『ゴッドandモンスター』のノートリミング版DVDが発売

 昨日、6月24日、ギャガ・コミュニケーションズ/ビクターエンタテイメントから、ゲイ映画の名品『ゴッドandモンスター』のDVDが発売。
 とはいえ、同作のDVDは既に、アットエンタテインメント/ハピネット・ピクチャーズから発売されていたんだけど、残念ながら画面の両端をトリミングした4:3スタンダード版だったのだ。
 今回は、ノートリミング、レターボックスのビスタで、16:9のスクイーズ収録。ネットショップ等では、4:3スタンダードと表記されていたりしたんけど、店頭で現物を調べたら、前述の表記。で、買ってプレーヤーで再生してみると、やっぱりちゃんとノートリミング版。
 本編のみで、北米版についているようなメイキング等のオマケは、何も入っていないのは残念だけど、とりあえず、ようやくノートリミング版が国内発売されたというだけでも、嬉しい限り。
 2625円と、比較的安価でもありますので、旧盤のトリミングに不満をお感じだった方、宜しかったらお買い換えあれ。
 もちろん、未見の方には激オススメです。
 内容は、実在したゲイの映画監督ジェームズ・ホエールの晩年を、彼の代表作でもある『フランケンシュタイン』『フランケンシュタインの花嫁』と絡めながら、詩情豊かに、凄みを交え、生と死、愛と狂気の狭間を漂いながら、切なく描いた物語。
 ジェームズ・ホエールを演じるのは、これまたご本人がオープンリー・ゲイであるサー・イアン・マッケラン。『ロード・オブ・ザ・リング』のガンダルフじいさんですな。本作では問答無用の名演で、アカデミー主演男優賞にもノミネートされました。冒頭で見せるキス・シーンは、その自然さといい、さりげない愛情の深さといい、個人的に「映画で見る男同士のキス・シーン」のベストの一つ。あと、ガーデン・パーティーでホエールが、彼同様にゲイだった映画監督ジョージ・キューカー(『マイ・フェア・レディ』とかの監督さんです)と、オネエさん風のイヤミを飛ばしあうシーンは、映画好きのオカマなら受けること必至。
 ホエールを惑わす(とゆーと語弊があるか)逞しい庭師に、ブレンダン・フレイザー。『ハムナプトラ』の主役のアンチャンが一番馴染みがありそうですが、『ジャングル・ジョージ』から『聖なる狂気』まで、かなり芸域の広いお方。本作では「全裸+ガスマスク」とゆー、フェティッシュ・スタイルを見せてくれます。
 二人の関係を傍らで静かに見つめる老家政婦に、リン・レッドグレーブ。ヴァネッサ・レッドグレーブの妹で、お姉さんと違ってぜんぜん美人じゃないけど、演技は実力派。本作の演技でアカデミー助演女優賞にノミネート、ゴールデン・グローブ助演女優賞を受賞。
 監督および脚本のビル・コンドンは、本作でアカデミー脚色賞を受賞。
 製作総指揮には、ホラー小説好きやホラー映画好きにはお馴染みのクライヴ・バーカー。『血の本』『ヘルレイザー』『ミディアン』『キャンディマン』あたりが有名かな。で、この人もオープンリー・ゲイ。
 カーター・バーウェルのスコアも良く、あたしゃサントラ盤を買いました。
 で、この映画を見て気に入ると、今度は実際のジェームズ・ホエールの映画も見てみたくなる……という方もいらっしゃるかと思います。
 もちろん、本作で引用がある『フランケンシュタインの花嫁』も名品なんですが(どーでもいいけど、この花嫁役のエルザ・ランチェスター、実生活で夫だったチャールズ・ロートンも、これまたゲイだったという。で、彼女は夫がゲイだと知りつつ、それでも彼を愛していたそうな。あと、『ゴッドandモンスター』内で再現されている『フランケンシュタインの花嫁』の撮影風景を見ると、同作でプレトリウス博士を演じているアーネスト・セジガーも、もうバリバリのオネエサン)、個人的にオススメしたいのは『透明人間』。これはテンポの良さといい、特撮的な見せ場といい、サスペンス的な演出といい、随所に仕込まれたユーモアといい、1933年制作の映画とは信じられないくらいに、面白くてモダン。
 因みにヒロインを演じているグロリア・スチュアートは、この映画から64年後に制作された、あの『タイタニック』で、老いたローズ、すなわちオバアチャンになったケイト・ウィンスレットを演じていた女優さん。
 もひとつ、この映画で宿屋の女将を演じているウナ・オコナーという女優さんが、甲高いヘンな声といい、素っ頓狂なオーバーアクトといい、もう大好き! 『フランケンシュタインの花嫁』にも出てますし、エロール・フリンの『ロビン・フッドの冒険』でのオリビア・デ・ハヴィランドの侍女役とか、ビリー・ワイルダー監督の名作ミステリ『情婦』(これには前述のエルザ・ランチェスターとチャールズ・ロートンも、夫婦揃って出演してます)の耳の悪い家政婦役とか、チョイ役なんだけど、どれもオカマ心の持ち主にはタマンナイ演技です(笑)。
 ここいらへん、全部DVDで出ていますんで、レンタルで探すなり、いっそ買っちゃうなりして、よろしかったらお試しあれ。