『ターザン三つの挑戦 (Tarzan’s Three Challenges)』

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『ターザン三つの挑戦』(1963)ロバート・デイ
“Tarzan’s Three Challenges” (1963) Robert Day
(米盤DVD-Rで鑑賞→amazon.com

 東南アジアを舞台にした変わり種ターザン映画。お珍しやタイで全面ロケしており、アジアの小国、霊的指導者の跡継ぎ争いが持ち上がり、そこにターザンが登場し、正当な後継者の護衛として大活躍という話。
 ターザン役者は、13代目のジョック・マホニー。

 東南アジアのとある国。国の指導者かつ宗教的指導者(つまりダライ・ラマみたいな設定)は死にかけており、跡継ぎは既に選ばれて寺院で養育されているのだが、現指導者の弟は、自分の息子をその地位につかせるために、正当後継者の即位を妨害しようとしている。
 そこで護衛としてアフリカからターザンが呼ばれるのだが、寺院に向かう途中で敵に襲われ、迎えの僧侶は殺されてしまう。何とか寺院に辿りついたターザンだったが、本物だという証拠がなく、身の証しを立てるために、技力・体力・知力の三つのテストを受けることになる。
 テストをクリアしたターザンは、次期指導者の少年を護衛して、無事に都まで送り届ける使命を受ける。途中、山火事に巻き込まれたり、敵の襲撃を受けたり、迷子の子象を拾ったりと色々ありつつ、犠牲者も出しながらも、一行は何とか都に辿りつく。
 旅の途中で先代指導者は既に亡くなっており、都についた後継者の少年のために、さっそく即位の儀が執り行われる。歌舞などが盛大に行われた後、真の後継者かどうかを試すために、少年に3つのテストが課されるが、それも無事にクリア。こうして一件落着かと思いきや、件の敵が第4のテストを申し出る。
 それは平和の中で長く廃れていた習わしだったが、後継者に異議がある者は挑戦者として挑むことができ、後継者の守護者はそれと生死を賭して闘わなければいけないのだ。こうして地位を狙う例の敵と、守護者に指名されたターザンの、生死を賭けた一騎打ちが始まる……という内容。

 これはなかなか面白かった。
 まず、ターザンがエキゾチックなアジアの国に来るという設定が、まあキワモノ的な発想ではあるんですが、タイの観光局が全面協力しているだけあって、出てくる寺院とかはバリバリ本物だし、祭りのシーンも質量共に本格的と、全てにかなりのスケール感があるのが良い。
 展開は、一難去ってまた一難が串団子になっている系なんですが、これまた個々のアイデアが面白かったり、演出自体もスピーディでキレがあったりと、弛緩したり飽きたりする隙を与えない感じ。フッテージを上手く使った山火事のシーンなんて、けっこう迫力があって驚かされました。
 アイデアの方は、例えば最初のターザンに課されるテストの内容は、揺れる的を弓で射る、両腕を左右から牛に引っ張られる(DVDのジャケにもなっている、ソード&サンダルでお馴染みのアレ)、頓智クイズといった具合。
 挑戦者との戦いも、都から離れたところを開始点として、腕を紐で繋がれた状態でランニングスタート。で、ゴールまで相手を傷つけないよう、弓を構えた兵士たちが見張る中、野山や岩場を走り、断崖を吊り橋ならぬ一本のロープにぶら下がって渡り、吊された剣をとってロープを切り、谷川の橋からバンジージャンプをし、そこから川に飛び込みスイミング…といった具合で、次から次へとなかなか面白い。
 そしていざゴールでは、煮えたぎる釜の上に貼られた目の粗いネットの上で、剣を片手に真剣勝負。これらをそこそこ〜かなりのスケールで見せてくれるもんだから、これで贅沢言ったらバチが当たります(笑)。因みに主演のマホニーは、この撮影で体重が40ポンド(約18キロ)減ったそうな……。

 ただ惜しむらくは、そのターザン役者のジョック・マホニーで、残念ながら顔も身体も魅力ゼロ……歴代のターザン役者の中でも、私的にはかな〜りポイント低め。ただし敵役が「スパルタカス」でカーク・ダグラスと闘った黒人剣闘士役のウディ・ストロードで、肉体美はそっちで堪能できます(笑)。
 ストーリーに花を添える後継者の乳母役で、Tsu Kobayashi(小林鶴子)という日系らしき女優さんも出ています。流石にアフリカからチータは連れてきませんでしたが、そういうお子様向けマスコット役には、かわいい子象のハングリーといった布陣。お父さん向けには、祭礼シーンで女性群舞をご用意。

 そんなこんなで、ターザン映画のパターンをちょっと崩し、かつ本格ロケで安いキワモノにもならず、作劇や構成もクリシェを上手く使って上々、ターザンの存在も、ストーリー的には脇ながら、見せ場では上手くメインに持ってくる……と、マホニーの容姿以外(笑)は文句なしの出来映えかと。

 この予告編だと、ナレーターが「ラドヤード・キップリングの世界」とか言っているので、制作者としては東南アジアではなく、南アジアのつもりだったのかも?