Tanit Jitnukul監督、追補

 先日の“Bang Rajan”が良かったので、同じ監督のホラー映画『アート・オブ・デビル』(2005)を見てみました。
 ……やっぱダメかも、この監督(笑)。
 冒頭のツカミにショッキングなシーンを持ってきて、その後、いっけん何の関係もなさそうなモノガタリが始まり、それがいかにして冒頭のシーンにつながるか……という持っていき方なんですが、それが馬鹿正直に時系列どおりズラズラ見せるだけで、芸もへったくれもない。
 その結果、身辺で奇怪な現象が続発するホラーであるにも関わらず、「何(誰)が元凶(犯人)か」、「その現象がどうやって起きているか」「これからどうなるか」ってな要素が、見ているこっちには全て事前に丸判り……って、いくら何でもこの構成はねーだろう(笑)!
 現代の都会の中にも、土俗的で泥臭い「呪い」が……っつーネタそのものは悪くないけど、せめて「誰が何のために呪いをかけているのか?」ってのくらいは、伏せて話を進めろよ!
 で、観客にとっての「謎」の要素が全くない以上、残る期待は唯一、恐怖感の描出やショックシーンの見せ方になるんですが、これがまた、どーしちゃったのってくらい、演出力がない。オマケに、呪いなら呪いだけに徹すりゃまだしも、下手に色気出して幽霊とかも絡めるもんだから、余計に収拾がつかなくなっている。
 え〜、何とか、どっか面白いところも思い出してみると……うん、仏様のお供えを食べちゃってバチが当たるあたりは、いかにも敬虔な仏教とが多いタイらしいな〜とか、『ラスト・ウォリアー』同様に胎児をミイラにして呪術に使うんですが、これはタイでは伝統的なネタなのかな〜とか、床屋と呪い屋が兼業ってのは、呪術に毛髪を使うという点では、理に適ってると言えなくもないかな〜とか、ま、そんなトコでしょうか(笑)。
 ってなわけで、結論。
 Tanit Jitnukul監督、四本見させていただきましたが、どうやら”Bang Rajan”はフロックだった、ってことで(笑)。

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