『ヘラクレス』フランス盤DVD

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『ヘラクレス』ピエトロ・フランチーシ(1957)
“Les Travaux d’Hercule” (1957) Pietro Francisci
 前にここでドイツ盤DVDを紹介した、スティーヴ・リーヴスの『ヘラクレス』(1957)の、フランス盤DVDを入手したのでご紹介。因みに同盤は既に廃盤っぽく、出遅れて購入しそびれてしまい残念に思っていたんですが、先日amazon.frのマーケット・プレイスに出ていたんで、ようやく購入できました(笑)。

 まず、尺の話から。
 米盤の105分、独盤の88分に対して、この仏盤は97分。IMDbでは Runtime:98 min / USA:107 min とあるので、とりあえずインターナショナル・ヴァージョンとしては全長版ってことでしょうか。
 では、米盤との尺の差は何なのかというと、DVDで見る限りは、一つはオープニング・タイトルとエンド・クレジットの違い。仏盤と独盤のオープニング・タイトルは、赤地に黒の壺絵風の飾り罫の中に白文字でタイトル等が出るというパターンですが、米盤は星座や稲妻のアニメーション仕立て。で、仏盤と独盤にはエンド・クレジットがないんですが、米盤では前述した未使用だった壺絵風のオープニング・タイトルが、エンド・クレジットとして映画の最後に挿入されている。このダブリの有無が、尺の差の一つ。
 ただ、それだけだと8分もの差は出ないので、他に何か米盤にはあって仏盤にはないシーンが何かあるのかとも思いますが、現時点では発見できず。少なくとも、独盤の紹介時に書いたような明白な欠如はないみたいです。
 あと、DVDソフトという点だけに限って言えば、NTSCとPALの違いもあるのかも知れませんね。試しに、米盤と仏盤をタイミングを計って同時に再生してみると、仏盤の方が少しずつ前へ前へとズレていきました……って、なに暇なことやってんだ、自分(笑)。

 次に画質と音声。
 画質は、極めて良好。退色、ボケ、傷等は、ほとんど気にならないレベルで、音声に若干ノイズがのる部分があるくらいで、メジャーのクラシック作品と比較しても遜色はない。米盤の極悪画質に馴染んでいると、もう涙ちょちょぎれんばかりの美麗さ(笑)。下の方に比較用のキャプチャ画像をアップしたんで、ご参考に。
 加えて収録はスクイーズ。ただ、ちょっと良く判らないのが、以前ここで紹介した『海賊の王者』イタリア盤同様に、S-VHS接続で見ると4:3の非スクイーズなしで、コンポーネント接続のプログレッシヴ再生で見ると16:9スクイーズになる。これ、私が知らないだけで、そーゆー規格があるんでしょうかね、DVDに。
 音声は仏語、伊語、英語を収録。字幕は仏語のみ。一つ残念なのは、伊語や英語で再生中は、仏語字幕が強制的に表示されて消せないこと。

 さて、以上のようにソフトとしては大満足……と言いたいところなんですが、一つ腑に落ちないことがあり。ちょっと、米盤独盤仏盤を比較した、キャプチャ画像を見て下さい。
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 画質に関して言えば、米盤は退色してるわボケボケだわ傷だらけだわと、もう悲しくなっちゃうようなレベルなのに対して、独盤と仏盤は実に鮮明なのがお判りかと。特に仏盤は良く、独盤は画像がややボケ気味で、色合いも鮮やかではあるものの、いささか彩度が高すぎて不自然なのに対して、仏盤は画像は締まってディテールの再現性も良く、色合いも自然かつ退色も見られない。
 が、腑に落ちないのは画質の話ではなく、画角なんですな。
 米盤は左右がトリミングされたテレビサイズ、独盤はビスタ、仏盤はシネスコなんですが、米盤や独盤と比べると、仏盤には上下に欠けがある。となるとこのシネスコは、ビスタの上下にマスクをかけたものなのかと思いきや、画面の左右は独盤では入っていない部分がある。う〜ん、どれがオリジナル・サイズなんだろう?
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 タイトル画面を見比べると、まずこれは仏盤のものですが、壺絵風の飾り罫が左右にも入っていて、天地の比率もほぼピッタリ収まっています。
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 次に独盤を見ると、飾り罫は上下のみ。となると、タイトル・デザインを見る限りでは、シネスコを前提として制作されているような気はします。
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 ついでに、アメリカ盤のタイトルはこれ。……って、どーよ、これ(笑)。ハンナ・バーベラのアニメじゃないんだからさぁ(笑)。
 ……とまあこんな具合で、尺と画角に不明点はあるものの、とりあえずこの仏盤、現時点で私が入手した『ヘラクレス』のDVDでは一番ベスト。PALの再生環境がある方だったら、オススメ。
 米盤では色が抜けて見る影もなくなっちゃっているシルヴァ・コシナの居室とか、やはり米盤では色もディテールもベタッと潰れてしまっているアマゾネスの宮殿とか、仏盤で見ると息を呑むほど美しいです。あ、もちろんリーヴスの肌の艶とかもね、もうツヤツヤでスベスベで、頬ずりしたくなるくらい(笑)。私もこーゆー人に、チャリオットで後から抱かれてみたいもんです(笑)。