去年見逃しちゃって悔しかったリメイク映画を、二本続けて鑑賞しました。
『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004)ザック・スナイダー “Dawn of the Dead” (2004) Zack Snyder |
中学生のときに見たジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』は、当時えらく恐がりだった自分が初めて劇場で見たホラー映画だったというせいもあって、かなりのトラウマもんでした。劇場ではオッカナイシーンになると目をつぶり、それでも後々まで延々と夢に出てきて、何と社会人になってもゾンビに襲われて喰われる悪夢を見たほどで(笑)。
因みに当時の自分がどのくらい恐がりだったかというと、映画雑誌で『タワーリング・インフェルノ』や『ジョーズ』の「あらすじ」を読んだけで、もう恐くて恐くて「ゼッタイにこんな映画は見ない!」と決心したほどで、もちろん『エクソシスト』や『サスペリア』なんか、リアルタイムでは論外でした。
そんな私が、いつの間にかホラー映画大好きで、残酷描写も嬉々として描く作家になってんだから、人間ってホント判んないもんです(笑)。
で、このリメイクですが、アクション映画的にすこぶる面白くて、特に導入は絶品! 日常から非日常への移行を、もうグググーッと一気に引っ張ってくれて、作品世界に突入させてくれる。一連のシークエンスを経て、カメラが引いて壊滅した街の俯瞰になるあたりなんか、もう拍手モンの素晴らしさ。
話が本筋に入って以降も、若干盛り込みすぎだったり、キャラクターをさばききれていないきらいはあるものの、見せ場はふんだんにあるし、テンポも良い。全力疾走で追っかけてくるゾンビは「こっわ〜っ!」だけど、食人という要素がなくなっているせいか、神経に障るグロ描写は意外と少ない。人間のイヤ〜な側面描写も控えめだし、これだったらトラウマにはならずに済んだかも。
反面、終末感や閉塞感や絶望感、あるいは人間という存在に対する根本的な厭世観は乏しい……っつーかほとんどないので、オリジナル版のそーゆー部分が好きな人には物足りないかも。でも、これは正しいリメイク方法だと思いますよ。娯楽作としては文句なしの出来映え。こういう満足感のあるホラー映画って、最近だと『デッドコースター』以来かも。
まあ、もうちょい悪夢的な要素も欲しい気はしますが、それ以外でこれだけ面白けりゃ、なくっても充分にオッケーでございますよ。
主演のサラ・ポーリーは、NHKでやってた『アボンリーへの道』しか見てないんで、「おやまあ、大きくなったわねぇ」ってカンジで、すっかり近所のオバサン気分(笑)。
後は、キャラ的なオイシさと肉体のゴツさが相まって、黒人警官とCJっつー警備員がお気に入り。
そういや、キャラの中にトランスジェンダーかトランスベスタイトを示唆するようなシーンのある人もいたけど、そこいらへんは面白さよりも、さばききれなさに繋がってしまった印象だなぁ。
因みに私は、最初に述べたような理由もあって、ゾンビ映画にあんまり愛着はないんですが(笑)、いちおう過去に見たゾンビ映画で一番好きなのは、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世紀』(1990)。これまたロメロのオリジナル版ではなく、トム・サビーニのリメイク版の方。この映画のラストシーンは、何だかパゾリーニみたいでマジで好きです。
『テキサス・チェーンソー』(2003)マーカス・ニスペル “The Texas Chainsaw Massacre” (2003) Marcus Nispel |
こっちのオリジナル版、トビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』は、既にホラー映画好きになった後にビデオで見たんですが、それでも「うわ、なんかマズいもん見ちゃったかな……」っつーよーな、何とも言えない後味でした。スゴいんだけど、人にはこれを好きだと言えないような、そんなカンジ。
で、「その感じ」はおそらく意図しては出せない類のものだと思うので、リメイクにはあんまり期待してなかったんですよね、正直なトコロ。
ところが、ネットで予告編を見たら、一気に自分の中で盛り上がっちゃって。っつーのも、タイプがいまして(笑)。汚いブロンドの長髪で、無精髭で、でも良く見ると整った顔で、汗じみたタンクトップで、ガタイも良さそうな若造。こうなると、こいつがどう××されるか楽し……あわわわ(笑)。いや、我ながら業が深いと思いますよ、まったく。
で、鑑賞したところ、これが意外と良かった。日常から非日常へじっくり時間をかけて移行していく前半は、前述の『ドーン・オブ・ザ・デッド』とは間逆ですが、これまたなかなか佳良。埃っぽい田舎道と照りつける太陽、肌に浮かぶ汗といった空気感のある映像も美麗。若造どものキャラのさばきかたも上手いし、狂気の一家との対比も上手く見せている。オリジナル版とどこをどう変えるかといったヒネリも、上手い具合にブチ壊しにならない範囲で、良く工夫されていたし。ショッカー演出があると同時に、雰囲気でジワジワくる恐怖感がちゃんとあるのも嬉しい。
それでもまあ、不満点もありますけどね。一家に唯一マトモな子供がいるとか(あたしゃゼッタイに、こいつはマトモそうに見えて、実はヒロインを更にイヤな方向に持っていく罠だと思った)、赤ん坊の救出劇とか(さらった赤ん坊というネタは悪くないんですが)、そこいらへんは「不条理」や「理不尽さ」という魅力を損なってしまっているようで、どうもいただけない。でもまあ、それもメジャー映画の宿命なんでしょうし、そういう部分があるからこそ、ある意味で安心して見られるような(つまり前述の「うわ、なんかマズいもん見ちゃったかな……」っつーよーな後味にはならないような)、そーゆーポジティブな効果もあるわけだし、これはこれで良いのかなぁ。
あ、あとメタフィクション風味にするのはいいけど、エンド・クレジットにまでも「実話を基にした云々」が入るのは、ちょっとどうかと思ったぞ。この映画とエド・ゲインの事件の、内容的な隔たりを考えると……ね。
ともあれ、オリジナル版と路線的にさほど異ならない分、逆に比較せざるをえない部分もあり、そーゆー意味ではイロイロと言いたくもなるんだけど、そこさえ気にしなければ、恐いし美しさもあるし見所も一杯の、立派に標準以上の出来映えのホラー映画です。
で、役者ですが、前述の私のお目当てだった若造クン(マイク・ヴォーゲルというらしい)に関しては、もう「うぉぉぉ、こいつがこの役回りかぁ〜ッ!」ってなカンジで、もう「期待以上だった!」とだけ(笑)。これだけで、もう個人的な偏愛映画に決定であります。
あ、他の若造どもも、それぞれ好演でした。特にオトコノコ連中は、なかなかのもの。ヒロインに関しては、キャラ立ちや演技云々よりも、オッパイの形の良さの方が印象深いかな(笑)。
狂気の一家の方は、それぞれ工夫はあるけれど、保安官とオジイチャン以外は、意外と影が薄いような。特にレザーフェイス君、要もう一頑張り。
で、いきなりですが、これを見ていたら、一つ古〜い映画を思い出しまして。ジェームズ・ランディス監督・アーチ・ホール・Jr主演の『サディスト』(1962)という白黒映画。
三人の教師が乗った車がドライブ中に故障して、人気のない田舎道の自動車工場で殺人鬼に出会うという話なんですが、これがなかなか見応えのある良い映画でして。炎天下の田舎道の埃っぽさと、そこで繰り広げられる理不尽な殺人劇のコントラストとか、巻き込まれ型の不条理さとか、精神的に追いつめられていくピリピリ感とか、ちょっと『悪魔のいけにえ』や『テキサス・チェーンソー』にも通じる魅力があります。
因みに私は、リアルタイムで見ていた相棒に教えてもらい(あたしゃ公開時には生まれてすらいないもんね)、輸入DVDを入手して見たら、「おお、掘り出し物!」ってカンジでした。
機会があったら、ぜひご覧あれ。
ハッピー・エンドは物語の中にだけ
「テキサス・バーニング」★★★☆
2002年米、wowow
コートニー・B・ヴァンス、イーモン・ウォーカー
WOWOWの番組表を見て、
内容も見ずに
何故かホラー映画と
勘違いして録画し、
タイトルリストで
「あーそういえば
ホラーを録画してたっけ」と
気が付いて……
ゾンビ映画の傑作!昨年ホラーナンバーワン
「ドーン・オブ・ザ・デッド」(DVD)★★★★★満点!
サラ・ポーリー主演
ジョージ・A・ロメロ監督の
1978年製作「ゾンビ」のリメイク。
自分は今でも
この映画のワンシーン、
エレベーターが開くとゾンビが
中からワッと雪崩出てくるシーンを
ひとりエレベー……