“BearCity” (2010) Douglas Langway
(米盤DVDで鑑賞→amazon.com)
2010年製作のアメリカ映画。ニューヨークのベア・コミュニティを舞台に、痩せ形でヒゲも体毛もないけどベア好きな若者と、その友人たちを巡るアレコレを描いたゲイ・ベア版ロマンティック・コメディ。
キャッチコピーは「ロマンスは毛深くなれる」(笑)
主人公タイラーは、NYに住む役者志望の青年。ゲイで、好きなタイプは「ヒゲ+毛深い+デカい」のベア系なのだが、自分は細くてヒゲも体毛もないので、ベア系の掲示板に登録しているプロフィールは写真なし、キレイ系の男が好きなルームメイトのゲイにも、自分はベア好きだとカムアウト出来ずにいる。
そんなタイラーだったが、ある日、掲示板のチャットで話しかけられたことを切っ掛けに、勇気を出してベア系ゲイバーのイベントに出掛ける。そこにいるのはベア、ベア、ベア。そんな中に偶然、タイラーがオーディションを受けたときのカメラマンで、彼がちょっと意識していたベア系のフレッドがいた。
フレッドはタイラーを、パートナーのブレントや他の仲間に紹介する。フレッドたちの部屋に空き部屋があり、ルームシェアの相手を探していた。タイラーはそこに引っ越し、更にブレントの働くベア・コーヒーショップでの職も得る。
こうしてベア・コミュニティ内に入ったタイラーは、そこで出会った年上の男ロジャーを好きになる。ロジャーもタイラーを意識するのだが、彼のライフスタイルは特定のパートナーを持たない自由なもので、二人が何となくいい感じになりかけても、すぐに邪魔が入ってしまい……といった内容。
こういったアウトラインをメインに、付き合って長いので倦怠期っぽくなっているカップルが、公認浮気や3Pに挑戦しようとするエピソードや、痩せるために胃の縮小手術をしようとする男と、それに反対して気まずくなってしまうパートナーとかいったエピソードが、合間合間に挿入されます。
まあ何と言うか、いかにも「ベア系ゲイが、ベア系ゲイのために作った、ベア系ゲイの映画」といった感じの映画。
というわけで、扱っている世界が良くも悪くも狭いので、ベア好きのゲイならけっこう楽しめると思うけれど、それ以外の人には……う〜ん、ちょっとどうなんだろうなぁ(笑)。
コメディとしては、笑いのとり方が「あるある」系の小ネタと、ゲイゲイしい会話の応酬なので、クスクス笑えるネタは盛り沢山。個人的にお気に入りなのが、ベア好きなのをカムアウト出来ない云々の件で「ホントはジョン・ グッドマンがタイプなんだけど、人には『ブラピかっこいい!』とか心にもないことを言っちゃうんだよね……」ってヤツ(笑)。
ただ、笑いがそういった小ネタに終始していて、大きな仕掛けがないのはちょっと残念。
でもサービス精神は実に旺盛で、ヌードもカラミもエッチ場面もあり。主人公がなかなかラブをゲットできない分、脇キャラがあれこれにぎにぎしく動いてくれて、エッチ場面もロマンティックから3Pや乱交まで、もうタップリ入ってます(笑)。
また、実際にNYのベア・コミュニティの人々が主体となって作っているらしく、そういったコミュニティ内を描いたリアル感は素晴らしい。出てくる人がホントに、実際にそこで生活しているゲイにしか見えないほどで、ベア系ゲイ・カルチャーを探訪できる観光映画的な魅力は大。
というわけで、基本的には罪のないロマコメで、ベア好きのゲイだったらお楽しみどころも多々ありますが、それ以上のものはなし。
個人的には、もうちょっとキャラの内面に迫るとか、普遍性や批評性とかいったプラスアルファが欲しいというのは正直な感想ですけど、まあこれはこれで良いのかな(笑)。
ベア系ゲイが好きな人にとっては、実に愛らしい映画であることは確かです。軽〜い気持ちでお楽しみあれ。
で、この”BearCity”、台湾版の公式予告編があったんだけど、タイトル『慾望熊市』…って、なんかスゴいわぁ(笑)。
でもって、この台湾版予告編の中で「Who wants to eat my ass?」の中文字幕が「誰要品嘗我的熊菊?」ってのにも大ウケ(笑)。「熊菊」って(笑)。
更にこの映画、ラストで「次はサンフランシスコだ!」みたいな感じで終わるんですが、何とホントに続編ができたようで、先日その続編”BearCity 2″のティーザー予告編が公開されました。
来春アメリカ公開だそうな。
相変わらずベア好きゲイ限定御用達の軽いロマコメっぽいですが、スタッフもキャストも続投している様子なので、なんかちょっと楽しみに(笑)。