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『闇を生きる男 (Rundskop / Bullhead) 』

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『闇を生きる男』(2011)ミヒャエル・ロスカム
“Rundskop” (2011) Michael R. Roskam
(米盤Blu-rayで鑑賞→amazon.com

 2011年制作のベルギー映画。原題”Rundskop”、英題”Bullhead”。
 2011年大阪ヨーロッパ映画祭で『闇を生きる男』の邦題で上映。また、2012年7月28日(土)から銀座テアトルシネマで二週間限定のレイトショー公開あり。
 ベルギーのフラマン語(オランダ語)圏であるフランデレン地域の、食肉牛の畜産業主を主人公にした、クライム・ドラマ風味の重厚な人間悲劇。アカデミー外国語映画賞ノミネート作品。

 主人公ジャッキーは30過ぎの格闘家のような肉体を持つ頑強な独身男で、食肉牛の飼育を生業としている。彼の牛は違法ホルモンを使って育てられており、彼の肉体もまたホルモン注射の産物だった。
 そんな彼のところに、とある食肉業者との取引の話が持ち上がる。彼はこの話に何か危険な臭いを感じるが、実際、違法ホルモンを調査していた警察官が殺害されるという事件が起きる。
 また、ジャッキーは少年の頃、睾丸を潰されるという過去を背負っており、彼のホルモン注射も、そもそもは喪われた男性ホルモンを補うために始まったことだった。そして壮年になった彼は、まるで喪われた男性性を取り戻そうとするかのように、ホルモン注射にのめり込んでいき、同時に感情を抑えられず凶暴化していく。
 やがて警察の捜査網は、ジャッキーの幼なじみや初恋の相手も巻き込みながら、徐々に食肉マフィアおよびジャッキーへと迫っていくのだが……という内容。

 いや、これは面白かった!
 主人公の設定がかなり特異ですが、それと彼の育てる食肉牛の姿を重ね合わせ、そんなどうしようもない運命の残酷さを、ずっしりとした重厚なドラマとして見せてくれます。
 ストーリー的にはクライム劇の要素はあるものの、主眼はそれではなく、まるでギリシャ悲劇を思わせる運命劇的な人間ドラマ。自分が背負わされてしまった軛から、逃れようとしても逃れられない男の悲痛さが、何とも胸に迫ります。
 彩度を抑えた色調や、シンメトリーや構図の美しさが印象的な画面も、大いに魅力的。演出は全体的に静かなタイプですが、その緊張感やシャープさや、そして全体に漂う重厚な雰囲気に魅せられます。
 そして何と言っても、主人公ジャッキー役の男優さん(マティアス・スーナールツ)の魅力。雄牛を思わせる見事な肉体と、クールな強面と悩めるナイーブさが同居した表情……う〜ん、惚れた。
 そしてこのキャラクター……私で良かったら、ギュッと抱きしめてあげたい……って余計なお世話(笑)。
 加えて、ちょっとしたオマケという感じですが、ゲイ要素があったのも良かった。まぁ、そのゲイキャラは、ルックス的には全くタイプではなかったですし、その出し方もさりげない感じなんですが、変に付加価値を背負わせることない、さらっとした描き方が、却って見ていて「判る判る!」という感じの好印象に。

 まぁ、はっきり言ってとても辛くて悲しい話なので、悲劇=バッドエンドと感じられる方には全く向かないとは思いますが、屈強な男が背負った運命的な悲劇、それもある意味で過度な男性性を巡るドラマだということもあって、個人的にはモロにツボを突かれてしまった感じです。
 好き嫌いや後味の良し悪しはともかく、とになく見応えタップリな一本なので、レイトショー公開ではありますが、興味のある方はぜひご覧あれ。

『闇を生きる男』、主人公の肉体性&雰囲気重視のアメリカ版予告編。

 ストーリー全体のアウトライン重視のインターナショナル版予告編。

 で、主演男優マティアス・スーナールツで検索してたら、こんなものが。”De rouille et d’os (Rust & Bone)” (2012)、予告編。

 やだ、これもすごく見たい……。監督が、先日見て面白かった『預言者』のジャック・オーディアールってのもポイント高し。

預言者 [DVD] 預言者 [DVD]
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2012-07-06

 しっかし、これが
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これになっちゃうんだから、
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俳優さんってホントすごい……ってか、おっそろしいわ(笑)。

【追記】『闇を生きる男』めでたく日本盤DVD発売です。

闇を生きる男 [DVD] 闇を生きる男 [DVD]
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2013-02-22

【追記】”De rouille et d’os (Rust & Bone)”も『君と歩く世界』という邦題で、目出度く日本公開&ソフト発売。


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“Senność”

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“Senność” (2008) Magdalena Piekorz
(ポーランド盤DVDで鑑賞、米アマゾンで入手可能→amazon.com

 2008年制作のポーランド映画。様々な問題を抱えた現代ポーランドの3組のカップル(夫婦2組、ゲイカップル1組)を軸に、愛や生や死を描いたヒューマン・ドラマ。
 ご贔屓ミハウ・ジェブロフスキー出演作。監督は前にここで感想を書いた””Pręgi”と同じ人。

 嗜眠発作に悩む女優ローザは、人里離れた豪華な邸宅で、優しくハンサムな夫に看護されながら療養中。
 小説家のロベルトは、婿入りのような形で結婚して妻の家族と同居中だが、妻のヒステリーや彼を穀潰し扱いする義父の態度に悩まされてスランプ中。
 青年アダムは医師試験に合格し、田舎の両親は息子が故郷に帰って開業医となることを望み、将来結婚したときに備えて新居まで建てて準備しているが、肝心の彼は今のところ田舎に戻るつもりはなく、両親も仕方なく彼の気持ちを尊重して待つことにする。
 一見何の不満もなさそうなローザだったが、発作の度に前後の記憶を無くしてしまう彼女は、夫が浮気をしているのではないかという疑念に苛まれて、孤独な田舎暮らしの中、毎日レシピを元に《愛を蘇らせる料理》を作っている。
 ロベルトは、妻には彼女の健康上の理由でセックスを拒まれていて、期待されている新作小説もずっと書くことができず、更に苦痛を伴う何かの発作にも襲われるようになるが、そのことは妻とその家族には隠している。
 都会の病院勤めをするようになったアダムは、実はゲイで、街で出会ったギャンググループのスリ、ラドニーを治療したことをきっかけに、互いに惹かれ合って付き合うようになるが、息子を驚かせようと予告無く上京してきた両親に、その関係を見られてしまう。
 医者の診察を受けたロベルトは、このままではもう長くないと告げられるが、日常に倦み既に生きる目的もなくなっている彼は治療を拒否する。そして田舎に出かけるのだが、そこで発作を起こし、偶然ローザに助けられる。
 ロベルトが現役時代のローザを観客として知っていて、二人は打ち解けて親しく語り合うのだが、彼のふとした言葉から、ローザは夫の浮気が自分の邪推ではなく事実であると確信し、夫の嘘を暴こうと計略を練る。
 一方のアダムもラドニーと諍いになり、ラドニーは家を出て行ってしまう。やがてアダムはそのことを悔いて、よりを戻そうとラドニーの所属するギャンググループを追うのだが、そのことから逆にギャングに目を付けられ、ついにはホモ狩りの獲物にされ暴行を受けてしまう。ラドニーは、アダムとの関係が仲間にばれることを怖れて、恋人を助けることができないが、後からこっそり介抱して許しを請う。
 アダムとラドニーは一緒に街を出ることにして、荷物を纏めて二人でバス停に向かうが、そこをギャンググループに見つかってしまい、ローザは夫の嘘を暴く計画を実行、そしてロベルトは妻との離婚を決意するのだが……といった内容。

 全体的に抑えた調子で、淡々と、しかし丁寧にそれぞれのドラマが綴られていき、先の読めない展開も相まって、地味ながらも面白く見られる作品。個人的には、ゲイ要素があるという予備知識が全くなかったので、かなり意外なお得感がありました。
 構成としては、それぞれ別々の3本のドラマが、後半になって互いに重なり合う部分が出てくるという作りですが、さほどトリッキーな感じではなく、ローザとロベルトはけっこうがっぷり重なるんですが、アダムとは軽く触れあう程度なので、そこはもうちょっと工夫が欲しい気も。
 因みに、ご贔屓ミハウ・ジェブロフスキーは、ローザの夫役。つまりゲイ役ではない。残念(笑)。
 テーマ的には、自分を世間で言うところの《幸せなはず》だと騙すのではなく、勇気を持ってそこから一歩踏み出すことによって、初めて本当に自分の人生の意義を取り戻すことが出来る……ということだと思います。
 つまり、セレブな暮らしをしているローザも、逆玉に乗って物理的には不自由のないロベルトも、両親には愛され仕事も順調なスタートをきっているアダムも、皆はたから見れば「幸せなはず」な状況なんですが、実際はそうではなく、生きる意義ってのはそんな単純なものじゃない。
 彼らの抱えているそれぞれの事情が、すなわち彼らを《不幸》にしているわけですが、それと同時にその《不幸》の原因は、彼ら自身が現状から一歩踏み出す《勇気》に欠けているせいでもある……というのが描かれているあたりが、個人的にはかなりの高ポイント。

 私としては、どうしてもゲイのアダムのエピソードが気になるんですが、ここでも前述のテーマが、極めて有効に作用してきます。
 クローゼット・ゲイであるアダムは、自分のセクシュアリティをオープンにすることができない。両親から愛され仕事にも恵まれ……という《幸せ》な状況であるからこそ、尚更それを《壊しかねないリスク》、すなわち自分はゲイだとアウトすることができずにいる。
 このことは、日本の多くのゲイにとっても、かなり身近なことであるはず。
 アダムのBFラドニーも同様で、二人は地下道で一瞬目があっただけで互いに何かを感じ合い、そして恋人関係へと発展していくのだが、それはあくまでもアパートの中という密室内での関係。ひとたび外に出れば、ラドニーは自分がゲイだと仲間にばれることを恐れ、それゆえにアダムを仲間の暴行から助けることもできない。
 どちらも、《現状の平穏》を損なうことを恐れて、社会に向けて自分自身をオープンにできない。
 そして二人は《逃避行》を選ぶのですが(以下ちょっとネタバレを含むので白文字で)、荷造りをして、街を離れるバス乗り場に向かった二人は、再びギャンクたちに取り囲まれ、しかし今度は、暴行を受けるアダムを守ってラドニーはギャングに立ち向かい、結果として相手の一人を刺殺してしまう。これは悲劇ではあるんですが、それと同時に、ラドニーは《一歩踏み出す》勇気を持ったということでもあります。
 そしてアダムもそれに呼応する形で、最終的にはラドニーを実家に連れて帰る。アダムもまた、リスクを恐れず《一歩踏み出し》て両親と対峙することで、自分自身の人生を手に入れたわけです。

 という感じで、このゲイ・カップルを描いたエピソードは、彼らを取り巻く現実の苦さや残酷さをきっちり踏まえつつ(ホモ狩り以降のくだりは、けっこう見ていて辛い部分もあるんですが)、でも最終的には、見ていて思わず笑みがこぼれてしまう結末を迎えるし、前述したテーマの有効性などもあって、個人的にはかなり佳良。

 Magdalena Piekorz監督の演出は、前の”Pręgi“同様に、派手さはないもののしっとりとした滋味あり。それぞれの役者も、けっこうイヤなヤツだったジェブロフスキーも含めて、アンサンブル全体が好印象。
 後味も上々で、そこに加えてゲイ映画的な良さもあったので、個人的にはかなり満足のいく佳品でした。

 オマケ。アダムとラドニー。
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ちょっと宣伝、アートブック“FUR: The Love of Hair”に作品掲載

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 先日ドイツのBruno Gmünder社から出版された、体毛ラブなゲイ・アート・アンソロジー、”FUR: The Love of Hair”に作品数点掲載です。
 二年ほど前にも、同社から出た同テーマのアートブック“Hair – Hairy Men in Gay Art”に作品を提供しておりますが、今回の“FUR: The Love of Hair”はまた別編集(エディターも違う)の本。とはいえ内容的には”Hair”同様に、やはり体毛やヒゲをモティーフにしているアーティストの絵や写真を集めたアートブック。
 ただ、約A5サイズとコンパクトだった”Hair”に比べて、今回の”FUR”は約A4サイズと大判。こんな感じで、”Hair”や「バディ」なんかと大きさを比較すると、その大判ぶりが良くお判りかと。
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 サイズが大きい分、当然図版のサイズも大きくなり(基本1ページ1点か見開き1点)、迫力も倍増。
 ハードカバーのフルカラーで、ページ数も250ページ以上。いつものことながら印刷や造本もしっかりしていて、アートブックとしてはなかなかステキな仕上がりです。
 価格は国によって異なりますが(Bruno Gmünderは拠点こそドイツですが、販売網はワールドワイド、ヨーロッパから南北アメリカ大陸まで、幅広く販売されています)、だいたい3500円程度といったところでしょうか。

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 で、私の作品は(確か)3点掲載されているんですが、うち2点はこのように見開きでの掲載なので、自分で見てもかなりの迫力。
 ページの右上にハングル文字があるのは、これは本全体を通じて、FUR(毛皮)を意味する言葉が、各国語であちこち書かれている……というデザイン処理のせい。じっさい私の絵が載っている他のページでは、ペルシャ語(アラビア文字)が配されていたり(笑)。

 というわけで、私以外にも体毛系の絵や写真がギッシリで、例えばこんな感じ(左/スペインのヴィクトル・ヴィレンの絵、右/アメリカのデヴィッド・グレイの写真)だったり、
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はたまたこんな(左/イギリスのチャーリー・ハンターの絵、右/アメリカのクリス・ローマの写真)だったり。
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 左右にそれぞれ、モチーフやポーズ的に共通点のある絵と写真を、対比させて並べてあったりして、そういった全体の構成も楽しい本です。
 版元Bruno Gmünderのサイトでも、内容見本が見られます。こちら。書影右にあるflip throughというオレンジ色のタブをクリックすると、本の中味が数ページぺらぺら捲って見られます。少し捲ると私の絵も出てきますんで(笑)。

 他にも、私の知り合い系だと、アメリカのミノルとか、
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フランスのギイ・トーマスとか。
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 また、知り合いとかじゃありませんが、チャーリー・ハンターのこのドローイングとかも、実に惚れ惚れしますね。インデックス見たら、私と同い年でした。
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 というわけで、熊好き体毛好きなら存分にお楽しみ頂ける一冊だと思うので、是非一冊お買い求めを……と言いたいところなんですが、残念ながら例によって、日本のアマゾン「だけ」取り扱いなし。
 ただ検索してみたところ、ジュンク堂のカタログにはありました。こちら
 海外のアマゾンだと、どこでもちゃんと取り扱っているので、とりあえず、アメリカアマゾンイギリスアマゾンのリンクを貼っておきます。多分イギリスからの方が、送料も含めて安く買えるのではないかな?(経験から言うと)

「映画秘宝」とか『スパルタカス』とか

 現在発売中の「映画秘宝」7月号で、小特集「海外ドラマ夏の陣! 今、本当に面白い最新ドラマはこれだ!」に、私、連続TVドラマ版『スパルタカス』について、文章を書かせていただいております。あと、巻末の近況欄にもちびっと。
 よろしかったら是非お買い求めくださいませ。

映画秘宝 2012年 07月号 [雑誌] 映画秘宝 2012年 07月号 [雑誌]
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2012-05-21

 このTVドラマ版『スパルタカス』、記事にも書いたようにエログロ度がハンパないんですが、ゲイ目線でもうちょい追補しておきませう。
 まずとにかく、メインの登場人物が奴隷剣闘士なので、基本的にマッチョばっか、加えて常に半裸。更に全裸シーンもふんだんにあり、逞しいケツはおろかナニも丸出しに。
 同性愛要素&描写もしっかりあり、男同士のラブはもちろん、ガンガン肛門性交するシーンまで登場。
 責め場も盛り沢山で、鎖で繋がれたり鞭で打たれたりといった基本はもちろん、宴会で見せ物的に女とセックスさせられる羞恥系とか、アレをちょん切られて晒し者といった無残系も。
 古代ローマのグラディエーターネタなので、マッチョが惨殺される場面にも事欠かず、しかもかなりのゴア描写。
 そんなこんなで、残酷度とエロ度は過去の類作を遙かに凌駕する充実っぷりなので、普通に見ても充分に面白いんですが、下心で見てもタップリ堪能できるかと。

スパルタカス ブルーレイBOX [Blu-ray] スパルタカス ブルーレイBOX [Blu-ray]
価格:¥ 13,650(税込)
発売日:2012-05-11
スパルタカス DVDコレクターズBOX スパルタカス DVDコレクターズBOX
価格:¥ 9,240(税込)
発売日:2012-05-11


 内容的にはプリクエルに当たるシリーズ番外編も来月リリース。

スパルタカス序章 ゴッド・オブ・アリーナ ブルーレイBOX [Blu-ray] スパルタカス序章 ゴッド・オブ・アリーナ ブルーレイBOX [Blu-ray]
価格:¥ 6,300(税込)
発売日:2012-06-22
スパルタカス序章 ゴッド・オブ・アリーナ DVDコレクターズBOX スパルタカス序章 ゴッド・オブ・アリーナ DVDコレクターズBOX
価格:¥ 5,040(税込)
発売日:2012-06-22

<6月29日追記>
『スパルタカス序章 ゴッド・オブ・アリーナ』の方も全話鑑賞したので、感想を簡単に。
 あのキャラの過去はどんなものだったのか、とか、こいつがどんなきっかけで正編に見られるような態度へと変わるのか、とか、正編に続く仕掛けが様々施されたプリクエルとしての面白さもさることながら、独立した一作品として見ても良く出来ていて、正直期待以上の内容。
 表現面の《容赦ない人体破壊描写+隙あらばエロ》のコンボは相変わらず健在ですが、ストーリー自体が全6話とコンパクトなこともあって枝葉も少なく、ラニスタとグラディエイターそれぞれの上昇志向を、闘技場の建設&こけら落としの大会開催と重ね合わせて見せる構成が、実に巧み。ラストの処理も上手く、後味も上々。
 個々のエピソードも、ぶっちゃけ正編を見ていると「こいつは死なない」というのが判ってしまうんですが、それを「じゃあどうやってここを切り抜けるのか」みたいな見せ方を上手く組んでいます。逆に「こいつは正編に出てこないから、きっと途中で死ぬか消えるかするだろう」というキャラにもいるんですが、こちらはいつものようにハラハラしながら見ていればいいし、更にこちらの予測を良い意味で裏切ったりもしてくれるので、やはり実に面白い。
 ゲイ目線のお楽しみどころとしては、相変わらず半裸のマッチョだらけ&ケツやチンコ丸見え場面多々ありなのに加えて、正編で登場したゲイ・カップルが、いわば《マッチョ&お稚児》的な関係だったの対して、こちらの序章では剣闘士同士、つまり《マッチョ&マッチョ》のカップルなのが大いに嬉しい。こいつらがいかにも、野郎臭く荒々しく互いを求め合うラブシーンは、描写自体はさほど過激ではないんですが(キス、ハグ、そしてフェラチオの暗喩表現くらい)、それでも見ていてなかなかグッときます。
 SM目線としては、第1話からして早速、道端で全裸で鞭打たれているシーンあり。剣闘士が仲間に騙されて、ローマ人にケツを掘られてしまう……なんてエピソードもあり、これもなかなかグッときたんですが、残念ながら実際の行為場面は描かれず。……ケチ(笑)。

“Bol”(『BOL ~声をあげる~』)

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“Bol” (2011) Shoaib Mansoor
(インド盤DVDで鑑賞、米アマゾンで入手可能→amazon.com

 2011年製作のパキスタン/ウルドゥ映画。ショエーブ・マンスール監督作品。タイトルの意味は《話す》。
 イスラムにおける父権的&女性蔑視的なドグマに囚われた父親と、その妻や娘たちの辿る悲劇を描いた社会派ヒューマン・ドラマ。パキスタン映画の興行成績を塗り替えた大ヒット作だそう。IMDbでも8.0/10という高評価。
【追記】アジアフォーカス・福岡国際映画祭2012で上映、福岡観客賞受賞。

 死刑執行直前の一人の若い女囚が、最後の願いとしてマスコミの前で話しをすることを望み、「私は殺人者ではあるが犯罪者ではない」と前置きしてから、自らの個人史を語り始める。
 彼女は貧しいが子沢山、それも女児ばかりの家に生まれた年長の娘だった。父親は熱心な宗教的求道者として周囲からは尊敬を勝ち得ていたが、ドグマに囚われ妻や娘たちを家に閉じ込め、学校にも行かせず外出もさせないという男だった。
 父は男児の誕生を望んで、繰り返し繰り返し妻を妊娠させるが、生まれてくるのは女児ばかりだった。そしてようやく息子が授かるが、その子は半陰陽と判断され、父親はその存在を恥じて家に閉じ込める。成長した彼はトランスジェンダー的な振る舞いを見せるようになる。
 ヒロインはそんな弟を独り立ちさせるために、母や妹たちや開かれた価値観を持つ隣家の息子の助力を得て、絵が得意な彼を、父親に内緒でトラックに絵を描くペンキ屋に弟子入りさせる。ペンキ屋の親方は彼の才を認めるが、彼の中性的な物腰が他の同僚やトラック運転手から目を付けられ、ついに親方のいない間に乱暴されてしまう。
 母や姉たちは、出掛けたまま帰って来ない彼のことを案じるが、父親は「そのままどこかで死んでくれればいい」とまで言う。そして、乱暴されたあと縛られて放置されていた彼は、ヒジュラ(男女以外の第三の性。多くは女性化した男性で、歌舞や売色等を生業とする)に助けられ、家まで送り届けられる。父親はそれを無視して扉を開けようとしないが、母や姉たちがそれに気付いて彼を迎入れる。
 事情を聞いた母や姉たちは、彼を無理に一人前の男にしようとした自分たちが間違っていたと悔やむが、この事件で父親はますます息子を疎むようになり、ついにはその寝室に忍び込み……といった内容で、ここまでが前半。
 後半はこれが皮切りとなり、父親が預かっていたモスクを建てるための募金の使い込みや、そんな父親が娼館の主と金銭的な取引をして、そこの娘の腹を借りることになるという事件が絡み、そんな父親と独立心のあるヒロインの対立は、ますます激しさを増していき、結果この一家はどんどん泥縄に……となっていきます。

 これはお見事。大いに見応えあり。
 前述したTGの息子の部分だけでも、かなりズッシリとしたテーマなんですが、それはまだほんの序の口。後半は、ドグマによって抑圧される女性とそれを容認してしまう社会、男児を重視する社会が産み出す様々な歪みといった、問題提起や告発に繋がっていき、それがダイナミックなストーリーのうねりと共に描かれていきます。
 死刑直前のヒロインの独白でストーリーが始まることによって、過去に何が起きたのかということと、そして現在のヒロインはどうなるのかという、二本柱で全体を牽引していくので、もう先が気になってたまらない。で、その語られる内容が、特に狙ってツイストを入れてくるわけではないのに、それでも驚くべき展開になっていくので、とにかく最初から最後まで目を離せない感じ。
 とはいえ、ひたすら重くて暗いというわけでもなく、ユーモア描写こそありませんが、それぞれのキャラクターをじっくり描き込んだ波瀾万丈の大河ドラマといった趣で、重いテーマながらもグイグイと力強く引き込んで見せていきます。
 そして、現実の残酷さと希望の双方を踏まえたラストには、思わずウルウル。

 演出も見事。冒頭、向かい合った男女が会話しているシーン……と思いきや、カメラが動くと、二人の間に鉄格子があることが判るカットから「おっ」と思わされましたが、全編に渡って、落ち着いたカメラワークと構図で見せる、しっかりとした重厚な出来映え。
 インド映画同様に、パキスタン映画にも歌や踊りは必須のようで、この映画にも何回か歌舞が登場しますが、挿入歌的な見せ方、ラジオから流れる歌に合わせて踊る、音楽のライブ場面……といった具合に、極力ストーリーに溶け込ませて自然に見せようという工夫があるので、あまり腰を折られる感はなし。
 もちろん、ドラマの置かれている社会事情を考慮しないと、理解や感情移入がしにくいであろう部分もありますし、こういうテーマだとどうしても、一部の音楽シーンが冗長に感じられる部分もあるんですが、しかし重厚なヒューマンドラマとして文句なしの見応え&良作。

 女性映画でもあり、社会派映画でもあり、ヒューマニズム映画でもあり、波瀾万丈の大河ドラマでもあり、ストーリーの面白さ、考えさせられるテーマ、胸を打たれるエモーショナルな展開の数々……と、見て損はない一本。

【余談】DVDのジャケやメニュー画面で一番デッカい二枚目男性が、実はストーリー的にはわりとどーでもいい隣家のお兄ちゃんだったので、ちょっとビックリ(笑)。

新春ゲイ系動画4連発

 最近、TwitterでつぶやいたりFacebookでシェアした動画クリップの中から、ゲイ&熊&体毛系のものを幾つかピックアップ。
 セクシー系。イタリアのベア系ゲイナイトのPV。
 ネタが《ハッテン》なので、身に覚えありとゆーか生々しく感じられて、ちょいとドキドキしました(笑)。

 お笑い系。ゲイゲイしくてベアベアしい、ヒッチコック『サイコ』のパロディ。
 ちゃんと本家同様に、ボディダブルを使っているあたりも可笑しい(笑)。

 ビックリ系。イタリアのAIDS防止キャンペーン絡みのPV。
 内容云々よりも、何よりかにより体毛のモジャモジャ具合にビックリ(笑)。そして更にビックリしたのは、この動画をFacebookでシェアしたら、「このモデル知り合い。監督も自分が出た別のAIDS防止キャンペーンの短編を撮った人」というコメントがついて、しかもそれが拙著イタリア版『ウィルトゥース』のエディターさんからだったということ(笑)。

 カワイイ系(個人的に)。ゲイ・ポルノスターがシャワールームで、歌って踊ります。
 因みに口パクではなく、ご本人が歌っているとのこと。

スペインの雑誌”UXXS Magazine”にインタビュー掲載

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 スペインはカナリア諸島で発行されているゲイ向けフリーペーパー”UXXS Magazine” No. 46に、拙インタビューと作品数点(カット)が掲載されました。
 フリーペーパーとはいっても、フルカラーで70ページもある下手な雑誌顔負けの冊子。スペインのカナリア諸島というローカルエリアで、これだけのものがフリーペーパーとして成り立つとは、今更ながらあちらのゲイ・マーケットの強固さと層の厚さに溜め息……日本だと考えられませんね、こんなの……。

 内容は、クラブやショップの広告、イベントカレンダーやマップなどの合間に、HIV、アート、リゾート、映画、ピープル等々、様々な記事が入っているもので、ざっと見た感じ、記事が65%の広告が35%くらい?
 エディターさん曰く、フリーペーパーなので性器の露出はNGということでしたが(というわけで私の作品も、それを避けたセレクトになっています)、カバー写真からもお判りのように、なかなかセクシーな誌面になっています。

 で、私のインタビュー・ページは、こんな感じ。
uxxs_inside
 例によってメールで英語のQ&Aをやりとりしたもので、質問内容は「どうして今の仕事をするようになったの?」とか「インスピレーションはどこから?」とか「『外道の家』を描くのにどのくらいかかった?」とか「初めて男の裸を描いたのはいつ?」などなど。
 ちょっと変わったところでは、「他の多くの日本のゲイ・アーティストと違って、貴方の作品は主に強く逞しく毛深い男が凌辱されるけれど、それが貴方の成功の一因となった?」なんて質問も(笑)。

 この雑誌ですが、発行元のサイトでPDFファイルがフリーでダウンロードできますので、興味のある方はどうぞ。
www.uxxsmagazine.com
 6ページ目の見開きなんか、けっこうグッときますぞ(笑)。

メキシコの雑誌”Anal Magazine”に作品&記事掲載

analmagC
 メキシコのアート系ゲイ雑誌”Anal Magazine”(スゴい名前…… ^^;)にメール取材を受けて、作品と記事が掲載されました。
 と言ってもこれは随分前のことで、掲載誌が送られてきたのは今年の2月、取材を受けたのは確か去年のことだったと思います(笑)。ツイッターではリアルタイムでつぶやいたんですが、こっちのブログの方では、何かタイミングを逃して紹介しそびれてしまいました。
 で、昨日の”Mein schwules Auge 8″のエントリーをアップしたとき、はっと思い出してこっちもアップした次第。
 雑誌のサイトはこちら(注意:音出ます)。
 サイトトップのイメージ動画からもお判りのように、なかなか洒落たカッコいい雑誌です。
 私の作品&記事は第2号に掲載で、他のページもこんな感じで、かなりスタイリッシュ。取り上げている作品も、面白いものが多いです。
analmagC2
 クラブ・カルチャーともリンクしている模様で、第2号のビデオ・フライヤーがこちら。

 テロップで私の名前も出てきます。
 雑誌の入手方法とかはちょっと判らないんですが、前述の雑誌のサイトにネットショップもあるので、興味のある方は問い合わせてみてください。

ドイツのゲイ・アートブック”Mein schwules Auge 8″に作品掲載されました

MeinSchwulesAuge8
 過日、ドイツのKonkursbuchという出版社から、同社の”Mein schwules Auge”というゲイ・アートブックに私の作品を掲載させてもらいたいというメールをいただきました。
 コンタクトいただいた編集氏の言によると、”Mein schwules Auge”とは”My Gay Eye”という意で、副題に”The Yearbook of Gay Eroticism”とあるところを見ると年鑑のよう。で、2011年度版のテーマはRebels, Outlaws and other Bad Boysなんだそうな。
 何度かやりとりした後、作品画像や私のデータ等をお渡しし、それが今年の春から夏にかけてのことだったんですが、震災やら個展やらいろいろあったせいもあり、何かもうすっかりそのこと自体を忘れてしまっていたところ、先日できあがった本が送られてきました。

 本のサイズはA5。ペーパーバックですが、フルカラーで320ページと、なかなかのヴォリューム。
 構成は[グラフィック4:テキスト1]くらいの割り合いで、ドイツ語は読めないので良く判りませんが、テキスト組みの雰囲気と部分的に理解できる単語から察するに(笑)、どうもショート・ストーリー、詩、ルポルタージュ記事などのようで、それプラス、絵や写真が大量に掲載されている……ってな構成のようです。
 で、私の作品掲載ページは、こんな感じ。
MeinSchwulesAuge8_tagame
 これが先頭ページで、この後しばらく絵のみ、合計7ページの掲載となっています。
 作品セレクトは、いちおう先方のリクエストに併せて、こちらから候補作の低解像度イメージを複数点数送り、その中から先方が希望する作品を選んでもらい、改めてそれらの高解像度ファイルを送るというやり方。結果、せっかくのフルカラー本なのに、掲載作品は全てモノクロ作品に。ちぇっ(笑)。
 因みにこういうとき、いつもは自前か先方のサーバ経由でFTPで受け渡しするんですが、なじかは知らねど(ドイツ風w)先方でダウンロード・トラブルが発生したため、今回は最終的にはYouSendItサービス(宅ファイル便とかの国際版みたいなもの)を使いました。
 こんな感じで様々な作家の作品が載っていて、巻末には各作家の簡易バイオ、コンタクト・アドレス、ウェブサイトなどが記載されています。

 他の掲載作家は、とりあえず私の友人&知り合い関係で言うと、ドイツのBDSM/フェティッシュ系カメラマン、ユーリ・リヒター、
MeinSchwulesAuge8_uli

フランスのサブカル系アーティスト、トム・ド・ペキンなど。
MeinSchwulesAuge8_pekin

 メジャーどころでは、トム・オブ・フィンランド、
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レックス、
MeinSchwulesAuge8_rex

ブルース・ラ・ブルースなど。
MeinSchwulesAuge8_bruce

 今回初めて知った/見る系だと、体毛やヒゲへのフェティッシュを感じさせるAngel Pantojaの写真、
AngelPantoja

ちょいとドイツ表現主義の流れなんかも感じさせるSabatino Cersosimoのペインティング、
SabatinoCersosimo

硬質で静かな画面構成と品の良いエロスが印象的なAnthony Gaytonの写真、
AnthonyGayton

挑発的な映画の一コマか報道写真のようなMiron Zownirの写真、
MironZownir

ポルノ的で直截的なエロとユーモアの混在が面白いMaster Patrickの写真/コラージュなんかが、個人的には特に興味深かったです。
MasterPatrick

 こんな感じで、同じゲイ・アートブックでも、Bruno Gmünderが出している本とかと比べると、かなりアクが強いセレクトで、本全体の印象もけっこうとんがった感じ。ヴォリュームもクオリティもバッチリなので、これは自信を持ってオススメできます。
 こういう面白い本が既に第八弾だと聞くと、バックナンバーも集めたくなっちゃいますね(笑)。
 取り扱いは、本国ドイツのamazonの他、アメリカのamazonでも取り扱いあり。イギリスamazonフランスamazonでは、マーケット・プレイス出品でした。日本のアマゾンでは、つい2日前に私がツイッターでつぶやいたときは取り扱いがありましたが、現在はデリートされた模様。
 これって以前のJoe Oppedisanoの写真集や、Tom of Finland画集、拙作が掲載された“Erotic Comics: vol. 2”なんかの時と同じパターン。マメにチクリを入れる人でもいるのかしらん(笑)。

“BearCity”

dvd_BearCity
“BearCity” (2010) Douglas Langway
(米盤DVDで鑑賞→amazon.com

 2010年製作のアメリカ映画。ニューヨークのベア・コミュニティを舞台に、痩せ形でヒゲも体毛もないけどベア好きな若者と、その友人たちを巡るアレコレを描いたゲイ・ベア版ロマンティック・コメディ。
 キャッチコピーは「ロマンスは毛深くなれる」(笑)

 主人公タイラーは、NYに住む役者志望の青年。ゲイで、好きなタイプは「ヒゲ+毛深い+デカい」のベア系なのだが、自分は細くてヒゲも体毛もないので、ベア系の掲示板に登録しているプロフィールは写真なし、キレイ系の男が好きなルームメイトのゲイにも、自分はベア好きだとカムアウト出来ずにいる。
 そんなタイラーだったが、ある日、掲示板のチャットで話しかけられたことを切っ掛けに、勇気を出してベア系ゲイバーのイベントに出掛ける。そこにいるのはベア、ベア、ベア。そんな中に偶然、タイラーがオーディションを受けたときのカメラマンで、彼がちょっと意識していたベア系のフレッドがいた。
 フレッドはタイラーを、パートナーのブレントや他の仲間に紹介する。フレッドたちの部屋に空き部屋があり、ルームシェアの相手を探していた。タイラーはそこに引っ越し、更にブレントの働くベア・コーヒーショップでの職も得る。
 こうしてベア・コミュニティ内に入ったタイラーは、そこで出会った年上の男ロジャーを好きになる。ロジャーもタイラーを意識するのだが、彼のライフスタイルは特定のパートナーを持たない自由なもので、二人が何となくいい感じになりかけても、すぐに邪魔が入ってしまい……といった内容。

 こういったアウトラインをメインに、付き合って長いので倦怠期っぽくなっているカップルが、公認浮気や3Pに挑戦しようとするエピソードや、痩せるために胃の縮小手術をしようとする男と、それに反対して気まずくなってしまうパートナーとかいったエピソードが、合間合間に挿入されます。
 まあ何と言うか、いかにも「ベア系ゲイが、ベア系ゲイのために作った、ベア系ゲイの映画」といった感じの映画。
 というわけで、扱っている世界が良くも悪くも狭いので、ベア好きのゲイならけっこう楽しめると思うけれど、それ以外の人には……う〜ん、ちょっとどうなんだろうなぁ(笑)。
 コメディとしては、笑いのとり方が「あるある」系の小ネタと、ゲイゲイしい会話の応酬なので、クスクス笑えるネタは盛り沢山。個人的にお気に入りなのが、ベア好きなのをカムアウト出来ない云々の件で「ホントはジョン・ グッドマンがタイプなんだけど、人には『ブラピかっこいい!』とか心にもないことを言っちゃうんだよね……」ってヤツ(笑)。
 ただ、笑いがそういった小ネタに終始していて、大きな仕掛けがないのはちょっと残念。
 でもサービス精神は実に旺盛で、ヌードもカラミもエッチ場面もあり。主人公がなかなかラブをゲットできない分、脇キャラがあれこれにぎにぎしく動いてくれて、エッチ場面もロマンティックから3Pや乱交まで、もうタップリ入ってます(笑)。
 また、実際にNYのベア・コミュニティの人々が主体となって作っているらしく、そういったコミュニティ内を描いたリアル感は素晴らしい。出てくる人がホントに、実際にそこで生活しているゲイにしか見えないほどで、ベア系ゲイ・カルチャーを探訪できる観光映画的な魅力は大。

 というわけで、基本的には罪のないロマコメで、ベア好きのゲイだったらお楽しみどころも多々ありますが、それ以上のものはなし。
 個人的には、もうちょっとキャラの内面に迫るとか、普遍性や批評性とかいったプラスアルファが欲しいというのは正直な感想ですけど、まあこれはこれで良いのかな(笑)。
 ベア系ゲイが好きな人にとっては、実に愛らしい映画であることは確かです。軽〜い気持ちでお楽しみあれ。

 で、この”BearCity”、台湾版の公式予告編があったんだけど、タイトル『慾望熊市』…って、なんかスゴいわぁ(笑)。

 でもって、この台湾版予告編の中で「Who wants to eat my ass?」の中文字幕が「誰要品嘗我的熊菊?」ってのにも大ウケ(笑)。「熊菊」って(笑)。
 更にこの映画、ラストで「次はサンフランシスコだ!」みたいな感じで終わるんですが、何とホントに続編ができたようで、先日その続編”BearCity 2″のティーザー予告編が公開されました。

 来春アメリカ公開だそうな。
 相変わらずベア好きゲイ限定御用達の軽いロマコメっぽいですが、スタッフもキャストも続投している様子なので、なんかちょっと楽しみに(笑)。