“Mahpeyker – Kösem Sultan” (2010) Tarkan Özel
(トルコ盤DVDにて鑑賞→amazon.com)
2010年製作のトルコ映画。17世紀初頭のオスマン帝国、平民の出ながら時のスルタン、アフメト1世の寵妃となり、以降孫の代に至るまで帝国を支えた女性、キョセム(マーペイカー?)の生涯を描いた歴史もの。
現スルタンの祖母にあたるキョセムは、廃墟となっている自分の生家を訪れ、それまでの生涯を回想し始める。娘時代、彼女は母の付き添いで宮殿に行き、そこでスルタン、アフメト1世と出会い、互いに一目で恋に落ちる。
彼女は母と引き離され、そのまま宮殿に留め置かれる。アフメト1世は彼女にマーペイカーという名を与え、その場で秘密裏に結婚するのだが、ハレムで権威を振るうスルタンの祖母と母はそれが気に入らず、花嫁教育のためという口実で、彼女をスルタンから引き離してしまう。
マーペイカーはスルタンと会えぬまま義祖母と義母からいじめられ、その間に二人はスルタンに別の女を与える。やがてその女が妊娠し、マーペイカーはスルタンに忘れられてしまったと思い、また、重なるいじめにも耐えかねて、ついにハレムからの脱走を試みるが、あえなく捕まってしまう。
しかし、その騒動が切っ掛けとなってスルタンは祖母と母の企みを知り、二人を古い宮殿に幽閉すると、マーペイカーを改めて第一妃として迎え入れ、キョセムという名を与える。こうして二人は幸せに暮らし、やがて子供にも恵まれるのだが、その幸せはながく続かず…といった話。
ヒロインの回想で語られる映画の前半は、彼女とアフメト1世のロマンティックなラブロマンスに、姑の嫁いびりや女の嫉妬といったドロドロ劇が加わった、通俗歴史劇といった味わい。回想が終わってからの後半は、それから一気に三十余年後、ヒロインと現スルタン(キョセムの孫)の母后の間の権力争いから、キョセムの死までが、剣戟アクション等も交えて描かれるという構成。
ストーリーのフォーカスは、主人公の無垢だった娘時代の心情と、時を経て陰謀まみれとなった最晩年の心情に置かれていて、歴史的な背景とか叙事的なアレコレは、「そんなの皆さんご存じでしょ」ってな感じで詳しく説明してくれない作りなので、私としては正直判りにくかったなぁ……。で、後でWikipediaなどを読んで、色々納得した次第(笑)。
また、全体の尺が1時間半程度ということもあって、モチーフのわりには全体的にこぢんまりした印象。話のほとんどがハレムや王宮といった閉鎖空間の中なので、歴史劇的なスケール感にもいささか乏しく、かといって人間模様のドロドロ劇の方も、まあ通俗娯楽の範疇を出ていない感じ。
ただ、衣装やら美術やらといった目の御馳走面は、これはゴージャスでなかなか楽しめます。オリエンタリズム絵画の名品を彷彿とさせるような、ロマンティックで美麗な場面があちこちに。娘時代の主人公はかわいいし、スルタンもすこぶるハンサムなので、ヒストリカル・ロマンス劇的なお楽しみどころは様々あり。
街のパノラマなんかは基本的にCGで、ちょい安っちいのは残念ですが、それでも建築途中のブルーモスクなんて嬉しい絵面もあり。
演出自体は凡庸。ロマンティックに美しくといった場面は、わりと上手くこなしているんですが、陰謀劇の緊張感やアクション場面はイマイチ。
というわけで、モチーフに興味のある方なら、内容的な満足度は別としても、目の御馳走のアレコレだけでも、けっこう楽しめるのでは。
私の場合は、アフメト1世がハンサムだわおヒゲさんだわ胸毛もあるわで、モロ好みのタイプだったので、そこだけでも10点加算です(笑)。
因みに、この方→Gökhan Mumcu/公式サイト(音出ます、注意)、