先日上半期分をやったので、今回は下半期分。5月16日〜31日までの分。
『エレファント・マン』〜イギリス盤Blu-ray
これまた公開時に劇場で見て以来だから、30年ぶりくらい。長らく再見してなかったのは訳があって、これみてコワイキモチワルイオッカナイと思ってしまった自分に自己嫌悪があったのと、自分の中の(当時は)認めたくない部分をえぐり出されてしまった感じがして、それがトラウマだったから。
要するに、見せ物に群がる醜悪な人間像をイヤ〜ンと感じながら、でもこの映画を見に来た自分も彼らと相通じる部分がある…なんて思って、ハイティーンの頃の自分はけっこう落ち込んでしまったのですよ。でも今は、自分は聖人君子ではないと既に知っているから、再見しても大丈夫だった。
今回鑑賞したStudio Canal Collectionのブルーレイ(英盤)は、日本語字幕も入っていてメニューも日本語化されてるし、リージョンもフリーだし、フィルムの粒状感を残しながら高精細な画質も文句なし!
とゆーわけで、同時購入した「去年マリエンバードで」と「カタリーナ・ブルームの失われた名誉」も、見るのが楽しみなり。^^
これに味をしめて、次はブニュエル「昼顔」とヴィスコンティ「夏の嵐」とロージィ「恋」を、ポンドが安いうちに注文だッ!…と思ったのに、この3つには日本語字幕が付いてないみたいで、ガッカリ。 (´・ω・`)
『厳戒武装指令』〜国内盤DVD
…こーゆーどれがどれだかワカンナクなる戦争映画の邦題って何とかして欲しいw
で、印象は「変な映画!w」いちおう、チェチェン紛争に赴き友人と一緒に捕虜になってしまった若いロシア兵が主人公なんですが、次から次へと色んなエピソードが出てきて「お、これから面白くなるかな?」と思ったところ、どれもこれもショボ〜ンと収束して…の繰り返しとゆー内容。
まあ、こんなにとっちらかった映画も珍しいw ある意味、現在のロシアの混乱が、そのまま作劇に出ているような…と言ったら褒めすぎかw おそらく様々な点景を配して「今わが国はこういう状況にあるのだ」とゆー感じにしたかったんだと思うけど、肝心の技量も感覚もB級以下なので、何ともはや…
そんなこんなで、見ていて「…へっ?」てな感じの連続なので、ヘンな映画好きの方はどうぞ。もはや出来が良い悪いとゆーレベルを超越した、ストーリーのとっちらかり具合が見物です。透けチクビで馬に跨る美少女のイメージショットとか、クライマックスの三文青春ドラマとか、ホントビックリよw
因みにDVDは、ドンキとかで500円で売ってます。^^
この手の500円戦争映画では、セルゲイ・ボンダルチュクの「バトル・フォー・スターリングラード(祖国のために)」、ニコライ・レペデフの佳品「東部戦線1944」、ダニエル・クレイグやキリアン・マーフィが塹壕を舞台に繰り広げる密室劇「ザ・トレンチ」なんかが、掘り出し物なのでオススメ。
チェチェン紛争関係のロシア映画でマジメにオススメなのは、セルゲイ・ボドロフの「コーカサスの虜」とアレクセイ・バラバーノフの「チェチェン・ウォー」、あと前につぶやいたアレクサンドル・ソクーロフの「チェチェンへ アレクサンドラの旅」かな。
『カティンの森』〜国内盤DVD
この題材でアンジェイ・ワイダだから、それなりに身構えていていたつもりだけど…うわぁ、それでもまだ甘かった…。色々感じるものは多々あるんだけど、とにかくラスト10分ほど、胃がキリキリするようなクライマックスに茫然自失、それまでの全てが吹き飛んでしまった感じ…。
それまでにも、動的と静的のカメラワークの対比の見事さとか、抑制された語りすぎない語り口とか、最小限にして効果的なペンデレツキの音楽とか、いわゆる映画的な素晴らしさはいっぱいあるんだけど、終幕、映画から現実に、唐突に放り出されてしまうので、それが一番こたえる。
ビックリしたことが一つ。昨夜見たヘンテコ映画「厳戒武装指令」に出てたヒロインの父親役の人が、今夜の「カティンの森」でもチョイ役だけどヒロインを助けるソ連将校というけっこう印象的な役で出ていた。偶然なんだけど、映画の内容も出来も天と地ほど違うだけに、何ともミョーな感じ。
アンジェイ・ワイダは「パン・タデウシュ物語」の日本盤DVDが出ないかと、ずっと期待してるんだけど、望み薄なのかなぁ…。劇場公開もされてるし、VHSは出てるのに…。
「カティンの森」予告編、何か情緒的なヒューマン感動作みたいになムードだけど、トンデモナイっす…。 (´・ω・`) http://youtu.be/tzZG5KjlA8s
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0』〜アメリカ盤Blu-ray
既存の完成品に手を入れて今様にするというのは、なかなか難しいものがありますね…。キャラクターが3DCGになっているカットは、オリジナルの方が良かったと思うけど、ラストカットなんかは2.0の方が効果的…なんて感じで、正直あんまりニュートラルな気持ちでは楽しめなかった。
まあ、どっちを先に見ているかで、それぞれ印象も変わってくるんだろうし、あんまりアレコレ考えないで、バージョン違いを楽しむつもりで気軽に見た方が良かったのかも。だから、得たモノもあれば喪われたモノもあり。
原作マンガだと、ラストで素子が入ったのが実は男の義体だったというトコで、性別の無効化まで示唆されてたのが面白かったけど、映画だとそれがなくて残念だった代わりに、人形使いの見た目と声のギャップが、そこを補ってるように感じられて良かったんだけどな〜…(注・人形使いの声優が男性から女性に変わったことについてのつぶやき)
『玉割り人ゆき』〜日本盤DVD
まぁ判る人にはお判りでしょうが、ええ、ええ、川谷拓三のチ×切りシーン(あ、×ン切られシーンか)目当てですとも!w 折檻されて傷だらけの拓ボン、越中が良く似合っててステキ。後半の乞食ルックも良く似合っていてステキ。あ〜…ステキ。
映画自体もしっとり叙情的で面白かった。でもピンクシーンになって女優さんがアンアン喘ぎだすと窓を閉め、終わると開けて、またアンアン始めるから締めて…と、鑑賞しながら立ったり座ったり、かなり忙しかったw
政治がロマンやセンチメンタルの色を帯びているというのは、自分には全くない感覚なので、ちょっと不思議な感じがする。少し羨ましい気も…。
『Saawariya』〜米盤Blu-ray
期待通りの超高画質で、映像の美麗さにますますウットリ。DVDで欠けていた歌の歌詞の字幕も、ブルーレイではちゃんと入っていた。
しかしこの字幕、英仏独西あたりはもちろん、ギリシャ語やアイスランド語やブルガリア語などヨーロッパ各言語に加え、中国語や朝鮮語やタイ語やトルコ語やアラビア語まで収録されているのに、しかもソニー・ピクチャー・エンタテイメント製なのに、何で日本語はないんだよッ! ヽ(`Д´)ノ
『キッスで殺せ!』〜日本盤DVD
ビックリした〜!フィルム・ノワールだっつーから、てっきり技巧的でロマンティシズムのある世界なのかと思ってたら、ドライでパワフルな演出と破綻すれすれのギリギリ感で、有無をいわさず映画に引きずられていく感じ。荒削りなところも、また良きかな。
『ロシアン・ブラザー』〜日本盤DVD
社会主義崩壊後のロシア社会の混迷を背景に、兵役を終えた純朴な青年が、ペテルブルグ裏社会の抗争に巻き込まれて殺し屋に…ってな感じで、ストーリーだけ抜き出すとハードな感じがするけど、実際は細やかな人間模様とオフビートなユーモアが散りばめられた、実に「面白い」映画。
殺し屋としての腕は抜群ながら無邪気で純真、なのに屈折もしていなく男根主義的でもなく、少年の爽やかさすら漂わせる、天然ボケすれすれの主人公キャラの魅力と、それを演じるセルゲイ・ボドロフ・Jrの魅力が絶品!つくづく早逝が惜しまれる。未ソフト化の続編があるらしい。見てみたいなぁ。
『Dostana』〜アメリカ盤Blu-ray
前半見終わった。ボリウッド映画は長いので、半分ずつ。 ^^;
同性愛が非合法のインドで2008年に作られた「ゲイ映画(?)」。ぶっちゃけ主人公達はゲイではなく、米国のマイアミで住居やビザのためにゲイカップルのふりをする男2人組とゆー「チャックとラリー おかしな偽装結婚!?」タイプの話ですが、ゲイの観客もきちんと意識した作り。
まだ後半を見ていないので何とも言えませんが、同性愛差別が根深いインドで、ゲイを扱った映画をコマーシャルベースで作るという、背景事情などを鑑みると、前半を見る限りでは、その頑張りは称賛に値するのではないかと。明日見る予定の後半が楽しみ。
後半見終わった。
意外なことに、ゲイ関係のネタは昨日の前半部分で終了して、後半はそこから発展した「男と女の友情」というテーマに。ボリウッドらしい盛り沢山さと、いささかの強引さを含みつつ、全体的にはウェルメイドな味わいで、しっかり楽しめる内容になってます。
さて、主に前半に見所が集中している「制約がある中でのゲイを扱った映画」としては、まず、ゲイであること自体(行動とか素振りとか)で笑いをとろうとはせず、あくまでも、ゲイ・カップルを偽装したために起きるアクシデントをコメディにしているのが気持ち良い。
この点に関してはかなり良く考えられており、例えば「ノンケの主人公が咄嗟に自分たちの出会いとロマンスをでっちあげた回想シーン」では、いかにもなオーバーアクトのオカマ演技を見せつつ、ストーリー中で本当にゲイである登場人物の演技は、より自然な抑えたオネエ演技という具合。
また、前述したゲイを偽装したことによるトラブルによって、例えば主人公の母親がそれに悩んで、しかし結局は受け入れるとか、逆に息子がゲイであることを母親に隠し続けていた苦悩を、第三者が想像して母親に語るとかいった具合に、現実の問題をサラリと、しかもユーモアたっぷりに含めている。
こういったことは、インドのようなホモフォビアの強い社会において、ゲイに対して夢を、ヘテロに対しては啓蒙を、という制作者の姿勢が見られるようで気持ち良い。そしてクライマックスにもう一つ、大きな仕掛けが用意されている。
詳細は省くが主人公たちは、最終的には皆の前で、男同士でキスをすることになる。おそらくインドではタブーでありショッキングなことなのだろうが、この映画ではそれがハッピーエンドへ向けた喝采と共に行われる。制約の中、同性間のキスを祝福ムードで描けたこと自体が、称賛に値するだろう。
他にもゲイの観客に向けたサービスとしては、カップルの片方をモデル出身のハンク男優にして、しかもしょっちゅう脱がせてマッチョなセミヌードを披露させるとか、マイアミという地で繰り広げられるオシャレで楽しそうな同棲生活を見せるとかいった点も挙げられるだろう。
というわけで「Dostana」は、ゲイ映画ではないけれど、インド映画でタブーとされていたゲイという要素を作中に盛り込み、ゲイの観客もしっかり視野に入れつつ、同時に一般向けの娯楽作としても着地できているという、なかなか見所の多い映画でした。ボリウッド好きのゲイ(いるのか?)は必見。
「Dostana」から、息子がゲイだというのでパニクる母親の姿を、ユーモアたっぷりに描いたミュージカル・シーン。歌詞は「ママの坊やがヘンになっちゃった/息子は花嫁の輿に乗るの/何てこと!?」てな感じ。 http://youtu.be/nTcwRjlWx9M
因みにこの後、ママは息子の同性愛を受け入れるんですが、結果、古式ゆかしきインド風の花嫁を迎え入れる儀式で息子のボーイフレンドを招き入れ、しかもそれが、身分違いの恋で勘当された息子と親の和解を描いた国民的大ヒット映画「家族の四季」のパロディーという、ボリウッド好きには爆笑展開にw
『まぼろしの市街戦』〜国内盤DVD
戦争で住民が逃げ出してカラッポになった街で、残された精神病院の患者たちと、街にやってきた若い兵士が繰り広げる、カーニバルのようにカラフルな寓意劇。…なるほど、こりゃカルトだわ。エミール・クストリッツァの映画のご先祖様を見た気分。
期待していた映画が、いざ見たら期待以上の内容だったときって、ホント嬉しいな〜。シュールな絵面にステキな衣装、ちょいと切なくて風刺の効いた内容、いやぁ素晴らしかった。愛しのアラン・ベイツ様も、まだお若いけど、最後の最後でしっかりかましてくれたしw
『蜘蛛女』〜国内盤DVD
悪徳警官だけど小物のゲイリー・オールドマンが、ファム・ファタールに出会って自滅していく様子を、シャープだけどムードもたっぷりの演出で描いた、今様フィルム・ノワール。…いやぁ、ツボった。どーして私はこう、しょーもない男の話とか、男が尾羽打ち枯らしていく話が好きなんだろう。
オープニングとエンディングが絶品。特にエンディング、切なさにマーク・アイシャムの音楽が追い打ちをかけて、ちょっと泣きそうになった… 。・゚(゚⊃ω⊂゚)゚・。 このテのムードがあるクライム映画は大好きなので、最近だと「ソルトン・シー」なんかがお気に入り。
監督のピーター・メダックは、どにかく傑作「チェンジリング」(最近のじゃなくて昔のオカルト映画ね)を、何とかソフト化してくれ〜!…ってワシしょっちゅう言ってるな、コレw
マーク・アイシャムの映画音楽では、何と言っても「モダーンズ」が大好き。特にこの「聞かせてよ愛の言葉を」のカバーは絶品。もう、泣ける泣ける。 http://youtu.be/A95f74Kvsq8
『副王家の一族』〜国内盤DVD
19世紀半ば、イタリア統一に向かう激動の時代を背景に、シチリアの名門貴族の父子の確執や利権を巡る争いを描いたドロドロ劇。なんか山崎豊子のイタリア版みたいな印象。衣装や美術が重厚で絢爛豪華…なのにDVDとしては画質がイマイチなのが残念。
キャラクターが掘り下げ不足だとか、厭世的なテーマなので共感しづらいとかカタルシスに欠けるとか、いろいろと不満点はあるけれど、贅沢を言わなければ、ストーリー自体の起伏は充分だし、エモーショナルに盛り上がるシーンもあるので、史劇好きなら充分に楽しめるかと。
『ポー川のひかり』〜国内盤DVD
イタリアの大学図書館で、貴重な古書の数々が太い釘で床や机に打ち付けられるという事件が発生。犯人の若い哲学教授は人里を離れ、河畔の廃墟に住み着く。彼はその風貌から、近隣のホームレスたちから「キリストさん」と呼ばれて慕われるようになるが、そこに開発による立ち退き要求が…といった内容。
現代の文明や人間社会に対する疑問といったテーマが、重かったりシビアになりすぎたりせず、詩情豊かなスケッチのようにサラリと描かれるのがすごく魅力的。ただ、ヨーロッパにおける「文明と人間社会」なので、それがキリスト教と密接に結びついてくるあたりは、ちょっと観る人を選ぶかも。
個人的には、寓意性と人情話が同居したような話法が、とても魅力的だった。監督は「木靴の樹」のエルマンノ・オルミ。劇中とエンドクレジットで使われる「忘れな草(私を忘れないで)」のメロディが、作品のテーマをスッと押していて、その優しいさりげなさが心に沁みる。
実際の映画の印象より、予告編がアグレッシブに感じられるけど、それだけ「欧米的にはかなり涜神的なテーマ」だってことなんでしょうね。 http://youtu.be/_DrhuLuYxDo
『Folsom Prison』〜アメリカ盤Blu-ray
買っちまったよ、初ゲイポ×ノBlu-ray…が届いたなう。
ひゃ〜っっっ!!!ディテールが!毛の一本一本が!液体や粘膜のシズル感がっっっ!!!! …うむむむ、意外なソフトでハイビジョンの実力を思い知ってしまった…ヤバいわ、これw
『どぶ鼠作戦』〜国内盤DVD
やっぱりこの一連の中では最初の「独立部連隊」が一番好きという感想に変わりはないけど、でもたっぷり楽しませていただきました。相変わらず良く立ったキャラに加え、今回はちょっとずらしたキャスティングが効果的。チョイ役で大御所お馴染み色々と顔を出してくれるのも楽しい。
藤田進が良かったな〜。水野久美と田崎潤はチョイ役すぎてビックリw 中谷一郎、今回は髭がなかったのは残念。正直、ガキの頃から見ていた風車の弥七をイイと思ったことはないんだけど、この頃の髭付きの中谷一郎って、なんかスゴく好きなんだよねw
あら、部連隊とミスタイプしてたw(注・正しくは『独立愚連隊』)「西へ」も「どぶ鼠」も面白かったけど、やっぱ最初の無印の方が好き。あんま見たことないんだけど谷口千吉も好きなので、「やま犬作戦」も見てみたい…
あ、「やま猫作戦」だったw
以上、2010年5月に家で見た映画でした〜。