『アリゲーター 愛と復讐のワニ人間』

Dvd_kraitong
『アリゲーター 愛と復讐のワニ人間』(2001)スザット・アンタラヌパコン
“Krai Thong” (2001) Suthat Intaranupakorn
 前にここで紹介した、タイ版『300』みたいな”Bang Rajan”で一目惚れし、そのあと見たタイ版「浅茅が宿」みたいな秀作怪談映画『ナンナーク』でも惚れ直した、Winai Kraibutr(例によって日本語表記が、ウィナイ・グライブットとかビナリ・クレイブートとか、ソフトによって揺れております)主演の、アニマル・パニックとエロスが合体した超怪作。
 いちおうストーリーは、むかしむかし、タイのとある村が人食いワニに襲われ、村長はそのワニを倒した男に、自分の財産と娘を与えることを公約し、一人の旅の勇者がワニ退治に出掛ける……ってな、いかにも昔話に良くあるフォーマットです。
 ワニが人を襲うシーンは、いささかチープながらも、惜しみないスプラッタぶりを見せてくれます。腕は食いちぎられるわ首は飛ぶわ、あげくは木の枝に掴まって逃れようとしていたところを、下半身丸ごと食いちぎられて内臓ドビャッってなシーンまである。
 ただ、実はこのワニは、人間の姿に変身することができる、ということが途中で判るんですが、このあたりから、だんだん映画の先行きが怪しくなってくる。
 村長の娘は、ワニ退治の勇者クライトーンと仄かな恋に落ちるんですが、ワニに攫われて水中に引きずり込まれてしまう。苦しい息の下、頭をよぎるのはクライトーンとの甘いラブシーン。ところが、気がつけば水中の洞窟にいて、自分の上にはクライトーンならぬ、ワニが人間に変身したワニ男がのし掛かっていた! 更にその洞窟には、ワニ男だけじゃなくて、その妻だか愛人だかの、二人のワニ女までいた!
 ここまでくると、もはやタダモノナラヌニオイがぷんぷん(笑)。
 ところが、ビックリするのはまだ甘かった。「英雄、色を好む」とは申しますが、主人公クライトーンの、モテモテぶりっつーか絶倫ぶりが、更に話をヘンな方向へ加速させていきます。
 とりあえずクライトーンは、無事娘を救出して陸に戻るんですが、喜んだ村長が勇者の結婚相手に定めたのは、助け出した娘ではなく、その妹の方。ここで「おや、悲恋ものになるのかな?」と思ったんですが……いやぁ、そんな読みは甘かった(笑)。
 以下、未見の方の興を削がないよう、要点は白文字で書きますが、ネタバレがお嫌でない方は、ドラッグして反転させて読んでください。
 けっきょく勇者クライトーンは、姉と妹、二人の娘を一緒に嫁にもらい、更に、再度ワニ退治に出掛けたついでに、ワニ女の一人ともセックスして、ワニ男を退治した後も、残るもう一人のワニ女(これ、いちおう勇者にとっては友人の仇だし、ワニ女にとっては夫の仇のはずなんですが)ともセックスし、尻からワニの尻尾が生えている子供も生まれてハッピーエンド!という、こちらの常識的な想像を遥かに飛び越えて、もう成層圏まで届きそうな勢いの超展開を見せてくれます(笑)。
 ってな具合の怪作なんですけど、でも、これが怪作になっちゃったのは、ひとえにこのモノガタリを、リアリズム準拠の映画にしてしまったせいだよなぁ(笑)。
 というのも、民話や伝説というフォーマットで言うと、こういった、英雄が行く先々で美女をモノにするとか、異種婚とかいった要素は、別に特別ヘンなものではないからです。
 また、セリフでも「人もワニも同じだ」というのが出てくるんですが、こういった、人間と人間以外の動植物の間に境界線を引かず、それらが赦しや愛によって合一化していくという要素は、いかにもアミニズムや仏教的なものをベースにした民話の趣があり、世界観としては実にアジア的な魅力がある。
 やれやれ、アニマル・パニックやソフト・エロスみたいなノリで民話を映画化するから、こんなヘンテコなことになっちゃうんで、もっとマジック・リアリズムっぽく撮ってくれりゃ良かったのに……(笑)。
 さて、私の最大のお目当ては、冒頭にも書いたように、主人公の勇者クライトーン役のWinai Kraibutrクンだったわけですが、う〜ん、相変わらずハンサムでカッコイイ。全編通して、ほぼずっと裸だし(笑)。
 というわけで、一緒に見ていた相棒とは、見ている間ずっと、下記のような会話が続いておりました。
「あ、出てきた、出てきた」
「脱いだ、脱いだ。相変わらず、いい身体だね」
「今回は、お歯黒じゃなくて良かった」(注/『ナンナーク』のときは、登場人物が皆、タイの伝統で、キンマというチューインガムの先祖か噛みタバコのような嗜好品を噛んでいるせいで、口の中や歯が赤褐色に染まっていたんです)
「いい男だね〜」
「あっちのゲイにも人気があるんじゃない?」
「けっこう胸毛もあるね」
「乳輪、ちょっと大きめ?」
「この腋毛がいいね」
「腋毛、いいね〜」
 等々(笑)。
 ま、ゲイのカップルが男の裸目当てで映画を見ているときの会話なんて、こんなもんです(笑)。
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 さて、このWinai Kraibutrクン、今年も“Puen yai jom salad (Queens of Langkasuka)”とかゆー、史劇だかファンタジー大作だかに出ておられるようです。
 とりあえず、予告編を貼っておきませう。

 ぜひ見てみたいと思っているんですが、こーゆーのは日本では公開もソフト発売も望み薄だろうなぁ……。
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