“Samson” (1961) Gianfranco Parolini
またまた輸入DVDのご紹介。ブラッド・ハリス主演のソード&サンダル映画です。
ヤヤコシイことにIMDBを見ると、この”Samson”(伊語原題”Sansone”)の他に、制作年も監督もキャストも全く同じ”The Fury of Hercules”(伊語原題”La Furia di Ercole”)という映画が、別々の作品としてクレジットされている。後者は『ヘラクレスの怒り』というタイトルで日本公開もされているっぽいんですが、果たしてこの二本は同じ映画なのか。配役表を見ると、同じ役者でも役名がそれぞれ違う。ハリスの役名は、前者はサムソンで後者はヘラクレス。共演のやはりマッチョ俳優であるアラン・スティール(珍作だけど責め場はなかなか良い”Hercules Against the Moon Men”の人です)の役名も、前者はマシーニョで後者はカルドス。さらにヤヤコシイことに、前者の仏語版”Samson contre Hercule”では、スティールの役名は更にエルキュール(つまりヘラクレスですな)に変わってたりするんで、あーもうヤヤコシイ(笑)。多分、それぞれ固有名詞を変えているだけで、話や画像自体は同じ作品だと思うんですけど。
話の内容は、とある国(祀っている神がヴォータンだったりするので、イメージとしては北方系? でもヴィジュアルはギリシャ・ローマってカンジだけど)で、悪の女王と腹心の宰相が、本物の女王を地下牢に監禁して、国を乗っ取って支配していると、そこにサムソン(念のため、こーゆー映画の常ですが、旧約聖書のアレとはまったく関係ありません。単に怪力の英雄の名前ってことで。このサムソン君は「ゼウスよ!」なんて言ったりするんで、おそらくギリシャ系なんでしょう)がやってきて、国を本来の女王の手に取り戻す……ってなもの。で、実は悪の女王はサムソンと昔恋仲だったり、侍女は本当は正統の女王の忠臣で、しかもサムソンが偶然出会ったもう一人の怪力男(これがアラン・スティール)の妹だったり……ってなドラマが絡みます。
まあ話自体は、ありきたりとは言えそんなにつまらなくはないんですが、いかんせん演出が悪いんで、どうも全体的にノンベンダラリとした印象。殴り合いのケンカやら、レスリングやら、拷問やら、闘技大会やら、それなりに盛り沢山ではあるんですが、どれもこれも演出にタメがないので緊迫感がない、ワザとらしいコメディー・リリーフのヤセとデブ二人組による、下手なユーモア描写もマイナス要因にしかなってないし、スケール感も乏しく、セット共々このテの映画ではありがちな安さが漂う……ってなわけで、どうにもこれといった見所に乏しい。
ただ、一つヘンな見所(?)はありまして、悪の女王の宰相を演じているのが、何と若かりし頃のセルジュ・ゲーンズブル(!)なのだ。真っ赤なヒラヒラのチュニック着て、鞭を片手にヘンタイっぽい演技。アンタ、こんな仕事やってたのかい(笑)。
ブラッド・ハリスは、ガタイはいいですね〜。筋肉モリモリだし、固そうだし、切れもいい。顔は、まあそんなに好きなタイプじゃないけど、今回はフルフェイスのヒゲが似合ってるのでOK。そういや、ナチ女囚拷問映画『獣人地獄!ナチ女収容所』(トンデモナイ映画なんだけど、実はけっこう好き)で、やはりフルフェイスのおヒゲで神父さん役をやってたときも、けっこうイケたっけ。でも、ヒゲを剃ったら絶対イケないタイプだろうなぁ(笑)。同じ女囚モノの『(秘)ナチス残酷物語/アフリカ拷問収容所』(ホンットーにショーもない映画だけど、実はブラッド・ハリス以外にも、『七人のあばれ者』のリチャード・ハリソンとか、これまた果てしなく安い珍作なんだけど責め場だけはけっこう良い”Giant of Metropolis”のゴードン・ミッチェルといった、往年のマッスル・スターが揃い踏みだったりする)とか、『超人ハルク』で有名なルー・フェリグノの『超人ヘラクレス』(これもアホな映画だけど、実はけっこう好き。DVD化を切に希望)なんかにも出てたみたいだけど、そっちはちっとも記憶にないや。
ハリスとタイマンはるアラン・スティールも、肉体の重量感はバッチリ。ただ、ハリスの筋肉がなんとなく岩っぽいゴツさなのに対して、スティールの筋肉はちょっとお饅頭っぽい丸さ。マーク・フォレストなんかも、このお饅頭系ですな。アタクシはゴツい方が好きなので、ハリスの身体の方が好みでございます。スティールの顔は、何だかジャガイモみたいで可愛いんですが、今回はヒゲがないからな〜……ヒゲフェチの私としては、ちと物足りない。
さて、お楽しみの「責め場」でございます。
まず、サムソンが石牢に閉じこめられ、ハンドルが廻されると、別室の部下二人が手首を鎖で吊り上げられ、同時にサムソンにも鉄のスパイクの生えた石壁が迫ってくる……というシーン。アイデアは悪くないんですが、前述した演出の悪さで緊迫感ゼロ。手首吊りはちっとも辛そうに見えないし、石壁も怪力であっさりクリア。む〜ん、こんなんじゃ物足りんわい。
次に、馬裂きにされそうになる侍女の救出シーン。サムソンが現場に駆けつけ、侍女の手首の縄を握って耐える……と思ったのもつかの間、これもあっさりクリア。物足りなさ×2。
クライマックスの闘技場のシーン、その1。燃える炎を挟んで、サムソンが多勢を相手に鎖で綱引き。じりじり引きずられて、肌が炎に炙られそうになる……なんてオイシイ描写もなく、またまたあっさりクリア。物足りなさ×3。
闘技場、その2。サムソンが目隠しをされて、丸木橋の上に乗せられ、剣で闘わされる。丸木橋の下は、一面の鉄のスパイク。しかも闘う相手は、アラン・スティール演じる朋友! 彼もまた目隠しをされていて、互いに相手が誰だか判らない。闇雲に振り回す二人の剣が触れ合い、丸木橋から落ちそうになり……なんてスリルもそこそこに、相手が「かかってこい!」ってな一声。サムソンは目隠しを外して「お前かぁ!」相手も目隠し外して「サムソン!」あとは二人で力を合わせて悪人退治。ここらへんで、物足りなさは既に臨界点に。
まったくもー、どれもこれも演出が悪すぎ!
ただまあ、「責め場」以外の「肉体の見せ場」は、こちらはそれなりに充実しております。
開始早々、偶然であった半裸のマッチョ二人は、狩りの獲物のイノシシ巡って殴り合い。ガツンと殴られると、相手の強さに感心して「はっはっはっ」と笑い、殴り返す。で、取っ組み合って、投げ合って、ケンカの最中にリンゴ囓って、また殴り合い。う〜ん、体育会系(笑)。重量級二人の筋肉のぶつかり合いを、タップリ堪能できます。
それからも、サムソンが宮殿でレスリングの御前試合したり、酒蔵で再会した怪力男二人が、またまた殴り合ったり、二人で力を合わせて、寺院の石柱を引き倒したり(ここは演出のマズさ=タメがないので、イマイチですが)、まあマッチョ一人より二人の方が二度オイシイってなわけで、肉体美そのものはタップリ拝ませていただけます。
DVDのリージョンはフリー、画像サイズはトリミングされたTVサイズ。字幕・特典共に無し。
画質はかなりボケていて、しかも退色も激しく、全般に赤茶けちゃってます。中の下。
“Samson” DVD (amazon.com)
で、実はこの映画、PAL版のDVDも出てまして、それがこちらの”Samson contre Hercule”。
フランス盤です。そのせいか、ジャケットにハリスやスティールの名前はなくても、ゲーンズブールの名前だけはしっかり入ってる(笑)。
こちらの画質は、アメリカ盤に比べるとかなり良好。多少はボケてますが、それでもディテールの再現性はアメリカ盤を遙かに凌ぐし、加えて色もビックリするほどキレイで鮮やか。
リージョン・コードは2。画像サイズはノートリミングで、スクィーズなしのレターボックス収録。トリミング版だと避けられない、ワイド画面の構図の狂いがないのは、やっぱ良い。音声は仏語吹き替えのみ。字幕無し。特典は、予告編(ただしオリジナルではなく、同じ会社が発売しているソード&サンダル関係のソフトの画像を、独自に編集したもの)、ハリス、ゲーンズブール、監督のフィルモグラフィー(仏語ですけど)、フォトギャラリー(のふりして、実はスチルではなく、単にビデオのキャプチャー画像を並べただけというインチキもの)。
まあ、とにかく画質で言うなら、こっちの方が断然「勝ち」なので、PALの再生環境をお持ちの方なら、フランス盤の方がオススメです。
あ、でもジャケはちょっといただけないけど(笑)。