『鉄腕ゴライアス 蛮族の恐怖』+ “Goliath and the Vampire” 米盤DVD

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 祝・NTSC盤発売!
 スティーヴ・リーヴス主演の『鉄腕ゴライアス 蛮族の恐怖』(伊語原題 “Il Terrore dei barbari”、米題 “Goliath and the Barbarians”)の、アメリカ盤DVDが出たのでご報告。
 この映画のDVDは、いままでフランス盤、スペイン盤、イタリア盤が出ていましたが、このアメリカ盤発売で、ようやくPALの再生環境をお持ちでない方でも、DVDで見られるというわけです。しかもリージョン0なので、普通のDVDプレイヤーで再生可能。
 映画の内容については、前にここで熱く(笑)語っているので省略します。ここでは、気になる画質についてレポート。
 とりあえずは下のキャプチャ画像をご覧あれ。
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 ご覧のように、極度の退色や傷などがない、全体的には佳良と言える品質。色彩は経年劣化で全体に黄味がかった感じで、ディテールもはっきりクリアとは言えませんが、それでも50〜60年代のソード&サンダル映画のソフトとしては、十分に上クラスの画質。ノートリミングのシネスコ版なので、構図の狂い等もなし。ただ、スクィーズ収録ではないのは残念。
 本編以外の作りもしっかりしており、映像特典として、スライドショーと米国版予告編が付いています。このスライドショーが充実していて、スチル写真はもちろんのこと、公開時の世界各国のポスター、ロビーカード、パンフレットなどの画像が、たっぷり収録されています。日本のも、ちゃ〜んとありました。
 DVDソフトとしては、手持ちのフランス盤、スペイン盤、イタリア盤と比較しても、頭一つ飛び抜けた品質。『鉄腕ゴライアス 蛮族の恐怖』のDVDを購入するのなら、この米盤がベストの選択と言えるでしょう。
 さて、このDVDは両面ディスク仕様になっていて、B面にはゴードン・スコット主演の “Goliath and the Vampires (Maciste contro il vampiro)” (1961) が収録されています。監督は、アラン・スティールの “Hercules Against the Moon Men (Maciste e la regina di Samar )” を撮ったジャコモ・ジェンティローモ(Giacomo Gentilomo)。
 ゴードン・スコット扮するゴライアス(原版ではマチステ)が、自分の村を焼き払われ、仲間を虐殺され、許嫁を攫われてしまい、復讐と奪還に向かう……というのが大筋なんですが、タイトルからも判るように、お話しが進むにつれて、そこに伝奇ホラー風味がミックスされていきます。
 まず、さらわれた娘たちが、短剣で腕を切られて生き血を杯に絞りとられ、その杯をカーテンの影から奇怪な腕が伸びて受け取る……なんてあたりから、ちょいとそれっぽい雰囲気が漂い始める。それでも、ゴライアスがアラビアン・ナイト風の街に辿り着き、攫われた娘の一人を奴隷市場から助けて大暴れしたり、ジャック・セルナス扮する謎の男と出会ったり、捕まって王宮に連行されるあたりまでは、まだ史劇風味の方が強い感じ。
 しかし、許嫁を助けて脱出したゴライアスが、砂嵐にあい、地下の都に迷い込むあたりから、風向きが決定的に代わり、後半は、地下都市に住む「青い人々」と共に、黒魔術を使う魔王コブラックを倒し、魔術で石化されてしまった人々を救うといった、完全にファンタジー映画の趣になる。
 前半の史劇風パートも、セットやモブもけっこうゴージャスで、アクションや残酷趣味も盛りだくさんで、けっこう楽しませてくれるんですが、それよりも特筆したいのは、やはり後半のファンタジー風パートの方。
 この後半は、コブラック配下の生き人形にされたノッペラボウ軍団とか、肌の色から服装から食べるパンまで青い「青い人々」(ちょっと『続・猿の惑星』のミュータントを連想させます)とか、錬金術めいたビーカーやフラスコとか、ゴライアス VS 偽ゴライアスとか、ファンタジーやSci-Fiテイストが、ふんだんに登場します。ここいらへんのアイデアとか、チープさも含めた見所は、他のソード&サンダル映画と比較しても、頭一つ飛び抜けている感じなので、クラシックSF映画ファンなら、かなり楽しめるはずなので、ぜひ一見をオススメしたい。
 ただ、映画全体としては、盛りだくさん過ぎるのが仇になっている感はあり。エピソードのつなぎがギクシャクしているし、ストーリー的にとっ散らかった感じがするのは否めません。
 ゴードン・スコットは、ヒゲがないのは個人的には残念だけど、最初から最後までほぼ腰布一丁なのは嬉しいポイント。筋肉美を誇るタイプではないから、怪力発揮とか肉体の見せ場になると、ちょいと同時代の他のボディービルダー男優と比べると見劣りしますが、恋人を喪った怒りと悲しみとか、偽ゴライアス役のときの憎々しい表情とか、なかなかの熱演を見せてくれます。
 ヒロインのレオノーラ・ルッフォは、まあ奇麗なだけという感じですが、対する悪のヒロイン、魔女アストラ役が、スティーヴ・リーヴスの『ヘラクレス』のアマゾンの女王や、やはりリーヴスの『闘将スパルタカス』にも出ていた、ジャンナ・マリア・カナーレだったのが嬉しい。似たようなキャラを演じても、やはりモイラ・オルフェイあたりよりは、だいぶ存在感が違う。余談ですが、DVDジャケット裏面の解説によると、この人『怪傑白魔』を撮ったリッカルド・フレーダ監督の奥様なんですな。
 ジャック・セルナスは……ロバート・ワイズの『トロイのヘレン』ではパリス役だったのに、何かもう、すっかりB級臭が……(笑)。同じソード&サンダル映画でも、『逆襲!大平原』や『闘将スパルタカス』のときは、こんなキワモノっぽい感じじゃなかったけどなぁ(笑)。
 あと、監督はジャコモ・ジェンティローモですが、かなりの部分をセルジオ・コルブッチが撮っていると、やはりジャケ裏の解説にありました。コルブッチは脚本でもクレジットされています。
 さて、責め場関係ですが、ゴードン・スコットの責め場は、まず前半、居酒屋で暴れていたところを投網で捕らえられて、宮殿に連行されます。ここで、大きな木の枷をはめられて鎖に繋がれたりしますが、あっさりと脱出してしまうので、このシーンはさほど見所はなし。
 そして後半、今度は魔王コブラックに捕らえられ、竪穴に入れられた上に巨大な鐘をかぶせられ、「音波で脳髄を破壊して奴隷に変える」という責めを受けます。拘束はなしですけど、苦しみ悶える演技はけっこう佳良。ただし、このシーンの前に、こっそり蝋で耳栓をしておいた(『オデュッセイア』からの引用ですな)というエピソードが入っているので、この苦悶も演技なのだということが、観客にはわかっているので、責め場としてはちょっと興ざめ。
 責め場以外では、クライマックスの「ゴライアス vs 偽ゴライアス」の格闘シーンが、撮り方も凝っていて楽しめます。「もっこり好き」の方は、このシーンは要チェック(笑)。
 スコット君以外の責め場では、冒頭の村人虐殺シーンなんてものありますが(着衣ではあるものの、逆さ吊りにされた男どもが、ちょっとヨロシイ)、その後に出てくる、公開処刑の方が見応えあり。ゴライアスが街に着くと、広場で上半身裸の男が木の棒に昇らされていているんですが、ついに力尽きて棒から落ちると、下に並んで突き立った刃にグッサリ刺さって絶命、というシーン。ここはなかなかヨロシイ。
 画質は、ノートリミングのワイドではあるものの、退色、傷、共にかなり激しいです。ただ、酷くて見てられないというほどではなく、二束三文で叩き売られている廉価ソフトと比べれば、これでもだいぶマシなほう。メインは『鉄腕ゴライアス 蛮族の恐怖』で、こっちはオマケだと思えば、そうけなしたもんでもなし。
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 A面の『鉄腕ゴライアス 蛮族の恐怖』同様、こちらもスライドショーと予告編の特典付き。スライドショーの内容はA面同様に充実しているし、予告編も、何と本編よりも画質が良かったりします。
 というわけで総合的には、内容よし、ソフトの作りよし、という、かなりオススメできる一枚。値段も$19.95と標準的。
 リリース元のWildeastは、マカロニ・ウェスタンをメインに発売している会社のようですが、カタログ・ナンバーが古いものは既に廃盤になっていたりするので、欲しいという方は、お早めのご購入を。
“Goliath & the Barbarians, Goliath & the Vampires” DVD (amazon.com)