『ヴァン・ヘルシング』スティーヴン・ソマーズ
“Van Helsing” Stephen Sommers
ユニバーサルのロゴがモノクロになって燃え出し、そのままジェームズ・ホエールの『フランケンシュタイン』のラストシーンへのオマージュへと続く冒頭(ただしフランケンシュタインの怪物の造形は、メル・ブルックスの『ヤング・フランケンシュタイン』に似ていますが)から、もう、飛ばす飛ばす。
アクションとCGIの派手派手な見せ所でテンコモリ、空いた隙間もコテコテのギャグと小ネタで埋め尽くす、ツッコミどころもまた楽しという、快作『ハムナプトラ』(もっとも『ミイラ再生』のリメイクを期待した方は激怒したとおもうけど)の監督ならではの作風は健在でした。当然、テンコモリすぎていささか胸ヤケを起こすところもおんなじ(笑)。
ただ『ハムナプトラ』がそういった作風と、登場人物たちの底抜けの脳天気さが見事に噛み合って、すンげー爽快感になっていたのと比べると、この『ヴァン・ヘルシング』は、主人公が影を引きずっていたり謎を帯びているせいか、派手派手演出がいささか空回りしている感もあり。やはり多少なりともシリアスな面も描くのならば、演出にももうちょっと抑制が必要ということか。
また、こーゆーモンスター・ムービーのファンというのは、基本的に退治する人間より退治されるモンスターに感情移入しちゃうもんなので、主人公のヴァン・ヘルシングの御披露目が、あーゆーハイド氏退治(しかもどういう「悪事」を働いたかは明示されない状態の)で始まると、モンスター好きとしてはどうもハンター側に感情移入しにくい。これだったらパリとバチカンはすっ飛ばして、トランシルバニアの兄妹から話を始めて、打ちひしがれた妹の村に謎のモンスター・ハンターがやってくる導入にしたほうが、感情移入もしやすいんじゃないか……なんて考えたりして。
でもまあ、ハンター役のヒュー・ジャックマン、馬を駆るときとかに流れる、重厚なストリングスにロマ風のギターがかぶるテーマ曲(?)はエラいカッチョイイし、ちゃ〜んとマッチョなヌードも見せてくれるし、まあ良しとしましょう。クライマックスで服がビリビリに破れて「腰布一丁」みたいな姿になったのを見たときゃ、腰布フェチのあっしとしては「ヒュー・ジャックマン主演でターザン映画を撮ってくれ〜っ!!」と、切に切に思いましたもん(笑)。
ヒロインのケイト・ベッキンセールも、このまえの『アンダーワールド』に引き続きの美麗っぷり。クルクル巻き毛に赤いコルセットに黒いパンツという姿が、バッチリ決まっておりました。
デヴィッド「ファラミア」ウェンハムちゃんは、『指輪』のときとの違いにはビックリギョーテンですが(笑)、コメディ・リリーフならもうちょっとはっちゃっけても良かったかも。
物語的には、ドラキュラとフランケンシュタインを「命」というテーマで括るという視点は、なかなか面白いと思います。ドラキュラと狼男(余談だが、なぜ werewolf に「ウルフマン」なんつー訳を当てはめたのかは理解に苦しむ。フツーに「狼男」や「人狼」でいーじゃん。どこぞのDJじゃあるまいし……)というコンビの関係性への考察があるのも、これまた『アンダーワールド』同様に好印象。また、ドラキュラと400年間闘ってきた一族なんつーネタも、なかなかオイシイ。
惜しむらくは、ただでさえネタとして過剰気味なところに加えて、それらと話のある意味でのキモでもある、ミルトン的なネタの部分が、完全にミスマッチなところ。物語の背景に壮大な仕掛けがあるというのは好きだけど、この作品に関しては上手くいっているとはちと言い難い。
物語も演出も共々、「足すばっかりじゃなくて、たまには引くこともしましょーよ」ってなカンジ。
でもまあ、総合的にはとっても楽しく見れました。
美術や衣装は凝ってるし、ドラキュラ三人娘の「ヌードに翼→ドレス」のメタモルフォーゼは実に美しかったし、狼男はマッチョでカッコイイし(ちょっとだけ寝てみたい)、フランケンシュタインの怪物はちゃんと火を怖がるし、「フレンド」もあったし、実験室は吹き抜けで被験者も屋上に出てるし(凧があがっていなかったのは、ちと残念)、ドラキュラがオウチではマジモンの蝙蝠よろしく天井からぶら下がってるのにはウケたし、繭からアレが出たときはマジで椅子から飛び上がりそうになったし、「ありえね〜!」アクション・シーンには口元もほころぶし、「縛られた裸の男が悶え苦しむ」シーンもあるし(笑)、二時間ちょい、休む間もなく、でもあくまでもお気楽〜に愉しませていただきました。
さぁて、とりあえずサントラを買いに行くか!