『明治一代女』伊藤大輔
伊藤大輔監督は良く知らなくて、映画を見るのも、たぶんこれで三本目くらいだと思うけれど、そのたびに「上手いな〜」と感心させられます。
今回は殺人劇のシーンで、橋を挟んだ向こう側とこちら側という状況を使い、ドラマとしてのモノガタリを見せると同時に、明治という時代状況そのものも表現してみせるあたりに、ひたすら感嘆。
メインのドラマや役者さんの演技という本筋以外にも、生活風俗の描写などディテールの見所も多く、大満足の一本。あ〜、『銀の華』を描く前に、これを見ておきたかったなぁ(笑)。
明治一代女 (amazon.co.jp)
『ミツバチのささやき』ビクトル・エリセ
前に出たBOXを持っていたので、再購入するかどうか散々迷ったんですけど、画質向上や初収録作品や特典の魅力に負けて、けっきょく買っちゃいました。
とりあえず、一枚だけ見ましたが、画質に関しては、前のがちょっとアレだったせいもあって、この新盤は佳良だったので一安心。特典等は、まだ未見。
実は、ビクトル・エリセ作品で一番好きなのは『エル・スール』なんですけど、それを見るのは、次の仕事明けのお楽しみに……と、とってあります(笑)。
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『トゥルーへの手紙』ブルース・ウェーバー
私、犬好きなもので(笑)。それに、カメラマンとしてのブルース・ウェーバーは、大学生の頃に憧れのマエストロの一人でした。
一緒に見ていた熊が「スクラップ・ブックみたいな映画だ」と言いましたが、様々な素材をコラージュすることによって、テーマやメッセージが浮かびあがっていくという手法が、ドキュメンタリー映画に詩情を加味するという点や、映像表現の方法論として、興味深くて好きなポイント。
でも、いちばんビックリしたのは、今回は再見だったにもかかわらず、ウチの相棒が、前に一緒に見たのをすっかり忘れていたこと(笑)。
あ、これだけゲイ関係(監督がゲイ)だな。
トゥルーへの手紙(amazon.co.jp)
『ロードキラー』ジョン・ダール
主演のポール・ウォーカーは、最近の若手(っても、もう三十代なのね)の中では、けっこうお気に入りの一人。
まぁ、流石に八年前の映画ともなると、まだちょっと若くて甘チャン過ぎて、さほどツボは押されなかったけれど、それでも謎の犯人に強要されて、馬鹿兄貴(スティーブ・ザーン)と二人一緒に、全裸でドライブインに入って食べ物をオーダーさせられる……なんて展開は、はっきり言って私にしてみりゃ、下手なポルノよりよっぽどエロかった(笑)。
因みに、そーゆーこと抜きにしても、ホラー風味のサスペンスとして、立派に水準以上に楽しめる良作。
でも、やっぱポール・ウォーカーだけに限って言えば、ひたすら脱ぎっぱなしの『イントゥ・ザ・ブルー』や、映画の出来はともかくとしても、アイドル映画的なコスプレが楽しかった『ボビーZ』の方がいいなぁ(笑)。
ロードキラー(amazon.co.jp)
『スパルタクス』ワージム・デルベニョフ&ユーリー・グリゴローヴィチ
アラム・ハチャトゥリアンのバレエを、ボリショイ・バレエが踊ったものを、モスフィルムが映像化した77年度作品。
舞台の記録という枠組みを逸脱せず、なおかつ映画的な醍醐味も存分に感じさせてくれる逸品でした。華美な装飾や少女趣味的なロマンティシズムを廃した、ストイックなまでの美術や衣装や、モノトーンを基調にして、ポイントカラーに赤だけを使うといった色彩設計も素晴らしい。
バレエのことは良く知りませんけれど、スパルタクス役のウラジミール・ワシリーエフの踊りは、ダイナミズムと繊細な表現力を共に兼ね備えた感じで、実にお見事。他の踊り手も、メインの数人から一糸乱れぬ群舞も含めて、隅から隅まで修練と高い技術力を感じさせて、ひたすら感心。男性的で力強いコレオグラフも、私好み。クライマックスのケレン味から荘厳な幕切れに至る流れも、実に感動的。
スパルタクス(amazon.co.jp)
“1612: Khroniki smutnogo vremeni” Vladimir Khotinenko
前にここで予告編を紹介したロシア映画ですけど、我慢しきれなくて、ロシア語オンリー字幕なしにも関わらず、ロシア盤DVDを買ってしまった(笑)。
てなわけで、内容の方はナニガナンダカサッパリワカラナイんですけど(笑)、クライマックスのモスクワ攻城戦はマジでスゴい! ここは、セリフはわかんなくても、迫力や展開の面白さに、マジで目が釘付けになる。スペクタクル以外も、衣装や美術などステキ映像テンコモリ。
え〜、因みに、責め場(フロッギング)もこんな感じでかなり痛々しく、やっぱり目が釘付けに(笑)。
ご贔屓のミハウ・ジェブロフスキーは、悪役だし、剃髪するとちょっとお鉢がデコボコなのが目立ったりはしましたが(笑)、でも出番はいっぱいあった(笑)。これで再び惚れ直したので、その勢いで『ファイヤー・アンド・ソード』『コンクエスタドール』『THE レジェンド 伝説の勇者』『パン・タデウシュ物語』を再鑑賞(『パン・タデウシュ』だけ日本盤DVDが出ていないので、英語字幕付きのポーランド盤で)。それでもまだ治まらないので、『コンクエスタドール(Wiedzmin)』の長尺版VCD(字幕なし)を、思い切ってポーランドに注文しようかどうしようか、悩み中(笑)。
『キング・ナレスワン 序章~アユタヤの若き英雄誕生~』『キング・ナレスワン ~アユタヤの勝利と栄光~』チャートリーチャルーム・ユコーン
バンコク在住の友人に、「『スリヨータイ』の監督の新作だよ」と教えてもらい、ネットで予告編を見てビックリ。「これは見ねば!」と思っていたら、何と、去年の夏に東京や大阪でイベント上映されていたと、後から知ってもうガックシ。
で、我慢できなくて、これまたタイ語オンリー字幕なしにも関わらず、タイ盤DVDを購入(笑)。
もう、スケールがトンデモナイ。戦闘シーンの物量がスゴくて、それだけでも一見の価値アリではあるんですが、それ以上に、日常シーンのスゴさにビックリ。映画のために町一個まるまる作っちゃったそうだけど、そうしただけあって、近景のドラマだけではなく、遠景でも絶えず人が何かしら動いているのだ。まるで、タイムトラベルしてロケしてきたみたいな映像。もちろん、衣装から小道具からセットから、その充実っぷりはハンパじゃなく、徹頭徹尾とてつもなく贅沢な映像。
まあ、論より証拠、公式サイトへどうぞ。
ネットで予習してから見たので、粗筋程度は把握できましたが、やっぱディテールが全く判らないのは残念。特に『序章』は、王の幼年時代を描いた、ジュヴナイル的なキャラクター・ドラマだし、大河ドラマ的伏線らしき描写も、そこかしこで見られるので、いつかはセリフをきちんと理解しながら見たいもの。
第二部の方は、とにかく成長したナレスワン王が、カッコよすぎてウットリです(笑)。この方、現役の軍人さんなんだそうですが、ハンサムな上に所作はキレ良くきびきびと、背筋はすっと伸びて風格あり、更に、脱いだら脱いだで、いかにも自然な筋肉美。ついでに、脇の連中もなかなか魅力的で、更に、セリフも役名もなさそうなその他大勢でも、ついつい、こんなのとかこんなのとかこんなのに、目が奪われてしまったり(笑)。
全部で三部作らしいですが、完結編である第三部の完成が遅れているらしいのが、ちょっと心配です。
いちおうここを見ると、この二作の日本盤DVDが、2009年12月31日に発売ってなってますけど、ホントかしらん。だったら嬉しいけど、でもやっぱ劇場でも見たいなぁ。