ベーゼとファック

 前回のエントリーで、今度出る予定のフランス語版マンガ単行本の、カバーイラストについて書きましたが、表紙廻りのレイアウト・チェックも無事に済み、数日前に、本文の校正用PDFデータが送られてきました。
 まあ校正ったって、こちとらフランス語はさっぱりなので、文字校をするわけじゃなく、作業としてはレイアウトの確認程度なんですが、それでもいちおう、読めないながらも全ページ目は通すわけです。

 そうしたら、気付いたことが一つ。
 このマンガでは、主人公が素っ裸で四つん這いになり、尻を振りながら繰り返し「ファック・ミー、サー!」と言わされる……ってなシーンがあるんですけど(これで、ファンの方ならどのマンガの仏語版が出るのか、お判りですね?)、このセリフがフランス語版だと、「ベーゼ・モア、シェフ!」になっている。
baisez-moi
 ……あれ? ベーゼ(baisez)って「キス」のことでしょ? 「熱きベーゼを云々」とか言うし(ま、ホントに言うかどうかは別として)。
 で、試しにbaisez-moiを、オンラインの仏英翻訳(因みにBabel Fishを使いました)にかけてみた。するとやっぱり、kiss meと出てくる。
 むむむ、こりゃちゃんと確認せにゃならんぞ……と思い、フランスに「ねえ、ひょっとしてXXページの『ファック・ミー、サー!』を『キス・ミー、サー!』に変えた? もしそうなら、どうして変えたの?」と、メールを出しました。

 すると、こんな返事が。
「あははは、それってフランス語を勉強している外国人が、よくやっちゃう間違いなんだよ。
 ”baiser”にはね、『キスする』って意味(すごく時代遅れな言い方だけどね)と、『ファックする』って意味の両方があって、文脈によって変わってくるんだ。
 僕たちは普通『キスする』ってときには、”embrasser”か”donner un baiser”を使う。
 で、”baiser”を単独で、しかも動詞として使うと、それはもっぱら『ファックする』って意味になるんだ。
 もちろん『ファックする』は、他にも色々な言い方があるけどね!;)」

 ひえ〜、ベーゼって、そーゆー意味だったんですか! もう、ビックラギョーテンでゴザイマス(笑)。
 しかし、使い方一つで、同じ単語がキスからファックに、意味が変わっちゃうなんて……フランス語、おそろしい子!(ベーゼつながりで、少女マンガ風に)
 というわけで、フランス人に「ねえ……キスしてよ」とねだるつもりで、うっかり「ベーゼ・モア!」とか言っちゃうと、キスをすっ飛ばされてファックされちゃうようなので、フランスにお出かけの皆様は、充分お気をつけあそばせ。
 ……ま、その方が手間が省けていい、なんて方もいらっしゃるかも知れませんけど(笑)。