前日。
児雷也画伯から「連絡用に携帯を持ってきてくれ」とメールがきたので、部屋を発掘。というのも私は、携帯は「いちおう持っている」ものの、ほとんど携帯したためしがなく、電源入れることすらめったにないのである。
で、今回も、最後に使ったのは、下手をすると1年以上前という状態だったので、果たして見つかるかどうか危ぶまれたのだが、何とか無事に発見。ところが、充電器につないだものの、様子が変。ひょっとしたら、もうバッテリーがイカれているのかも。
とりあえず、明朝まで充電してみて、それでダメなら、早めに家を出て、途中で機種変更することにする。
夜、現在進行中の仕事を出来るだけ進めておこうと、せっせかマンガなぞ描いていたら、下描きが完成しているにも関わらず、ノンブルを振り間違えていて、なんと4ページ多く描いていたという、ショーゲキの事実が発覚。ページ数が多めで、しかも単行本用の加筆原稿なので、ノンブルもヤヤコシイ状態だったとはいえ、こんなとんでもないミスは初めて。
パニック状態になりつつも、ワンエピソード削ってしまえば、後は残りのネームで何とか補完できそうな目処がついたので一安心。予定していた就寝時間を過ぎていたけど、修正作業をする。
一日目。
やっぱり携帯はお亡くなりになっている様子。というわけで、早めに家を出て、途中のお店に寄って機種変更。ついでに料金も、もっとお得なコースに変更してもらう。
終わったら、お店の人が「粗品ですが」と、ボールペン一本と、トイレットペーパー(何故??)を2ロールくれた。普段ならありがたくちょうだいするところだけど、これから札幌に行くのに、三日間トイレットペーパー2ロールを抱えて歩くのは、どー考えてもイヤなので、辞退してボールペンだけいただく。
羽田に向かい、飛行機に乗る。特に遅延もなく順調。でも、国内便に乗るのは久々だったので、ドリンクが有料なことにビックリ。ピーナッツか飴くらいは出るかと思ったら、それもなし。出たのは、おしぼりだけ。でも、飲食抜きでおしぼりだけ貰っても……ねえ(笑)。
新千歳空港到着。ターミナルから少し離れたところに停まって、建物まではバスで移動。それ自体は珍しくないんだけど、その移動用のバスが、どっかの路線バスの払い下げ車両らしく、区間運賃表やら運賃箱やらが付いたまんまなのには、ちょっとビックリ(笑)。
で、実は私、ちょいと前に足を痛めてしまい、それに仕事も重なっていたので、この三週間、家から一歩も出ない生活をしていました。一緒に住んでる相棒が心配して、外出禁止令が出てたもんだから、マジで玄関から出たことすらなかったのに、それを、三週間ぶりに家から出たかと思ったら、その足で北海道ってのも、我ながら何だかなぁと可笑しくなったり(笑)。
札幌駅に、児雷也画伯とイベントスタッフの方がお迎えに来てくれる。車でホテルに移動、フロントでチェックインだけ済ませて、そのまま画伯のお宅に直行。
部屋にあがって早々に、リビングにあった某有名デザイナーによる超高級アートファニチャーを、猫の運動用器具と勘違いするという大失礼をぶちかましてしまう(笑)。
座り心地の良さそうなオシャレなソファーの前に、テーブルではなく、ジムにあるみたいなトレーニング・マシーンが置いてあるのが、ファンの期待を裏切らない感じでステキ(笑)。画伯の部屋を覗くと、私の部屋と大差ない、足の踏み場もないカオスっぷりだったので、何だか一安心(笑)。
一服したあと、まずはチャリティ・オークション用の合作イラストを描くことにする。合作をするのは久しぶりで、かつて「さぶ」時代に、戎橋政造くんや晩三吉先生と一緒にやった以来だから、下手すると15年ぶりくらいかも。
画伯の提案で、二人のキャラが向かい合ってキスしている絵を描くことにする。代わりばんこに下絵を入れて、マーカーでペン入れ。サイズはB2だったか、とにかく日頃めったに描かない大きいサイズだったので、デッサンの狂いが不安。ついつい、ひっくり返して遠くから眺めたり、姿見で画面の反転チェックをしたりする。
絵を描く画伯を見るのは初めて。下絵の線からして、何のためらいも迷いもなく、一本線でぐいぐい描いていくのがスゴイ。流石だなぁ、描く前から頭の中に、完全に形があるんだな。下絵の入れ方も形の取り方も、自分とは全く違う。やはり、人のメイキングを見るのは面白い。
合作イラストが仕上がると、引き続き、サイン会用の色紙の準備。一枚の色紙の左右に、画伯と私が、それぞれサインを入れる。で、白く残した中央に、来てくださった方のお名前を入れるという寸法。しかし、おしゃべりしながらなので、なかなかはかどらない(笑)。
10枚できたかできないかのうちに電話があり、作業をいったん中断して、イラスト展とサイン会をするEZO cafeの会場を見に行くことになる。
車で移動、EZO cafeに到着。とてもキレイで、オシャレな雰囲気。使われていない店舗を借りて、自分たちで改装したのだと聞いてビックリ、更に、二日間のイベント終了後には撤去してしまうと聞いて、ダブルビックリ。もったいないなぁ。
作品の展示も、スッキリとしていてグッド。二人の作品を並べると、私はほぼ100%チンコが描かれているのに対して、画伯はほぼ100%チンコなしというのが、最大の差異かも。作家性の違いだなぁ。
そうこうしていると、ケースケに会う。東京パレード以来かな、会うたびにどんどん血色が良くなっているような気がする(笑)。明日のトークショーで着るEZO Tシャツを購入した後、再び画伯宅に戻って、サイン色紙の準備の続き。目標は、晩飯までに50枚くらい。しかし、相変わらず、手を動かしている時間より口を動かす時間の方が長い。結果、50枚にはちょっと届かず。
9時過ぎだったか、打ち合わせを兼ねた夕食に。前に大阪でお会いしたことがある、こーたさんが迎えにきてくれる。料亭っぽい居酒屋のようなところへ移動して、ほどなくブルボンヌも到着。
ブルちゃんと会うのは久しぶり。でも、私のことを「せんせ〜ぇ」と呼ぶのはやめて欲しい。何だか自分が、杉村春子か淡谷のり子にでもなったような気がするんで(笑)。
トークショーのメンツが揃ったので、楽しく飲み食いしながら打ち合わせ。流石は北海道、お魚もジャガイモもトウモロコシも美味しい。料理の盛りつけ方に、いちいちツッコミが入るあたりが、いかにもオカマのディナータイム(笑)。
夕食後、画伯に連れられてゲイバーへ移動。お店の人もお客さんも、あまりにもハイテンションなので、ちょっとビビる(笑)。お店の奥に、城平海センセと岩田巌くんを発見、でも、あまりの人の多さに挨拶するのが精一杯。
時間が経つにつれ、バーの雰囲気もどんどんカオティックになっていく。ブルボンヌも来て、稚児嵐丸ちゃんとも久々の再会。稚児ちゃんもケースケ同様、以前より血色や肌のツヤが良くなっているのは何故?
益荒男くんから電話。同じビルの中の別のお店にいるらしいので、合流する。
疲れてきたので、一足お先にホテルに帰ることにする。前日、ちょっと寝不足だったので、入眠は早かったんだけど、久々のゲイバーで、毒気にあてられたせいか、明け方に悪夢で目が覚めてしまった(笑)。
二日目。
午後のサイン会までフリーなので、昼頃まで寝坊してから、パレード見物に大通り公園に。札幌のパレードは良いと、色んな人から聞いていたけど、確かに連帯感が強い感じで雰囲気が上々。工夫を凝らしたフロートや衣装もステキ。
大塚隆史さんやエスムラルダさんに会ったのでご挨拶。エスムさん、この間まで入院されてたけれど、お元気そうで何より。でも、エスムさんの芸風だと、パレードの途中で血を吐いて倒れるとかでも、絵になりそうだけど(笑)。
そういえば東京パレードの時にも、小日向くんやサムソン高橋さんとかに久々に会ったっけ。日頃あまり出歩かない私には、こーゆー場は色んな人と再会できるのが楽しい。
ベア・クラブ・ジャパンのLone Star会長とも久々の再会。一緒にサンフランシスコのゲイ・パレードで歩いたときから、もう10年以上は経ってるのに、あの頃とちっとも変わってない感じ。私の方は、激太りしたのに(笑)。
パレードの出発をお見送り。みんな行ってしまうと、会場がガランとして寂しくなったので、バディのブースにお邪魔して、みさおはるきちゃんやマツコ・デラックスとお喋り。ついでに販売も手伝い、まだ初々しいお客さんに、六尺褌を締め方のコーチのサービス(?)付きで販売することに成功(笑)。
みさおちゃんとは、最近は会うたびに、少女マンガの話ばかりしているような気がする(笑)。マツコに会うのは久しぶり。ついつい座り込んで長話してしまう。マツコ、何だかメキシコの宗教画とかフェルナンド・ボテロの描くモナリザみたいな、妙に「母っぽい」オーラが出てきたような(笑)。
パレード一行が帰ってきて、会場が再びにぎやかになってきた頃、お迎えが来たので、サイン会の会場へ移動。EZO cafeの入り口脇に、パーテーションで仕切られたサイン会コーナーが出来ている。ちょっと、デパートやスーパーの一角にある、占いコーナーっぽい(笑)。
児雷也画伯もやってきて、サイン会スタート。私は色紙だけだから楽なもんですが、画伯はエゾラTシャツにもサインを入れるので、大忙し。大変そうな画伯を横目に、私はキャラメルコーン喰ったりして、楽をさせていただく(笑)。
サイン会の後、イベントのリハーサルのためにEZO nightの会場に移動。クラブではなくライブハウスなので、ステージはしっかりしているし、照明設備も充実していているので、ショー映えが良さそう。
他の出演者の方々も集まっている。きみちゃんに会うのはすごく久しぶりで、ひょっとしたら10年ぶりくらいかも。えらくマッチョになっていてビックリすると同時に、心の中で美味しそうだと舌なめずり(笑)。DJ KUTSUWADAさんとも、下手すると15年ぶりくらいの再会。ただ、皆さん顔なじみなのか、互いの紹介等がいっさいなかったので、私には、最後までお名前が判らない方が多かった(笑)。
自分たちの出の確認が済んだところで、フリーになったので、児雷也画伯にジンギスカン屋に連れていって貰う。店が混んでいてかなり待ったけど、待つだけのことはある美味しさでした。
食事を終えて会場に戻ると、もうナイトはスタートしていた。楽屋付近で待機していると、前を通ったキャッツアイのローラさんが、「何だかジンギスカン臭くない?」と一言。すいません、それは私です。
ここで困ったことが一つ。リハのときは皆さんスッピンだったけど、今はもうメイクで顔がぜんぜん違っているので、もう誰が誰やら判らない。八代亜紀みたいなドラァグ・クイーンに話しかけられても、それがこーたさんだとは、一分くらい判らなかった(笑)。
そうこうするうちに、トークショーの時間に。画伯指定の、ホイットニー・ヒューストンをBGMに、ステージへ。ホストはブルちゃんとこーたさん。クラブ・イベントなので、あまりマジな話をしてもなんだろうと思い、オネェ・リミッターをオフにしたビッチ系トークでいくことにした。でも、ちょっと飛ばしすぎたかも。
トーク自体は、時間がえらく短く感じられたけど、クラブで立って聞くには、あれくらいの長さでいいのかな。でも、何だか初体験の話と、合作イラストの制作過程の話しかしなかったような気がする(笑)。
ビッチ系なので、ついついブルちゃんとかに話を振ってしまって、画伯とあんまり絡めなかったのはマズかった。反省。画伯とは、そのうちもうちょっとゆっくり、落ち着いたトークショーもしてみたい。
ともあれ、トークショーも無事に終わり、あとはオークションまで出番がないので、知り合いと喋ったりして、会場で適当に過ごす。
人が多くて、他の人のショーはあまり見られなかったけど、きみちゃんの欧陽菲菲には大爆笑。死ぬ前にもう一回見たいなぁ。あと、ブルちゃんのナウシカ。この時は、ちょっと足が痛かったので、楽屋前の通路に座っていて、ステージは見ずに音だけ聞いていたんだけど、それでも腹筋攣りそうなくらい笑った。ブルちゃん、ショーのみならずトーク全般、まるで剃刀のような切れ味で、やっぱ只者じゃない。
オークションで、再びステージへ。描いた本人が言うのもなんだけど、この画伯との合作は、かなり良い出来だったと思う(時間的な余裕があれば、分割スキャンかちゃんと複写して、データベースとして手元に残しておきたいくらいだった)ので、良いお値段で落札して貰えたのは嬉しかったな。
ショーが全て終わったところで、画伯に連れられて、昨日とは別のバーに。こちらも盛況で満員状態。しばらく立ち飲みしていたら、やがて隅の席が開いたので、画伯としっぽり話し込む。
3時過ぎだったか4時頃だったかにホテルに戻り、シャワーを浴びて爆睡。今度は悪夢は見なかった。
三日目。
今日は小樽へ遊びに行く予定。昼前にホテルをチェックアウトして、集合時間まで画伯宅で待機。
画伯も相方さんも、かなりお疲れの様子なのに、いろいろと気を遣ってくれる。「気を遣わないでいいから」とは言ってみるものの、やはりそうはいかないんだろうなぁ。何だか申し訳ない気分。
昼頃、何台かの車に分乗して小樽へ。30人近いゲイ(しかもヒゲ面多し)が、徒党を組んで小樽の街を、きゃあきゃあ賑やかに闊歩する。デートで来ているノンケの恋人たちや、明るい家族連れの皆さんが、我ら一行とすれ違うときに、緊張しているのが判る(笑)。
お寿司、美味し。ソフトクリーム、美味し。蒲鉾を串に刺して、チーズをかけて焼いたもの、美味し。ウチの相棒は練り物好きなので、お土産に蒲鉾と竹輪を購入。ついでに、熊の絵の付いたガラナの缶ジュースも購入。まだ飲んでないけど。「ROYCE’のチョコがけポテチが美味しいよ」と聞き、それも購入。
ひょんなことから、この30人のゲイで、どうやら自分が一番年上らしいことに気付いて、プチ落ち込む。しかし考えて見りゃ、20代前半の人たちが生まれたときから、こちとらゲイ作家稼業をしているんだから、それもいたしかたないか。
ひとしきり楽しんだ後、札幌に戻る。飛行機の時間まで、画伯宅で時間を潰させていただく。画伯も相方さんも、もう沈没寸前。にも関わらず、札幌駅まで送ってくれる。何から何まで、お世話になりっぱなし。多謝。
夜、東京帰着。暑さと湿気に、そのまま札幌にUターンしたくなる(笑)。