さて、昨日から芋蔓式に続きまして、スティーライ・スパン(Steeleye Span)の初期作というのを探し、件の”Gaudete”が収録されている4thアルバム”Below The Salt”と、ジャケが気に入った2ndアルバム”Please To See The King”を買ってみました。
“Below The Salt” Steeleye Span
輸入盤CD
まず”Below The Salt”ですが、これは実に好みにドンピシャな内容でした。
全曲トラッドで、エレクトリック・ギターやエレクトリック・ベースは使われているものの、ドラムレスのせいか、ベスト盤に入っていた”All Around My Hat”といった曲ほどロック/ポップスっぽくもない。
“Gaudete”同様の無伴奏コーラス曲の”Rosebud In June”は、やはり文句なしに美しいし、いかにも牧歌的でのどけき雰囲気を感じさせてくれる”Spotted Cow”や”John Barleycorn”といった曲も良いし、”Sheep-Crook And Black Dog”や”King Henry”といった、ちょっと重めで構成や展開に凝った曲も聴き応えがあるし、アルバムのラストを締めくくる”Saucy Saylor”後半のインスト部分なんか、もう文句なしに美麗。他にも捨て曲なしなので、広くオススメできる好盤だと思います。
“Please To See The Kings” Steeleye Span
輸入盤CD
お次の”Please To See The King”ですが、誤解を恐れずに言うと、これ、かなり「変」で「面白い」です。
いや、内容的には極めて正統派のトラッドだと思うんですよ。”Below The Salt”のようにアレンジに凝ることもなく、もうストイックなまでにシンプルな伴奏に乗せて、マディ・プライヤー(Maddy Prior)嬢の美声を筆頭に、男声ソロ、コーラスなどが、淡々と切々とバラッドを歌い上げる。方法論的にはおそらくアカデミックな古楽に近い、ものすごいオーソドックスなものだと思います。
では、何が奇妙さを感じさせるかというと、エレクトリック楽器を用いた伴奏なんです。いや、エレクトリック・トラッドなんてジャンルがあるくらいですから、伴奏にエレクトリック楽器を使うこと自体は、別に珍しくはない。でも、そーゆーのって概して「ロック/ポップス的な視点でトラッド曲を再構築したもの」であるのに対して、このアルバムは、あくまでも「あくまでもトラッド的なスタンスで楽器だけを置き換えたもの」なので、それが結果として奇妙さを醸し出している。
どう奇妙なのかってぇと、ブン、ブン、ボン、ボンと低音を刻むエレクトリック・ベースに、エレクトリック・ギターやキコキコ泣くフィドルが被さり、それが色気のある展開も見せずに、淡々とリフレインしていくのを聴いていると、何だか次第にサイケデリックな酩酊感のようなものに捉えられていき、もうどの曲がどうだとか、何だかどうでも良くなってくるんですよ。で、何だかサイケデリック・フォークを聴いているような気がしたり、ミニマル・ミュージックのような気がしてきたり、はたまたシタールによるラーガなんか連想したり……という奇妙さ。トラッドものを聴いていて、テリー・ライリーを思い出したなんて、こんなこと初めてです(笑)。
でもまあ、最初はそんな感じでビックリしたものの、改めて落ち着いて聴き直してみると、これはあくまでも、渋くてちょっと暗めのトラッド・アルバム。前述したサイケ感やトランス感といったものは、意図せずに「そこはかとな〜く漂っちゃった」ものでしょうから、あらかじめソッチ系を期待して聴いちゃうと、裏切られると思いますが。
とまあ、あんまり広くオススメできる感じじゃありませんが、変わったもの好き、あるいはサイケ好きの方は、宜しかったお試しあれ。因みに私自身は、かな〜り気に入っちゃいました(笑)。
しかし、こうして聴いてみると、やっぱりマディ・プライヤーの声は魅力的だな〜と、改めて思ったんで、最近のソロ・アルバムの”Arthur The King”や”Gold Frankinsence & Myrrh”を、また聴き直したくなったりして……。
こうして私の芋蔓はズルズル続くわけであります(笑)。