梅雨のわりには好天続きで、湿気と雨が苦手な私にしてみれば、本来ならば好調子……のはずが、忌々しいことに風邪なんぞをひいてしまって、ちょっと寝込んでしまいました。
とはいえ、幸い急ぎの締め切りとかがなかったので、二日ほど食事をおかゆさんにして、タバコも吸わずに大人しく寝ていたら、熱も引いて咳もおさまりました。
さて、先日久々にレコ屋のクラシック売り場に行って、いろいろ物色してきたんですが、その中から、夏向けの変わり種をご紹介しましょう。
“Franz Schubert / Renegades Steel Orchestra”
スティールパン(スティールドラム)って楽器、ご存じですか? トリニダード・トバゴ生まれの、ドラム缶から作られた打楽器で、いかにもカリビア〜ンなムードを醸し出してくれる、コロコロキラキラした涼やかな音色が魅力です。
そのスティールパンのアンサンブルで、シューベルトの楽曲を演奏しているのが、このアルバム。「軍隊行進曲」から始まって、「セレナーデ」、「死と乙女」、「未完成」、「アヴェ・マリア」……といった具合に、誰でも一度は耳にしたことがあろうお馴染みのメロディーが、20人編成のスティールパンの演奏で、コロコロキラキラと爽やかに奏でられます。
そうそう、音楽の授業でお馴染みの「魔王」も入ってます。知らないって? ほら、あの「♪風〜の夜に〜、馬〜を駆り〜、駆け〜り〜ゆ〜くもの〜あ〜り〜」ってヤツ、「♪おと〜さん、おと〜さん」ってヤツですよ。音楽鑑賞の授業で聴いたことあるでしょ? あの曲も、スティールパンの音色になると、何とも爽やかな雰囲気になっちゃうので、何だか聴いていて頬がゆるんできます(笑)。
まあ、クソマジメなクラシック好きな方にはどうかと思いますが、ラウンジとかエキゾチカがオッケーな方には、これはかなりオススメ。何てったって楽しいし、何よりキレイだし、そして演奏のクオリティも高いです。
限定盤のせいか、アマゾンでは見あたらなかったんですけど、タワレコのサイトにありました。こちら。
で、これを聴いていたら、だいぶ前に買ったヤツなんだけど思い出したアルバムがあったので、ついでにそちらも紹介しませう。
“Parsifal Goes La Habana / Ben Lierhouse Project”
これは「パルジファル、ハバナへ行く」というタイトルからも察しがつくように、ワーグナーの楽曲をキューバ音楽のアレンジで演ったものです。
編成はオーケストラを従えたラテン・ジャズ・バンドといった感じ。ムーディなピアノ、ラテン・リズムを刻むパーカッション、優美なストリングス等々が絡み合った、実にゴージャスな味わいで、コンセプト的にはキワモノっぽい感じなのに、実際の音にはそういった雰囲気は皆無なのがスゴイ。
ただし、前出のスティールパンのアルバムが、楽曲の構成自体はクラシック準拠なのに対して、こちらはモチーフにクラシックの曲を使って、それをラテン・ジャズ調に変奏しているという感じ。曲によっては、どこがワーグナーなのかヨーワカランといったモノもあります。
とはいえ、例えばあの「タンホイザー序曲」が、原曲のドラマチックさはそのままに、そこにラウンジ的な軽妙さが加味されて、何とも自然にラテン・ジャズへと変身しているのを聴くと、かなりビックリ&カンドーいたします。「パルジファル」が、ジャズィなリズムとアーシィなコーラスを得て、ミュージカルの感動のフィナーレみたいになってたりするのも、また楽し。
こっちはアマゾンにありました。こちら。