個展とか渡仏準備とか

 3月2日から、フランスのパリで個展をします。
 海外での作品の展示は、1996年にニューヨークでの企画展に、2004年にフランスのリールとアヴィニョンでの企画展に、それぞれ依頼されて作品を提供したことはありますが、自分一人の個展というのは初めてです。
 とはいえ、これは急に決まったとことじゃなく、実は去年から動いていた予定。

 きっかけは、去年の春。
 五年間かけたマンガ『君よ知るや南の獄』の連載を終え、雑誌「ジーメン」の企画編集スタッフからも退陣しました。で、次に何をしようかと考え、久々に個展でもやりたいな〜、なんて思い、じゃあ場所のあたりをつけなきゃ……なんてときに、一通のEメールがきました。
 差出人は、パリのギャラリーのオーナーだというオリヴィエ・セリ氏。内容は「ウチで個展をやらないか?」というオファーでした。何とまあグッドタイミング、渡りに舟って感じ。で、何度かやりとりをして、決定したのが初夏の頃。

 ただ、この「やりとり」ってのが問題でして。私はフランス語はサッパリだし、英会話だってトラベル・イングリッシュ・レベル。当然のことながら、電話できちんとコミュニケーションをとれる自信なんかありません。でも、テキストなら辞書っつー強〜い味方がいるから、「打ち合わせや問い合わせはメールでしてね」と言っているのに、このオリビエ氏、せっかちなのか何なのか、すぐに電話をかけてくる(笑)。
 まぁ、私も電話を受けちゃった以上、何とか英会話を心掛けるんですが、じきにギブアップ。で、私が「そういう細かいことは、メールでコンタクトしてくれ!」とキレると、オリヴィエ、その時は「ソーリー、ソーリー」とか言うくせに、しばらくするとまた性懲りもなく電話してくる(笑)。去年の大晦日、家に友人を招いて年越しパーティーの真っ最中にまで、電話がかかってきた(笑)。欧米人って、年末年始はさほど特別な日じゃないのかしらん。
 で、またこのオリヴィエの英語が、実にフランス語風の発音。加えて、喋るスピードはけっこう速いもんだから、あたしゃいっつも「パードン?」の繰り返し(笑)。あと、英語がフランス語風に化けるだけではなく、たまに、思いっきりフランス語そのものが混じったりもする。まあ、同じスペルの単語がフランス語の発音に化けるってのは、その気持も判らなくもないですが、英語で喋ってるのに、いきなり「エスタンプ・ド・ジャポネ」とか言ってくるんじゃね〜よッ(笑)! 一瞬ポカ〜ンとしてしまったが、浮世絵のことを言っているんだと、理解できた自分を褒めてあげたい(笑)。
 
 で、個展にあわせて、私も今月末からちょいとフランスへ行く予定。
 フランスは、まだ学生時代に一度行ったきりの、およそ20年振りの訪問なので、ちょいと緊張しています。
 個展の開催期間は、丸々2ヶ月間とけっこう長めなんですが、流石にそんな長く滞在するわけではなく、オープニングの数日前に現地入りして、準備やら何やらをしつつ、パリでの滞在は一週間程度を予定しています。
 先日、どこから情報が伝わったのか、ここで書いたアニエス・ジアールから、「パリに来るんだって? 嬉しい、サイン会には絶対行くわ!」ってなメールが来ました。これを読んで、私はビックリ。サイン会って、何のこと? 不思議に思ってオリヴィエに問い合わたら、いつの間にか、パリの書店でサイン会をすることになっていた(笑)。
 まぁ、現状で判っている予定はそんなもんですが、せっかくの機会だし、差し迫った仕事の予定があるわけでもないので、用事が終わったら、ついでにどっかでブラブラ遊んでこよう、なんて画策中です。こーゆーのが、フリーランス商売のメリット(笑)。

 そして現在、パリ行きの準備中。
 といっても、パスポートの有効期間はまだあるし、エア・チケットも手配済みなので、旅行自体の準備は何もありません。
 今やっているのは、個展用のオリジナル新作絵の制作。最初は、せっかくの個展なので、久々にアナログでデカめの絵を描きたいとか考えていたんですが、いろいろあって、最終的にはギャラリーからの依頼で、毛筆画+デジタル彩色のテーマのある連作ということになりました。
 で、そのギャラリーが注文してきたテーマっつーのが、キリスト教の「七つの大罪」。
 最初はちょっと戸惑いました。だいいち私の作品は、ぜ〜んぶ大罪の一つである「淫欲」まみれなわけだし(笑)。あと、こーゆーテーマ連作というのは、ある程度の共通フォーマットも持たせないと様にならない以上、二つか三つはネタを出すのが苦しいものもあり、今回もその例外ではなさそうだし。
 でもまあ、いざ描き始めると、あれこれ悩むのもまた楽し、ってな具合で、わりとスイスイ筆が進んでくれました。二つほど、なかなか上手くまとまらないネタがあり、ちょいと苦戦しましたが、それも先ほど無事終了。
 ってなわけで、これがその「七つの大罪」用の、資料用に引っ張り出してきた本と、サムネール・スケッチと、下絵の一部分。
Seven_bookSeven_roughSeven_draft
 これで下絵が全部完成したので、明日から本描きに入れます。……が、さっき見たら、毛筆画用の筆がもうボロボロだったので、明日、街に出て買ってこなきゃ。