渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催されている『ポンペイの輝き』展に行って参りました。
とにかく、キュレーションが興味深かった。
展示内容を種類別に分けるのではなく、それが出土したエリア(建物)ごとに分けている。そして、そこから出土した品物や、型どりされた犠牲者の姿を展示すると同時に、解説文で、その地域(建物)がどういうもので、どんな人々が居住しており、どんな風に災害に巻き込まれて亡くなったのかを説明するという構成です。
普通の美術展やコレクションの展覧会だと、主役は「芸術的あるいは考古学的に価値の高い」美術品や出土品になることが多いと思いますが、この展覧会の場合はこの構成法によって、「人々の生活そのもの」を展覧会の主役として見せることに成功しています。
それは、例えば宝石細工師であったり、船倉庫で働く労働者であったり、裕福な解放奴隷であったり、幸せであったであろう一家であったり、つまり、歴史の表舞台に出るわけではないが、それでも確実にその時代に生きていた「市井の人々」です。そして、彼らが日常的に使っていた品物(装身具であるとか家具であるとか台所用品であるとか)を見ることによって、どういった暮らしをしていたかということに思いを馳せ、同時に災害時の状況の解説を読むことや、その遺体の型どりを見ることで、その死の様子にも触れることができる。
つまり、会場を巡って展示品を見るという行為が、すなわち「そこにどういう人々が暮らし、いかに生き、そして、いかに死んだか」ということに触れるということになり、例えて言うならば、体感するドキュメンタリー番組といった味わいです。
展示されている日用品の、現代のそれと変わりのない構造を見ると、同じ人間がそこに生活していたんだなと尚更に感じますし、壁画等で建物の一部を再現しているコーナーでは、本来であれば現地を訪れなければ触れることができない、その生活空間そのものの一端も垣間見ることができる。
それと同時に、美しい細工の宝飾品に感嘆したり、大理石の彫像や色鮮やかな壁画といった、美術鑑賞的な面白さもあります。
個人的には、ヘレニズム調ではないアルカイック調の彫像というのが、興味深かったですね。ああ、レトロブームみたいな流行って、2000年前にもあったのか、なんて面白く思ったり。あと、自分はここんところコンピュータ作画ばかりなので、2000年前に描かれた壁画の生々しい筆のタッチを見て、ああ、久しぶりにアナログで大きい絵も描いてみたいな、なんて思ったり。あ、あと、居酒屋の壁画というのも面白かった。二人の客が「俺の方が先に注文したんだ」と争っている続き絵で、まるで4コママンガみたい(笑)。そうそう、剣闘士の兜とか肩当て、脛当てなんかを見られたのも嬉しかった。
ってなわけで、展示内容は見応えがあります。ただ、前述したように主役はあくまでも「人々」の方なので、それを意識せずに漫然と見てしまうと、似たような品々がエリアごとに繰り返し出てくることに退屈するかも。鑑賞者にも、受動的であるだけではなく能動的な想像力を要求する展示法ですが、ハマればすごく面白いはずです。
そんなこんなで、かなり満足して会場を後にし、出口でカタログを購入。展示品には小さくてディテールが良く判らないものもあるし(ところどころにルーペは備えられているんですが、それでも限界あり)、テキストの重要性もあるので、後々にもじっくり楽しむためにも、私的には「買い」でした。
展示品のレプリカを使った、キーホルダーやらマグネットといった小物などもあり、その中からデザインが気に入った「ブッラ」を模したキーホルダーを購入。あとは金貨のレプリカとか、定番の絵葉書や一筆箋、オリジナルのチョコレート、Tシャツ、スカーフなんかも売られていました。最近の展覧会は、昔と比べるとこういったオリジナル・グッズが充実してきているのは、何かと楽しいですね。
隣のミュージアム・ショップでは、関連したポンペイやイタリア関係の書籍なんかも平積みになっていました。ただ、ポンペイ関係だけでは足りなかったのか、ギリシャものもけっこうあったけど(笑)。
展覧会の後は、隣のカフェでお茶。ポンペイ展に併せたオリジナル・ケーキが二種類あったので、ケーキセットを注文。このセット、展覧会の半券があれば割引になりますので、喰ってみたいという方はなくさないように(笑)。
「ポンペイの輝き」展を観た!
Bunkamuraザ・ミュージアムで開催されている「ポンペイの輝き」を観てきました。チラシには「古代ローマ都市最後の日・西暦79年8月24日ヴェスヴィオ山噴火。人は運命から逃れられない」とあります。5年前の江戸東京博物館に続き、「ポンペイ展」は2回目ですね。たしか5年前の…