“Boystown” (2007) Juan Flahn
(米盤DVDで鑑賞→amazon.com/英盤DVDあり)
2007年製作のスペイン産クマ系ゲイ映画。原題”Chuecatown”。
マドリッドのゲイエリアを舞台に、連続殺人に巻き込まれたクマ系カップルを描いたコメディ・スリラー。2008年の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭でも上映されたらしいです。
イケてるオシャレ系ゲイの不動産屋は、実は独り暮らしの老婦人を殺害しては、空いた部屋をオシャレなゲイカップルに斡旋していた。その目的はゲイエリアを丸ごとオシャレにすること。そして主人公たちは、同エリアに住む、オシャレじゃない肉体労働&クマ系ゲイカップル。
楽しく暮らしていた二人だが、仲良くしていた隣の老婦人が殺されてしまい、しかも老婦人が遺言で住まいをベアカブ(小熊、ベア系カップルの若い方)のレイに遺していたために、容疑者となってしまう。レイはそこに自分の母親を住まわせようとするが、パートナーのレオと母親の折り合いが悪い。
一方イケメン不動産屋(ヴィクター)は、レイのものとなった部屋をまだ狙っていて、今度は色仕掛けでレオに近付く。レオは普段からモテ系のレイにヤキモキしており、しかも今度はレイの母親にも邪魔されるようになり、二人の仲がギクシャクしてきたこともあって、ついヴィクターになびいてしまう。
ヴィクターは別の部屋を狙って、レイとレオの友人女性も手に掛けてしまう。レイの母親も犯人はレオだと勘違い。殺人事件を担当するのは、シングルマザーの女警視と、その部下で警視の息子で、しかも実はゲイの刑事。果たして彼らは殺人鬼を捕まえられるのか? そしてレイ&レオ二人の仲はどうなる??
……ってな、サスペンス・コメディ仕立ての映画で、なかなか楽しめました。テンポも悪くなく、コメディなんで早口なセリフが多く、英語字幕についていくのが大変だったりもしましたが(笑)、それでもダレたり飽きたりすることなく、スイスイ快調に見られます。
笑いのタイプはさほど狂騒的でもないクスクス系。ゲイネタはもちろん、嫁姑劇のゲイ版とか、エロティック・サスペンスのヒロインをゴツい男に置き換えたホモ版みたいな面白さもあり。追われて逃げ込んだ先がゲイサウナとかいった、コテコテのゲイ向けサービス場面もしっかりあり(笑)。
個人的には、オシャレ系ゲイとオシャレじゃない系ゲイの、感覚のすれ違いがけっこうツボでした(笑)。特に、オシャレ系ゲイ、ヴィクターのスノッブさは、実に「いるいる、こんなヤツ!」って感じ(笑)。で、対するオシャレじゃない系ゲイカップルのレオとレイは、実はアメコミおたくだったりして、ボールペン使ってウルヴァリンごっこしてたり、警察の取調室でもアメコミクイズに興じていたりで、これまた「判る判る!」って感じ(笑)。
そんな組み合わせなもんだから、ヴィクターのステータスを匂わせた会話が、レオとレイに全く通じず、「あの有名な建築家のフォスター氏が」「……ジョディ・フォスター?」「違う、ノーマン」「……『サイコ』の?」なんてやり取りになっちゃうあたりは、かなり笑えました(笑)。
役者も佳良。特にベアカブのレイは、実にかわいくて上玉。絵に描いたようなベア系のレオもマル、かなりビッチなレイの母親のキャラも楽しい。他にも、事件を担当する××恐怖症まみれの中年女刑事とか、その息子で実は隠れホモで、ストーリーの進行と共にどんどん服装とかゲイゲイしくなってっちゃう青年刑事とか、濃ゆ〜いキャラばっかりで笑わせてくれます。
というわけで、ユーモア・ミステリーとしてのストーリーを軸にして、ゲイ向けのネタをふんだんに散りばめながら、同時にゲイ・カルチャーに対する風刺もチクチク仕込まれた、軽く楽しく見られる一本でした。全体的にゲイ映画的な閉塞感がなく、安っぽさを感じさせないのも良し。予告編で「お!」と思った方ならオススメです。
……ま、個人的にはとにかく、ベアカブのレイがか〜わいいんだわぁ(笑)。