写真撮影と『アイアンマン』とLarkin Grimmと『ラビナス』

 先日、イタリアの出版社の人と会って、自宅近郊のカフェでインタビューを受けました。日本語ペラペラの方なので、インタビュー自体は苦もなく終わったんですけど、問題は、その後の写真撮影。
 撮影の場所が、そのカフェの入っているビル内や、近くの路上だったんですが、人通りが多い場所の上に、カメラマンがガイジンさんだってのも悪目立ちするのか、道行く人にジロジロ見られる。
 いや、もともと写真を撮られるのには慣れていないけど(いつもシャッター降りる直前に、自分の軀が緊張でブルブル震えるのが判るんですよ)、地元で写真を撮られるのが、こんなに恥ずかしいとは……(笑)。
 この写真やインタビューは、来年イタリアで刊行される予定の、私のマンガ単行本と出版社のウェブサイトなんかに掲載される予定ですが、まぁ、過去の経験から言って、海外での出版は予定が遅れて当たり前なので、果たして日の目を浴びるのはいつになりますやら(笑)。

 海外出版の刊行の遅れというと、一昨年だったかに契約書にサインした、次のフランス語版単行本なんか、諸般のトラブルで遅れに遅れまして、もう半分諦めかけてたくらいなんですが、先日ようやく、翻訳が完了したので出版準備に入りたいという連絡がありました。
 で、急遽カバー画なんかを描くことになったんですが、この単行本の表紙廻りの打ち合わせをしたのは、もう去年の夏のこと。もともと整理整頓が苦手な私なので、ラフ画がファイルの奥底に埋もれてしまっていて、それを発掘するだけで一苦労(笑)。
 しかも、いざ発掘したら、それはラフではなく下絵段階まで進めていたものだった。というわけで、一年以上前に描いた下描きにペン入れをするという、前代未聞の体験をすることに(笑)。

 さて、件のイタリア人との打ち合わせの翌々日、今度は日本の一般誌の取材を受けました。
 で、またまた写真撮影があって、これまた場所が路上(笑)。まあ、今度は幸い人通りがあまりなかったし、シューティングの時間も短かったので、地元でもないので、前回ほどは恥ずかしくもなかった(笑)。
 こちらは、確か来月発売と伺ったので、また発売日前後になりましたら、改めてお知らせします。

 さて、そんなこんなで外出ついでに、映画『アイアンマン』を見ました。
 なかなか楽しい映画ではあったんですけど、それでも野暮を承知で、「そもそも『正義』とか『悪人』って、何よ?」とか、「自分が過去、無責任に製造販売していた兵器を叩き潰すといっても、そのためのアーマーを作る金が、そもそも軍需産業で儲けた金だってのがなぁ……」とか、どうしてもチラチラと頭をよぎってしまったなぁ。
 でも、ストーリーの進行と共に話のスケールがどんどん小さくなってってるのに、テンションはそれに反比例してグイグイあがっていくのは、何とも愉快で痛快でした。
 あと、思いのほかロバート・ダウニー・Jrがカッコよくて、「アンタ、ヒゲと筋肉がありゃ、何でもオッケーなのかい!」と、我ながら自分の節操のなさが可笑しくなったり(笑)。それと、ジェフ・ブリッジスとニック・ノルティとカート・ラッセルとパトリック・スウェイジが、皆さん歳をとったら見分けがつかなくなってきた……とか(笑)。

larkingrimm_parplar_cd
 映画の後でレコ屋に寄ったところ、店内で流れていたCDが気に入ったので、購入しました。
 Larkin Grimmという女性の“Parplar”というアルバムで、昔のアシッド・フォークみたいな、サイケ寄りのトラッド・フォークみたいな、ちょっと不思議なねじれ感のある、アコースティックな歌ものです。
 家に帰ってから、ちょっと検索してみたら、最近は「フリー・フォーク」なんてゆージャンルがあるんですな。ぜんぜん知らんかった。ここんところPops & Rock関係には、すっかり疎くなっちゃってます。
 個人的には、ちょっとアメリカ南部のルーツ音楽っぽかったり、東欧っぽかったりするチューンが、特にお気に入り。声色を使い分けながら、エキセントリックになる直前で寸止めしてるみたいな、ヴォーカルのバランス感覚の良さも好みです。あと、ジャケットやブックレットに使われている、Lauren Beckという人の絵も、かなり好き。

ravenous_cd
 そんなこんなで、これを聞いていたら、そのルーツ音楽がコンテンポラリー的にねじれているような感覚に、ジャンルはぜんぜん違うんだけど、Michael NymanとDamon Albarnがやった、映画『ラビナス』のサントラ
を思い出しました。
 いや〜、これ、大好きでしてね、一時期狂ったように聴きまくってました(笑)。
 因みに映画本編も、実は個人的に偏愛対象でして、観るといつも泣きそうになる。それも、満身創痍のガイ・ピアースが、穴から這いだして雪の中を彷徨うシーンと、ラストシーンの二回。
 ただし、これで泣くってのは、自分でもかなりヘンなツボを押されているせいだという自覚はありまして、間違っても「泣けるよ」とか「感動するよ」と、他人様にオススメはいたしません。ウチの相棒に言わせると「泣けるどころか、ぜんぜん面白くない映画」だそうだし。
 因みに、映画のテーマはカニバリズム。なのに、描き方とかは、カニバリズムに珍奇設定が加わって、まるで吸血鬼映画みたいなノリ。
 ……ま、有り体に言って「ヘンな映画」ではあります(笑)。でも、大好き。