分の血を飲ませる。邪魔をされたアンソニーは逃走。やがて意識が戻ってパニックるトビーに、ルーカスは全て説明する(…ってもヴァンパイアの血を飲めば、その主のライフ・ヒストリーが判るという便利な設定なんですがw)
 トビーは自分がヴァンパイアになっちゃったことにショックを受けるが、でもまあルーカスのことを愛しているし(いつから???)すぐ興奮して牙出して「シャーッ!」ってやっちゃうけど、でも空中浮揚とかもできるようになったし、これはこれで悪くないかな、と納得(いいのか?)。
 というわけで、二人はもっとカジュアルでオシャレな服に着替えて(さすがゲイ)、夜の街にデートに繰り出す。デートといってもゲイクラブに行くとかじゃなく、超人的な身体能力を活かして屋根の上をピョンピョン、満月の下でロマンティックにキスといった塩梅。
 しかしその頃、ルーカスが仲間の承諾なしに勝手にトビーをヴァンパイアにしたことを、アンソニーやもう一人の仲間マーカスは問題視していた。更に彼らヴァンパイアの元祖である女王は、地獄(だか何だか)の扉を開けて、世界を破滅させヴァンパイア天国にしようとしていた!
 ここはお約束通り、世界破滅計画には荷担しないことにしたルーカス。ヴァンパイアの女王は招集を拒否したルーカスを裏切り者と決定。一方トビーは、ヴァンパイア化して数時間にも関わらず、恐るべき潜在能力を発揮。
 果たして世界は滅亡から救われるのか? ……ってな内容。

 実はこの後まだまだ、ルーカスが飛行機の屋根に乗ってエジプトへ行き、古代エジプトの元祖ヴァンパイア(神殿に鎮座しアヌビス神を侍らせながらも、なぜかイヤホンでヒップホップを聴いているというモダンっ子)に指導を仰ぎに行くとか、トビーの元彼が彼のことを忘れられず、家に強引に押しかけたときにアンソニーに攫われてしまい、そして結局その元彼もヴァンパイア化し、クライマックス直前あたりでは、もうゲイのヴァンパイアたちの痴話喧嘩の様相を呈してきたり、何の伏線もなく「古の錬金術師が作った《生きていて血を滴らせる石・ブラッドストーン》」だの、強大な力を持つ偉大な魔女だの、女神ヘカテだの、巨大サソリだの、トビーとルーカス危機一髪の時に唐突に昔なじみのサキュバスが現れて加勢するだの、もうトンデモ展開の目白押し(笑)。
 そんなこんなでツッコミ出すときりがない、全編通じて中2病フルスロットル!
 もちろん「実は××が巨大な力を秘めていて、後になって覚醒する」という定番展開なんかももありましてよ!
 いやぁ、笑った笑った(笑)

 とはいえ、なんか作り手の《愛と情熱》を激しく感じるので、ひどい出来っちゃあそうなんだけど、個人的にはかなり好きです。低予算なのは丸わかりだけど、でもその中で頑張っているのは伝わってくるし。
 あと男優陣(基本的に全員ヴァンパイア)が、なかなか上玉を揃えていて、演技力はともかくルックは全員悪くない。ちゃんとトビーは可愛く、ルーカスは格好良く見えるし、体育会系のアンソニーもなかなか。
 反面、女優はひどいんですけど(笑)。やっぱゲイが作ってるから、女はどうでもいいのかしら(笑)。
 ゲイ的にセクシーなシーンだと、トビーとルーカスが一緒にシャワーを浴びながら、互いにガブガブ噛み合い(笑)、肌を伝う血を舐め合うなんてのは、けっこう上手く撮られていて、あー基本的にはここが撮りたかったんだろうなぁという感じ。だったら下手な色気ださずに、もっとこぢんまりした話にすりゃいいのに……という気もしますが(笑)。ヴァンパイアの女王の世界征服のせいで、話がシッチャカメッチャカになっちゃってるので(笑)。
 あと、とにかく考えなし&唐突に話がどんどん進んでいくので、2時間もあるのに余分なことをしている余裕がなく、結果的に展開が早くなっているのも佳良。正直、演出自体(撮影もね)はへっっったくそなんだけど、でも飽きはしないという。
 特撮系も、この手の作品にしては頑張っている方で、クリーチャーも何種類か出てくるし(とはいっても俳優と絡んでアクションとかは殆どないんですが)、デジタル合成なんかも駆使していたり。
 まぁ、牙が突き出たヴァンパイヤ入れ歯のせいで、役者さんの滑舌が悪くなっちゃって、なんか喋りがモゴモゴしてヒアリングするのが大変だったとか、あと何かっつーとヴァンパイア同士が、その牙を剥き出して「シャーッ!」「シャーッ!」と威嚇し合うのが、なんかネコの喧嘩を見てるみたいで、その度に笑っちゃったりはするんですけど(笑)。

 というわけで、作品の出来自体は決して褒められたもんではないにも関わらず、それでも変なDVDスルー映画やVシネの「たりぃ〜、まだやってんの〜、さっさと終わんねぇかな〜」とは無縁で、ぶっちゃけ個人的にはかなり楽しめました。続編を作る気マンマンで、唐突に《引き》で終わるラストも爆笑だったし(笑)。
 そんなこんなで、好きだわぁ、これ! でも、トラッシュ趣味のない相棒は、横で退屈して居眠りこいてましたし、万人にはオススメいたしかねますが、予告編でピンときた人なら、タップリ楽しめるはずです。

選挙の前に考えておきたいこと

 今朝ツイッターで、自民党の日本国憲法改正草案に始まる諸々について、主にLGBT視点からの所感をツイートしたので、補足を交えてそれをまとめておきます。

 ここにあるQ&Aとは、『日本国憲法改正草案 Q&A/自由民主党 (PDF)』のことです。以下、該当部分を引用。

 また、権利は、共同体の歴史、伝統、文化の中で徐々に生成されてきたものです。し たがって、人権規定も、我が国の歴史、文化、伝統を踏まえたものであることも必要だ と考えます。現行憲法の規定の中には、西欧の天賦人権説に基づいて規定されていると 思われるものが散見されることから、こうした規定は改める必要があると考えました。(Q13)

 そして私の所感。

 現在のアフリカの話については、情報が周知されているとは言えないので、参考としてカメルーンナイジェリアウガンダの実例を挙げておきます。そしてもう1つ、サンクトペテルブルグのLGBTオープン化禁止から活性化している現在のロシアの状況も。
 以上を踏まえての拙ツイート。

 上記記事の参考リンク→レインボープライド愛媛(性的マイノリティ政策アンケート
 そして併せてこちらも→毎日新聞/衆院選:ジェンダー政策 各党の違い浮き彫り(『性的マイノリティーへの差別・社会的排除をなくす』については、自民のみ『どちらかといえば反対』と回答)
 そして、なぜ現状の差別や人権侵害の有無だけではなく、将来的な展望も含めて考える必要があるかという意味でツイートしたのが、こちら。


【追記】ブログ人サービス終了に伴い、上記ツイート中のリンクは切れています。現在のリンクはこちら→https://www.tagame.org/jblog/?p=1753


 なぜ「起こってからでは遅い」と強調しているかというと、前述の拙ブログ記事「『タブウ』およびヴァルター・シュピース追補」後段に、詳しく理由が書いてありますが、それに対抗しうる政治力を日本のLGBTは持っていないからです。
 先ほどのツイートに対していただいたご意見の1つ。

 これに関しては、前出の『自民党憲法草案の条文解説』からの、以下の引用をご参考に。

1 憲法とはなんだったのか
 憲法は、法律ではありません。近代憲法は、国家権力を制限し人権を保障する法、要するに国民が国家に遵守させる法と考えられてきました(それを立憲主義というのが一般です)。少なくとも日本国憲法はそうなっています。
 今回の草案は、そうした従来の意味での憲法ではありません(そのことについてどう考えるかは自由です)。
 つまり、国民が憲法尊重義務を負い(102条1項)、人権衝突とは別個の概念である「公益又は公の秩序」(12条後段、13条後段、21条2項等)による人権制限が正当化され、「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚」(12条後段)することが要求され、前文冒頭の主語が国家になっているなど、国家から国民への法へと変容を遂げているのです。

 再び、私の所感です。

 繰り返しますが「現状ではどうこう」ということではありません。現状のことであれば現実問題として、具体的な対処を色々と考えるべきでしょう。
 そうではなく、将来的にどういった思想に基づいた政治が運用されていく可能性があるのか、そこを考えることが重要だと思います。
 例えば、いささか乱暴かもしれませんが、この自民党による日本国憲法改正草案によれば、前述したロシアで起きている「ゲイのオープン化(権利を公に主張したり、可視化のためのパレード等を行うこと)を禁止する」ことは、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」(第二十一条抜粋)として正当化されるわけですから。
 もう1つ、前出のHuman Rights Watchの声明に見られる、石原慎太郎の発言「テレビなんかにも同性愛者が平気で出るでしょ。日本は野放図になり過ぎている」は、ロシアの「ゲイのオープン化禁止」と同じ発想であり、そういう人物が「憲法改正で自民に協力も」と発言していることにも注意しておきたい。
 以上、選挙権をお持ちのLGBTの皆さん(そしてもちろんLGBT問題に感心のあるヘテロの皆さん)には、こういったことを是非ご一考願えればと思います。

『英雄の証明』

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『英雄の証明』(2011)レイフ・ファインズ
“Coriolanus” (2011) Ralph Fiennes
(日本盤Blu-rayで鑑賞→amazon.co.jp

 2011年のイギリス映画。シェイクスピアの悲劇『コリオレイナス』を、舞台を現代に置き換えて描いたもの。(でも個人的には、後述するようにホモソーシャル/ゲイ映画として楽しめた一本)
 監督・主演レイフ・ファインズ、共演ジェラルド・バトラー、ブライアン・コックス、ヴァネッサ・レッドグレーヴ。

 ローマ(という名前の現代の都市国家)の軍人マーシアスは、敵国の猛将オーフィディアスを打ち負かし、都市コリオライを陥落させた武勲により、救国の英雄として「コリオレイナス」の称を受ける。
 コリオレイナスは、政治的野心を持つ母親の意に沿うために、執政官選挙に出馬して人々の支持も得るが、その権力に危機感を抱く政治家とマスコミ、そして彼らに煽動された市民たちによって、潔癖で激昂しやすい気質を逆手にとられ、追放刑に処せられてしまう。
 こうしてコリオレイナスは、故国に裏切られた怒りと絶望を抱えながら、独りローマを追われるのだが、その向かった先は仇敵であるはずのオーフィディアスの元であり……といった内容。

 瑕瑾がないとは思わないけれど、見応えは大いにあり。
 舞台を現代に置き換えたのは、内容の普遍性をより明確に浮かび上がらせるという点で効果絶大。ただし浅学にして原典を良く知らないので、どの程度のアレンジや変更があるのかまでは判らず。
 英雄的な軍人であり、ある意味で高潔でもある「孤独な竜」と称される主人公像(ちょっとニーチェ的)と、衆愚として描かれる民衆などは、色々と異論もあるかとは思うけれど、理想主義と現実主義の相剋といった命題や、護民官をマスコミに置換することによって描出される社会的な普遍性などは、個人的には実に興味深し。
 表現面は全編ドキュメンタリータッチで、概してそれも効果的ではあるものの、それでも芝居的な見せ場になると、やはりシェイクスピア的なセリフ廻しとニュース映像的なリアル感が、いささか齟齬が生じている部分があるのは否定できない。
 また全体を通じて、見せ場的な華に乏しい感があり、役者の演技で何とか保ってはいるものの、エモーションが揺さぶられにくい部分があるのも事実。
 映像としての動的な見せ場が、前半の市街戦に集中してしまい、後半部にそういった要素がなかったのも残念。
 演出意図に基づくものなのか、予算の関係なのか判りませんが、いずれにせよ後半の進軍・戦争・破壊といったプロセスを、セリフだけではなくしっかり映像でも見せた方が、映画としては全体が引き締まったのではないかという気がします。

 個人的に大いに興味を惹かれたのは、コリオレイナス(ファインズ)とオーフィディアス(バトラー)という、ライバル同士である二人の軍人の関係を描いた部分。
 この部分がもう思いきりホモソーシャル色が濃厚で、ある意味、オーフィディアスがコリオレイナスに片思いしているゲイ映画として解釈したくなるくらいでした。何しろジェラルド・バトラーがレイフ・ファインズを抱きしめて「俺は今、新妻を部屋に迎え入れた時よりも心が躍っている!」とか言っちゃうんだもん(笑)。
 そして、そのバトラーの《恋敵》に当たるのがコリオレイナスの母で、これがまた父性と母性を同時に持ち合わせているかのような魅力的な人物なんですが、それを演じるヴァネッサ・レッドグレーヴの見事さといったら、大女優の貫禄ここにありという感じで、いやもうホント絶品。
 というわけなので、ヤヤコシイことは置いておいても、オヤジ好き&軍人好き&深読み好きのゲイ&腐女子の皆さんは、その部分だけでも間違いなく一見の価値ありだと思います。実に萌えどころ豊富で、そこはもう太鼓判。

 もちろんそういった部分をさっ引いても、前述したように見応え自体はタップリなので、モチーフに惹かれる方であれば、一見の価値はあるかと。
 でもやっぱり個人的には、これはホモソーシャル/ゲイ映画として楽しみたい感じ。

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発売日:2012-07-03
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ドイツのゲイ・アートブック”Mein schwules Auge 9″に作品掲載

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 ドイツの出版社konkursbuch Verlag Claudia Gehrkeから出版されたゲイ・アートブック、”Mein schwules Auge 9 (My Gay Eye 9: Yearbook of the Gay Erotic)”に作品数点掲載されました。
 このシリーズには前も作品を提供しているんですが(こちら)、わりと作品のセレクトにクセがあって、同じドイツのゲイアート出版関係でもBruno Gmunderの出す、良くも悪くも間口が広い感じの本(ピンナップ的な口当たりの良い作品が中心で、あまり過激だったりとんがっているものは歓迎されない傾向にあり)とかと比べると、収録される作品もアクの濃い面白いものが多い印象。
 自分としても参加できるのが嬉しい本なので、再度のオファーをいただき喜んで作品提供した次第。

 というわけで掲載されている作品も、ピンナップありフェティッシュありSMあり女装あり、写真ありドローイングありペインティングあり……と、パラパラ捲っているだけでも楽しい内容。
 今回の収録作家は、自分の知り合い系ではFacebookで付き合いのあるUli Richterくらいで、Tom of FinlandやRexといったビッグネーム系も見あたらず。
 とはいえなかなかワールドワイドな面々で、中でも個人的に興味を惹かれたのは、

イタリアのIacopo Benassi、
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スロヴェニアのBrane Mozetic、
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ドイツのHenning Von Berg、
book_MSA9_HenningVonBerg

イタリアのSabatino Cersosimo、
book_MSA9_SabatinoCersosimo

ドイツのJorg Nikolaus、
book_MSA9_JorgNikolaus
ドイツのJan Schuler
book_MSA9_JanSchuler

……といったあたり。
 他にも、作品的にも性的な意味でもけっこう興奮させられるような、もっと過激にエロティックな作品も収録されているんですが、紹介は自重しておきます(笑)。
 私の収録作品はというと、最近作のマンガ『エンドレス・ゲーム』の決めゴマから、フキダシや効果音を取り除いてイラストレーション的に仕上げたものを、何点か提供しています。
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 掲載誌「バディ」では局部がモザイク処理されているので、完全な形でのお披露目はドイツが初ということに(笑)。このブログでは修正入れてますけど(笑)。
 冗談めかして笑ってはいるものの、正直なところいつもながら、自分の作品が肝心の日本では、いろいろ規制に抵触してしまって、完全な形での発表が望めないというのは、何だかなぁ……という気分になるのは否めませんね。
 本の入手法ですが、残念ながら日本のアマゾンでは取り扱いなし。
 ドイツイギリスアメリカのアマゾンでは取り扱いがあるので(11/14現在、独英は既に発売中、米は予約受け付け中状態)、欲しい方はそちらをご利用ください。

男性下着ブランドAndrew Christianのデザイナー氏から下着をいただきました

andrewchristian
 Andrew Christianというアメリカのセクシー男性下着ブランドがありまして、そこの商品PVがいつも凝っていて、しかもゲイビですかってなくらいにセクシーなので、気に入ったのがあるとちょくちょくツイッターでツイートしていたんですが、その話が同ブランドでデザイナーをしていらっしゃるGodaさんに、お友達経由で伝わり、御礼としてバディ編集部経由で、同社の下着をいくつも贈っていただきました!
 いやぁ、ツイッターでこういうことが起きたのは初めてで、とてもビックリ&嬉しく、まずこの場を借りて御礼を申し上げます。
 ググってみると、Andrew Christianの下着は、日本でもあちこち扱っているショップがあるようなので、セクシー下着好きの皆様、ぜひお買い求めくださいませ。
 普段使いのプレーンなものでも、クロッチ部分が立体縫製になっていて、股間のモッコリがとてもとても強調されたり、或いはグッと扇情的に、バックが丸出しになっていたり、ジョックストラップ(いわゆるケツ割れ)にちょっとオシャレな工夫があったり……と、勝負下着 or プレイ用としても、実にヨロシイかと。

 というわけで自慢かたがた、いただいた下着をご紹介。
 まず、お尻が丸出しになるやつ。
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 商品名が”Almost Naked (ほとんど裸)”というので、袋から出してバックを見たときに「……なるほど」とか思ったんですが、実際は、生地の肌触りがとても良く、ほとんど履いてないみたいな感じということらしいです。ケツ割れと比べるとストラップの食い込みがないとか、臀球のホールドがしっかりしていて心地よいとかいった感想も。

 そして、ブリーフ系と、ローライズ・ボクサーブリーフと、おしゃれケツ割れ。
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 フロント部分を見ると判るように、どれもクロッチ部分が立体縫製になっていて、じっさいに履いてみると、ホント嫌ってほど股間が目立ちます。
 ……なんて言うと「履いた写真をアップしろ!」とか言われるんですが、そんなことをしたら逆に営業妨害になりそうなので(笑)、ここは前述したセクシーPVの数々の中から幾つか貼りますので、それでご確認くださいませ。

LICK by Andrew Christian from Andrew Christian on Vimeo.

A “Brief” Love Affair by Andrew Christian from Andrew Christian on Vimeo.

Andrew Christian Booty Camp from Andrew Christian on Vimeo.

Pink Paradise Pool Party by Andrew Christian: REMIX from Andrew Christian on Vimeo.

 検索したら、アマゾンでも幾つかヒットしました。あんまり過激なのはなかったけど(笑)。

(アンドリュークリスチャン) ANDREW CHRISTIAN アンドリュークリスチャン オールモスト ネイキッド ヒップ ボクサーパンツ ALMOST NAKED HIP BOXER [並行輸入品] (アンドリュークリスチャン) ANDREW CHRISTIAN アンドリュークリスチャン オールモスト ネイキッド ヒップ ボクサーパンツ ALMOST NAKED HIP BOXER [並行輸入品]
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“Hamam (Steam: The Turkish Bath)”

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“Hamam” (1997) Ferzan Ozpetek
(アメリカ盤DVDで鑑賞→amazon.com

 1997年製作のイタリア/トルコ/スペイン映画。イタリアで活動するオープンリー・ゲイのトルコ人監督フェルザン・オズペテク(『向かいの窓』『あしたのパスタはアルデンテ』)の処女長編。英題”Steam: The Turkish Bath”。

 トルコのイスタンブールを訪れたイタリア人男性が、次第にその地に魅せられていき、そこに同性愛の要素も絡めて描いた内容。
 ローマ在住のフランチェスコは、今まで会ったこともない伯母が亡くなり、その遺産整理のために一人、伯母が長年暮らしていたイスタンブールへと赴く。
 そこで彼は、伯母がハマム(蒸し風呂、トルコの伝統的な公衆浴場)を買い取っていたことを知り、叔母と一緒に働いていたトルコ人一家に暖かく迎えられる。ハマムは既に長年使われておらず廃墟のようになっており、フランチェスコも始めはそれをさっさと処分してローマへ帰ろうと思っていたのだが、自分を家族のように歓待してくれる件の一家や、イスタンブールの空気、伯母が残した手紙などから、次第にその地に惹かれていく。
 やがてフランチェスコは、ハマムを買いたがっている人間が、その旧市街一帯を取り壊して、近代的な都市開発をしようとしていることを知り、売るのをやめて改修することにする。こうしてイスタンブール滞在が長引くにつれ、彼は件の一家の中でも、特にハンサムな息子メフメットと親交を深めていく。
 そんな中、フランチェスコの妻マルタが、ローマからイスタンブールにやってくる。彼女もまた、件のトルコ人一家に歓迎されるが、実はフランチェスコとの夫婦仲は既に冷え切っており、彼女は彼に離婚を切り出すつもりだった。
 しかしマルタは、この地での夫の変わり様に戸惑う。ローマにいた頃とは見違えるように生き生きとして、トルコの地にも溶け込んでいるような夫を見て、彼女は一人取り残されたような気持ちを味わう。
 そんなある晩、マルタがふと目覚めると、自分の隣で寝ていたはずの夫の姿がない。そして彼女は、改装を終えた夜のハマムで、裸になった夫とメフメットが、互いに愛撫しあっている姿を見てしまい……という話。

 ヨーロッパ文化におけるオリエンタリズム的な興味をキャッチとして使いつつ、イスタンブールという街とハマムという場所を寓意的に重ね合わせて、個々の人間の人生というドラマに落とし込んでいく構成は、なかなかお見事。
 前半をフランチェスコの、後半をマルタの視線で描くという切り替えも上手い。
 映像表現や人間描写の繊細さという点では、同監督が後年に撮った『向かいの窓』(2003)や『あしたのパスタはアルデンテ』(2010)などと比較すると、まだちょっと荒い感は否めません。特に心理面での掘り下げは、もうちょっと欲しかったところ。
 ストーリーもちょっと作りすぎの感があり、特にクライマックスが、何というかキャラクターにとって都合が良すぎるという気も正直。まぁ、表現自体が丁寧で繊細なので、鼻白むまではいかないんですが、でもちょっとギリギリかなぁ……というのが、個人的な印象。
 ただ、これがデビュー長編ということを踏まえれば、やはり充分に佳良です。
 映像もおそらく美しいっぽいんですが、DVDのマスターがあまり良い状態ではなく、あまり酔えなかったのが残念。
 伝統音楽にエレクトロニクスを絡めた、ちょっとエスノ・トランス〜アンビエント系の音楽(Trancendental)もなかなか魅力的で、サントラ盤を買いました。
 作家性という面では、主人公より前の世代の逸話や、異邦人、同性愛といった要素が、ストーリーに有機的に絡んでくるのが、前述した2作とも共通していて興味深いところ。監督の背景を考えると、パーソナルな要素が色濃く出ている感があります。

 そんな感じで、モチーフ的に興味のある方ならば、充分以上に見る価値のある佳品かと。

Steam (Hamam: The Turkish Bath) - Original Motion Picture Soundtrack Steam (Hamam: The Turkish Bath) – Original Motion Picture Soundtrack
価格:¥ 1,408(税込)
発売日:1999-01-19
向かいの窓 [DVD] 向かいの窓 [DVD]
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2007-10-13
あしたのパスタはアルデンテ [DVD] あしたのパスタはアルデンテ [DVD]
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2012-03-02

“A Year Without Love (Un año sin amor)”

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“A Year Without Love” (2005) Anahi Berneri
(米盤DVDで鑑賞→amazon.com

 2005年製作のアルゼンチン製ゲイ映画。原題”Un año sin amor”。
 実在するHIV+の若い作家/詩人、パブロ・ペレスによる日記形態の小節を基にした内容だそうで、同年のベルリン国際映画祭テディ賞受賞作。
 HIV+である主人公のライターが、死への恐怖に怯えながら、愛を探しセックスを求め、ブエノスアイレスのゲイシーンを彷徨し、レザーSMの世界に踏み込んでいくのだが、やがてそのことを通じて、自分自身のHIVという病とも向き合っていく……という内容を、彼の日記を通じて私小説的に描いたもの。

 まず、原作小説の作者本人が脚本に関わっているだけあって、レザーやサドマゾヒズムに対する視線が、露悪的であったり扇情的であったりしないのが、私的にはマル。
 ただし、それらをメタファー的に使っているために、BDSMがまるでイニシエーションのような、一過性の趣味的なものに見えてしまったのは、個人的にはペケ。とはいえそれは、単に私のフィロソフィーとは合致しないというだけのことで、そういう捉え方があっても別に良いと思いますが。
 人間の肉体、医療行為や薬品、セックスやSMの描写などで、一貫して極端なクローズアップを多用し、フェティシズム的な視線を感じさせる演出は面白かった。16ミリのようなザラついた映像も、90年代の未だアングラめいたブエノスアイレスのゲイシーンという状況に、リアリティを与えていて効果的。
 欲を言えば主演男優が、演技自体は素晴らしいんだけど、ルックスがエイドリアン・ブロディ似であまり私のタイプではなく、逆にメイキングで見られる作家本人(レザーパーティーの一員として出演もしていた模様)の方が、私的にはこの役者さんよりよっぽどイケていたのが残念(笑)。
 個人的な好みから言うと、こういったドラマ的な造りや映像的なハッタリを排除した作風は、正直さほどピンとこないんですが、描かれるパーソナル・ヒストリー自体の興味深さと、淡々としつつもリアリティのある作風で、わりと面白く見られた感じです。

 90年代のアルゼンチンのゲイ・シーン、レザーSM、HIV、実話ベース……と、モチーフ自体に興味深い要素が多いので、それらに惹かれる方なら見てもいいかも。
 ”A Year Without Love (Un año sin amor)”、予告編。

 予告編だけだと、どんな雰囲気の映画かさっぱり判らないと思うので、いちおう映画のワンシーンのクリップも貼っておきます。

“Frat House Massacre”

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“Frat House Massacre” (2008) Alex Pucci
(アメリカ盤DVDで鑑賞→amazon.com

 2008年制作のスラッシャー映画。
 80年代のアメリカの学生寮を舞台に、血みどろ描写やディスコ音楽といった70年代後半〜80年代初頭の映画へのオマージュ+青年の裸満載という内容。

 80年代のアメリカ、とある大学のフラタニティ(友愛会)の寮では、馬鹿学生たちがパーティーやセックスやドラッグに明け暮れていた。
 そんな中でも特に、ΔΙΕフラタニティの代表でサディストのマークは、皆を率先して新入生たちに拷問のようなイジメをし、更にその後、内輪の数人だけで、その犠牲者を殺害していた。
 メンバーの一人で、その異常さについていけなくなったショーンは、マークたちの殺人をやめさせようとするが、逆に殺されてしまう。しかしショーンが殺された瞬間、事故でずっと昏睡状態だったショーンの弟、ボビーが目を覚ます。
 目覚めたボビーは、兄のいたフラタニティの寮に入るのだが……といった内容。

 ストーリーはけっこう面白いです。
 途中で一回ツイストが入って、話が意外な方向に転がっていったかと思うと、クライマックスでもうひとひねり入れてきたりして、アイデアや意外性を楽しめる感じ。
 演出も、さほど凡庸というわけではなく、所々凝った見せ方なども交えて悪くないし、昔のスラッシャー映画のオマージュらしく、血糊がドバドバ、特殊メイクもあちこち、殺しの外連味もそこそこあるのは佳良。
 でも同じオマージュでも、ディスコダンスの場面がけっこう長かったりするのは、正直ちょいとウザい感もあり。長すぎる日常描写も、ちょっとダレる。もうちょっと刈り込んでテンポを良くすれば、だいぶ違うだろうに……ちょっと惜しい感じがします。
 そういやジャンル映画オマージュらしく、《オリジナル音楽:クラウディオ・シモネッティ》なんてクレジットもあるんですが、これは正直、いったいどの音楽を書いたのよ、って感じでした(笑)。

 でもって、学生寮の話なのに女の子のオッパイとかはチラッとしか出て来なくて、そのかわり若いイケメンのヌードはイッパイ出てくるのは、これは監督の趣味なのかしらん(笑)。
 まあ、スラッシャー映画としては、特に悪くもなし特に良くもなしですけど、皆の前でパンツ一丁で縛られて辱められた後、パンツ降ろされて尻をパドリングとか、裸で猿轡されてベッドに縛られて、胸板をダーツの的にされるとか、そんなシーンはあちこちあるので、ソッチ系目当てなら、けっこう楽しめるかと。
 そこそこ身体もいい男の子たちが、次々と裸で拷問めいたイジメにあい、そしてそのまま惨殺……てなコンボが多いのは、私的には変態アンテナに反応するものがあって、けっこうお得感がありました。
 そーゆーのが好きな方だったら、一見の価値アリかも。