“Magadheera” (2009) S.S. Rajamouli
インド(テルグ)映画、輸入盤Blu-ray(英語字幕)で鑑賞。
インド映画ってのは、使用言語によって様々種類があるそうで、過去に私がこのブログで何度か紹介してきたのは、いわゆる「ボリウッド」と呼ばれるヒンディー語映画、日本でも以前話題になった『ムトゥ 踊るマハラジャ』なんかはタミル語映画(コリウッドとか言うらしいです)、テルグ語の映画はトリウッド、他にもマラヤラム語映画とかカンナダ語映画とかがあるんだそうな。
で、この”Magadheera”は、私にとって初テルグ映画。この後、マラヤラム映画も1本見たけど、カンナダ映画はまだ未体験(笑)。
ストーリーの大筋は、こんな感じ。
400年前、マハラジャの姫君と側近の戦士が、互いに愛し合ってはいるものの、結ばれることなく死んでしまう。その今際のきわに、主人公である戦士は、せめてひとたび姫の手に触れたいと願うのだが、それも果たされなかった。
舞台変わって、現代の南インド。生まれ変わって、現世ではアクロバティックなバイク乗りになっていた主人公は、ある日偶然、やはり現世に生まれ変わっていた姫の手に触れたことで前世の記憶が蘇り、再び運命の恋に落ちる。
しかし、生まれ変わった姫に前世の記憶はない。更に、400年前の恋敵であり極悪非道の裏切り者でもあった男が、彼女の従兄としてやはり現世に生まれ変わっており、しかも彼女の美貌と財産を目当てに結婚しようと画策中だった。
主人公とヒロインが、生まれ変わった恋敵の存在や、その思惑を知らぬまま、恋敵だけが行者の占いによって過去の因縁について知り、主人公とヒロインを引き裂こうと企む。結果、主人公はヒロインの父親殺しの濡れ衣を着せられてしまい、ヒロインもそう誤解したまま、ヘリコプターから落とされて湖に沈んでしまう。
ここで、舞台は再び400年前に戻り、この三人の経緯が改めて語られる。
姫と戦士は互いに愛し合っていたものの、そこに例の恋敵が求婚者となって現れる。姫との結婚を賭けて二人は勝負をし、見事戦士が勝つのだが、実は彼は、代々「戦いで死ぬ前に100人の敵を斃す」という勇猛果敢な一族の出であり、若死にしやすい家系だった。そのため父王は、愛娘が若くして寡婦になってしまうことを恐れ、「娘を愛しているのなら身を退いてくれないか」と戦士に頼み、戦士もそれを承諾してしまう。
そんな最中、恋に破れた例の恋敵が、王座と姫の身を狙って、敵国に寝返って侵略に手を貸す。その最中で父王は殺され、生き残った者たちはシヴァ神の神殿に追い詰められ、そして主人公は姫の身を守るため、たった一人で百人の敵に立ち向かい……ってな内容。
この後ストーリーは、過去編を終えて現代に戻り、主人公はヒロインの前世の記憶を呼び戻すことができるのか、そして無事に裏切り者の恋敵を斃すことができるのか……といった展開になります。
で、これがメチャクチャ面白かった!
まあインド映画らしく、アクションも歌舞もテンコモリ。別になくてもいい漫才めいたお笑いシーンも挟まるし、細かいことを気にしちゃいけない強引なストーリー展開もあり、キャラクター造形もまあコテコテでベタベタの判りやすさ。こういう作劇法とかに関しては、昨今の洗練されたヒンディー映画に比べると、まあ何とも前時代的で泥臭いのは否めません。
ところが、ストーリーといい絵面といい、そのパワフルさがハンパない。内容が実にオーソドックスかつドラマチックな、古典的な伝奇風味ラブロマンスということもあって、前述したコテコテ感とベタベタ感、そして後述する画面やセンスのトゥー・マッチさが、いずれもプラスの相乗効果になって、ものすごいプラス方向のパワーになっている。
そのパワフルさにグイグイ引き込まれ、3時間の尺も全く苦にならず、ヒーローとヒロインには思いっきり感情移入できるし、加えてあれもこれものテンコモリで楽しませてくれるもんだから、スタッフ一同歌い踊る楽しいエンドクレジットでは、もう満足感でイッパイに。
いや〜、こんなに多幸感と満足感に満たされた後味の映画は、久しぶりかも。
トゥー・マッチさに関しては、この映画では全編にわたってCGIが多用されているんですが、これがまた、かなり色んな意味でスゴい。
過去編のスペクタキュラーな見せ場では、そういうのがふんだんに登場するのはまあ判るんですが、なんとゆ〜かその、「スゴいものを見せてやろう!」っつ〜心意気の、そのスゴいものがスゴすぎて、おかげで衣装やセットや小道具なんか凄く豪華なのに、そこにミョ〜なCGIが絡むせいで、ゴージャスなんだかチープなんだか判らないカオスな絵面になっている(笑)。
まぁぶっちゃけ、現代編のダンス場面でも、オンナノコの揺れるオッパイから「かめはめ波」みたいのが出て男どもが石化する……なんてシーンが出てくると、CGIも半分くらいは使い方を間違ってる気がするんですが(笑)、とにかく、良くも悪くも「ハンパはしねぇぜ!」ってなサービス精神満点な心意気なもんだから、もう見ていて楽しいのなんのって。
こんな風に言っていると、何だかネタ映画みたいな感じを受けるかもしれませんが、確かにネタ的なオモシロ要素も多々あれども、しかし見終わったときには、ネタとかじゃなくてきちんと映画として「面白かった!」と思わせてくれるのがスゴい。
というわけで、映画好きなら一見の価値ありの力作。
“Magadheera”予告編。
あと、個人的に最大の収穫だったのは、過去編に出てくる”Dheera Dheera Dheera”というミュージカル・シーン。
以前から何度か、「こんだけCGIが発達してきたんだから、いつも大戦闘シーンとか壮麗な異世界とかだけじゃなくて、マンキウィッツ版『クレオパトラ』のローマ入城シーンみたいな、ハレの祝祭空間としての一大スペクタクルとかも見せてくれないかしらん……」とか言っているのですが、これぞまさに「それ」でした。
まあ、真っ当な意味では、前にここで紹介した”Jodhaa Akbar”の”Azeem-O-Shaan Shahenshah”の方がスゴいとは思うんですが、この”Magadheera”の”Dheera Dheera Dheera”も、その美麗さとイキ過ぎ感共々、拍手喝采でゴザイマス。
曲自体も実に好みで、脚韻を踏んだリズミカルな歌詞、民族音楽要素と西洋音楽的和声のブレンド具合、加えて戦士役のラーム・チャラン・テージャ君のカッコヨサもあいまって、もう何度リピート鑑賞したことか(笑)。当然サントラ盤も探し出してゲットしました(笑)。