『闘将スパルタカス』

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『闘将スパルタカス』(1963)セルジオ・コルブッチ
“El Hijo De Espartaco” (1963) Sergio Corbucci

 スティーヴ・リーヴス主演のソード&サンダル映画、スペイン盤DVD。伊語原題 “Il Figlio di Spartacus”、英題 “The Slave” a.k.a. “Son of Spartacus”。

 リーヴス演じるローマ軍人ランダスは、隣国の提督のもとに間諜として派遣されるが、船旅の途中で海に落ちてしまう。何とか岸までは泳ぎついたものの、今度はそこで奴隷商人に出くわして、捕らわれて奴隷にされてしまう。ほどなくランダスは、奴隷仲間と共に脱出し、目的地であった提督の館に着くが、そこでは民人が虐げられていた。そしてランダスは、奴隷仲間の一人の導きによって、自分がスパルタカスの遺児であると知り、以来、黒い鎧兜で正体を隠した姿で、民衆のために戦う義賊となる……ってのが、大筋。
 この内容で『闘将スパルタカス』っつー邦題は、一種の詐欺ですな(笑)。

 全体のノリは、史劇やスペクタクルというよりは、西洋チャンバラ映画に近く、「弱きを助け強きを挫く」系の、痛快娯楽作。
 じっさい、正体を隠したランダスが立ち去った後には、壁に「S」の文字が残されている……といった、まんま「怪傑ゾロやん!」みたいなネタも(笑)。ただまあ、ローマ時代ということもあって、中世ものみたいな華麗な剣戟シーンとかはないですけど。
 有名人のご落胤ネタというのも定番ですが、同じソード&サンダル映画だと、マーク・ダモン主演の “Son of Cleopatra” なんかと同系統ですな。そういや、どっちもロケ地がエジプトで、ピラミッドやスフィンクスがデ〜ンと出てくるのも同じだ(笑)。
 監督は、前に紹介した『逆襲!大平原』と同じセルジオ・コルブッチ。画面にはスケール感があり、アクション・シーンのキレも良く、手堅くしっかり見せてくれます。
 音楽がピエロ・ピッチオーニ、仇役がジャック・セルナスってのも、『逆襲!大平原』と同じ。
 更に、またまたジョヴァンニ・チアンフリグリア君もチラッと出てくるんですが、今回の役どころはというと、港でオンナノコを鞭打っているところをリーヴスに止められる……って、これまた『逆襲!大平原』とおんなじなのが可笑しい(笑)。
 全体的には『逆襲!大平原』よりは軽いノリなので、大作感はない反面、娯楽アクション作品としての面白さはタップリ。ただ、惜しむらくはクライマックスが、まず仇敵の提督&ジャック・セルナスと対決して、その後は反逆者としてローマと対峙するという、二段構えになっているせいもあって、カタルシスが分散してしまった感はあり。
 ちょっと面白かったのは、悪役の倒し方が、悪人の集めた黄金を鍋に入れて、それを熱して溶かしたものを顔面に浴びせる……っていう、比較的エグめの方法だったこと。ソード&サンダル映画では、意外とこういう残酷趣味のようなものにはお目にかからないので、これまた “The Pirates of the Seven Seas” のときに書いたのと同じく、史劇映画からマカロニ・ウェスタン映画への過渡期を感じさせる要素でした。

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 今回のリーヴスは、ヒゲがないからちょっと寂しくはありますが、正体を隠した義賊スタイルの時は、なかなかカッコいいです。上半身裸の剣闘士スタイルで、顔は兜で見えないんですが、兜の色が黒いせいもあって、ブラック・レザーやメタルのような、ちょいとハード系のフェティッシュな魅力がある。
 DVDのジャケットになっているステキシーンですが、これは前半でリーヴスが奴隷商人に捕らわれたときの姿。でも、残念ながら映画本編では、上半身裸ではなくチュニック・スタイルなんだよな。首枷のまま鎖に繋がれて連行されたりはしてくれるんですが、肌は出し惜しみしていて、馬に引きずられて服が破けても、乳首も見えない程度の破れかたなので、物足りないのと同時に、なんか「……だまされた」感が(笑)。
 他には、後半で再度捕まって、木の檻に入れられるシーンとかもあります。ここは、檻の横木に両手も括り付けられるので、けっこうそそられはするんですが、太い木格子に邪魔されて身体が良く見えないのが残念。
 この前段でも、地下牢で追いつめられて捉えられるときは、前述した上半身裸の剣闘士スタイルなのに、牢屋に入れられた後は、なんでわざわざマントなんか着せるかなぁ(笑)。裸で鎖に繋いどきゃいいじゃん(笑)。
 あと、クライマックスで磔にされかけたりもしますが、残念ながら未遂。
 そんなこんなで、責め場はそこそこあるんだけど、そこで肉体美を出し惜しみしちゃってるあたりが、かえってすっげ〜残念で欲求不満が溜まります(笑)。
 リーヴス以外では、まず冒頭で奴隷の磔刑がありますが、それよりも中盤に出てくる、奴隷だか反逆者だかを十人くらい堀の中の柱に縛り付けて、そこに水を入れて水責めにするシーンの方が見応えあります。ここはけっこう悪くない。あと、宴席の真ん中に半透明のテントを設えて、そこに人を入れて煙でいぶし殺して余興にする……ってシーンもありますが、アイデアほどには見た目は面白くない。
 DVDはスペイン盤なのでPAL。ビスタ、非スクィーズのレターボックス。リージョン・コードは2。音声はスペイン語とイタリア語。字幕なし。
 画質は、ちょっと経年劣化による色調の変化が気になるし、いささかボケ気味ではあるものの、まあ佳良な部類。少なくとも米版VHSよりは遙かにきれい。ただ、ワイド画面のわりには、左右が切れている感じがするので、一度スタンダードにトリミングされたものを、更に上下を切ったという可能性あり。

【追記】アメリカ盤DVD-R出ました。画質良好。
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『闘将スパルタカス』” に1件のフィードバックがあります

  1. 魁偉な益荒男の散り際

    剣闘士-BC73

    古代ローマの時代、剣闘士の中には反乱を起こす者達も現れた。酷い待遇に苦しめられた奴隷達の蜂起である。有名なのがスパルタカスの反乱だ。

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