“Bang Rajan 2 (Blood of Warriors: Sacred Ground)”

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“Bang Rajan 2” (2010) Tanit Jitnukul
(イギリス盤DVDで鑑賞→amazon.co.uk

 2010年製作のタイ映画。2000年の傑作アクション史劇“Bang Rajan”の正統続編で、監督も同じサニット・ジトヌクル(タニット・チッタヌクン)。
 イギリス盤DVDタイトル”Blood of Warriors: Sacred Ground”。

 18世紀、アユタヤ王朝時代のタイで、ビルマの侵攻に立ち向かって全滅したバーンラジャン村(これが前作のストーリー)だったが、実は殺されていたと思っていた村の精神的な中枢である僧侶は、バーンラジャン村と同様に彼の指導を望む、別の村の者たちに密かに救出されていた。
 村人たちは、僧侶から授かった僧衣の切れ端を二の腕に巻き、神出鬼没のゲリラ戦法で、ビルマの捕虜となったタイ人たちを救い出しては、山中の隠れ里に匿う。ビルマ軍は、彼らの存在を幽霊のように怖れるが、侵攻自体が留まることなく、村人たちは次第に日々の食糧にも窮するようになる。そんなある日、ゲリラ戦士たちは、ジャングルの中でビルマ軍に襲われていたアユタヤ軍の部隊を救い、彼らを隠れ里へ連れ帰る。
 しかし人員が増えたことでますます食糧は乏しくなり、また、国のために戦う軍人と、隠れて生き延びながら、生き残るために戦っている村人の間では、気持ちの齟齬も生じる。隠れ里には不穏な空気が漂い始めるが、件の僧侶の人徳がそれを収める。
 一方ビルマ軍は、ゲリラの力の源は僧侶の霊力にありと考え、間諜を送り込んでの暗殺を謀る。同時に腹黒いビルマの将軍は、戦乱のどさくさに紛れてタイの黄金大仏を盗み出そうと計画していた。
 そんな折り、ついにアユタヤが陥落する。帰る国を失った隠れ里の兵士たちは出撃を決意し、村人たちにも「このまま隠れていても、今はいいが、いつかは国全体が敵の手に落ちてしまう、そうなってしまえば、村どころか祖国も失ってしまうのだ」と説き、助力を求めるが……といった内容。

 白状すると、鑑賞前はあまり期待していませんでした。
 というのも、”Bang Rajan”はあれ1本で完結した作品だと思っていたし、この監督の作品も、素晴らしかったのはそれ1本だけで、その後の『ラスト・ウォリアー』『セマ・ザ・ウォリアー』『アート・オブ・デビル』『デッドライン』などは、決して褒められた出来ではなかったので……。
 しかしこの”Bang Rajan 2″、無印”Bang Rajan”には全く及ばないものの、それでもその後の作品の中ではダントツに出来が良く、これは嬉しい驚きでした。
 あちこち残念な部分はあるものの、全体的にはかなり楽しめる仕上がりですし、続編にありがちな無理矢理感(特に”Bang Rajan”は『あの話にどーやって続編を作るっていうの!?』ってな内容なので)も、上手いこと最小限に抑えられている感じ。
 バトルシーンは相変わらず見せます。前半のゲリラ戦はアクロバティックなアクション映画風に見せ、クライマックスは史劇風のスペクタクル的にする対比も良し。
 ただスペクタクルの方は、チープなCGが興を削いでしまった感アリで、本格的にセットを組んだ前作と比べてしまうと、かなり見劣りがするのも事実。でも、CGのチープさに目を瞑れば、大雨が降りしきる中での集団肉弾戦に加えて、大仏も倒れれば地割れも起きるという大盤振る舞いなので、それはそれで楽しかったり(笑)。
 クライマックスが二段構えにしたのは、パワーやフォーカスが散ってしまったきらいはあるものの、そのかわり真のクライマックスには、前作のファン感涙の仕掛けがあります。まあコテコテでベタベタではあるんですが、ファン心理としては「キタ━(゚∀゚)━!!!!!」って感じ(笑)で、ぐわーっと熱くなって気分的に盛り上がります。
 バトルシーン以外に、隠れ里の日常風景を叙情的にじっくり描いているのも佳良なんですが、エピソード配分に失敗していて、そればかり延々と続くのはイマイチ。おかげでちょっと間延び&中だるみ感があって、これまたそこいらへんの作劇が上手かった前作に比べて残念なポイント。
 キャラクター・ドラマの方は、将来を誓い合いながらも運命に引き裂かれる男女、妻が妊娠中の夫婦、子供を人質にとられている夫婦、惹かれ合いながらも口には出せない初心な男女、父と息子、母と娘……といった設定を駆使して、燃える場面と泣かせる場面がテンコモリ。ベタなお約束と判っていても、つい熱くなったりウルウルきたり。

 続編モノなので、無印”Bang Rajan”を見ている人向けではありますが(そういう意味では今回見た英盤DVDは、タイトルを変えてそれを明示していないので不親切)、「あの傑作よ再び」という過大な期待(ストーリー自体の魅力、作劇、キャラ立ち、演出……等々、無印と比較してしまうと、どうしても全て見劣りしてしまうのは事実)さえしなければ、かなり楽しめると思います。
 個人的には、名も無き人々の熱い生き様による燃えと泣きといったテーマが、今回も変わらず引き継がれていたことや、クライマックスの仕掛けの効果でファン心理を上手く擽られたこと、そして前述したように、正直事前の期待値がかなり低かった反動もあって、鑑賞後の満足度はけっこう高し。
 そしてもちろん今回も、裸のアジアン・マッチョ出まくり&血飛沫ビシャビシャ&殺されまくりです(笑)。