『THE KING 序章〜アユタヤの若き英雄/アユタヤの勝利と栄光』(2007)チャートリーチャルーム・ユコーン “King Naresuan” (2007) Chatrichalerm Yukol |
前に何度か紹介している、タイ製歴史スペクタクル映画『キング・ナレスワン』の日本盤DVDを無事全編鑑賞したので、追加の感想をば。
ストーリーは、16世紀中頃のアユタヤ(タイ)とホンサワディ(ビルマ)の戦いを背景に、ピッサヌローク(タイ)の王子でありながら、幼くして人質としてホンサワディに連れていかれたナレスワン王子が、実は人格者であるホンサワディ王や、その師でもある僧侶に導かれ、また、虜囚であるシャム族(タイ人)の少年や孤児の少女と友情を育み、やがて聡明で逞しい若者に成長して、アユタヤの独立を目指して立ち上がる……といった内容。
第1部『アユタヤの若き英雄』はホンサワディの人質となった少年期を、第2部『アユタヤの勝利と栄光』は逞しく成人した王子の戦いを描いています。
まあ、前にも書きましたが、とにかくセットやモブの物量のすごさと、衣装や小道具の豪華さに圧倒されます。もちろんCGIも使っているんですけど、それでも町一つ丸々作ってしまったような規模の、ホンサワディやアユタヤのオープン・セットは、往年のハリウッド・スペクタクル映画を彷彿とさせる大スケール。
往年のスペクタクル映画を彷彿とさせるという意味では、演出も同様です。オーセンティックで落ち着いた感じで、悪く言えばちょっと古めの感じ。
ドラマ的には、歴史物の常として、叙事とキャラクター・ドラマが並行して描かれるんですが、第1部に限って言うと、ちょっと叙事をおさえることで精一杯で、キャラクターの掘り下げが不足していたり、モノガタリの流れがぎこちなくなってしまっているきらいはあります。
というのは、このドラマにおける勢力分布は、アユタヤ対ホンサワディという二項対立ではなく、そこに、アユタヤとピッサヌロークという二つのタイの王家の思惑も絡んだ三つ巴になっているんですな。そして、主人公のナレスワン王子は自由に動けない捕虜なので、そういったパワーゲームからすると蚊帳の外の存在。結果、モノガタリ全体の牽引力は、主人公の成長劇、主人公が絡まないパワーゲーム、叙事の説明という3つの要素に、どうしても分散してしまう。
とはいえ、主人公を含む子供たちの日常劇は楽しいし、様々な思惑が交錯する人間ドラマとか、叙事に関する様々なエピソードとかは面白いし、ホンサワディ王や僧侶のキャラは魅力的だし、ナレスワン王子と友達になる少女マニーチャンは超カワイイし……と、ストーリー的な魅力には事欠きません。
第2部になると、ナレスワン王子は成人して行動的な存在になり、今度は立派にストーリーの中軸となるので、前述したような作劇的なぎこちなさは消えます。
また、第1部から成長して続投するキャラクターに加え、新しいキャラクターも加わり、しかもそれらがいずれも魅力的で良く立っているので、キャラクター・ドラマからくるエモーションもぐっと盛り上がります。古典的な恋愛劇も、これはこれでまた良きかな。
また、バトル・シーンのような大かがりな見せ場も、よりいっそう大規模で内容も凝ったものになるので、そういった見応えや娯楽性も倍増。
エピソードの展開と、キャラクター・ドラマのあれこれと、視覚的な見応えという、史劇らしい見所が三拍子揃った、文句なしの出来映えです。
それに何てったって、成長したナレスワン王子が超カッコイイし(笑)。
そんなこんなで第2部を堪能すると、どうしても「続きは?」と思ってしまうんですが(この映画は全3部作を予定しています)、その第3部の公開が本国のタイでも遅れていて、本来なら今年の夏に公開予定だったのが、公式サイトを見てもまだ何も情報なし。
ちゃんと完成するのかしらん……と不安に思っていたら、何とYouTubeで第3部の予告編を発見! 公式サイトにはまだないのに……流出モノ?(笑)
というわけで、とりあえず貼っておきませう。
で、これを見て何がビックリしたかって……。
王様(あ、まだ王子様か)、なんかすっげ〜バルクアップしてません??? 第2部と体型が別人なんですけど!
とゆーわけで、楽しみがますます増えたんですけど、しかし何が不安かって、この第3部を果たして日本語字幕付きで無事に見られるのかどうかってことです。
ちゃんと最後までDVD出してくださいよ、メーカーさん!