『ヘラクレス/ヘラクレスの逆襲』オリジナル・サウンドトラック

hercules_cd
“Le Fatiche di Ercole / Ercole e la Reggina di Lidia (O.S.T.)” by Enzo Masetti
 マカロニ・ウェスタンやジャーロ映画のサントラ復刻でお馴染みのDigitmoviesから、スティーヴ・リーヴスの『ヘラクレス/ヘラクレスの逆襲』のサントラが、二枚組CDで発売。いや〜、まさかまさかの復刻なので、実に嬉しい。
 音楽はエンツォ・マゼッティ。この二本以外は良く知らない人なので、ちょっと調べてみたところ、イタリア映画音楽の先駆者として尊敬されている人物、とのことで、何と生年は1893年、19世紀生まれの方でした。『ヘラクレスの逆襲』が最後の仕事で、2年後の1961年には既に亡くなっている。う〜ん、これだけキャリアの古い方だと、馴染みがなくても当たり前かも。
『ヘラクレス』も『ヘラクレスの逆襲』も、スペクタクル映画とはいえ、ハリウッド製の本格史劇とは異なり、どこか軽い楽しさや陽性な明るさがあるのが魅力的な作品ですが(キリスト教絡みではないので、辛気くささや説教くささも皆無だしね)、劇判の方も同様で、重厚さや大仰さよりは、親しみやすいポップな楽しさや、ロマンティックさが印象に残ります。
 特にロマンティックさの方は、流麗なストリングスや美しいコーラスの効果も相まって、ラウンジ系のムード・ミュージックにも似た、実にデリシャス・ゴージャスな味わい。中でも二作通じての「愛のテーマ」とでも言えそうな”Con te per l’eternita”(というタイトルだと、今回初めて知りました)は、なかなかの名曲。
 CDの作りは、復刻盤として丁寧に作られています。
 オーケストラ・スコアが収録されたオリジナル・マスターを基に、映画の時系列に併せて再構成されたものらしく、モノラルながら音質的には問題なし。もちろん過去には未発表だった音源も多々あり、珍しいところでは、ミックス違いやデモ音源なども、ボーナス・トラックとして収録。
 一つ残念だったのは、『逆襲』のイオレの歌(演じていたのはシルヴァ・コシナですが、歌は吹き替えで、実際に歌っているのはのMarisa Del Frateという人だそうな)が、権利の関係か収録されていなかったこと。ライナーを読むと、過去にこの二作のサントラ盤は、ナレーションやダイアローグ付きのバージョンとか、Marisa Del Frateの歌が収録されたバージョンが、アナログで出ていたらしいので、どうせならそれも併せて復刻できていれば、もうパーフェクトだったんですけどね。
 あ、でも『ヘラクレス』のアルゴ船の乗組員たちが歌う船乗りの歌が、ちゃんと入ってたのは嬉しかったなぁ。この歌、映画で見るとちょっと唐突でビックリしちゃうんですけど、個人的にはけっこう好きなもので(笑)。
 音以外のジャケット等に関しては、パッケージ自体は何の変哲もない二枚組用のジュエルケースですが、12ページあるブックレットは、なかなか佳良。
 もちろんサイズはCDサイズと小さいんですが、両映画の各国版ポスターやロビーカードの画像が、フルカラーで掲載されています。CDの盤面も、これらの図柄を使ったピクチャー・ディスク仕様で、なかなか美しい。
 白黒のスチル写真も何点か掲載されており、プロモーション用のスチルもあるんですが、多くは舞台裏の楽屋写真なのが、何だか楽しくてヨロシイ。ヘラクレスの扮装のまま、カチンコ持ってふざけているリーヴスとか、撮影担当だったマリオ・バーヴァと談笑しているリーヴスとか、スクリーン上の凛々しさとは異なるくだけた笑顔が実にカワイイ。無防備に大股開きで椅子に座ってるもんだから、パンチラどころかパンモロだし(笑)。
 さて、気になるのがこのCD、”The Italian Peplum Original Soundtracks Anthology Vol.1″ と銘打たれているんですな。で、この「イタリア製ピラピラ映画」って、おそらくはソード&サンダルと同義だと思うんで、するってーと、今後の発売も楽しみに。
 何が出るのかな〜、ワクワク(笑)。
『ヘラクレス』『ヘラクレスの逆襲』サントラCD輸入盤(amazon.co.jp)