新刊単行本『髭と肉体』のカバー絵のメイキングです。
とはいえ、メイキング用に途中経過画像を保存していたわけではないので、残っている素材やレイヤー統合前の画像を使った、簡単なプロセス解説程度ですけど。
まず最初に、編集さん(&営業さん)のラフチェック用に、スケッチを描きます。
水色の色鉛筆でアタリをとり、その上から鉛筆で形を描き起こします。
ブログ用に、トーンカーブで描線を強調して、アタリ線とフィニッシュ線の関係を見やすいようにしてみました。
ラフスケッチができたら、編集さんに見せて確認をとります。
今回は、あらかじめ表紙デザインのテンプレートをいただいていたので、スケッチと一緒に、アバウトなトリミング案も送りました。引きのA案と、寄りのB案の、二つを提案して、自分はB案の方が良いと思うが、いかがだろうかと付記。
結果、図柄は基本的にOK、トリミングはB案で決定。
ただ、営業サイドから、キャラクターをカメラ目線にしてくれというリクエストあったので、若い方のキャラの目線を、カメラに向けることで対処することにしました。
本番用の線画を描きます。
ラフスケッチを、そのまま下絵として使います。下絵をケント紙の下に敷き、ライトボックスで透かしながら、ペンとインクでドローイング。
基本的には、マンガと同じタイプの絵ですが、量感は彩色で出すので、陰影系のタッチは入れないことにしました。
ドクロのタトゥーは、輪郭線を使わないこともあり、Illustratorで作ることにしました。
下絵をIllustratorに読み込んで、ペン、ライン、ブレンドなどを使って、タトゥーの図柄を描いていきます。カラー・イラスト用ということもあり、マンガ本編で使ったデザインよりも、少々ディテールを増やしてあります。
判りやすいように、線を赤にして塗りをなしにしてありますが、実際に使ったファイルは、線をなしにして塗りを黒にしたものです。
タトゥーの図柄を、本番のペン画と位置を併せ、Photoshopに書き出してマスクとして保存します。
Painterで背景の壁を描きます。
描き方は簡単。まず、壁の基本色にグラデーションで明暗を付けた、複数の画像を用意しします。次に、本番画像のクローンソースに、そのグラデーション画像を指定して、カラーをクローンソースにしたスポンジツールで、テキトーにポポポポポンと塗っていけば、この画像の出来上がり。
次に、新規レイヤーを作って、壁のひび割れや剥落を描き込みます。それがこの画像。
次に、また新規レイヤーを作って、合成モードをフィルタか乗算にして、そこに寒色系で影を描きます。
背景はこれでオシマイ。
Photoshopで、パスを使って彩色用のマスクを作ります。
使ったパスとマスクの数は、ご覧の通り。
再びPainterに戻って、さっきの彩色用マスクを選択範囲として読み込みながら、フィギュアを彩色していきます。
彩色が一通り終わったら、残りの作業はPhotoshopで行います。
タトゥーを入れます。
肌のレイヤーを複製して、Illustratorで作ったタトゥーのマスクを選択範囲として呼び出し、選択範囲を反転させた後、タトゥー以外の肌を消去します。
そうして作ったタトゥーの肌のベースレイヤーに、レイヤー効果のベベルとエンボスを使って、うっすらと皮膚の盛り上がりを作ります。わざとらしくならないように、最終的に判るか判らないかくらいの、ギリギリのラインを狙います。
その上に乗算レイヤーを作り、同じタトゥーの選択範囲を使って、ノイズを加えたダークグレーでタトゥーの色を入れます。
全体を同じ濃さにしてしまうと、肌の立体感から浮いてしまうので、ライト部とシャドー部ではグレーの濃さを変えます。具体的には、肌レイヤーをグレースケールに変換したものを、マスクおよび選択範囲として使って、肌の明暗とタトゥーの明暗を揃えています。
フィギュアの下半分に、新たな乗算レイヤーを使って、シェードを入れます。
最後に、調整レイヤーを使って、全体の色調を整えます。
単行本のカバー用イラストなので、ちょっと派手めがいいかと思い、彩度とコントラストを高めにしてみました。
以上。