“Karzan, Jungle Lord (Karzan, il favoloso uomo della jungla)”

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“Karzan, Jungle Lord” (1972) Demofilo Fidani
(”The Italian Jungle Collection”と題された2 in 1米盤DVDで鑑賞→amazon.com、併録作は女ターザンものの”Luana”)

 1972年制作のイタリア製ターザン……ならぬカーザン映画。どう見てもお馴染みのキャラクターなのに、権利の関係でちょびっとだけ名前が変わってます……ってな系統の良くあるパターン(笑)。伊語原題”Karzan, il favoloso uomo della jungla”。
 主演のカーザン役は、ジョニー・キスミューラー・Jr……って、誰(笑)。いちおうIMDbによるとアルマンド・ボッティンという役者さんで、この映画でのみ、このキスミューラー・Jrを名乗っている模様。
 なお監督のデモフィロ・フィダーニという人は、ツイッターでフォロワーさんに教えていただいたんですが、「マカロニ・ウェスタンファンの間ではクズ映画ばっかり撮ることで名高い監督」なんだそうです(笑)。

 アフリカ奥地、ジャングルの蔦を使ってサーカスのように移動する、謎の半裸白人男性の映像が撮影される。
 探検家のフォックスは、おそらく十数年前に同地で消息を絶った飛行機と関係があるのではと推測し、富豪のカーター卿に探検のスポンサーになってくれと頼む。野人を捕らえ、再度文明化することができるかということに、学術的興味を感じたカーター卿は、スポンサーを引き受け、恋人のモニカと共に探検に同行するとにする。
 アフリカに渡ったカーター卿一行は、現地で曰くありげな男《クレイジー》やポーターを雇い、毒蜘蛛や毒蛇に襲われながらも、野人の住むタブーの台地へと近づいていく。しかし、そこで原住民の襲撃を受け、隊員の一人が死に、荷担ぎ人足は逃げ帰り、残りの者は捕まってしまう。
 探検隊は柱に縛られ、あわや危機一髪…というときに、崖の上に件の野人カーザンが姿を現すが、その横には革ビキニを着たブロンドの女野人シーランの姿もあった!(えっ)
 シーランは原住民のアフロヘアーの女とキャットファイトを始め(ええっ)、そしてカーザンはモニカ一人を助け出し、自分の第二夫人にするために樹上の住居に連れ帰り(えええっ)、モニカはシーランに言葉を教えるが、シーランとカーザンはモニカを尻目に泉で水泳を始め(はあ?)、ムーディなラウンジ風オルガン音楽にのせて、腰布&革ビキニの男女のスローモーションが延々延々延々と続き……(誰か助けて…)。
 しかしモニカの協力で、カーザンとシーランは探検隊に捕まってしまい、縄で縛り上げられて連行されてしまう。そこにチンパンジーのチータが、二人を救いにくるのだが、カーザンだけは助かったものの、シーランは囚われの身のまま。
 カーザンはシーランを助けだそうと、隊の後を尾けるのだが、そこにワニが襲いかかったりゴリラの着ぐるみが襲いかかったり…ってな内容。

 え〜とまぁ、何と言いますか…久 々 に ヒ ド い も の を 見 た って感じ(笑)。
 前半の延々と続く、スリルもへったくれもない探検行の段階から、早くも退屈で死にそうになるんですが(まぁ、猛獣と人間が決して同一画面にはフレームインしないなんてのは、低予算映画のお約束なので目を瞑りますけど……)、その後、いったん原住民を撃退して助かったはずなのに、次のカットで何の説明もなく、いきなり捕まって柱に縛られているあたりでは、見ていて思わず相棒と一緒に「ええっ?」と、素っ頓狂な声を上げてしまったくらい(笑)。
 後はもう、シッチャカメッチャカとしか(笑)。モニカが野人に掠われたのに、ちっとも心配したり救出に向かおうとしない他の隊員たちとか、掠われたモニカが唐突にシーランに言葉を教え始めるくだりとか、突っ込みだしたらきりがないシロモノ(笑)。
 時代の反映なのか監督の趣味なのか、ヘンにクローズアップやあおりを多用した、カットアップみたいなサイケ風味の演出の意味不明さとか、最後の「ええっ、そんなオチ???」という驚天動地のい〜かげんエンドとか、サルが砂浜に棒で《THE END》と書くエンドクレジットとか、もう勘弁して(笑)。

 まあ、どんだけヒドいかってのを、ちょっとネタバレ込みで説明するので、お嫌な方はこの段は飛ばしてください(笑)。
 まず、曰くありげな《クレイジー》というキャラ。ニヒル系な外見の白人男性で、いちおう初登場時には「こいつは口がきけないが、腕は立ち、しかも第六感があるので役に立つ」と紹介されて、それで探検隊に加わるわけです。
 さて、こいつが探検隊に加わって何をするかというと、歩いているときも野営の間も、ひたすらハーモニカを吹いているだけ。で、そのハーモニカを落っことしてしまい、それを探している間に隊から遅れてしまい、オマケに蛇に襲われる(笑)。
 原住民との交戦が始まると、草むらの中に身を伏せているときに、目の前をトカゲだかなんだかが歩いているのを見つける。で、周囲の騒動はどこ吹く風で、それを捕まえて歯で頭を食いちぎる。それだけ(笑)。
 最終的には、原住民の投げた槍から隊長を庇って殺されちゃうんですが、え〜と、第六感とゆー設定はどこに消えたのかしら……しかもちっとも役に立ってないし……これで墓標にハーモニカを添えられても、感動どころか苦笑しか浮かばないんですけど(笑)。
 もう一つ、「ええっ、そんなオチ???」という驚天動地のい〜かげんエンドについても。
 いちおうカーザンは、シーランを連れて行った探検隊に追いついて、彼女を助け出すんですが、自分は銃に撃たれて負傷し、捕まってしまう。で、フォックスは「こいつを見せ物に出して云々」と、儲け話の皮算用を始めるが、カーター卿は「自分の興味は学術的なもので、金儲けではない」と反対する。
 そしてカーター卿は、「最初は、いったん野人となった人間を、再度教育して文明化することで、科学の発展に貢献できると思っていたが、しかし今カーザンを連れ去ってしまうと、ジャングルに一人残されたシーランは、可哀想に、生き延びることができないだろう」と主張し始め、逃げたシーランが茂みの中でメソメソしているのを、猿のチータが慰めるカットなんかを挟みつつ、カーザンを解放すべきだと主張するカーター卿と、いや、このまま連れ帰って見せ物に出すと言い張るフォックスの口論が続き、カーター卿が「金が目的なら私が出そう!」とか何とか言った、次の瞬間。
 シーンは陽光まぶしく波頭きらめく浜辺(どこ???)に変わり、ムーディーなラウンジ音楽が流れる中、原初世界のアダムとイヴよろしくキャッキャウフフと戯れあうカーザンとシーランの映像になり、チータが棒きれで砂に《THE END》の文字を書いて、はいおしまい。見ているこっちは、あまりの唐突さに、ただただポカ〜ン(笑)。

 という具合で、特にヒドかった二つをピックアップしましたが、ぶっちゃけ全編こんな感じなので、ホント突っ込みだしたらキリがないです(笑)。
 こういう《偽ターザン映画》は、インド版とかトルコ版とかエジプト版とか(日本版とかポルノ版とかも……)見ましたが、その中でもこのイタリア版は、かなりヒドいシロモノなので、ネタとして楽しみたいという方以外には、決してオススメいたしません(笑)。
 ”Karzan, Jungle Lord”から、シーランを追うカーザンが、唐突にゴリラ(の着ぐるみ)に襲われるシーンのクリップ。これまた余りの唐突さに加えて、着ぐるみとか吠え声とかいろいろヒドさに、飲んでたコーヒー吹きそうになりました(笑)。