『マラソンの戦い』『大城砦』『怪傑白魔』他のサントラCD

 以前にも何度か紹介したことのある、Digitmoviesの復刻サントラシリーズから、スティーヴ・リーヴス主演映画のサントラ盤CDが幾つかリリースされたので、まとめてご紹介。
Cd_battaglia_maratona“La Battaglia di Maratona (O.S.T.)” by Roberto Nicolosi
 The Italian Peplum Soundtrack Anthologyシリーズ第七弾、『マラソンの戦い』のサントラ。音楽はロベルト・ニコロージ。
 タイトル・バックで流れる、あの優美なテーマ曲が入っているだけでも「買い!」でありますが、他にも、キャッチーでメロディーが良く立った曲が多く、映画を離れて単独した音楽として聴いても、なかなか粒ぞろいの好盤です。
 ロマンティックな雰囲気の曲は、流麗なストリングスや木管で、しっとりと、時にコケティッシュな表情も交えて、実にウットリと聴かせてくれます。舞踏のシーンで流れていた、フィンガー・シンバルや縦笛や竪琴を使った、ちょいと異教的なムードの曲も、幻想の古代ギリシャといった雰囲気が良く出ている佳曲。
 戦闘シーンの曲では、吹き鳴らされる金管や、ストリングスのスタッカートで責めてきますが、いささかお行儀が良すぎるというか、悪くはないんだけど、エピック的なスケール感や高揚感には、ちと欠ける感あり。
『マラソンの戦い』サントラCD
Cd_guerra_di_troia“La Guerra di Troia / La Leggenda di Einea (O.S.T.)” by Giovanni Fusco
 The Italian Peplum Soundtrack Anthologyシリーズ第六弾、『大城砦』と、その続編”La Leggenda di Einea” (a.k.a. “The Avenger”, “War of the Trojans”)をカップリングした二枚組。音楽はジョヴァンニ・フスコ。一般的には、ミケランジェロ・アントニオーニ監督とのコンビで知られている作曲家らしいです。
『大城砦』の方は、最初のファンファーレは印象に残るんだけれど、全体的にはちょっと地味な感じです。とはいえ、戦闘シーンなどでかかる、低音のストリングスのスタッカートや、鳴り物で素早くリズムを刻みながら、そこに高らかに金管がかぶる曲なんかは、スピード感があってなかなかカッコいいです。不協和音を多用しているせいか、古代っぽいザラっとしたニュアンスが多いのも佳良。
 もい一枚の”La Leggenda di Einea”は、映画自体の出来がアレなわりには、音楽の方は大健闘。ひっそりとした打楽器をバックに、哀感を帯びたメロディーを木管が密やかに奏でているところに、不意に異教的な金管のファンファーレが登場するテーマ曲なんか、かなり好きなテイスト。
 全体的には、地味といえば地味なんですが、渋いながらもじっくり聴かせてくれる曲が多い。低音のストリングスをメインに、エモーションを抑えながらじわじわじわじわ展開して、そこにパッと金管が切り込むという曲調が多し。和声のせいか、ちょいとストラビンスキーみたいな感じもあります。ああ、あとレナード・ローゼンマンっぽい感じもするなぁ。この映画に関しては、私は映画よりサントラの方が好き(笑)。
『大城砦/La Leggenda di Einea』サントラCD
Cd_agi_murad“Agi Murad il Diavolo Bianco / Ester e il Re / Gli Invasori” by Roberto Nicolosi & Angelo F. Lavagnino
 これはItarian Peplumシリーズではなく、Mario Bava Original Soundtracks Anthologyシリーズの第六弾。リーヴス主演のリッカルド・フレーダ監督作『怪傑白魔』(マリオ・バーヴァは撮影監督)に、『ペルシャ大王』(未見)と『バイキングの復讐』(このあいだ米盤DVDを買ったんだけど、まだ見てまへん……)をカップリングした二枚組。音楽は『マラソンの戦い』と同じく、ロベルト・ニコロージ。『ペルシャ大王』のみ、『ポンペイ最後の日』のアンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニーノが、一緒にクレジットされています。
『怪傑白魔』は、映画が近世ロシアを舞台にした痛快冒険アクション作品なので、音楽も同様に、時に勇ましく時に軽快に、でも基本は明るく楽しく……ってな塩梅。キャッチーなメロディーで弾むような曲調が多いんですけど、明朗さが前面に出ているせいか、ちょいと長閑な印象もあり。
 ちょいとビックリしちゃうのは、民族音楽を模したと思しき一曲がありまして、コサック・ダンスなのか、テンポの速いバラライカ(?)にドンチャン打楽器がかぶる曲調なんですが、これが何だかやけにガチャガチャしていて、民族音楽っつーよりは、アヴァン・ポップかトイ・ポップみたいに聞こえる(笑)。かなり「ヘン」な曲です(笑)。
『ペルシャ大王』の方は、ファンファーレとティンパニによる雄大なテーマ曲、木管とストリングスによるエキゾでロマンティックなスロー・ナンバー……と、さながらこのテの映画の劇伴の見本市。『マラソンの戦い』同様、ロマンティックな雰囲気は、かなり聴かせてくれます。あと、イマ・スマックみたいな女声スキャット入りのエキゾチカ・ナンバーが入っていたのが、私的に収穫。
『バイキングの復讐』は、もうちょいエピック寄りな感じですが、あんまり印象に残らず、それよりやっぱり、たまに入るロマンティックな曲の方に耳を奪われる。ロベルト・ニコロージさんは、ロマンティックで優美な曲では、実に良いお仕事をなさるなぁ。ピアノとストリングスによる、ひたすらスウィートな「愛のテーマ」は、これがバイキングの映画だと思うと、ちょっと「ん?」って感じもするんですが、それを別にすれば、とってもキレイなムード・ミュージック。
『怪傑白魔/ペルシャ大王/バイキングの復讐』サントラCD